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ガールズショッピング

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<ラルゴ>

ララと僕は、引っ越しが一段落ついた後、街に繰り出した。通りには賑わいがあり、人々の楽しげな声が響く。僕たちは、ショッピングモールへと足を運んだ。

モールの入り口には、大きなガラスのドアがあり、その向こうには色とりどりの店舗が並んでいる。照明が明るく店内を照らし、ガラスのショーウィンドウには華やかな服やアクセサリーが並べられていた。ララは興奮気味に僕の手を引っ張り、様々な店を次々に覗き込んだ。

「おしゃれな服がたくさんあるね!」

彼女は子供のように目を輝かせ、ショーウィンドウの中の洋服やアクセサリーに見入っている。僕もつられてウィンドウに顔を近づけると、可愛らしいドレスやカラフルなバッグが目に飛び込んできた。

お金がないので、僕たちはウィンドウショッピングを楽しむことにした。楽器店ではサックスのリードや、キラキラと輝く音符の形をしたアクセサリーが目を引いた。書店では、新刊の小説や楽譜が整然と並べられ、あれこれと手に取っては内容を覗き込んだ。

「あ、これ見て!」

ララが手に取ったのは、動物の形をしたカラフルなメモ帳だった。僕たちはそれを見て、まるで子どものように笑い合った。心の中の不安や緊張が溶けていくようだった。女子ノリ楽しい!

「ねえ、次はあの店に行ってみよう!」

ララが指差した先には、様々な雑貨やおもちゃが並ぶ店舗が見えた。僕たちは興奮しながらその店に向かって歩き出した。その時、ふいにララが立ち止まり、前方を指差した。

「見て、あの子、泣いてる」

彼女の指の先には、5歳くらいの小さな男の子が立っていた。彼は大粒の涙を流しながら、周囲をきょろきょろと見回している。小さな手は必死に何かを掴もうとしているようで、その姿はとても心細そうだった。

「ママとはぐれちゃったのかな……」

僕は男の子に駆け寄り、スカートの中が見えないよう工夫して、しゃがみこんで目線の高さを合わせ、優しく声をかけた。

「どうしたの? 迷子になっちゃった?」

男の子は僕の顔を見上げ、しゃくりあげながら小さな声で答えた。

「ママが……いないの……」

その言葉に、胸がきゅっと締め付けられるような思いがした。僕はそっと男の子の手を取り、温かく握りしめた。

「大丈夫、迷子コーナーに連れて行ってあげるからね」

ララも優しく男の子の肩に手を置き、微笑んだ。その表情は、まるでお姉さんのように頼もしかった。僕たちは男の子を連れてモール内を歩き出し、迷子コーナーを探した。

店の案内板を見ながら右へ左へと曲がり、ようやく迷子コーナーの受付にたどり着くと、ちょうどそこに心配そうな顔をした女性が駆け寄ってきた。

「ありがとうございます! めっ、勝手に走って行っちゃダメっていったでしょ!」

母親らしき女性は、男の子を抱きしめながら涙を流している。男の子は「ごめんなさい、ママ」と涙をぬぐい、そして僕たちの方を向いた。

「ありがとう、お姉ちゃん」

男の子の言葉に、胸の奥が温かくなった。男としての自分が、お姉ちゃんと言われることにむずがゆい思いを感じながらも、悪くない気持ちだった。

僕たちは親子を見送った後、ショッピングモールを後にし、寮へと帰ることにした。繁華街を抜けて、少し治安の悪い路地裏へと入ると、寂しい雰囲気が漂っていた。

周囲の建物は古びたレンガ造りで、壁には落書きが施されている。通りのあちこちにゴミが散乱し、誰もいないせいか、まるで世界から切り離されたような静寂が辺りを包んでいた。

ララは少し怯えたように僕の袖を掴んだ。彼女の手は冷たく震えていて、僕はそっとその手を握り返した。

「ねえ、あれ、魔族じゃないの?」

「うわ。魔界に帰れよな」

人間と魔族はほんの十数年前までは戦争していた。だから、魔族に対して、人間は冷たくなるし差別的な言葉も投げかける。人間側にも戦死者が多く出ていて、差別はいけないとわかっていても自制心が抑えきれない人がいるのだろう。

突然の声が、静寂を破って響いた。通りすがりの男の目は、冷たくララを見つめている。彼の言葉に、ララの肩がびくりと震えた。僕は彼女を守りたいと思ったが、どうしたらいいかわからず、ただ彼女の手を強く握りしめた。

「気にしないで。私はあなたの味方だから。あなたはあなたよ」

ララの冷たい手をぎゅっと握りしめる。表情はわからないが、震えているのが伝わる。

ララの表情を見ようと顔を横にそ向けたとき、僕の動きにつられて、ララが前方に居る人を回避するのに失敗し、ぶつかってしまった。

「ご、ごめんなさい」

前を見やると、ごつい少年たちが横柄な態度で見下ろす。

「けっ。魔族の汚れた手がついてしまったぜ」

「おい! 汚れたモンどうしてくれるんだ。小銭出してもらおうか」

少年たちはニヤニヤと笑いながら、ララのネックレスを乱暴に引っ張った。ララは泣きそうな顔で必死にそれを守ろうとする。

「これは、ママからもらった大事なものなの」

「いいだろ。慰謝料代わりみたいなもんだと思えば」

「ダメなの……」

ララの涙が、彼女の頬を伝って落ちる。その姿に、僕は胸が締め付けられるような思いをした。せっかくできた友達が、こんな目に遭っているのに、何もできないなんて――。

悔しさと無力感が僕を支配し、身体が硬直して動けない。その時、遠くから聞こえた声が、その場の空気を変えた。

「あれー、君たち何してんの?」

明るく軽やかな声が、まるで突風のように響いた。ハイスクールの制服をミニスカートにアレンジした、ショートカットの女の子が悠然と現れた。彼女はひょいと肩をすくめ、少年たちを見据えて微笑んだ。

「なんだか、あまり楽しいことはしてなさそうだね」

その言葉が、まるで場の空気を一変させた。少年たちは一瞬、驚いた表情を見せたが、すぐに不快そうに睨みつけた。

「なんだてめぇは! 名を名乗れ!」

「名前? シャープって言うんだ。よろしくね」

シャープと名乗った彼女は、どこか挑戦的な笑みを浮かべ、僕たちを守るように前に立ちはだかった。
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