3 / 4
始まり、そして再会のとき-3
しおりを挟む
翌日、予告通りに海斗はサークルに来た。というより、待ち構えていた。
六限目までの授業を終えて体育館に行くと、既に海斗はジャージに着替えていて、ラケットの上でピンポン玉を弾ませている様子などは、すっかり卓球部員そのものである。まだ余裕とは行かないようで、集中しているのを横目に僕もジャージに着替える。
そーっと後ろから近づいて、騒がしい体育館でも聞こえるよう耳元で話しかける。
「慣れたみたいだな」
目の前の体がビクッとはねて、その拍子にピンポン玉が転がり落ちる。すかさず、ラケットを使って自分側に跳ねさせてキャッチした。
「祐樹先輩! 驚かせないでくださいよ」
真剣な表情から一転して、むっとした様子で抗議してくるがそれもからかい甲斐があって面白い。
「集中してたから、邪魔しちゃ悪いかなって」
「こっちのほうが心臓に悪いです!」
「そう? じゃあ今度は別のやり方にするよ」
「驚かせるのはだめですからね」
「わかったわかった。ほら、落ち着いて」
怒っているようだが、全く怖くはない。宥めるために頬をつつくと、また顔を赤くする。
「ちょっと!」
「ごめんごめん」
二日目で僕たち上級生も、体験しに来た新入生もなんとなく流れはわかっている。笛の集合の後は、スケジュールに従って活動を始めた。
走りながら、今日の新入生の数を数える。この後の準備体操は、同級生同士で組むのが常だが奇数の場合は必然的に一人余る。まだそんなに話したことのない上級生だと何をするにも緊張するだろうと思って、走り終わってすぐ海斗を誘った。
「俺でいいんですか?」
膝に手をついて、きらきらとした顔で見上げてくる。無防備なその頭に手を伸ばし、ポンポンと撫でる。
「お前ならそんなに緊張しないだろ?」
「ちょっと! 俺を子供扱いしないでください」
「つい癖で」
「それは奈海でしょう。俺は海斗ですから!」
「うん。それはわかってるんだけど」
ふてくされてますと言わんばかりにそっぽを向くが、それがまた見た目とかの話ではなく、態度や反応が弟のようで可愛いと思ったのだけれど、それを言うとまた怒らせそうだと口を噤んだ。
「悪かったってば。ほら、背中を押すから座って」
「……祐樹先輩が変なことするからですよ」
警戒心ばりばりで視線を僕の方に向けたまま、体は大人しく言われたとおり長座体前屈の姿勢を取る。僕もその後ろに膝をつき、火照ったままの背中を押す。ストレッチを始めれば、さっきの警戒はどこへやら、素直にまっすぐに前を向いて僕に身を任せて体を伸ばしていた。
なんとなく黙っているのも気恥ずかしくて、間を埋めるように話しかける。
「なぁ海斗はなんで卓球をやろうと思ったの?」
「決まってるじゃないですか。祐樹先輩と仲良くなりたいからですよ」
何が決まってるのかさっぱりわからなくて首を傾げていると、海斗は息をする合間に言葉を続けた。
「だから、色々奈海に話を聞いて調べてきたんです」
「なるほど?」
「よくわからないって顔してますね」
悔しそうな声に、なんだか悪いことをしたような気持ちにさせられる。海斗と話しているとしばしばそういう気分になる。当たり前の反応をする僕が、まるで海斗を傷つけているような。
「もうちょっとわかりやすく言ってくれれば」
「言いません。自分で気づいてください」
やはり少し怒ってしまったらしい。ほわほわとしていた雰囲気から一気にツンとした態度に変わってしまう。コロコロと変わる海斗についていけず、どうしたら良いのかもわからずにいると、海斗はさっと立ち上がって僕の肩を押さえる。
「交代ですよ、祐樹先輩」
六限目までの授業を終えて体育館に行くと、既に海斗はジャージに着替えていて、ラケットの上でピンポン玉を弾ませている様子などは、すっかり卓球部員そのものである。まだ余裕とは行かないようで、集中しているのを横目に僕もジャージに着替える。
そーっと後ろから近づいて、騒がしい体育館でも聞こえるよう耳元で話しかける。
「慣れたみたいだな」
目の前の体がビクッとはねて、その拍子にピンポン玉が転がり落ちる。すかさず、ラケットを使って自分側に跳ねさせてキャッチした。
「祐樹先輩! 驚かせないでくださいよ」
真剣な表情から一転して、むっとした様子で抗議してくるがそれもからかい甲斐があって面白い。
「集中してたから、邪魔しちゃ悪いかなって」
「こっちのほうが心臓に悪いです!」
「そう? じゃあ今度は別のやり方にするよ」
「驚かせるのはだめですからね」
「わかったわかった。ほら、落ち着いて」
怒っているようだが、全く怖くはない。宥めるために頬をつつくと、また顔を赤くする。
「ちょっと!」
「ごめんごめん」
二日目で僕たち上級生も、体験しに来た新入生もなんとなく流れはわかっている。笛の集合の後は、スケジュールに従って活動を始めた。
走りながら、今日の新入生の数を数える。この後の準備体操は、同級生同士で組むのが常だが奇数の場合は必然的に一人余る。まだそんなに話したことのない上級生だと何をするにも緊張するだろうと思って、走り終わってすぐ海斗を誘った。
「俺でいいんですか?」
膝に手をついて、きらきらとした顔で見上げてくる。無防備なその頭に手を伸ばし、ポンポンと撫でる。
「お前ならそんなに緊張しないだろ?」
「ちょっと! 俺を子供扱いしないでください」
「つい癖で」
「それは奈海でしょう。俺は海斗ですから!」
「うん。それはわかってるんだけど」
ふてくされてますと言わんばかりにそっぽを向くが、それがまた見た目とかの話ではなく、態度や反応が弟のようで可愛いと思ったのだけれど、それを言うとまた怒らせそうだと口を噤んだ。
「悪かったってば。ほら、背中を押すから座って」
「……祐樹先輩が変なことするからですよ」
警戒心ばりばりで視線を僕の方に向けたまま、体は大人しく言われたとおり長座体前屈の姿勢を取る。僕もその後ろに膝をつき、火照ったままの背中を押す。ストレッチを始めれば、さっきの警戒はどこへやら、素直にまっすぐに前を向いて僕に身を任せて体を伸ばしていた。
なんとなく黙っているのも気恥ずかしくて、間を埋めるように話しかける。
「なぁ海斗はなんで卓球をやろうと思ったの?」
「決まってるじゃないですか。祐樹先輩と仲良くなりたいからですよ」
何が決まってるのかさっぱりわからなくて首を傾げていると、海斗は息をする合間に言葉を続けた。
「だから、色々奈海に話を聞いて調べてきたんです」
「なるほど?」
「よくわからないって顔してますね」
悔しそうな声に、なんだか悪いことをしたような気持ちにさせられる。海斗と話しているとしばしばそういう気分になる。当たり前の反応をする僕が、まるで海斗を傷つけているような。
「もうちょっとわかりやすく言ってくれれば」
「言いません。自分で気づいてください」
やはり少し怒ってしまったらしい。ほわほわとしていた雰囲気から一気にツンとした態度に変わってしまう。コロコロと変わる海斗についていけず、どうしたら良いのかもわからずにいると、海斗はさっと立ち上がって僕の肩を押さえる。
「交代ですよ、祐樹先輩」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる