会社を出ると猫がいる～13日間の記録～

猫

猫は見ていた。ガラス越しに見えるとある女性の姿を。いつも真面目な表情でパソコンに向かい、日が暮れてくると洋服を一枚羽織り、手に荷物を持ってその部屋を出ていく。次に見えるのは地上の入り口から。ほかの多くの人と同じ道を歩き去っていく。たくさんの人がいて、人はとても小さくて誰が誰かはわからなくなるけど、彼女だけは見失うことはなかった。
いつも、目が覚めるともう彼女はそこにいるものだから、一体いつ来ているのだろうと早起きしたことがある。だが、その時も彼女はいつも通りそこにいた。
時折彼女のいる部屋にくる人間たちが一斉に姿を見せない日がある。そんな日は彼女に会えないことにがっかりしてもう一度眠るのだ。