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第一話
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周囲からはカズキと呼ばれている僕。
そんな僕は、散々な目にあった。
友人のユウタから聞かされた学校の怪談が、未だに頭から離れないのだ。
休み時間。
僕らがいる、6年1組の教室で聞いた怪談だった。
「おい、カズキ。これは、俺の一番上の兄ちゃんから聞いた話なんだけどよ。」
ユウタが僕の席まで来て、話しかけてきた。
「なに?」
僕も自分の名前を呼ばれたので、なんとなくユウタの相手をした。
「実はな、俺たちの小学校には聞いてはいけない話があるんだけど、興味ある?」
「聞いてはいけない話?」
僕は少し戸惑いながら尋ねた。ユウタがまじめな顔でこちらを見ている。どうやら冗談などではないらしい。
「ああ。でも、聞いたら最後、もう後戻りはできないぞ」
ユウタは真剣な表情で言った。僕は少し躊躇したが、好奇心が勝った。
「聞かせてくれ」
ユウタは周りを見回してから、小声で話し始めた。
「この学校の3階の女子トイレ、一番奥の個室にカシマさんっていう幽霊が出るんだって」
「カシマさん?」
僕は思わず声を上げてしまった。
「シーッ!」
ユウタは慌てて僕の口を押さえた。
「大声出すなよ。カシマさんに聞こえちゃうぞ」
僕は冷や汗をかきながら頷いた。ユウタは再び周りを確認してから、さらに声を潜めて話を続けた。
「カシマさんは昔この学校の生徒だったらしいんだ。ある日、いじめっ子たちに追いかけられて、3階の女子トイレに逃げ込んだんだって。でも、そこで...」
ユウタは一瞬言葉を切り、僕の反応を確かめるように顔を覗き込んだ。僕は息を呑んで、「それで?」と聞き返した。
「カシマさんは、そこでいじめっ子たちに見つかって...」
ユウタは言葉を濁した。その様子から、その後に起こった想像したくもない最後が予想できた。
「それ以来、3階の女子トイレには、カシマさんの幽霊が出るようになったんだ」
「じゃあ、カシマさんに会ったらどうなるの?」
僕は不安そうに尋ねた。
「カシマさんに会うと、『私を見つけてくれてありがとう』って言われるんだって。でも、それに答えちゃいけないんだ。答えると…」
「答えると?」
僕が聞き返すとユウタは、考え込むような仕草を取った。
「答えた後は、分からない。俺の兄ちゃんも、それから先は知らなかった。」
ユウタはそういってから、話をつづけた。
「それでな、この話を聞いたものには、カシマさんが現れるようになる。」
「おい!やめろ!」
突然の告白に僕は目が覚めた。
「あはっは、でもお前はもう話を聞いてしまった。もう後戻りはできない。」
ユウタは、不敵な顔でそういった。
「いや、でもトイレに行かなけりゃいいんじゃないのか?」
僕は思ったことをいった。
単純に、自分がカシマさんのいる場所に行かなければいいのだ。
「いや、そんな簡単じゃない。カシマさんは、夢の中に出たり、電話を掛けてきたり。とにかく3階の女子トイレ、一番奥の個室へ行くように仕向けるんだよ。」
真剣な表情で、ユウタがそう言った。
その時、チャイムが鳴り、授業が始まった。
「おっ、じゃあ続きは次の休み時間な!」
ユウタはそう言って、自分の席に戻っていった。
「あっ、おい。」
僕はそれしかいうことができなかった。
しかし、もう授業は始まってしまう。
僕は、自分の席へ戻っていくユウタの姿をながら、宙ぶらりんな気持ちでいっぱいだった。
とくに話を聞いたものには、カシマさんが現れるという内容だ。
自分がその話を知っている以上、きっとカシマさんは現れてしまう。
ひどく後悔した。
なんであんなことを聞いてしまったんだろう?
どうして興味を持ってしまったんだ?
