3 / 5
青年トルコ革命失敗す!
しおりを挟む
西園寺公望が辞意を表明した。前々から「委任状内閣」などと揶揄されていたものの、日露間に条約が締結され漸く一息つけるようになり新しく戦後用の内閣を作るためであるとされている。
まだまだ、元老の藩閥政治の様相を見せていたものの、首相には予想外の人物が成ることになる……。
「しかし、予想外だったな。まさか会津出身者が首相になるとは」
「ああ、山県は怒髪天を衝くだろうが、選挙の結果だ。やむを得まい」
「それはそうと、次の内閣だが……」
……内藤魯一、板垣退助の秘書である。
「宜しかったのですか?」
「アメリカ合衆国への移民が制限されていない現状、別に構わんだろ」
西暦に直して1908年、直前までアメリカかブラジルかで迷っていた移民先は、無事アメリカ合衆国に定まった。一方で、帰りの便でアメリカ合衆国より第一次黒人移民を乗せることも決定しており、正式に交換移民制度が決定したと言える。後に、西海岸総ての土地を買い占めたとすら噂される日本人移民は順調にアメリカ合衆国に根を張ることになる……。
一方で、ある工事が計画を放棄することになった。パナマ運河である。一説には東海岸を買い占められることを恐れたとも言われているその背景は今だ謎であるが、此によりアメリカ合衆国の水運は大きく停滞することになる。
一方で、大日本帝国はアメリカ合衆国の市民感情を刺激しないためにも満州にも移民を画策していた……。
そんな折である。
「首相っ!!」
「ん、どした」
「満州開拓団より至急の連絡事項です、何卒極秘裏に……!!」
「ん?……これ、嘘じゃないよな?」
「ですから、何卒極秘裏に……!!」
「……わかった、貯金は必要だろうからな」
「何卒……!!」
満州に於いて、油田発掘の前兆とも言える妙な湿地帯が発見されたのはこの年だと言われている。
皇紀2568年、西暦に直して1908年は7月下旬のことである。オスマン帝国において予てより計画されていた青年トルコ革命が露見するに至った!詳細は定かではないが、バルカン半島の危険化を憂いたある将校がスルタンであるアブデュルハミト2世に密告したからだとされている。
これにより将校はスルタン派と革命派に分裂、あわや内戦寸前というところにまで亀裂は発展した。
だが、この騒動はある人物の手により早期に決着がつくことになる。まだロシアの工作より帰還していない明石元二郎らがたまたま通りかかったことにより、日本軍の調停という形とはいえ、内戦になることはなかった。
エルトゥールル号に続き、大日本帝国はまたしてもオスマン帝国に恩を売った形になるが、明石もただ恩を売ったわけではない。彼は、ある密約をオスマン帝国に持ち掛けた。その内容とは……。
「しかし、ロシアで革命が起こるのは想定通りなのでは?」
「革命にも起こし方というものが存在しますので」
「はあ……なんにせよ、否とは言えませんな」
「ええ、よろしくお願いします」
通称、「日土協定」と称される世界で初めての防共協定は果たして吉凶やいかに。
まだまだ、元老の藩閥政治の様相を見せていたものの、首相には予想外の人物が成ることになる……。
「しかし、予想外だったな。まさか会津出身者が首相になるとは」
「ああ、山県は怒髪天を衝くだろうが、選挙の結果だ。やむを得まい」
「それはそうと、次の内閣だが……」
……内藤魯一、板垣退助の秘書である。
「宜しかったのですか?」
「アメリカ合衆国への移民が制限されていない現状、別に構わんだろ」
西暦に直して1908年、直前までアメリカかブラジルかで迷っていた移民先は、無事アメリカ合衆国に定まった。一方で、帰りの便でアメリカ合衆国より第一次黒人移民を乗せることも決定しており、正式に交換移民制度が決定したと言える。後に、西海岸総ての土地を買い占めたとすら噂される日本人移民は順調にアメリカ合衆国に根を張ることになる……。
一方で、ある工事が計画を放棄することになった。パナマ運河である。一説には東海岸を買い占められることを恐れたとも言われているその背景は今だ謎であるが、此によりアメリカ合衆国の水運は大きく停滞することになる。
一方で、大日本帝国はアメリカ合衆国の市民感情を刺激しないためにも満州にも移民を画策していた……。
そんな折である。
「首相っ!!」
「ん、どした」
「満州開拓団より至急の連絡事項です、何卒極秘裏に……!!」
「ん?……これ、嘘じゃないよな?」
「ですから、何卒極秘裏に……!!」
「……わかった、貯金は必要だろうからな」
「何卒……!!」
満州に於いて、油田発掘の前兆とも言える妙な湿地帯が発見されたのはこの年だと言われている。
皇紀2568年、西暦に直して1908年は7月下旬のことである。オスマン帝国において予てより計画されていた青年トルコ革命が露見するに至った!詳細は定かではないが、バルカン半島の危険化を憂いたある将校がスルタンであるアブデュルハミト2世に密告したからだとされている。
これにより将校はスルタン派と革命派に分裂、あわや内戦寸前というところにまで亀裂は発展した。
