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エピローグ
談笑する母に自分を重ねる
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『らぶち』のドアを開けると、数組の客がいた。どの席も話が弾んでいるらしい。
千帆はまっすぐカウンターへ向かう。
その中に立つ唯人がこちらへ顔を向けた。
「千帆さん。あ、試飲のココア。ここでもらいます」
唯人はカウンター越しに手を出してきた。その手に渡すように持ってきたトレイを持ち上げかけたところで、背中側から声が聞こえた。
「あー、千帆さん。それ、俺がもらう」
トレイを胸の高さに下ろして振り向くと、蒼市が両手を小さく出していた。
「持ち上げたらこぼれやすいだろ」
彼がいつも穏やかな笑顔なのは、唯人と一緒にいるからだろう。
年上の男性カップルながら、毎度、千帆は微笑ましく思ってしまう。
「バイトの方にも感想聞いといてください。それから、これは母手作りのレモンケーキです。ココア飲んで味をしっかり確かめた後に、ケーキは食べてくださいね」
唯人と蒼市、交互に視線を送りながら話す。二人とも親指を立ててくれた。
軽くおじぎをして、『らぶち』を出る。
雲の隙間から太陽の日が差している。暖かいはずのそれは、地上にまで届いてくれないらしい。
身震いした千帆は自店の扉を開けようとノブに手をかけた。
扉を開ける手を止め、格子窓から中の様子を見る。
カウンターの中に立つ母は笑顔で、向かい側に並んで座る常連客6人と談笑している。和やかで温かな空間がそこにはあった。
母の楽しそうな姿はきっと普段の自分なのだろうと思う。千帆は緩む頬を隠すことなく、店の扉を開けた。
(了)
千帆はまっすぐカウンターへ向かう。
その中に立つ唯人がこちらへ顔を向けた。
「千帆さん。あ、試飲のココア。ここでもらいます」
唯人はカウンター越しに手を出してきた。その手に渡すように持ってきたトレイを持ち上げかけたところで、背中側から声が聞こえた。
「あー、千帆さん。それ、俺がもらう」
トレイを胸の高さに下ろして振り向くと、蒼市が両手を小さく出していた。
「持ち上げたらこぼれやすいだろ」
彼がいつも穏やかな笑顔なのは、唯人と一緒にいるからだろう。
年上の男性カップルながら、毎度、千帆は微笑ましく思ってしまう。
「バイトの方にも感想聞いといてください。それから、これは母手作りのレモンケーキです。ココア飲んで味をしっかり確かめた後に、ケーキは食べてくださいね」
唯人と蒼市、交互に視線を送りながら話す。二人とも親指を立ててくれた。
軽くおじぎをして、『らぶち』を出る。
雲の隙間から太陽の日が差している。暖かいはずのそれは、地上にまで届いてくれないらしい。
身震いした千帆は自店の扉を開けようとノブに手をかけた。
扉を開ける手を止め、格子窓から中の様子を見る。
カウンターの中に立つ母は笑顔で、向かい側に並んで座る常連客6人と談笑している。和やかで温かな空間がそこにはあった。
母の楽しそうな姿はきっと普段の自分なのだろうと思う。千帆は緩む頬を隠すことなく、店の扉を開けた。
(了)
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