後悔先に立たずだ。
今更ながら、自分の行動を恨んだ。しかし、悔やんでもしょうがない。もう手遅れなのだ。
いつの間にか授業は終わりを迎えていた。
休み時間の始まりを告げるチャイムが鳴っている。
授業中、僕はカシマさんのことで頭がいっぱいだった。
その他に何も頭に入らなかった。
とにかく、カシマさんが現れる前に、この学校から去ろう。
僕はそう決意し、教室を出た。
「おい!カズキ!」
後ろから声が掛かった。ユウタだ。僕はドキッとしたが、平静を装った。しかし、心臓はバクバクと鳴っていた。
「な、なに?」
恐る恐る尋ねた。
「いやさ、さっきの休み時間に話した続きなんだけどよ……」
ああ、やっぱりその話か……
僕は、ユウタがその話を切り出すのを待っていた。
しかし、なかなか続きを話さない。どうしたんだろう?
僕がそう思っていると、しばらくしてようやく話の続きを口にした。
「あの話を聞いたものにカシマさんが現れないようにする方法があるんだよ。」
「おお!教えてくれよ!」
ユウタのその一言に、僕は思わず飛びついた。
「聞きたい?」
ユウタは、もったいぶったようにそう言った。
「ああ!教えてくれ!」
僕はそう答えた。
しかし、ユウタはまたしばらく沈黙したかと思うと、こう告げた。
「カシマさんの話を誰かに話すことだよ」
「えっ?」
僕は思わず聞き返した。
「だからよ、この話を誰か別の人間に話すんだよ」
ユウタがもう一度言った。そしてさらに続ける。
「そうすれば、話した奴には、もう二度とカシマさんは現れないっていう話なんだ」
「おい、それって!」
………こいつ!!
僕はユウタを殴ろうと思った。
今の状態は、ユウタだけが助かるということだ。
だけど、僕は冷静な態度でユウタに確認した。
「僕がユウタに話すと?」
「それは無効だ。誰か別のカシマさんのことを知らない人に話すしかない。」
ユウタが、にやっと笑った。
「じゃあ、ユウタが僕に話したのは、どうして?」
僕がそう聞くと、ユウタは視線を逸らした。
「俺が助かるためだ。」
しばらく沈黙が続いた後、僕は口を開いた。
「このやろう!」
僕は、ユウタを殴ろうと立ち上がった。
しかし、その瞬間にチャイムが鳴り始めた。最後の授業が始まる時間だ。
「おっ!じゃあな!」
ユウタはそういうと走り去っていった。
「おい!待てよ!!」
僕はそう叫んで追いかけようとしたが、足が止まった。
もう手遅れなのだ……
この話を誰か別の人間に話すしかないんだ……
僕は絶望的な気持ちになった。
授業中、僕は何度もユウタの言っていたことを考えた。
誰か別のカシマさんを知らない人に話すしかない……
そのことを考えるたびに、教室の後ろの方でクスクス笑う女子たちの笑い声が聞こえてきた気がした。
まるで僕の考えていることを知っていて、嘲笑っているようだ。
しかし、僕が3階の女子トイレの話を誰かに話さない限り、きっとこれから僕の前にカシマさんが現れてしまう。
そうだ!だから早く誰か他の人間に……
だけど、迂闊に知り合いに話すと恨みを買うかもしれない。
僕は頭を抱えた。
僕がずっと同じことを考えていると、あっという間に、6時間目の授業が終わっていた。
そのまま帰りの会が始まっていた。
「中村カズキくん。渡すものがあるので、これから職員室へ来てください。」
先生がそんなことを言った。
はっ!
