寂れた無限の奉仕

第二章

二十二話

　昨日の男は松原というらしい。電話番号を交換し、その場は解散した。
　別に観光に来たわけではないが、ああいう人と仲良くなっとくのは悪くない。なんせおれはこの場所についての知識が浅いのだ。

　おれは解散してからも市場の辺りをうろうろしていた。朝市は終わり閑散としていた。市場をみな引き上げていく。

　そういう人達は昼間は何をしているのだろうか。気になったおれはついていくことにした。すると一定数の人が同じところに向かっているようだ。気になったのでその集団についていった。

　その先はある女性がいた。
　人々はその女性に
「これで少しでも娘さんの手術費にしてね。」
などと労いの言葉をかけながら、お金を渡していた。

　おれはその女性がどうしても気になり、ずっとその光景を遠くから眺める。
　なぜか彼女に対して初めて会った気がしない。ずっと見ていたが何故かはよく分からなかった。
　皆が彼女にお金を渡し終わり、その場にいるのはおれと彼女だけになった。といっても20mぐらい離れているんだが、、、

　おれは彼女に近づいた。
「すみません。あのー。」
「あ、こ、こんにちわ。」
　なぜか動揺しているようだ。
「あ、こんにちわ。」
「どうしたんですか？」
「いや、皆さんがあなたの娘さんのためにちょっとのお金を集って渡してるのを見て感動して。」
「はぁ。」
と言った瞬間、彼女は走り出した。
　
　おれは咄嗟に追いかけた。何かを彼女が隠している。そう確信したからだ。

「おい！待てよ！」
　日本語で言っても分からないか。
　しかし、相手は女性。すぐに追いつけそうだ。だが、そうはいかなかった。

　地の利を理解している彼女は、様々な裏道などを通り上手くかわされた。あの人はなんだっただろうか…