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「キスしてもいい?」
「それ聞くのかっこ悪いよ。そういうのは言わないで突然した方がかっこいいよ」
そう口にしたマリナは男の唇に優しくキスをした。
バーカウンターに2人並んで座り、微笑み合う。
男は顔を少し赤らめて、驚きながらも愛しそうにマリナを見つめた。
「今日はここまで、大人しく楽しんでってね」
男は彼女に見惚れたまま、頷いた。
マリナはフロアからバックヤードに向かおうとした時、腕を掴まれた。
「あいつのどこがいいの? 」
マリナの耳元で囁いた男は首にキスをしてから手を離す。
「あんただけは無理」
マリナはそのまま姿を消す。
男は眉を持ち上げ、ため息をつくとマリナの後ろを追いかけた。
「俺らしくないけど……」
「何してんのよ」
男はマリナを抱きかかえたまま、バックヤードの狭い部屋に入り、彼女を下ろすと、後ろ手で鍵を閉めた。
「やめてよ、仕事中よ。あんたの気まぐれに付き合ってる暇はないの」
「いいから、黙って。俺を信じてくれって」
「あんたのどこを信じられんのよ」
男はマリナを抱き上げテーブルに座らせると、キスをする。
「あんたって、相変わらず最低ね」
「お前も知っての通りだよ。
でも、俺はお前を愛してるのに、それを知ってて目の前で他の奴とキスしたんだから、お仕置きは必要でしょ」
「私はあんたを愛してないもの」
「ひでえなぁ。お前がいたら俺はお前だけでいいのに」
キスは首筋から胸まで下りてくる。
セーターを上まで捲り上げられた時、マリナは男の顔に唾を吐いた。
「なんてことすんだよ、激しい女だな。余計に燃えるね」
男は顔を拭う。
「悪いけど、あんたに抱かれるつもりはないの」
マリナは鍵を開け、再びフロアに戻り、
DJブースに立つ。
「ロイはあんたにまだ夢中なの? 」
同じDJ仲間のミミは眉間にしわを寄せこちらをみた。
「勘弁してよ。好きでもない男から言い寄られるほど不幸せなことはないわよ」
「まぁ、そうね。
まぁでも一回ぐらい試してみてもいいんじゃないの? 」
「笑わせないでよ。あいつからもらえるのは病気ぐらいじゃない?試す気も起きないわ
それより、私の愛しいタバコ休憩を奪われた事を心配してくんない? 」
「ははは、それは残念。
もう時間だもんね。あとは任せた、私はダーリン来てるから、あんたの曲で楽しませてもらうわ 」
「お熱いことで」
もう本当に腹がたつ。
私はDJ、フロアを盛り上げるのが仕事。
ストレスを感じてる場合じゃない。
フロアに集中しなきゃ、視線を上げるとロイは別の女と話していた。
ほら、やっぱり最低男だ。
絶対にあんな奴には近づかない。
私のかけた曲で人々は踊る、笑顔で二度とないこの時間を楽しんでるのを見てるのが私の何よりの楽しみ。
朝がこなければいいのに……
明日は土曜だから、みんなも盛り上がってる。
「はい、お酒持ってきた。
そろそろ、かわるよ。」
「ミミ、ありがと」
私は大好きなテキーラトニックの入ったグラスを持ったままバックヤードに戻り、煙草を吸いこんだ。
吐き出した白い煙が部屋の天井に向かって消えていく、何度か繰り返してグラスに口をつけると、ロイがやってきた。
「もう来ないでよ」
「少し話すぐらいはいいだろ」
「話したくない」
「つれないなぁ。前からだけど、気が強いのは変わらんね。そこがマリナの魅力だもんな」
「襲ったと思ったら、今度は私の魅力について語っちゃうわけ?」
「俺らしくないけど、嫉妬した。
悪かった、卑怯だよな」
ロイは壁にもたれて、下を向いた。
酔って眠いならとっととソファ席に行けば?
