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日露協約、そして英露協商
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皇紀2567年7月30日、日露戦争に辛くも勝利した大日本帝国と、大国の威厳を見せつけた帝政ロシアは日露協約(第一次)を締結し、以後二年ごとに協約を更新することを条件として互いの特殊権益を初め、清の独立などを認め合った。その協定内容とは以下の通り。
公開協定
日露間及び清との間に結ばれた条約の確認、清国の独立等
秘密協定
満州の相互の利益範囲、大日本帝国の朝鮮半島での権益、ロシアの外蒙古での権益の確認
これで、漸く大日本帝国は坂の上に立つことに成功した。だが、それはまだ立っただけだ。幕末のゴタゴタでだまし取られた金銀や、日露戦争で莫大な借金を作ってしまったことは変わらない。斯くて、大日本帝国は更なる鍛錬に励むことになる……。
1907年8月末、日露戦争の終結に伴い、イギリスはドイツを警戒するためにロシアに協商を持ちかける。所謂「三国協商」である。この協商関係により、ドイツ帝国は窮地に陥ることになる。ビスマルク亡きドイツ帝国は政治的に迷走しており、更には皇帝・ビルヘルム二世は無能である。一見事も無き用には見えた。だが……。
アメリカめ、正気か。
11月16日に大日本帝国へアメリカ合衆国が移民制限を要請するという一報を聞いた国王、エドワード7世は急ぎ当時の首相であるバナマンを呼び出した。彼は人生の最晩年にあっても尚、大英帝国皇帝たらんとした。
「お呼びで御座いましょうか、陛下」
首相といえども皇帝の前では臣下である、如何に大英帝国の座右の銘が「君臨すれども統治せず」とはいえ、限度があった。そう、それだけエドワード7世は怒り心頭に発していた。怯えながらも気丈に要件を聞くバナマン。それに対してエドワード7世は、
「かの元植民地が正気かどうか聞いて参れ!!」
と怒鳴りつけた。元植民地。言うまでも無くアメリカ合衆国のことである。
「……如何なる仕儀に御座いましょうや」
「この一報を見ろ」
「……なんと!」
そこには、アメリカ合衆国が大日本帝国の移民を制限するという旨が素っ破抜かれていた。CIAはMI6をまねた組織であり、SWATもSASをまねたものである。自然、MI6やSASの方が上を行っていた。
「そういうわけだ、いかな「元」植民地とはいえ、主の友に迷惑を掛けることの代償を見せつけてやれ」
この時期、英米間の仲は最悪という言葉すら生温い程の割れ目が走っていた。否、完全にその仲は冷え切っていた。
「しかし……」
それに対して、僅かにも反駁するバナマン。だが、エドワード7世はさらに言葉を続けた。
「解っている、「君臨すれども統治せず」という原則はな。ただ、これを放置してみろ、何が起こる」
「……日米間の戦争でしょうか」
「それで、済めばいいがな……」
エドワード7世は平和を愛するという自身の評判を捨てたくは無かった。そのためには、アメリカ合衆国に対して戦争を仕掛けることも辞さなかった。一見矛盾しているように見えるが、平和とは得てしてそういうものである。
「……畏まりました、然らばアメリカ合衆国めを叱りつけて参ります」
「叱りつける」。それは軍艦の派遣による脅迫すら視野に入れたものであった。無論、さすがにそこまで直接的な手段は憚られたが、それに類することは行うべきであった。
「頼んだぞ。儂とて勅令を出したくは無い」
「御意」
公開協定
日露間及び清との間に結ばれた条約の確認、清国の独立等
秘密協定
満州の相互の利益範囲、大日本帝国の朝鮮半島での権益、ロシアの外蒙古での権益の確認
これで、漸く大日本帝国は坂の上に立つことに成功した。だが、それはまだ立っただけだ。幕末のゴタゴタでだまし取られた金銀や、日露戦争で莫大な借金を作ってしまったことは変わらない。斯くて、大日本帝国は更なる鍛錬に励むことになる……。
1907年8月末、日露戦争の終結に伴い、イギリスはドイツを警戒するためにロシアに協商を持ちかける。所謂「三国協商」である。この協商関係により、ドイツ帝国は窮地に陥ることになる。ビスマルク亡きドイツ帝国は政治的に迷走しており、更には皇帝・ビルヘルム二世は無能である。一見事も無き用には見えた。だが……。
アメリカめ、正気か。
11月16日に大日本帝国へアメリカ合衆国が移民制限を要請するという一報を聞いた国王、エドワード7世は急ぎ当時の首相であるバナマンを呼び出した。彼は人生の最晩年にあっても尚、大英帝国皇帝たらんとした。
「お呼びで御座いましょうか、陛下」
首相といえども皇帝の前では臣下である、如何に大英帝国の座右の銘が「君臨すれども統治せず」とはいえ、限度があった。そう、それだけエドワード7世は怒り心頭に発していた。怯えながらも気丈に要件を聞くバナマン。それに対してエドワード7世は、
「かの元植民地が正気かどうか聞いて参れ!!」
と怒鳴りつけた。元植民地。言うまでも無くアメリカ合衆国のことである。
「……如何なる仕儀に御座いましょうや」
「この一報を見ろ」
「……なんと!」
そこには、アメリカ合衆国が大日本帝国の移民を制限するという旨が素っ破抜かれていた。CIAはMI6をまねた組織であり、SWATもSASをまねたものである。自然、MI6やSASの方が上を行っていた。
「そういうわけだ、いかな「元」植民地とはいえ、主の友に迷惑を掛けることの代償を見せつけてやれ」
この時期、英米間の仲は最悪という言葉すら生温い程の割れ目が走っていた。否、完全にその仲は冷え切っていた。
「しかし……」
それに対して、僅かにも反駁するバナマン。だが、エドワード7世はさらに言葉を続けた。
「解っている、「君臨すれども統治せず」という原則はな。ただ、これを放置してみろ、何が起こる」
「……日米間の戦争でしょうか」
「それで、済めばいいがな……」
エドワード7世は平和を愛するという自身の評判を捨てたくは無かった。そのためには、アメリカ合衆国に対して戦争を仕掛けることも辞さなかった。一見矛盾しているように見えるが、平和とは得てしてそういうものである。
「……畏まりました、然らばアメリカ合衆国めを叱りつけて参ります」
「叱りつける」。それは軍艦の派遣による脅迫すら視野に入れたものであった。無論、さすがにそこまで直接的な手段は憚られたが、それに類することは行うべきであった。
「頼んだぞ。儂とて勅令を出したくは無い」
「御意」
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