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忘年会
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クリスマスが終われば世間は年末ムード一色だ。
街では至る所に正月飾りが飾られ、テレビからは各地の初売り情報が聞こえてくる。
そんな浮ついた雰囲気とは裏腹に、俺の心は全くと言って良いほど晴れなかった。
原因は先日届いた1通のハガキだ。
「結婚式か……」
差出人は言わずもがな、鹿目からだった。
結婚している事自体は知っていても、いざこうして現実を突きつけられるとやはり複雑な心境だ。
俺はまだ、鹿目の嫁さんを写真でしか見たことがない。
実際に幸せそうな2人を目にしてしまったら俺は正気でいられるのだろうか。
「梅代先輩全然飲んでないじゃないですか」
そんなことを考えているうちにいつの間にやら隣に座っていた涼真に酒を注がれていた。
そう、俺は今職場の忘年会に参加しているのだ。
正直あまり気が乗らなかったのだが、どうせ家に帰っても1人だし余計なことばかり考えてしまうので誘いに乗ることにした。
「てかお前、こんなとこにいて良いのか?さっき向こうの女性陣に捕まってたじゃん」
「あー、あれはもう逃げてきました」
涼真は職場の飲み会には滅多に顔を出さないため、参加した時はいつも女性社員に囲まれてしまうらしい。
このルックスと社交性の高さを持ち合わせていたら当然と言えば当然なのだが。
「それにしても相変わらず凄い人気だな」
「別にこれくらい普通ですよ」
謙遜しないところがまた腹が立つな、なんて思いながら彼の横顔を見る。
綺麗な二重に長い睫毛、鼻筋の通った端整な顔立ち。
こんな文句無しのイケメンがどうして俺みたいな冴えない男を選んだのだろう。
「……俺の顔に何かついてますか?」
「あ、すまん。綺麗な顔してんなーと思って」
思わず本音が漏れると、涼真は目を丸くして固まってしまった。
そして数秒後、彼は突然吹き出すようにして笑い始めた。
「何笑ってんだよ」
「ふふっ、すみません。まさか梅代先輩に外見を褒めてもらえると思わなかったもので」
そう言って微笑む涼真の表情はとても柔らかくて、いつもより幼く見えた。
「何いちゃついてんだお前ら~」
そう言いながら背中を叩いてきたのは俺の同期の竹崎だ。
竹崎は人懐っこい性格で同期の中でも比較的仲が良かったので、俺は彼と話す時だけは気が楽だった。
「うわ、酒くせぇ。お前どんだけ飲んでんだよ」
「竹崎先輩、お疲れ様です~」
「お~、柊!さっき女の子たちが呼んでたぞ」
俺は「それみろ」と視線で涼真の顔を刺したが、当の本人はどこ吹く風といった様子だった。
「えー?でも俺がいなくなったら梅代先輩が寂しがるんで」
「おいこら」
俺が睨んでいることなど気にせず涼真は竹崎にビールを注ぎ始める。
「あはは、モテる男は余裕があって羨ましいわ。俺ならすっ飛んで行くのに」
竹崎は涼真の言葉を聞いて豪快に笑った。
「てかさ、柊ってなんで彼女作んねーの?もしかして理想がものすごーーく高いとか?」
酔った竹崎が次のターゲットに選んだのは涼真だった。
社内では俺との関係を隠しているため、涼真は現在フリーと認識されている。
さすがに男と付き合ってるなんて誰も想像つかねぇよなと思いつつも、涼真の奴がうっかり口を滑らせないかとヒヤヒヤしながら会話の行方を見守った。
「別にそういうわけじゃないですよ。今は仕事に専念したいだけです」
「ふーん。じゃあどんな子がタイプなんだ?」
竹崎が身を乗り出して問い詰めると、涼真は俺の方に視線を向けたあと、にこりと微笑んで言った。
「ちょっと不器用すぎるくらい真面目な人が好きです」
「なんだそりゃ。もっとあるだろ?例えば胸が大きい子とか~」
竹崎は両手を使って大袈裟に胸の膨らみを表現してみせる。
正直、俺も涼真の好みのタイプというやつには興味があった。
俺みたいな冴えない男に惹かれるって事は相当特殊な趣味の持ち主なのかもしれない。
そんなことを考えていると、涼真は「それも嫌いではないですね」と俺の方に意味深な視線を送ってくる。
「でも俺はどちらかというと性格重視派です」
「……というと?」
「仕事熱心で、責任感が強くて、恋愛よりも友情を優先するような……まぁ要するにめちゃくちゃカッコいい人が好きなんですよ」
「へぇ。意外と堅実なタイプが好みなんだな」
ずいぶんと具体的だなと思った瞬間、俺は涼真の発言の意図を理解してしまい一気に顔が熱くなった。
『仕事熱心な人』
『責任感が強い人』
『友達を大切にしている人』
カッコいいかはともかくとして。
涼真の挙げた条件は全て今の俺に当てはまっている……ような気がする。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、涼真はさらに追い打ちをかけるかのように言葉を続ける。
「あと俺、年上が好きなんですよね」
「ごほっ」
ちょうどグラスに口をつけたタイミングで爆弾発言が投下され、俺は盛大にむせてしまった。
先程まではまだ自意識過剰だと自分に言い聞かせられたが、年上好きと言われたらもう確定だ。
「あはは!梅代なに一人でむせてんだよ!大丈夫か~」
「うるせぇ……」