だが、この騒動はある人物の手により早期に決着がつくことになる。まだロシアの工作より帰還していない明石元二郎らがたまたま通りかかったことにより、日本軍の調停という形とはいえ、内戦になることはなかった。
エルトゥールル号に続き、大日本帝国はまたしてもオスマン帝国に恩を売った形になるが、明石もただ恩を売ったわけではない。彼は、ある密約をオスマン帝国に持ち掛けた。その内容とは……。
「しかし、ロシアで革命が起こるのは想定通りなのでは?」
「革命にも起こし方というものが存在しますので」
「はあ……なんにせよ、否とは言えませんな」
「ええ、よろしくお願いします」
通称、「日土協定」と称される世界で初めての防共協定は果たして吉凶やいかに。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
江戸時代改装計画
城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。
「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」
頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。
ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。
(何故だ、どうしてこうなった……!!)
自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。
トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。
・アメリカ合衆国は満州国を承認
・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲
・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認
・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い
・アメリカ合衆国の軍備縮小
・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃
・アメリカ合衆国の移民法の撤廃
・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと
確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。
最終兵器陛下
城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
黒く漂う大海原・・・
世界大戦中の近現代
戦いに次ぐ戦い
赤い血しぶきに
助けを求める悲鳴
一人の大統領の死をきっかけに
今、この戦いは始まらない・・・
本能のままに
揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった
もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください!
※更新は不定期になると思います。
小沢機動部隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。
名は小沢治三郎。
年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
楽しんで頂ければ幸いです!
戦国三法師伝
kya
歴史・時代
歴史物だけれども、誰にでも見てもらえるような作品にしていこうと思っています。
異世界転生物を見る気分で読んでみてください。
本能寺の変は戦国の覇王織田信長ばかりではなく織田家当主織田信忠をも戦国の世から葬り去り、織田家没落の危機を迎えるはずだったが。
信忠が子、三法師は平成日本の人間が転生した者だった…
短編歴史小説集
永瀬 史乃
歴史・時代
徒然なるままに日暮らしスマホに向かひて書いた歴史物をまとめました。
一作品2000〜4000字程度。日本史・東洋史混ざっています。
以前、投稿済みの作品もまとめて短編集とすることにしました。
準中華風、遊郭、大奥ものが多くなるかと思います。
表紙は「かんたん表紙メーカー」様HP
にて作成しました。
浅井長政は織田信長に忠誠を誓う
ピコサイクス
歴史・時代
1570年5月24日、織田信長は朝倉義景を攻めるため越後に侵攻した。その時浅井長政は婚姻関係の織田家か古くから関係ある朝倉家どちらの味方をするか迷っていた。
日本が危機に?第二次日露戦争
杏
歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。
なろう、カクヨムでも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる