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童貞勇者の嫁とり
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「なぁにが異世界だ。何がゆーしゃだ……」
異形の男達が陽気に歌い、赤ら顔で酒をかっ込み、猥談に花を咲かせる賑やかな酒場の一角。
見るからに暗い男が居た。
それはそれは、そこだけが雨にでも降られた後のように暗くじめっとしている。陽気な男たちも思わず目をそらすほどに。
その蛞蝓のごとく湿度が高い人間の男は1人で愚痴を吐きながら酒を呷っていた。誰がどう見ても自棄酒だろう。
歳は二十台後半だろうか。周囲の男達に比べて随分背も低く細い。この世界の基準で言うならば女性よりもやや華奢だろう。
男は魂も抜け出してしまいそうな重い重いため息を吐く。
安いアルコールを摂取しすぎたせいか、男の呂律は怪しく目は据わっていた。真っ赤な顔を打ち付けるように机につっ伏す。
男の零した怨嗟の声は誰の耳にも届かない。持っていたジョッキの中へと虚しく消えてゆくのだった。
自己紹介をしよう。
俺は勇者。地球、日本、埼玉県から強制的に呼び出された召喚勇者、だった。
何を言っているのかと、そんな冷たい視線で見ないでほしい。
俺も最初は信じられなかったのだから。
いや、とりあえずだ。そう、あれは大学の夏休みに入ったばかりの夜だった。経済学部の仲間達と飲み明かしていた時だ。俺はビールをたらふく飲み、上機嫌でトイレに入り……
……気づけば冷たい床に転がされていた。
幾人もの見下したような視線が俺に突き刺さる。
えー?マジでこれ勇者?うっそー!みたいな残念なものを見る目付き。空気が読めない俺だってわかるほどそのオッサン達は落胆していた。いや俺もガッカリだよ!
勇者が許されるのはイケメンチート高校生までだよねー!
悲しいかな俺は今時の標準的日本人体型なのだ。インドア趣味のひょろ男で身長も175cm(盛)ぐらい……な上に色白。染めた事もない真っ黒な髪。就職活動中だったから清潔感はあるけど全体的に面白みがないリクルートスーツ。
顔面偏差値といえば……普通?友人には残念なイケメン?と言われる微妙なぐあいらしい。整ってるけど地味ってどんなんだよ!と突っ込みたい。今では叶わぬ思いだが。
まぁ要するにパッとせず、頼りないのだ。俺は。
俺を取り囲んでいたオッサン達がこれ見よがしに溜息をつく。
はぁ……俺だってこんな所来たくなかったよ……。ダメなら送り返してくれりゃあいいじゃん。
アルコールを摂取した状態ではうまい対応もできず、騎士のような男たちに物のように引きずられていった。抵抗する暇もなく偉そうなおっさんに鋼鉄の首輪を嵌められた。
……首輪だ。首輪。
人間扱いですら、ない。
死なねば取れんよと笑われた。
マジで意味が分からない。
「魔王を殺せ。卑しい魔族どもを殲滅しろ」
会話らしい会話もなくそう命令された。
最初は意味が分からなかった。魔族ってなんだよ。魔王?ゲームの世界なのか?
説明を求めれば杖で殴られた。まったくもって意味が分からない。理不尽にもほどがある。
何度もしつこく食い下がれば、魔族とやらが人間の敵で、魔王に対抗しうるのが勇者のはずだった……と苛立たしげに別のおっさんは言っていた。過去形か。
どんだけテンプレファンタジーなんだよ。本当にどこここー!っていうか、俺!学生!いっぱん!じん!!!
しかも拉致してきたのはそっちなのに。何この扱い。
こちとら平和ボケしてる日本人やぞ。
村人Aに無茶言うなや。
俺はまだ楽観視していたんだろうな。
その日から地獄の特訓が開始された。
握ったことのない長剣を持たされ、兵士にボコボコにされる日々。手も足も豆ができ、潰れての繰り返し。皮がベロベロ。
身体中、切り傷や打撲の痣だらけ。
魔道書を持たされるもそんなもん使えるわけもなく、城中の人間に期待はずれ、能無しと馬鹿にされ、殴られ、呆れられ、最後には無視された。まるで汚物を触れるかのように、全員が手袋をしていた。あれが一番傷ついたかもしれない。素手で触れないように厳命とか、どんだけ病原菌扱いなんだよ。
どんだけ厳しく修行を強いられようと、一般人な俺に異世界チートなどあるはずもなく、なかなか成果を出さない俺に業を煮やしたおっさんどもは最悪な保身へと走った。
俺を魔王への生贄にしやがった。
既に勇者が召還されたと諸外国には吹聴してやがった。
俺をネタに武器や補給物資、支援金までふんだくってやがった。完全なる勇者募金詐欺とういやつだ。性根が腐ってやがる。
この話をなぜ知っているかというと、俺を棒で殴る時に馬鹿なおっさんどもが怒鳴り散らしていたからだ。国家機密などミミズのクソほどにもありはしない。
それからの動きは……とても迅速だったと思う。
ゴミのように拘束された俺はゴトゴトと激しく揺れる馬車で移送され、同行する兵士達に八つ当たりのように食事を抜かれた。死にゆく勇者(笑)には必要ないだろう、と。
勝手に拉致して勝手に期待して。
役立たずだと分かればゴミのようにポイ。
俺からすれば滅ぼされるのは性根の腐ったお前らであるべきだと、身を焦がすような怒りで目の前が真っ暗になった。
絶対に、今死んだらこいつら祟る。
全力で子孫代々まで祟ってやるうううう!
空腹を通り越し、頭痛と吐き気が常にまとわりついていた。このままだと魔王城に向かう途中で死ぬんじゃないか?
まあ、もうどうでもいい。そう思っていた時、象ほどもある巨大な怪鳥の襲撃を受け……俺は呆気なく死んだ。
ゲームオーバーだ。本当に呆気ない。
拘束されていたせいもあるが元より抵抗する気力などなかった。
この世界に心底絶望していて、今思えば俺は楽になりたかったのだと思う。死という許しが欲しかった。仕方がないと思うんだよね。この状況じゃ。
迫り来る巨大な嘴を眺める。
爪で心臓を貫かれ、首を吹っ飛ばされて、
俺の身体を客観的にみると言うぶっ飛んだ経験をして意識は闇に沈んだ。痛いと言うより、熱い、かな。ほんと一瞬で殺してくれて感謝だわ。
ああ、やっと解放されるのだと視界を赤く染めながら安堵した。
兵士であったものがそこかしこに散乱している。もはや原型すらとどめていない肉片の山。
噎せ返るような血と排泄物の臭いの中で俺は目を覚ました。全身に血や土がどす黒く変色してこびり付いている。
震える手で己の首筋に触れた。切り落とされたはずの首が繋がっている。腕も、胸も、足も傷ひとつ無い。
俺は錯乱し、悲鳴をあげて胃液を吐き続けた。空っぽの胃で良かったと思ったのはこの時だけだ。
肉片と馬車の残骸しかない周りを見渡して呆然とし、吐いた胃液のそばに見慣れた金属が落ちているのを発見する。
死なねば取れぬと言われた首輪が転がっていた。
1度死んだから外れた?