僕は、今が帰りの会の最中だということをすっかり忘れていた。
「じゃあ、今日はこれでおしまいです。みんな気を付けて帰ってきてくださいね。」
先生はそう言って、教室を出て行った。
教室内は、学校が終わる期待でガヤガヤとした雰囲気だ。
そんな僕は、散々な目にあった。
友人のユウタから聞かされた学校の怪談が、未だに頭から離れないのだ。
休み時間。
僕らがいる、6年1組の教室で聞いた怪談だった。
「おい、カズキ。これは、俺の一番上の兄ちゃんから聞いた話なんだけどよ。」
ユウタが僕の席まで来て、話しかけてきた。
「なに?」
僕も自分の名前を呼ばれたので、なんとなくユウタの相手をした。
「実はな、俺たちの小学校には聞いてはいけない話があるんだけど、興味ある?」
「聞いてはいけない話?」
僕は少し戸惑いながら尋ねた。ユウタがまじめな顔でこちらを見ている。どうやら冗談などではないらしい。
「ああ。でも、聞いたら最後、もう後戻りはできないぞ」
ユウタは真剣な表情で言った。僕は少し躊躇したが、好奇心が勝った。
「聞かせてくれ」
ユウタは周りを見回してから、小声で話し始めた。
「この学校の3階の女子トイレ、一番奥の個室にカシマさんっていう幽霊が出るんだって」
「カシマさん?」
僕は思わず声を上げてしまった。
「シーッ!」
ユウタは慌てて僕の口を押さえた。
「大声出すなよ。カシマさんに聞こえちゃうぞ」
僕は冷や汗をかきながら頷いた。ユウタは再び周りを確認してから、さらに声を潜めて話を続けた。
「カシマさんは昔この学校の生徒だったらしいんだ。ある日、いじめっ子たちに追いかけられて、3階の女子トイレに逃げ込んだんだって。でも、そこで...」
ユウタは一瞬言葉を切り、僕の反応を確かめるように顔を覗き込んだ。僕は息を呑んで、「それで?」と聞き返した。
「カシマさんは、そこでいじめっ子たちに見つかって...」
ユウタは言葉を濁した。その様子から、その後に起こった想像したくもない最後が予想できた。
「それ以来、3階の女子トイレには、カシマさんの幽霊が出るようになったんだ」
「じゃあ、カシマさんに会ったらどうなるの?」
僕は不安そうに尋ねた。
「カシマさんに会うと、『私を見つけてくれてありがとう』って言われるんだって。でも、それに答えちゃいけないんだ。答えると…」
「答えると?」
僕が聞き返すとユウタは、考え込むような仕草を取った。
「答えた後は、分からない。俺の兄ちゃんも、それから先は知らなかった。」
ユウタはそういってから、話をつづけた。
「それでな、この話を聞いたものには、カシマさんが現れるようになる。」
「おい!やめろ!」
突然の告白に僕は目が覚めた。
「あはっは、でもお前はもう話を聞いてしまった。もう後戻りはできない。」
ユウタは、不敵な顔でそういった。
「いや、でもトイレに行かなけりゃいいんじゃないのか?」
僕は思ったことをいった。
単純に、自分がカシマさんのいる場所に行かなければいいのだ。
「いや、そんな簡単じゃない。カシマさんは、夢の中に出たり、電話を掛けてきたり。とにかく3階の女子トイレ、一番奥の個室へ行くように仕向けるんだよ。」
真剣な表情で、ユウタがそう言った。
その時、チャイムが鳴り、授業が始まった。
「おっ、じゃあ続きは次の休み時間な!」
ユウタはそう言って、自分の席に戻っていった。
「あっ、おい。」
僕はそれしかいうことができなかった。
しかし、もう授業は始まってしまう。
僕は、自分の席へ戻っていくユウタの姿をながら、宙ぶらりんな気持ちでいっぱいだった。
とくに話を聞いたものには、カシマさんが現れるという内容だ。
自分がその話を知っている以上、きっとカシマさんは現れてしまう。
ひどく後悔した。
なんであんなことを聞いてしまったんだろう?
どうして興味を持ってしまったんだ?