竹崎に背中を摩られながら横目で涼真を見ると、彼はいたずらっ子のような笑顔を浮かべていた。
街では至る所に正月飾りが飾られ、テレビからは各地の初売り情報が聞こえてくる。
そんな浮ついた雰囲気とは裏腹に、俺の心は全くと言って良いほど晴れなかった。
原因は先日届いた1通のハガキだ。
「結婚式か……」
差出人は言わずもがな、鹿目からだった。
結婚している事自体は知っていても、いざこうして現実を突きつけられるとやはり複雑な心境だ。
俺はまだ、鹿目の嫁さんを写真でしか見たことがない。
実際に幸せそうな2人を目にしてしまったら俺は正気でいられるのだろうか。
「梅代先輩全然飲んでないじゃないですか」
そんなことを考えているうちにいつの間にやら隣に座っていた涼真に酒を注がれていた。
そう、俺は今職場の忘年会に参加しているのだ。
正直あまり気が乗らなかったのだが、どうせ家に帰っても1人だし余計なことばかり考えてしまうので誘いに乗ることにした。
「てかお前、こんなとこにいて良いのか?さっき向こうの女性陣に捕まってたじゃん」
「あー、あれはもう逃げてきました」
涼真は職場の飲み会には滅多に顔を出さないため、参加した時はいつも女性社員に囲まれてしまうらしい。
このルックスと社交性の高さを持ち合わせていたら当然と言えば当然なのだが。
「それにしても相変わらず凄い人気だな」
「別にこれくらい普通ですよ」
謙遜しないところがまた腹が立つな、なんて思いながら彼の横顔を見る。
綺麗な二重に長い睫毛、鼻筋の通った端整な顔立ち。
こんな文句無しのイケメンがどうして俺みたいな冴えない男を選んだのだろう。
「……俺の顔に何かついてますか?」
「あ、すまん。綺麗な顔してんなーと思って」
思わず本音が漏れると、涼真は目を丸くして固まってしまった。
そして数秒後、彼は突然吹き出すようにして笑い始めた。
「何笑ってんだよ」
「ふふっ、すみません。まさか梅代先輩に外見を褒めてもらえると思わなかったもので」
そう言って微笑む涼真の表情はとても柔らかくて、いつもより幼く見えた。
「何いちゃついてんだお前ら~」
そう言いながら背中を叩いてきたのは俺の同期の竹崎だ。
竹崎は人懐っこい性格で同期の中でも比較的仲が良かったので、俺は彼と話す時だけは気が楽だった。
「うわ、酒くせぇ。お前どんだけ飲んでんだよ」
「竹崎先輩、お疲れ様です~」
「お~、柊!さっき女の子たちが呼んでたぞ」
俺は「それみろ」と視線で涼真の顔を刺したが、当の本人はどこ吹く風といった様子だった。
「えー?でも俺がいなくなったら梅代先輩が寂しがるんで」
「おいこら」
俺が睨んでいることなど気にせず涼真は竹崎にビールを注ぎ始める。
「あはは、モテる男は余裕があって羨ましいわ。俺ならすっ飛んで行くのに」
竹崎は涼真の言葉を聞いて豪快に笑った。
「てかさ、柊ってなんで彼女作んねーの?もしかして理想がものすごーーく高いとか?」
酔った竹崎が次のターゲットに選んだのは涼真だった。
社内では俺との関係を隠しているため、涼真は現在フリーと認識されている。
さすがに男と付き合ってるなんて誰も想像つかねぇよなと思いつつも、涼真の奴がうっかり口を滑らせないかとヒヤヒヤしながら会話の行方を見守った。
「別にそういうわけじゃないですよ。今は仕事に専念したいだけです」
「ふーん。じゃあどんな子がタイプなんだ?」
竹崎が身を乗り出して問い詰めると、涼真は俺の方に視線を向けたあと、にこりと微笑んで言った。
「ちょっと不器用すぎるくらい真面目な人が好きです」
「なんだそりゃ。もっとあるだろ?例えば胸が大きい子とか~」
竹崎は両手を使って大袈裟に胸の膨らみを表現してみせる。
正直、俺も涼真の好みのタイプというやつには興味があった。
俺みたいな冴えない男に惹かれるって事は相当特殊な趣味の持ち主なのかもしれない。
そんなことを考えていると、涼真は「それも嫌いではないですね」と俺の方に意味深な視線を送ってくる。
「でも俺はどちらかというと性格重視派です」
「……というと?」
「仕事熱心で、責任感が強くて、恋愛よりも友情を優先するような……まぁ要するにめちゃくちゃカッコいい人が好きなんですよ」
「へぇ。意外と堅実なタイプが好みなんだな」
ずいぶんと具体的だなと思った瞬間、俺は涼真の発言の意図を理解してしまい一気に顔が熱くなった。
『仕事熱心な人』
『責任感が強い人』
『友達を大切にしている人』
カッコいいかはともかくとして。
涼真の挙げた条件は全て今の俺に当てはまっている……ような気がする。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、涼真はさらに追い打ちをかけるかのように言葉を続ける。
「あと俺、年上が好きなんですよね」
「ごほっ」
ちょうどグラスに口をつけたタイミングで爆弾発言が投下され、俺は盛大にむせてしまった。
先程まではまだ自意識過剰だと自分に言い聞かせられたが、年上好きと言われたらもう確定だ。
「あはは!梅代なに一人でむせてんだよ!大丈夫か~」
「うるせぇ……」
竹崎に背中を摩られながら横目で涼真を見ると、彼はいたずらっ子のような笑顔を浮かべていた。
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