確実に死んだ。それは確かだ……けれど外傷はない。
ゾンビか?それとも勇者補正と言うやつだろうか。
いっそ、死んでしまいたかった。
どうして。なぜだ。
死にたがりの身体はそれでも生きたいようでぐうと胃の音が鳴る。乾いた唇から笑いが漏れた。
こいつらは死に、俺は生き残ったんだ。
よたよたと立ち上がると、追いはぎのように死体から装備を剥ぎ取り使えそうなものだけ取ってその場を離れた。
そして臨死体験をしたせいか勇者としての能力が徐々に目覚めていった。
身体能力が驚異的に上昇し魔法も使えるようになった。疲れを感じない体。武器が羽のように感じる。さらには想像するだけで魔法が使える。道具や魔法陣なども必要ない。まさしくチートだった。
喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか判断がつかない。あのクソオヤジどもに利用されなかっただけが唯一の救いだった。
人間不信に陥った俺は魔族の町へと紛れ込むことにした。
最初はビクビクと生活をしていたが、幸い彼らの見た目は多種多様で紛れ込むのは容易かった。まあ人間だとばれても文句を言われることはなかったのだが。
むしろ魔族の町は非常に住み心地が良かった。過度に干渉せず、美味しい食べ物は溢れ、差別もない。貧富の差はあるものの彼らは生きる喜びを日々分かち合っていた。
訳アリの俺を受けいれ、仕事を斡旋してくれた。適度な距離を保ちながらも気にかけてくれた。そんな彼らの優しさに俺は次第に緊張をといていった。
見た目は違うが彼らは忌むべき存在ではない。そんな彼らに刃を向けるような事にならず心の底から安堵した。
人間達は勘違いしているが、人間を襲っているのは知能のない魔獣と呼ばれる生物らしい。
魔族とはまったく異なる生態で彼らも迷惑しているのだと言う。混同して攻撃してくる人間にもだ。あの視野の狭さだ。今後も聞き入れることは難しいだろう。
俺は目覚めた能力で生きていくため、そして魔族達に少しでも恩返しをするため魔獣を狩る冒険者となった。
──魔獣を狩り生計を立て、数年が過ぎた頃だった。
当たり前だが俺は『元勇者』である事を隠して目立たぬように生活していた。魔物を狩りに行く以外は隠遁生活みたいなもんだ。勇者の力が漏れないように結界というか、戒めみたいなのも常に実行している。今では呼吸より楽に存在を隠せているはずだ。
目立たないように依頼をこなし続け、ギルドランクが中堅どころに上がり収入も安定し古く小さいが家も購入した。その頃には地球に帰還する事は諦めていたと思う。
しかし家を得ようと収入が安定しようと、心の傷は癒えない。
召喚されてゴミ屑のように虐げられた事はトラウマとなって心に残り続けた。忘れることはできない。他人のスペースに踏み込むのが怖かった。
けれど、やはり人肌寂しい……そういった思いもあったのだと思う。
信頼できる仲間がほしかった。
徐々にだが人脈を広め、頼れる知り合いを作った。トラウマも完全に克服することはできないが、今の生活に満足してきた頃だった。
唐突に。天啓かのごとく"嫁さんが欲しい"と言う願いが頭の中を駆けていった。
彼女。一緒に過ごせる家族が欲しい。
淋しかったのだ。
裏切ることのない、俺を愛してくれる家族が切実に欲しかった。
幸い魔族の皆さんは人型の種族が多い。見た目もいい。
子供は出来ないかもしれないが、俺を受け入れてくれる女性がみつかるかもしれない。
恥ずかしながら地球では年齢=彼女居ないだった。つまり俺は童貞だ。……もう俺も二十代後半だ。
早く卒業しなければ、違う意味で魔法使いになってしまう。
一念発起した俺は嫁さん探し……婚活に勤しんだ。
────が、惨敗。
大惨敗すぎる結果だった。
仲のいいギルドの受付ちゃんも、パン屋の看板娘ちゃんも、巨乳の剣士さんも……全員だ。
それも普通の断り方じゃなく、怯えたように拒否されれば泣く泣く引くしかない。
「そんなつもりじゃなかったの……」
「ごめんなさいぃぃ! ごめんさないぃ!」
「……無理だな」
と、青ざめて全力拒否。
魔族の好みから言って日本人、いや人間は論外なのでしょうかね……。
そして連敗に連敗を重ね、ヤケクソになった俺は絶対に行くまいと決めていた花街へと向かった。性を搾り取る魔族、サキュバスさんにお相手してもらうのだ。
せめて童貞だけでも卒業したい気分だった。
興奮と期待で着いた先で、
サキュバス達全員土下座。
店主の中級魔族まで土下座。
「お客様には申し訳ありませんが、うちのは勘弁してやってください。家族同然の者達なのです」
その言葉を聞いてサキュバスの姉さん達号泣。悪代官のような扱いをされて俺も号泣。呆然とその場を後にし、
……今に至る。
「くそぉどーてい馬鹿にしやがって……どうていの何が悪い~うぐぐ」
魔族の皆様は童貞を馬鹿にしている訳ではないのだが、出来上がった脳みそでは見当違いの方向に転がるだけだった。
自分で言ってて情けなさに涙が滲む。
俺は一生童貞独り身で暮らすんだ。べつに、プラトニックだっていい、傍にいてくれればよかったのに……それすら俺にはないのか。
寂しく老後を過ごして誰にも看取られずに朽ちていくんだ……ぐすっ。ううう。
「お兄さん、そんな飲み方しちゃダメだよ」
「うぇ……?」
突然、ゆったりとした男の声が聞こえた。ぞわりと全身に鳥肌が立つような美声だった。
イケボ男は目の前の席に断りもなく座る。長い脚が窮屈そうだ。いや、てか長すぎるだろその脚。
目に飛び込んできたのは艶やかな黒髪長髪の男だった。頭にシンプルだが品の良い金のサークレットを嵌めている。
そして片手に酒瓶を持参していた。
伏せられた切れ長の目は常に愁いを帯びているようで、この上なく色っぽい。
黒く長い睫毛、紫水晶の瞳、高く通った鼻筋、病的に白い肌、薄い唇。美しいが女性らしい美貌ではなく、キリリとした大人の男性のものだ。
肩幅もガッチリしているが武器らしきものは携帯していない。
触れれば毒が滴ってくるような、危険な男の色香が漂っていた。
一瞬惚け、驚いたように目の前の男を見つめる。くだを巻く冴えない男に何の用があるというのだろう。
「お酒も身体も可哀想でしょ? それに固形物も摂らないと胃を壊すよ」
なんとも聞きごこちのいいテノールの声だろう。久方ぶりに優しく語り掛けられウッカリと泣きそうになる。
見計らったかのようにウエイトレスが料理を運んでくる。心配しそうなほど少女の顔が真っ赤だ。そうだよな、こんな美男子に料理運ぶとか緊張するよな羨ましい。イケメンなんてみんな死ねばいいのに。
目の前に次々と美味そうな料理を並べられ……ごくりと喉がなる。
出来たての料理が湯気を立て、酒で膨れた胃を刺激した。
「どうぞ? 僕の奢り」
奢りならば……と、食欲に負けておずおずと料理に手を伸ばす。
次第に食べるペースが早くなる。ガツガツ食べると温かさと旨さに再び目頭がじんわりと熱くなった。なんて旨いんだろう。傷心にしみる、優しさと酒が、しみる……ッ!
目の前の男を気まずくチラ見すると、彼は持参した酒をグラスに注いでいた。
「何で自棄酒を煽ってたのかな。彼女に振られちゃった?」
……それ以前の問題です。とは言わない。
もぐもぐと食べながら顔を振って否定する。くそう。自棄酒、自棄食いだ。
「ごめんね。泣きながらお酒飲んでるから珍しいなあと思って。童貞で悪いか~って愚痴が聞こえて思わず声かけちゃった」
そうだ。童貞だよ。エターナル童貞で悪いかっつの。イケメンには分からない苦しみだ。
ばーか!ばーか!