後悔先に立たずだ。
今更ながら、自分の行動を恨んだ。しかし、悔やんでもしょうがない。もう手遅れなのだ。
いつの間にか授業は終わりを迎えていた。
休み時間の始まりを告げるチャイムが鳴っている。
授業中、僕はカシマさんのことで頭がいっぱいだった。
その他に何も頭に入らなかった。
とにかく、カシマさんが現れる前に、この学校から去ろう。
僕はそう決意し、教室を出た。
「おい!カズキ!」
後ろから声が掛かった。ユウタだ。僕はドキッとしたが、平静を装った。しかし、心臓はバクバクと鳴っていた。
「な、なに?」
恐る恐る尋ねた。
「いやさ、さっきの休み時間に話した続きなんだけどよ……」
ああ、やっぱりその話か……
僕は、ユウタがその話を切り出すのを待っていた。
しかし、なかなか続きを話さない。どうしたんだろう?
僕がそう思っていると、しばらくしてようやく話の続きを口にした。
「あの話を聞いたものにカシマさんが現れないようにする方法があるんだよ。」
「おお!教えてくれよ!」
ユウタのその一言に、僕は思わず飛びついた。
「聞きたい?」
ユウタは、もったいぶったようにそう言った。
「ああ!教えてくれ!」
僕はそう答えた。
しかし、ユウタはまたしばらく沈黙したかと思うと、こう告げた。
「カシマさんの話を誰かに話すことだよ」
「えっ?」
僕は思わず聞き返した。
「だからよ、この話を誰か別の人間に話すんだよ」
ユウタがもう一度言った。そしてさらに続ける。
「そうすれば、話した奴には、もう二度とカシマさんは現れないっていう話なんだ」
「おい、それって!」
………こいつ!!
僕はユウタを殴ろうと思った。
今の状態は、ユウタだけが助かるということだ。
だけど、僕は冷静な態度でユウタに確認した。
「僕がユウタに話すと?」
「それは無効だ。誰か別のカシマさんのことを知らない人に話すしかない。」
ユウタが、にやっと笑った。
「じゃあ、ユウタが僕に話したのは、どうして?」
僕がそう聞くと、ユウタは視線を逸らした。
「俺が助かるためだ。」
しばらく沈黙が続いた後、僕は口を開いた。
「このやろう!」
僕は、ユウタを殴ろうと立ち上がった。
しかし、その瞬間にチャイムが鳴り始めた。最後の授業が始まる時間だ。
「おっ!じゃあな!」
ユウタはそういうと走り去っていった。
「おい!待てよ!!」
僕はそう叫んで追いかけようとしたが、足が止まった。
もう手遅れなのだ……
この話を誰か別の人間に話すしかないんだ……
僕は絶望的な気持ちになった。
授業中、僕は何度もユウタの言っていたことを考えた。
誰か別のカシマさんを知らない人に話すしかない……
そのことを考えるたびに、教室の後ろの方でクスクス笑う女子たちの笑い声が聞こえてきた気がした。
まるで僕の考えていることを知っていて、嘲笑っているようだ。
しかし、僕が3階の女子トイレの話を誰かに話さない限り、きっとこれから僕の前にカシマさんが現れてしまう。
そうだ!だから早く誰か他の人間に……
だけど、迂闊に知り合いに話すと恨みを買うかもしれない。
僕は頭を抱えた。
僕がずっと同じことを考えていると、あっという間に、6時間目の授業が終わっていた。
そのまま帰りの会が始まっていた。
「中村カズキくん。渡すものがあるので、これから職員室へ来てください。」
先生がそんなことを言った。
はっ!
僕は、今が帰りの会の最中だということをすっかり忘れていた。
「じゃあ、今日はこれでおしまいです。みんな気を付けて帰ってきてくださいね。」
先生はそう言って、教室を出て行った。
教室内は、学校が終わる期待でガヤガヤとした雰囲気だ。
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