フォロワー数至上主義学園

チャンス

　あれからもう半月が経った。なかなか登録者は伸びない。もうドミネーターは約200万人、tripletは約150万人の登録者を獲得していた。正直言って他は勝負にもなっていない。ちなみに俺たちもまだ2000人弱だ。ずっと奴隷から抜け出せていない。家畜になってない分マシか。寺岡はすごいやつだ。王族の雑用で寝る暇もないはずなのに、毎日5本以上ほとんど編集のない動画をアドリブで完成させ、遂に3日前、寺岡の個人のフォロワーが1000人を超えた。家畜から奴隷にのし上がったのだ。しかしこのままではGASFSで勝つことは絶望的だ。
　
　校内に放送が流れた。1年生は体育館に集まるようにとのことだ。何が始まるのだろうか。
　体育館に入ると壇上に2年の筆頭格、野々宮将司ののみやまさし、通称ノノマサがいた。彼は大人気7人グループTouyouberスラッシャーズのリーダーで赤い髪をした派手好き、イベント大好き人間だ。ちなみに登録者は1200万人の王族だ。ノノマサが口を開く。
「なぁ1年生、GASFSの調子はどうだ？もう諦めてるやつもいるだろう。ここで俺たち2年生から提案がある。これからお前らのグループリーダーにくじを引いてもらう。そこには2年の名前が書いてある。そして、お前らにはそいつらとコラボする権利を与えよう。家畜の奴から俺まで全員入ってる。さぁ運を掴み取れい！」
　会場がざわつく。フォロワーが多い投稿者とコラボできるというのはかなり大きなチャンスだ。実際それだけで有名になったような投稿者だっている。順にくじが配られる。寺岡の番だ。寺岡は気怠そうに引く。本当に能天気な奴だな。
　1年が一斉にくじを開く。会場のあちらこちらで大きなリアクションが起こる。中には泣き出すものもいた。家畜にあたってしまったんだろう。俺たちは寺岡の持ってるくじを一緒にみる。そこには「渋谷真斗しぶたにまさと」と書いていた。1番判断しづらいタイプだ。登録者数は申し分ない約400万人。だがひとつだけ問題がある。渋谷の投稿スタイルだ。彼は炎上系TouYuberなのだ。正直1番やりづらいかもしれない。もしかしたら炎上して、家畜に落ちることだってありえる。だが上手いこといけば大バズりの可能性もある。矢作が俺に聞いてくる。
「渋谷さんってやばくない？」
俺は答える。
「あぁ、だがやるときは一か八かだ。」