殺意を込めて睨むと男はちがうちがうと眉を落としてグラスに口をつける。
「お仲間だからちょっと傷を分かち合いたいなって……傷の舐め合い?」
「は?」
「僕も童貞ってことだよ」
ブハッ……その瞬間に食べ物を噴き出す。
うわキタネェ、じゃなくて、
嘘だー!!!!
絶対に嘘だ!!!
地球が爆発するほど嘘だ!!!
「本当だって。一度もセックスしたことがない。みんな失神しちゃったりで最後までできないんだよね」
超イケメンは悲しそうな表情を浮かべると新たな酒をついでいる。あんたも呑むペース早いじゃないか。
その神々しい顔のせいか、テクニックなのか、フェロモンのせいなのか、デカすぎて入らないとか、まあそんなん知らないがイケメン様にも悩みがあるんだな……俺にとっては贅沢な悩みだけどよ。
「……美形も大変なんだな」
顔面格差が酷くとも少しは仲間意識を持ってしまう。これが童貞パワーだ。
「この前もいざ、ってなったら泣いて嫌がられちゃって……」
…………
「ううっ、わかる! わかるぞぉ心の友よぉ~そうなんだよぉ……ぐすぐす」
酒瓶をテーブルに乗らないほど空けた頃には、すっかり俺たちは意気投合していた。
しかも彼は驚くほど共感できるエピソード満載だった。
涙なくして語れない。童貞在る所に涙と笑いあり!
男が酒を注いでくれ、もう何杯目か分からない酒を呷る。カッと喉を熱いものが通り過ぎていく。これは高い酒だ。安い酒ばかり呑んでいた俺が言うのだからまちがいなひぃ。
うおお、頭がくらくらするぅ。
「けど僕は諦めてない。良かったら協力してくれないかなあ」
「おう~モチロンだぁ! 俺にできることならな!」
「ふふ、ありがとう勇者」
「うん?」
グラリと視界が揺れてジョッキが床に落ちる。ガチャとガラスが砕ける音を聞きながら意識は暗闇に落ちた。
あ、暑い。熱い。
「──はぁ、はっ」
身体の中から炎が沸き上がるようだ。
股間から快感が全身に広まって
脳みそが溶けていく。
「──はぁっ、はぁ」
ああ、あつい、あつい。
「……あつ…ぃ…?」
「ああ…気がついた?」
酒場で見た男が俺の上にのしかかっていた。
見事な裸体を晒し、うっすらと汗が浮いている。
デッサンの彫刻のような無駄のない引き締まった美しい身体。
薄暗い部屋の中で、男のつけた金のサークレットのみがほのかに光る。
目の前の男は芸術品のような指先で俺のチンコを扱き、……唐突に快感が弾ける。
「え?あ、あぁっ……うあ…!!」
急激に射精を促されて思考に靄がかかる。ビクビクと身体を痙攣させ、よだれが顎を伝っていった。
精液が胸や顎まで飛び散り、既に放たれていた精液と混ざり合って脇へと流れていく。
「勇者もこれで二回。ふふ、僕も勇者の中に二回出しているよ」
ありえない、嘘だろうと某然とする。
──尻が熱い。
目の前の男の凶悪なペニスがずっぷりと己のアナルに埋まっていた。腹を突き破るかのような圧迫感。
異物感と息苦しさに息を詰める。
「あ……あひぃ、あ……あぁ」
目を見開いて男を凝視する。
腰を揺すられて中を穿たれる。
そのありえない場所から沸き上がる快感に、拒否しながらも身悶える。
ぐちゅぐちゅとアナルから精液が漏れて尻を伝う。泡立った精液が赤黒い陰茎をてらてらと淫靡に光らせていた。
「うそぉ、うそだ……あっ…ああっ」
「嘘じゃないよ。その証拠に、ほら……こんなに気持ちがいい」
ずるうと抜かれて一気に突き挿れる。その感覚に鳥肌を立てながらも、口から漏れるのは明らかに快感の余韻だ。
うっとりとのし掛かる超美形は笑いながら好き勝手に暴れまわる。
限界までアナルを拡げられ、背が弓なりにしなる。受け入れた場所も股間も体中がジンジンと疼いてつらい。体の内側にマグマが燻っているみたいだ。
「凄いよ。勇者の中とっても気持ちがいい。熱くて、柔らかくて、狭いのにこんなに絡みついてくる。ん……勇者で童貞卒業できて僕も、嬉しいな」
「ちが…ぁ、やめ…っ」
俺はもう勇者じゃない、ちがう、こんな、女みたいな喘ぎ声をあげる俺は、俺じゃない。
奈落の底に落ちてしまいそうな快感に身体中が悲鳴をあげる。
「ふー……意識があるほうがきゅうって締め付けてくるね……保たなそうだから出すよ」
「やめっああああー! うぅっ…」
パンッと腰を打ち付けられて中の怒張がさらに膨れ上がった気がした。
ゴリゴリと中の気持ちいい場所を抉られ、堪らず逃げようとする俺を男はいとも簡単に引きずり戻した。
「いやだっ、やぁ! ひぃっ、いっいっ、いっっっ」
腰骨をガッチリと固定されて深く、深く、突き挿れられる。
男が腰を大きくグラインドすると、身体を強張らせて腹の奥へと射精した。
びくびくと身体の中でペニスが収縮し、腹に熱い液体を注ぐ。
「……ふふ。三回目中出ししちゃったね。ああ、泣き顔も可愛い」
きゅうと後ろを締め付け、中に出される初めての感覚に鳥肌を立てた。
目の前が真っ白くなって、
心臓が高鳴って、息が苦しい……。
手足が快感で痺れて動かない。
瞳に涙を溜めてぼおっと天井を見つめた。
「勇者? ああ……ドライオーガズムってやつかな。初めてなのに流石勇者。優秀だねぇ」
よしよしと乳首を指先で撫でられる。
「あっ、、あ、や、だ……」
慎ましい胸の飾りを弄られ、そんな場所からも快感が沸き上がる。おかしい、身体がおかしい。
「最初だからね。勇者も気持ちよくなれるようにチョット魔法をかけたんだ。お尻の穴を拡げてる時も凄く気持ちよさそうだったよ」
「うひ……ぃ!」
ぐりぐりと腰を回されて再び快感が脳天を突き抜けていく。
「あー……どうしようね。とまんない」
「もっ、ムリぃ! 抜けよ! 抜けって、ああぁぁ!」
ペニスがビクビクと中で大きくなる。
男はいやらしい微笑みを浮かべると、熱い吐息を吐いて舌舐めずりした。どうやら、この男嫌がられると一層燃えるタイプらしい。
ぐちゅぐちゅと中出しした精液を掻き分けて再び男が抽送を再開する。
「君は……この世界で、僕と唯一セックスできるんだから、慣れてくれないと……ん。大丈夫だよ。勇者の体は丈夫だからね」
「何いって、やめ! ……あっあっ~っ! やだ、やめろっ♡ うあっ」
ぐぽぐぽと後孔から卑猥な音が鳴り響く。
腰を打ち付けられて肌のぶつかり合う音が際限なく続く。
もう、限界だ。
馬鹿みたいに気持ちよすぎて何も考えられない。
お尻の中をごりごりって擦られると、ずっとイッてる気分になる。
ああ、もう、身体中が性感帯みたいだ。
「千年分の性欲を注いであげる。ちゃんとついてきてね。寝かさないから」
「……いやだっ、誰かたすけ…うあ、あ、あっあっ!!」
ぜぇはぁ……はぁはぁ……。
──なんで、こんなことになっているんだろう。
なんで、俺はこの美形な男にケツを犯されているのだろう。
なんで。なんで。なんでだ……。
信じられないことに俺の身体はこの馬鹿みたいな絶倫っぷりにシッカリついていくことが出来た。そんな勇者補正はいらなかったよ……。
三日間昼夜問わず啼かされた。
気絶してる間も恐らく犯されていた。
ハメッぱなしのヤリっぱなし。
まじでありえない。
この男を絞め殺してやりたい。
「勇者覚えてないの? 僕の童貞卒業に協力してくれるって言ったでしょ」
だからって、なんでこうなるんだ……。
腹上死するっつの。
死因がテクのブレイクとか洒落にならん。
男は困ったように笑うと、空中に魔法を展開する。四角いウィンドウに酔った俺が映し出された。
『……ってワケなんだけど、勇者。僕の童貞貰ってくれる?』
『おー! まかせとけ! なんでももらってやるぜー! ぬははー』
『気持ちよくしてあげるからね』
『どーてーがなにいってんだー、まあ、お前さんぐらいきれーなら……アッー!』
めっちゃ酔ってたとは言え……俺ってばなにしちゃってんの……。
「思い出した?」
「意味分からねえ……てか、ほんと、もう抜け……」
そう、まだドデカイもんが挿いったまんまで俺を苦しめていた……最悪だ。
本当に、こいつを殺すか、俺が死ぬかどっちか選んでほしい。
「ええ~。やっとココが形を覚えてきたのに」
ウットリと男は妖艶に微笑む。うつ伏せの俺に体重をかけると、そろりと後孔のフチをなぞられた。感じて身体が跳ねてしまう。
「しょうがないから今日は抜いてあげる。まだ明日も明後日も明明後日もあるからね」
「あっ、ふ……くぅん…♡♡」
ずるりと巨大な陰茎が抜かれて身体が痙攣する。
すっかりと馴染んでいた巨大な肉塊がなくなり、寂しい。物足りない。と思ってしまうのは気の所為だと思いたい。死ねばいいのに。
ドロドロと身体の中から大量の精液が溢れて垂れていく。力をいれようにも後ろの孔はバカみたいにぽっかりと開いたままだ。
って、なんで今後もやろうとしてんだコイツ……。
「っふー……おい…もう童貞卒業したんだから…俺が協力する必要なんて、ないだろ……くそ、ずこばこやりやがって…うー」
「言ったでしょう。この世界で唯一セックスできるのはキミだけだって。その逆も然りだよ」
「どーゆうこった……」
「意識飛んでたみたいだからもう一回説明するね。
君は異世界から来たから知らなかっただろうけど、この世界は個人の魔力の大きさが同じじゃないと子どもどころか身体を繋げる事さえ出来ないんだ」
……なんつー世界だ。
ん?無理やり抱いたらどうなるんだ?
「魔力の大きさが合わないと水瓶の水を溢れさせるように破裂するよ。受け止めきれずにね」
「死ぬのか!?」
「そう。だから、死ぬほど拒否されたでしょう? 勇者みたいな巨大な魔力に当てられたら溢れるか、干上がって死んでしまうもの」
うあー……と、今まで断られた女の子達の顔が浮かぶ。俺、すげぇ失礼な事してたんだな。
好きだ!死ね!って言ってるようなもんか…。いや、プラトニックだって…。
ううう(涙)
「って待てよ! じゃあなんでお前とセックスできたんだ!?」
「同じぐらいの魔力保持者ってことだよ」
「お前と同じ? ………まて。
凄く嫌な予感がする。まさかと思うけど……」
俺と同じくらいの馬鹿でかい魔力。
神のような美貌の傍若無人な悪の権化。
世界に俺とお前の二人だけ。
「…………魔王だったりする?」
「せいかーい!」
魔法で花を散らしながら無邪気に喜ぶ残念な超美形。
ふはあああ……脱力して眉間にシワを寄せて目を瞑る。ああ、頭が痛い。ついでに言いたくない場所も腰も色々痛い。
このまま頭痛で永眠したいぐらいだ。
ふかふかのマクラにぐっと顔を押し付けた。
……ありえねえ。
魔王を殺ってこいって言われてきたのに魔王にヤられちゃったよ。
何してんの魔王。つか魔王なのに軽いっつーか、フレンドリーすぎでしょ。
「いやー、千年以上誰も現れないからね。一生童貞かなって覚悟して流石の僕も荒れてたんだけど、勇者が召喚されたって聞いて飛び上がったんだ。最高に嬉しかったよ。これで思う存分エッチできる!ってね。
たまには人間も役に立つじゃないかと一秒だけ見直したよ。悪は急げ、そう思って人間界に迎えに行こうとしたら魔力封印されて見つからないし、風の噂じゃ元凶の人間に虐げられてるって言うし、怒って僕が城に行ったら勝手にどこかに連れ出された後だし、しかも僕への生贄にされそうになってるし、魔獣に襲撃されて馬車は死体の海、隷属の首輪なんてもんが落ちてるから力も使えずに何処かで野垂れ死んだんじゃないかと……イラッとしてね。うっかり人間を滅ぼしてしまう所だったんだ」
ズゴゴゴゴ……
と凄まじい漆黒のプレッシャーを撒き散らしながら魔王が嗤う。大気がビリビリと張り詰め息が詰まる。
お前……本当に魔王だったんだな。
後ずさって怯えていると、魔王はハッと我に返って殺気を引っ込めた。
強引に引きずり戻され、子供のように頭を撫でられる。やめろ、お前のほうがでかいからって子ども扱いすんな。死ね。
「ごめんごめん。でね、勇者は自分の力をなるべく隠していたでしょう? 何処にいるか分からないし、助けにも迎えにも行けなかったんだ。でもある日、町の噂で勇者らしき男が女の子達に振られてるって聞いた時、凄く嬉しかった。ちゃんと生きてたって。それで行きつけの酒場があるって聞いたから張ってたんだよ」
ええ、その情報なの……。
振られたから伝わったんか。
ていうか皆さん俺が勇者だって知ってたのね……。
「わかった」
「本当?」
「お前が俺のストーカーだという事がよくわかった。しかも興味があるのは俺の尻穴だけじゃねーか。もうお前とセックスするつもりはない!! つか、お前とやっても俺はまだ童貞だし!」
「えーやだ~」
「いい歳こいた大人が拗ねんな」
魔王だから恐らくいい歳どころの話ではないが、突っ込まないでおく。
「俺は嫁さんが欲しいの! 可愛くて癒してくれる嫁さん貰うんだからな!」
「でも、もう勇者は僕以外で満足できないでしょ」
「なっ!?」
魔王はシーツを剥いで勇者のお尻に触れる。緩みきった後孔につぷつぷと指を出し入れされて、酷使された体が跳ねた。
「こんな感じやすい身体じゃもう誰かを抱くなんてできないよ。僕が全力で阻止するしね」
「ざけんなっ……あっ、馬鹿やろ、うう」
「身体だけでもよかったけど……ねえ勇者、僕がお嫁さんになるよ。身体から始まる夫婦関係ってのもいいんじゃないかな?」
「んなわけあるかあ!!」
そんなこんなで押し倒し……いや押し掛け女房をゲットした勇者さん。
世界一強くて超カッコ良くて超絶倫な嫁さんにベッドに引きずりこまれ、毎日幸せな悲鳴をあげています。
魔王様と勇者様がえっちしたことにより大気中の魔力は安定して民はみ~んな大喜び。作物も豊作で沢山の祝福の言葉や品が届きました。
うっかり滅ぼしかけてしまった人間の国も、ちゃっかり支配下に置いたのを旦那様は知りません。
でも人間の国の国民達も勇者夫婦の恩恵を授かり暮らしは右肩上がりで豊かに!次第に魔族と仲良くなっていきます。
魔族と人間の架け橋になった最強の夫婦として永遠に語り継がれるのでした。
「魔王何やってんだ?」
「読者への補足説明? ……あ、ムラムラしてきちゃった! 挿れさせてー」
「誰が許可するか! やめろ! 服を破くな馬鹿魔王!」
ギャー……
今日も魔王城は平和なのでした。
現在のお二人の心情
■勇者 旦那さん
滅びろ強姦クソ野郎!!
絶対逃げてやる!ばーか!
常に下半身にのびる手をはたき落としながらどうやって魔王から逃げるか奮闘中。たぶん戦っても勝利の可能性は1%もないことを感じ取っている。
どうして俺ばっかこんな目にとコッソリ泣いた。
■魔王 嫁さん
初めてのセックスにハマり中。
勇者とずぅーっとエッチしたいなあ。
子猫のような抵抗を可愛いと思いつつ、気づけば押し倒している毎日。
自分でもよく飽きないと関心している。
異形の男達が陽気に歌い、赤ら顔で酒をかっ込み、猥談に花を咲かせる賑やかな酒場の一角。
見るからに暗い男が居た。
それはそれは、そこだけが雨にでも降られた後のように暗くじめっとしている。陽気な男たちも思わず目をそらすほどに。
その蛞蝓のごとく湿度が高い人間の男は1人で愚痴を吐きながら酒を呷っていた。誰がどう見ても自棄酒だろう。
歳は二十台後半だろうか。周囲の男達に比べて随分背も低く細い。この世界の基準で言うならば女性よりもやや華奢だろう。
男は魂も抜け出してしまいそうな重い重いため息を吐く。
安いアルコールを摂取しすぎたせいか、男の呂律は怪しく目は据わっていた。真っ赤な顔を打ち付けるように机につっ伏す。
男の零した怨嗟の声は誰の耳にも届かない。持っていたジョッキの中へと虚しく消えてゆくのだった。
自己紹介をしよう。
俺は勇者。地球、日本、埼玉県から強制的に呼び出された召喚勇者、だった。
何を言っているのかと、そんな冷たい視線で見ないでほしい。
俺も最初は信じられなかったのだから。
いや、とりあえずだ。そう、あれは大学の夏休みに入ったばかりの夜だった。経済学部の仲間達と飲み明かしていた時だ。俺はビールをたらふく飲み、上機嫌でトイレに入り……
……気づけば冷たい床に転がされていた。
幾人もの見下したような視線が俺に突き刺さる。
えー?マジでこれ勇者?うっそー!みたいな残念なものを見る目付き。空気が読めない俺だってわかるほどそのオッサン達は落胆していた。いや俺もガッカリだよ!
勇者が許されるのはイケメンチート高校生までだよねー!
悲しいかな俺は今時の標準的日本人体型なのだ。インドア趣味のひょろ男で身長も175cm(盛)ぐらい……な上に色白。染めた事もない真っ黒な髪。就職活動中だったから清潔感はあるけど全体的に面白みがないリクルートスーツ。
顔面偏差値といえば……普通?友人には残念なイケメン?と言われる微妙なぐあいらしい。整ってるけど地味ってどんなんだよ!と突っ込みたい。今では叶わぬ思いだが。
まぁ要するにパッとせず、頼りないのだ。俺は。
俺を取り囲んでいたオッサン達がこれ見よがしに溜息をつく。
はぁ……俺だってこんな所来たくなかったよ……。ダメなら送り返してくれりゃあいいじゃん。
アルコールを摂取した状態ではうまい対応もできず、騎士のような男たちに物のように引きずられていった。抵抗する暇もなく偉そうなおっさんに鋼鉄の首輪を嵌められた。
……首輪だ。首輪。
人間扱いですら、ない。
死なねば取れんよと笑われた。
マジで意味が分からない。
「魔王を殺せ。卑しい魔族どもを殲滅しろ」
会話らしい会話もなくそう命令された。
最初は意味が分からなかった。魔族ってなんだよ。魔王?ゲームの世界なのか?
説明を求めれば杖で殴られた。まったくもって意味が分からない。理不尽にもほどがある。
何度もしつこく食い下がれば、魔族とやらが人間の敵で、魔王に対抗しうるのが勇者のはずだった……と苛立たしげに別のおっさんは言っていた。過去形か。
どんだけテンプレファンタジーなんだよ。本当にどこここー!っていうか、俺!学生!いっぱん!じん!!!
しかも拉致してきたのはそっちなのに。何この扱い。
こちとら平和ボケしてる日本人やぞ。
村人Aに無茶言うなや。
俺はまだ楽観視していたんだろうな。
その日から地獄の特訓が開始された。
握ったことのない長剣を持たされ、兵士にボコボコにされる日々。手も足も豆ができ、潰れての繰り返し。皮がベロベロ。
身体中、切り傷や打撲の痣だらけ。
魔道書を持たされるもそんなもん使えるわけもなく、城中の人間に期待はずれ、能無しと馬鹿にされ、殴られ、呆れられ、最後には無視された。まるで汚物を触れるかのように、全員が手袋をしていた。あれが一番傷ついたかもしれない。素手で触れないように厳命とか、どんだけ病原菌扱いなんだよ。
どんだけ厳しく修行を強いられようと、一般人な俺に異世界チートなどあるはずもなく、なかなか成果を出さない俺に業を煮やしたおっさんどもは最悪な保身へと走った。
俺を魔王への生贄にしやがった。
既に勇者が召還されたと諸外国には吹聴してやがった。
俺をネタに武器や補給物資、支援金までふんだくってやがった。完全なる勇者募金詐欺とういやつだ。性根が腐ってやがる。
この話をなぜ知っているかというと、俺を棒で殴る時に馬鹿なおっさんどもが怒鳴り散らしていたからだ。国家機密などミミズのクソほどにもありはしない。
それからの動きは……とても迅速だったと思う。
ゴミのように拘束された俺はゴトゴトと激しく揺れる馬車で移送され、同行する兵士達に八つ当たりのように食事を抜かれた。死にゆく勇者(笑)には必要ないだろう、と。
勝手に拉致して勝手に期待して。
役立たずだと分かればゴミのようにポイ。
俺からすれば滅ぼされるのは性根の腐ったお前らであるべきだと、身を焦がすような怒りで目の前が真っ暗になった。
絶対に、今死んだらこいつら祟る。
全力で子孫代々まで祟ってやるうううう!
空腹を通り越し、頭痛と吐き気が常にまとわりついていた。このままだと魔王城に向かう途中で死ぬんじゃないか?
まあ、もうどうでもいい。そう思っていた時、象ほどもある巨大な怪鳥の襲撃を受け……俺は呆気なく死んだ。
ゲームオーバーだ。本当に呆気ない。
拘束されていたせいもあるが元より抵抗する気力などなかった。
この世界に心底絶望していて、今思えば俺は楽になりたかったのだと思う。死という許しが欲しかった。仕方がないと思うんだよね。この状況じゃ。
迫り来る巨大な嘴を眺める。
爪で心臓を貫かれ、首を吹っ飛ばされて、
俺の身体を客観的にみると言うぶっ飛んだ経験をして意識は闇に沈んだ。痛いと言うより、熱い、かな。ほんと一瞬で殺してくれて感謝だわ。
ああ、やっと解放されるのだと視界を赤く染めながら安堵した。
兵士であったものがそこかしこに散乱している。もはや原型すらとどめていない肉片の山。
噎せ返るような血と排泄物の臭いの中で俺は目を覚ました。全身に血や土がどす黒く変色してこびり付いている。
震える手で己の首筋に触れた。切り落とされたはずの首が繋がっている。腕も、胸も、足も傷ひとつ無い。
俺は錯乱し、悲鳴をあげて胃液を吐き続けた。空っぽの胃で良かったと思ったのはこの時だけだ。
肉片と馬車の残骸しかない周りを見渡して呆然とし、吐いた胃液のそばに見慣れた金属が落ちているのを発見する。
死なねば取れぬと言われた首輪が転がっていた。
1度死んだから外れた?
確実に死んだ。それは確かだ……けれど外傷はない。
ゾンビか?それとも勇者補正と言うやつだろうか。
いっそ、死んでしまいたかった。
どうして。なぜだ。
死にたがりの身体はそれでも生きたいようでぐうと胃の音が鳴る。乾いた唇から笑いが漏れた。
こいつらは死に、俺は生き残ったんだ。
よたよたと立ち上がると、追いはぎのように死体から装備を剥ぎ取り使えそうなものだけ取ってその場を離れた。
そして臨死体験をしたせいか勇者としての能力が徐々に目覚めていった。
身体能力が驚異的に上昇し魔法も使えるようになった。疲れを感じない体。武器が羽のように感じる。さらには想像するだけで魔法が使える。道具や魔法陣なども必要ない。まさしくチートだった。
喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか判断がつかない。あのクソオヤジどもに利用されなかっただけが唯一の救いだった。
人間不信に陥った俺は魔族の町へと紛れ込むことにした。
最初はビクビクと生活をしていたが、幸い彼らの見た目は多種多様で紛れ込むのは容易かった。まあ人間だとばれても文句を言われることはなかったのだが。
むしろ魔族の町は非常に住み心地が良かった。過度に干渉せず、美味しい食べ物は溢れ、差別もない。貧富の差はあるものの彼らは生きる喜びを日々分かち合っていた。
訳アリの俺を受けいれ、仕事を斡旋してくれた。適度な距離を保ちながらも気にかけてくれた。そんな彼らの優しさに俺は次第に緊張をといていった。
見た目は違うが彼らは忌むべき存在ではない。そんな彼らに刃を向けるような事にならず心の底から安堵した。
人間達は勘違いしているが、人間を襲っているのは知能のない魔獣と呼ばれる生物らしい。
魔族とはまったく異なる生態で彼らも迷惑しているのだと言う。混同して攻撃してくる人間にもだ。あの視野の狭さだ。今後も聞き入れることは難しいだろう。
俺は目覚めた能力で生きていくため、そして魔族達に少しでも恩返しをするため魔獣を狩る冒険者となった。
──魔獣を狩り生計を立て、数年が過ぎた頃だった。
当たり前だが俺は『元勇者』である事を隠して目立たぬように生活していた。魔物を狩りに行く以外は隠遁生活みたいなもんだ。勇者の力が漏れないように結界というか、戒めみたいなのも常に実行している。今では呼吸より楽に存在を隠せているはずだ。
目立たないように依頼をこなし続け、ギルドランクが中堅どころに上がり収入も安定し古く小さいが家も購入した。その頃には地球に帰還する事は諦めていたと思う。
しかし家を得ようと収入が安定しようと、心の傷は癒えない。
召喚されてゴミ屑のように虐げられた事はトラウマとなって心に残り続けた。忘れることはできない。他人のスペースに踏み込むのが怖かった。
けれど、やはり人肌寂しい……そういった思いもあったのだと思う。
信頼できる仲間がほしかった。
徐々にだが人脈を広め、頼れる知り合いを作った。トラウマも完全に克服することはできないが、今の生活に満足してきた頃だった。
唐突に。天啓かのごとく"嫁さんが欲しい"と言う願いが頭の中を駆けていった。
彼女。一緒に過ごせる家族が欲しい。
淋しかったのだ。
裏切ることのない、俺を愛してくれる家族が切実に欲しかった。
幸い魔族の皆さんは人型の種族が多い。見た目もいい。
子供は出来ないかもしれないが、俺を受け入れてくれる女性がみつかるかもしれない。
恥ずかしながら地球では年齢=彼女居ないだった。つまり俺は童貞だ。……もう俺も二十代後半だ。
早く卒業しなければ、違う意味で魔法使いになってしまう。
一念発起した俺は嫁さん探し……婚活に勤しんだ。
────が、惨敗。
大惨敗すぎる結果だった。
仲のいいギルドの受付ちゃんも、パン屋の看板娘ちゃんも、巨乳の剣士さんも……全員だ。
それも普通の断り方じゃなく、怯えたように拒否されれば泣く泣く引くしかない。
「そんなつもりじゃなかったの……」
「ごめんなさいぃぃ! ごめんさないぃ!」
「……無理だな」
と、青ざめて全力拒否。
魔族の好みから言って日本人、いや人間は論外なのでしょうかね……。
そして連敗に連敗を重ね、ヤケクソになった俺は絶対に行くまいと決めていた花街へと向かった。性を搾り取る魔族、サキュバスさんにお相手してもらうのだ。
せめて童貞だけでも卒業したい気分だった。
興奮と期待で着いた先で、
サキュバス達全員土下座。
店主の中級魔族まで土下座。
「お客様には申し訳ありませんが、うちのは勘弁してやってください。家族同然の者達なのです」
その言葉を聞いてサキュバスの姉さん達号泣。悪代官のような扱いをされて俺も号泣。呆然とその場を後にし、
……今に至る。
「くそぉどーてい馬鹿にしやがって……どうていの何が悪い~うぐぐ」
魔族の皆様は童貞を馬鹿にしている訳ではないのだが、出来上がった脳みそでは見当違いの方向に転がるだけだった。
自分で言ってて情けなさに涙が滲む。
俺は一生童貞独り身で暮らすんだ。べつに、プラトニックだっていい、傍にいてくれればよかったのに……それすら俺にはないのか。
寂しく老後を過ごして誰にも看取られずに朽ちていくんだ……ぐすっ。ううう。
「お兄さん、そんな飲み方しちゃダメだよ」
「うぇ……?」
突然、ゆったりとした男の声が聞こえた。ぞわりと全身に鳥肌が立つような美声だった。
イケボ男は目の前の席に断りもなく座る。長い脚が窮屈そうだ。いや、てか長すぎるだろその脚。
目に飛び込んできたのは艶やかな黒髪長髪の男だった。頭にシンプルだが品の良い金のサークレットを嵌めている。
そして片手に酒瓶を持参していた。
伏せられた切れ長の目は常に愁いを帯びているようで、この上なく色っぽい。
黒く長い睫毛、紫水晶の瞳、高く通った鼻筋、病的に白い肌、薄い唇。美しいが女性らしい美貌ではなく、キリリとした大人の男性のものだ。
肩幅もガッチリしているが武器らしきものは携帯していない。
触れれば毒が滴ってくるような、危険な男の色香が漂っていた。
一瞬惚け、驚いたように目の前の男を見つめる。くだを巻く冴えない男に何の用があるというのだろう。
「お酒も身体も可哀想でしょ? それに固形物も摂らないと胃を壊すよ」
なんとも聞きごこちのいいテノールの声だろう。久方ぶりに優しく語り掛けられウッカリと泣きそうになる。
見計らったかのようにウエイトレスが料理を運んでくる。心配しそうなほど少女の顔が真っ赤だ。そうだよな、こんな美男子に料理運ぶとか緊張するよな羨ましい。イケメンなんてみんな死ねばいいのに。
目の前に次々と美味そうな料理を並べられ……ごくりと喉がなる。
出来たての料理が湯気を立て、酒で膨れた胃を刺激した。
「どうぞ? 僕の奢り」
奢りならば……と、食欲に負けておずおずと料理に手を伸ばす。
次第に食べるペースが早くなる。ガツガツ食べると温かさと旨さに再び目頭がじんわりと熱くなった。なんて旨いんだろう。傷心にしみる、優しさと酒が、しみる……ッ!
目の前の男を気まずくチラ見すると、彼は持参した酒をグラスに注いでいた。
「何で自棄酒を煽ってたのかな。彼女に振られちゃった?」
……それ以前の問題です。とは言わない。
もぐもぐと食べながら顔を振って否定する。くそう。自棄酒、自棄食いだ。
「ごめんね。泣きながらお酒飲んでるから珍しいなあと思って。童貞で悪いか~って愚痴が聞こえて思わず声かけちゃった」
そうだ。童貞だよ。エターナル童貞で悪いかっつの。イケメンには分からない苦しみだ。
ばーか!ばーか!
殺意を込めて睨むと男はちがうちがうと眉を落としてグラスに口をつける。
「お仲間だからちょっと傷を分かち合いたいなって……傷の舐め合い?」
「は?」
「僕も童貞ってことだよ」
ブハッ……その瞬間に食べ物を噴き出す。
うわキタネェ、じゃなくて、
嘘だー!!!!
絶対に嘘だ!!!
地球が爆発するほど嘘だ!!!
「本当だって。一度もセックスしたことがない。みんな失神しちゃったりで最後までできないんだよね」
超イケメンは悲しそうな表情を浮かべると新たな酒をついでいる。あんたも呑むペース早いじゃないか。
その神々しい顔のせいか、テクニックなのか、フェロモンのせいなのか、デカすぎて入らないとか、まあそんなん知らないがイケメン様にも悩みがあるんだな……俺にとっては贅沢な悩みだけどよ。
「……美形も大変なんだな」
顔面格差が酷くとも少しは仲間意識を持ってしまう。これが童貞パワーだ。
「この前もいざ、ってなったら泣いて嫌がられちゃって……」
…………
「ううっ、わかる! わかるぞぉ心の友よぉ~そうなんだよぉ……ぐすぐす」
酒瓶をテーブルに乗らないほど空けた頃には、すっかり俺たちは意気投合していた。
しかも彼は驚くほど共感できるエピソード満載だった。
涙なくして語れない。童貞在る所に涙と笑いあり!
男が酒を注いでくれ、もう何杯目か分からない酒を呷る。カッと喉を熱いものが通り過ぎていく。これは高い酒だ。安い酒ばかり呑んでいた俺が言うのだからまちがいなひぃ。
うおお、頭がくらくらするぅ。
「けど僕は諦めてない。良かったら協力してくれないかなあ」
「おう~モチロンだぁ! 俺にできることならな!」
「ふふ、ありがとう勇者」
「うん?」
グラリと視界が揺れてジョッキが床に落ちる。ガチャとガラスが砕ける音を聞きながら意識は暗闇に落ちた。
あ、暑い。熱い。
「──はぁ、はっ」
身体の中から炎が沸き上がるようだ。
股間から快感が全身に広まって
脳みそが溶けていく。
「──はぁっ、はぁ」
ああ、あつい、あつい。
「……あつ…ぃ…?」
「ああ…気がついた?」
酒場で見た男が俺の上にのしかかっていた。
見事な裸体を晒し、うっすらと汗が浮いている。
デッサンの彫刻のような無駄のない引き締まった美しい身体。
薄暗い部屋の中で、男のつけた金のサークレットのみがほのかに光る。
目の前の男は芸術品のような指先で俺のチンコを扱き、……唐突に快感が弾ける。
「え?あ、あぁっ……うあ…!!」
急激に射精を促されて思考に靄がかかる。ビクビクと身体を痙攣させ、よだれが顎を伝っていった。
精液が胸や顎まで飛び散り、既に放たれていた精液と混ざり合って脇へと流れていく。
「勇者もこれで二回。ふふ、僕も勇者の中に二回出しているよ」
ありえない、嘘だろうと某然とする。
──尻が熱い。
目の前の男の凶悪なペニスがずっぷりと己のアナルに埋まっていた。腹を突き破るかのような圧迫感。
異物感と息苦しさに息を詰める。
「あ……あひぃ、あ……あぁ」
目を見開いて男を凝視する。
腰を揺すられて中を穿たれる。
そのありえない場所から沸き上がる快感に、拒否しながらも身悶える。
ぐちゅぐちゅとアナルから精液が漏れて尻を伝う。泡立った精液が赤黒い陰茎をてらてらと淫靡に光らせていた。
「うそぉ、うそだ……あっ…ああっ」
「嘘じゃないよ。その証拠に、ほら……こんなに気持ちがいい」
ずるうと抜かれて一気に突き挿れる。その感覚に鳥肌を立てながらも、口から漏れるのは明らかに快感の余韻だ。
うっとりとのし掛かる超美形は笑いながら好き勝手に暴れまわる。
限界までアナルを拡げられ、背が弓なりにしなる。受け入れた場所も股間も体中がジンジンと疼いてつらい。体の内側にマグマが燻っているみたいだ。
「凄いよ。勇者の中とっても気持ちがいい。熱くて、柔らかくて、狭いのにこんなに絡みついてくる。ん……勇者で童貞卒業できて僕も、嬉しいな」
「ちが…ぁ、やめ…っ」
俺はもう勇者じゃない、ちがう、こんな、女みたいな喘ぎ声をあげる俺は、俺じゃない。
奈落の底に落ちてしまいそうな快感に身体中が悲鳴をあげる。
「ふー……意識があるほうがきゅうって締め付けてくるね……保たなそうだから出すよ」
「やめっああああー! うぅっ…」
パンッと腰を打ち付けられて中の怒張がさらに膨れ上がった気がした。
ゴリゴリと中の気持ちいい場所を抉られ、堪らず逃げようとする俺を男はいとも簡単に引きずり戻した。
「いやだっ、やぁ! ひぃっ、いっいっ、いっっっ」
腰骨をガッチリと固定されて深く、深く、突き挿れられる。
男が腰を大きくグラインドすると、身体を強張らせて腹の奥へと射精した。
びくびくと身体の中でペニスが収縮し、腹に熱い液体を注ぐ。
「……ふふ。三回目中出ししちゃったね。ああ、泣き顔も可愛い」
きゅうと後ろを締め付け、中に出される初めての感覚に鳥肌を立てた。
目の前が真っ白くなって、
心臓が高鳴って、息が苦しい……。
手足が快感で痺れて動かない。
瞳に涙を溜めてぼおっと天井を見つめた。
「勇者? ああ……ドライオーガズムってやつかな。初めてなのに流石勇者。優秀だねぇ」
よしよしと乳首を指先で撫でられる。
「あっ、、あ、や、だ……」
慎ましい胸の飾りを弄られ、そんな場所からも快感が沸き上がる。おかしい、身体がおかしい。
「最初だからね。勇者も気持ちよくなれるようにチョット魔法をかけたんだ。お尻の穴を拡げてる時も凄く気持ちよさそうだったよ」
「うひ……ぃ!」
ぐりぐりと腰を回されて再び快感が脳天を突き抜けていく。
「あー……どうしようね。とまんない」
「もっ、ムリぃ! 抜けよ! 抜けって、ああぁぁ!」
ペニスがビクビクと中で大きくなる。
男はいやらしい微笑みを浮かべると、熱い吐息を吐いて舌舐めずりした。どうやら、この男嫌がられると一層燃えるタイプらしい。
ぐちゅぐちゅと中出しした精液を掻き分けて再び男が抽送を再開する。
「君は……この世界で、僕と唯一セックスできるんだから、慣れてくれないと……ん。大丈夫だよ。勇者の体は丈夫だからね」
「何いって、やめ! ……あっあっ~っ! やだ、やめろっ♡ うあっ」
ぐぽぐぽと後孔から卑猥な音が鳴り響く。
腰を打ち付けられて肌のぶつかり合う音が際限なく続く。
もう、限界だ。
馬鹿みたいに気持ちよすぎて何も考えられない。
お尻の中をごりごりって擦られると、ずっとイッてる気分になる。
ああ、もう、身体中が性感帯みたいだ。
「千年分の性欲を注いであげる。ちゃんとついてきてね。寝かさないから」
「……いやだっ、誰かたすけ…うあ、あ、あっあっ!!」
ぜぇはぁ……はぁはぁ……。
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なんで。なんで。なんでだ……。
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「っふー……おい…もう童貞卒業したんだから…俺が協力する必要なんて、ないだろ……くそ、ずこばこやりやがって…うー」
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「どーゆうこった……」
「意識飛んでたみたいだからもう一回説明するね。
君は異世界から来たから知らなかっただろうけど、この世界は個人の魔力の大きさが同じじゃないと子どもどころか身体を繋げる事さえ出来ないんだ」
……なんつー世界だ。
ん?無理やり抱いたらどうなるんだ?
「魔力の大きさが合わないと水瓶の水を溢れさせるように破裂するよ。受け止めきれずにね」
「死ぬのか!?」
「そう。だから、死ぬほど拒否されたでしょう? 勇者みたいな巨大な魔力に当てられたら溢れるか、干上がって死んでしまうもの」
うあー……と、今まで断られた女の子達の顔が浮かぶ。俺、すげぇ失礼な事してたんだな。
好きだ!死ね!って言ってるようなもんか…。いや、プラトニックだって…。
ううう(涙)
「って待てよ! じゃあなんでお前とセックスできたんだ!?」
「同じぐらいの魔力保持者ってことだよ」
「お前と同じ? ………まて。
凄く嫌な予感がする。まさかと思うけど……」
俺と同じくらいの馬鹿でかい魔力。
神のような美貌の傍若無人な悪の権化。
世界に俺とお前の二人だけ。
「…………魔王だったりする?」
「せいかーい!」
魔法で花を散らしながら無邪気に喜ぶ残念な超美形。
ふはあああ……脱力して眉間にシワを寄せて目を瞑る。ああ、頭が痛い。ついでに言いたくない場所も腰も色々痛い。
このまま頭痛で永眠したいぐらいだ。
ふかふかのマクラにぐっと顔を押し付けた。
……ありえねえ。
魔王を殺ってこいって言われてきたのに魔王にヤられちゃったよ。
何してんの魔王。つか魔王なのに軽いっつーか、フレンドリーすぎでしょ。
「いやー、千年以上誰も現れないからね。一生童貞かなって覚悟して流石の僕も荒れてたんだけど、勇者が召喚されたって聞いて飛び上がったんだ。最高に嬉しかったよ。これで思う存分エッチできる!ってね。
たまには人間も役に立つじゃないかと一秒だけ見直したよ。悪は急げ、そう思って人間界に迎えに行こうとしたら魔力封印されて見つからないし、風の噂じゃ元凶の人間に虐げられてるって言うし、怒って僕が城に行ったら勝手にどこかに連れ出された後だし、しかも僕への生贄にされそうになってるし、魔獣に襲撃されて馬車は死体の海、隷属の首輪なんてもんが落ちてるから力も使えずに何処かで野垂れ死んだんじゃないかと……イラッとしてね。うっかり人間を滅ぼしてしまう所だったんだ」
ズゴゴゴゴ……
と凄まじい漆黒のプレッシャーを撒き散らしながら魔王が嗤う。大気がビリビリと張り詰め息が詰まる。
お前……本当に魔王だったんだな。
後ずさって怯えていると、魔王はハッと我に返って殺気を引っ込めた。
強引に引きずり戻され、子供のように頭を撫でられる。やめろ、お前のほうがでかいからって子ども扱いすんな。死ね。
「ごめんごめん。でね、勇者は自分の力をなるべく隠していたでしょう? 何処にいるか分からないし、助けにも迎えにも行けなかったんだ。でもある日、町の噂で勇者らしき男が女の子達に振られてるって聞いた時、凄く嬉しかった。ちゃんと生きてたって。それで行きつけの酒場があるって聞いたから張ってたんだよ」
ええ、その情報なの……。
振られたから伝わったんか。
ていうか皆さん俺が勇者だって知ってたのね……。
「わかった」
「本当?」
「お前が俺のストーカーだという事がよくわかった。しかも興味があるのは俺の尻穴だけじゃねーか。もうお前とセックスするつもりはない!! つか、お前とやっても俺はまだ童貞だし!」
「えーやだ~」
「いい歳こいた大人が拗ねんな」
魔王だから恐らくいい歳どころの話ではないが、突っ込まないでおく。
「俺は嫁さんが欲しいの! 可愛くて癒してくれる嫁さん貰うんだからな!」
「でも、もう勇者は僕以外で満足できないでしょ」
「なっ!?」
魔王はシーツを剥いで勇者のお尻に触れる。緩みきった後孔につぷつぷと指を出し入れされて、酷使された体が跳ねた。
「こんな感じやすい身体じゃもう誰かを抱くなんてできないよ。僕が全力で阻止するしね」
「ざけんなっ……あっ、馬鹿やろ、うう」
「身体だけでもよかったけど……ねえ勇者、僕がお嫁さんになるよ。身体から始まる夫婦関係ってのもいいんじゃないかな?」
「んなわけあるかあ!!」
そんなこんなで押し倒し……いや押し掛け女房をゲットした勇者さん。
世界一強くて超カッコ良くて超絶倫な嫁さんにベッドに引きずりこまれ、毎日幸せな悲鳴をあげています。
魔王様と勇者様がえっちしたことにより大気中の魔力は安定して民はみ~んな大喜び。作物も豊作で沢山の祝福の言葉や品が届きました。
うっかり滅ぼしかけてしまった人間の国も、ちゃっかり支配下に置いたのを旦那様は知りません。
でも人間の国の国民達も勇者夫婦の恩恵を授かり暮らしは右肩上がりで豊かに!次第に魔族と仲良くなっていきます。
魔族と人間の架け橋になった最強の夫婦として永遠に語り継がれるのでした。
「魔王何やってんだ?」
「読者への補足説明? ……あ、ムラムラしてきちゃった! 挿れさせてー」
「誰が許可するか! やめろ! 服を破くな馬鹿魔王!」
ギャー……
今日も魔王城は平和なのでした。
現在のお二人の心情
■勇者 旦那さん
滅びろ強姦クソ野郎!!
絶対逃げてやる!ばーか!
常に下半身にのびる手をはたき落としながらどうやって魔王から逃げるか奮闘中。たぶん戦っても勝利の可能性は1%もないことを感じ取っている。
どうして俺ばっかこんな目にとコッソリ泣いた。
■魔王 嫁さん
初めてのセックスにハマり中。
勇者とずぅーっとエッチしたいなあ。
子猫のような抵抗を可愛いと思いつつ、気づけば押し倒している毎日。
自分でもよく飽きないと関心している。
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自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
公開凌辱される話まとめ
たみしげ
BL
BLすけべ小説です。
・性奴隷を飼う街
元敵兵を性奴隷として飼っている街の話です。
・玩具でアナルを焦らされる話
猫じゃらし型の玩具を開発済アナルに挿れられて啼かされる話です。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました
くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。
特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。
毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。
そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。
無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡
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