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8月11日 水曜日 『幸せな朝』
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8月11日 水曜日 天気:晴天
朝、ゆっくりと体を揺さぶられる感覚がして、目を開けた。顔を覗き込むマオの顔が見えたけれど、眠気が勝って再び目を閉じる。マオがいるから迎えに行かなくて大丈夫。
「ちょっとぉ、依代ちゃん。今起きたでしょ」
「ねむいんだもん」
「起きなよぉ。朝だってー」
「寝るったらねるのー」
頬をつつかれるのが煩わしくて、まだ眠っていたくて、本能のままに布団にもぐる。出たくない。
「もうっ、お、き、てー!」
朝だというのに元気な声が聞こえたかと思うと、勢いよく私を包んでくれていた布団がはがされて、思わず非難の声をあげた。
「ちょっと!」
「起きなきゃダメったらだめ!」
抗議の視線に対して、マオからは不満そうな表情が返ってくる。
「せっかくゆっくり寝られる日なのに」
「だから昨日散々早く寝たほうがいいよって言ったのにぃ」
「それはそうだけど」
正論すぎて反論の余地もない。寝ぼけたまま不貞腐れた態度を隠さずにベッドから降りると、また頬をつんつんとつつかれる。
「なに?」
「おはよ、依代ちゃん」
その言葉に驚いた。なんだか嬉しかった。こんなありふれたよくあるたった一言の挨拶だけど、胸が踊った。
「おはよう! マオ」
一気に目が覚めた私も、元気に挨拶を返す。今日は良い朝だ。
朝ごはんを食べてすぐ家を出るマオを見送りながら、こんなふうに起こされたのはいつぶりだろうと思い返していた。こんな生活じゃなくて、ずっと一緒にいられたらと強く思った。マオのことは分からないことだらけだけど、もっと知りたい。
朝、ゆっくりと体を揺さぶられる感覚がして、目を開けた。顔を覗き込むマオの顔が見えたけれど、眠気が勝って再び目を閉じる。マオがいるから迎えに行かなくて大丈夫。
「ちょっとぉ、依代ちゃん。今起きたでしょ」
「ねむいんだもん」
「起きなよぉ。朝だってー」
「寝るったらねるのー」
頬をつつかれるのが煩わしくて、まだ眠っていたくて、本能のままに布団にもぐる。出たくない。
「もうっ、お、き、てー!」
朝だというのに元気な声が聞こえたかと思うと、勢いよく私を包んでくれていた布団がはがされて、思わず非難の声をあげた。
「ちょっと!」
「起きなきゃダメったらだめ!」
抗議の視線に対して、マオからは不満そうな表情が返ってくる。
「せっかくゆっくり寝られる日なのに」
「だから昨日散々早く寝たほうがいいよって言ったのにぃ」
「それはそうだけど」
正論すぎて反論の余地もない。寝ぼけたまま不貞腐れた態度を隠さずにベッドから降りると、また頬をつんつんとつつかれる。
「なに?」
「おはよ、依代ちゃん」
その言葉に驚いた。なんだか嬉しかった。こんなありふれたよくあるたった一言の挨拶だけど、胸が踊った。
「おはよう! マオ」
一気に目が覚めた私も、元気に挨拶を返す。今日は良い朝だ。
朝ごはんを食べてすぐ家を出るマオを見送りながら、こんなふうに起こされたのはいつぶりだろうと思い返していた。こんな生活じゃなくて、ずっと一緒にいられたらと強く思った。マオのことは分からないことだらけだけど、もっと知りたい。
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