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清朝にて新帝即位し、アメリカ合衆国海軍は新基地建設場所に大いに悩む。

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 皇紀2568年12月2日、清は新しい皇帝を選出し、それは溥儀と決まった。それ自体は史実通りなのだが、問題はそこからである。今現在でも、清王朝が続いており、溥儀の孫が現皇帝なのだが、通称「漢族一揆」と称される諸一揆に彼は苦しめられることになる。結果として漢民族は今でも清では奴隷層なのだが、それ自体は別にどうでもいいだろう。
 それよりも重要な事件が翌年に発生した。通称安重根事件である。伊藤翁はかろうじて一命を取り留めたものの、これにより朝鮮人に対する怒りが帝国内で暴発。だが、それはあらぬ方向へ走ることになる。

「偉大なる大日本帝国にアジアの恥部である最貧国など迎え入れるな!」
 ~当時の新聞の社説を引用~

 そして、朝鮮半島は大日本帝国の一地域では無く、あくまでも植民地として扱われることとなる。これが後にウラニウム鉱山などの面に於いて大日本帝国を助けるのだから歴史は糾える縄のごとく。
 まあ、それはそれとして、以下はアメリカ合衆国太平洋艦隊司令部の議事録の一部である。

「布哇をとられたのは痛かったな……」
「とはいえ、相手はかの日本海軍、下手に抵抗してもっと痛い目に遭うよりは……」
『確かに』
「で、どうする。他にはライン諸島くらいしかないぞ?」
「……実は、案があります」
「ふむ、言うてみ」
「布哇王国を下手につっつくと大日本帝国が出てきます。なれば、布哇王国を囲い込みましょう」
「……どういう意味だ?」
「この際、統一基地構想を捨てて、ライン諸島やダッチハーバーなどに基地機能を分けましょう。それに、一つの籠に卵を盛るのは危険です」
「……ふむ、悪くは無いが、基地機能は制限されるな」
「しかし、安全です」
「……いいだろう、では真珠湾計画は破棄、ひとまずダッチハーバーはアクタン島、ライン諸島はパルミラ島にそれぞれ基地機能を分散させるとしよう」

 ヨーロッパ暦1909年、皇紀に直して2569年。日露戦争終結後であり、悠々と天皇朝とハワイ王朝との婚姻が成立した結果、アメリカ合衆国太平洋艦隊は基地建設場所に大いに悩んでいた。なぜか。実はこの時期のアメリカ合衆国太平洋艦隊は、はっきり言ってとんでもなく弱かった。否、我々の世界でもルーズベルトが台頭するまでははっきり言って大日本帝国海軍へ勝てる目が存在しない程度には弱かった。とはいえ、そこからがずる賢くさかしいアメリカ合衆国である、統一基地構想を捨てて選んだのがアクタン島とパルミラ島である、基地機能を分散することにより着実に西へ侵掠する方を選んだのだ。とはいえ、そこまでであった。以後、アメリカ合衆国は太平洋艦隊よりも大西洋艦隊に戦力を注ぐことになる。
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