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一章 わたし柴犬

男の見栄にいかがっ!?

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 こんにちは柴犬らばーの皆様。
 あなたのチート柴犬ですよ。

 前回のあれ、見てくれましたか?
 天翔るりゅ……じゃなくて武空術で飛んだんですよ!
 オラ感激しただ!これで将来も安泰ってもんです。デッキブラシ咥えて配達とかもできます。養われるだけのヒモ生活からおさらばってもんです。

 ハイスペック過ぎてもはや柴犬なのかすら分からなくなってきましたね。タイトルを『我はチートなり!?』に変えた方がいいかもしれません。普通過ぎてファンタジーカテゴリで埋れそうなタイトルです。

 私は柴犬の皮を被った勇者とかなのではないでしょうか?私としては悪役令嬢でざまぁしてイケメンと恋愛コースを望んでいたのですが、柴犬勇者も悪くは無いでしょう。
 柴犬勇者と美青年だらけのパーティ…………バランス悪いですね。どうみても愛玩用のマスコットです。どちらかといえば勇者よりも遊び人が適任かしら?

 溢れる魅力で敵はめろめろになった!
 パーティもめろめろ!魔王もめろめろ!
 世界は平和になった!めでたし!

 しまった!!
 三行で話が終わってしまった。これでは評価も付けられずに終るレベルだわ。


 と、まあ長々と現実逃避してたのですが……実に気まずい状況でして。
「だぁいじょーぶよー! うふふ……痛くしないから……はあはあ……ふふふふふ……」

 ひぃええええ!
 目の前に迫り来るピンクな坊主頭!!
 全身ショッキングピンクの衣装のお兄……いえお姉さんが鬼気迫る勢いで私を縛ろうとしています。いえ、縄じゃありませんよ。メジャーです。

 本日は採寸デーなのです。
 めっちゃガタイのいいオネェさんに身体中計測されております。
 オカマさんの服が目に痛いよ。服は個人の趣味だし別にいいのですが、とにかく派手で眩しい。あお私をみつめる目が怖い!目の下に隈をこさえた鼻息の荒い大迫力のオネェさんって怖いわ!!!

 付けまつ毛がバサバサ聞こえる距離でガン見されるわたくし。
「ふぅふぅ……レザーにスパンコールで……ぶつぶつ……キュプラ……レースを……」
 耳が後ろにぺたんこになっても仕方が無いと思うんですよね!(イカ耳とも言う)
 本当にペロリと食われてしまいそうです!!これが肉食系オネェというやつかな!?

 そして更に私を萎縮させるのはこの状況。
 黒ミサで生贄でも捧げるかの如く周りを囲まれています。
 薄暗い部屋で大勢はぁはぁ言ってるの怖すぎでしょ。

「トラ柄……ハァハァ」
「もこもこ羊スタイル……ハァハァ」
「マリンルック……ハァハァ」
「ボーダーの水着……ハァハァ」
「むしろビキニ……ハァハァ」
「ならんならんぞぉ……セパレートだああ」
「スク水こそ正義ナリ!!」
「斜め上の白スク……ハァハァ」
「……邪道な!! だがいい!」
「全裸に白くつした……ボソボソ」
「ぶ、ぶるまっブシャアアアア」
「隊員Z!!……くっ無茶しやがって……」
「お前の犠牲は無駄にしない……!」

 なんだこの茶番劇は。柴犬は冷めた目でこれを見つめていた。
 いやいや!反応に困るよ!?同じ同士の血を感じるけど、さすがに私もこんなキモチわ、いや同じだったかもしれんけど。そんな変な服着せようとは思ってなかったし。まあ柴犬様は何着ても似合うのはわかるけどね。

 そう、あの素晴らしい企画書をあげてくれた服飾隊の皆さん...なのだけど。
 だから目が怖いんですって!
 私の尻穴までガン見ですよ。
 皆さん目が血走ってます。鼻息荒いです!!フンスフンス聞こえます!!
 服作ってくれるのは嬉しいけど落ち着いてえええ!!
 びゃあああああん(涙)

「きゅきゅううん!(ご主人様ぁ!)」

 ……あっと言う間にご主人様が助けてくれました。
 というか、気づいたら採寸が終わっていました。
 意外とアナログな採寸方法なんですねぇ。
 (ハイテクな方法があるが、あえてこちらの方法をとったとは気づいていない)
 皆さん一心不乱に何やら書き込んでますが、本業の方は大丈夫でしょーか。

 ご主人様ぁ~怖かった~!
 真顔でなでなでするご主人様にちょっとキュンっ。
 すりすりサービスしますね。

 あれ、…………私、凄い事発見しました。
 尻尾がお股に潜り込んでいます!
 犬って怖がると尻尾が内股に入るのねー!!
 ほらご主人様みてみて!もっこり!もっこりだ!(笑)
 レスリングパンツはいたら凄いよ!!
 これぞせいきの大発見!(いろんな意味で)
 きゅふふふ!!下ネタく、くだらなっ……!
 オヤジギャグかっ!アホか私は!

 と、真っ白な腹を晒しながらご主人様の手の上で身をよじる。
 鼻血を噴出して失神しそうな周囲をスルーしつつ
 アホな感じに上機嫌で悶える私であった。

───────────
◆ティアマトー種の記録
 記録者セティアス

 今日は身につける服を作るため採寸を行う。
 ティアマトー種といえど幼体のうちや寒さの厳しい冬場には充分に温かくした方が良いと報告が上がっている。
 夏場の服も作るようだが、本人が欲しがっているので良しとしよう。

 採寸に来ていた服飾隊隊長のサミュエルを見て固まっていた。
 彼のインパクトは確かに凄い。しかし彼の腕は確かだ。服が出来上がるのを期待しよう。
 話がずれたな。ティアマトーは驚きすぎたのか、尾を丸く膨らませていた。
 まるでンタポポの綿毛のようだった。
 これがどう進化するのか大変興味深い。

※ドギツイ化粧のサミュエルに抱きつかれ口を大きく開けたまま固まっているティアマトーの写真が載っている。
───────────
 この日も怒涛の勢いでコメントが10000まで伸びた。
 彼じゃなくて彼女よぉ!とどこかの隊長のコメントがあったとかなかったとか。
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