「酔ってねぇし、まだ3杯目だよ」
私より少ないじゃん
煙草を吸いながら、
どこかで嗅いだことがある……
ロイの香水だろうか?
「ねぇ、その香りなんてやつ? 」
「気づいた?遠坂のつけてたやつ」
あぁ……。
そっか、この匂いは彼がつけていたやつだ。
私が好きだった男だ。
憧れの存在でもあったが、突然彼は海外に行ってしまった。
彼らしいといえば彼らしいけど、私には彼を止めることなんて出来る訳もなかった。
彼の魅力は何にも囚われず自由であり続けることだったから。
「おまえがいい香りだったっていってたろ」
「無神経だね、あんたって」
「え、なにが?え、嫌いなの? 」
私が遠坂を好きだったなんて誰にも言ってないし、誰にも気づかれていなかったろう。
でも、遠坂だけは気付いていて、
私を抱いた翌朝彼は私が寝ている間に海外へと飛び立った。
簡単な置き手紙だけを残して。
あれから2年が経つけど、連絡はない。
「その香りはだいっきらい」
「まじかよ。シャワー浴びてくる」
「どこにあんのよ?ははは」
「お、やっと笑ってくれた」
ロイは駆け寄り、マリナの両肩に手を置いた
「その笑顔だよ。その笑顔が俺は好きなんだよ。天使みたいなその」
「あんたどこに手を置いてんの
調子乗んないで、離れて」
「悪い悪い。離れまーす
でも、まじでお前が最近笑わなくなってるから、俺は心配してたんだよ
笑わないってか、笑えなくなってる感じ」
「面白くなきゃ人間笑えないでしょ
そろそろ、ミミとかわらないと」
私は席を立ち上がろうとした時、
一瞬遠坂の笑顔が頭に浮かんだ。
2年も経ってるのに、記憶の中では子供みたいな顔で笑ってた。
「それ聞くのかっこ悪いよ。そういうのは言わないで突然した方がかっこいいよ」
そう口にしたマリナは男の唇に優しくキスをした。
バーカウンターに2人並んで座り、微笑み合う。
男は顔を少し赤らめて、驚きながらも愛しそうにマリナを見つめた。
「今日はここまで、大人しく楽しんでってね」
男は彼女に見惚れたまま、頷いた。
マリナはフロアからバックヤードに向かおうとした時、腕を掴まれた。
「あいつのどこがいいの? 」
マリナの耳元で囁いた男は首にキスをしてから手を離す。
「あんただけは無理」
マリナはそのまま姿を消す。
男は眉を持ち上げ、ため息をつくとマリナの後ろを追いかけた。
「俺らしくないけど……」
「何してんのよ」
男はマリナを抱きかかえたまま、バックヤードの狭い部屋に入り、彼女を下ろすと、後ろ手で鍵を閉めた。
「やめてよ、仕事中よ。あんたの気まぐれに付き合ってる暇はないの」
「いいから、黙って。俺を信じてくれって」
「あんたのどこを信じられんのよ」
男はマリナを抱き上げテーブルに座らせると、キスをする。
「あんたって、相変わらず最低ね」
「お前も知っての通りだよ。
でも、俺はお前を愛してるのに、それを知ってて目の前で他の奴とキスしたんだから、お仕置きは必要でしょ」
「私はあんたを愛してないもの」
「ひでえなぁ。お前がいたら俺はお前だけでいいのに」
キスは首筋から胸まで下りてくる。
セーターを上まで捲り上げられた時、マリナは男の顔に唾を吐いた。
「なんてことすんだよ、激しい女だな。余計に燃えるね」
男は顔を拭う。
「悪いけど、あんたに抱かれるつもりはないの」
マリナは鍵を開け、再びフロアに戻り、
DJブースに立つ。
「ロイはあんたにまだ夢中なの? 」
同じDJ仲間のミミは眉間にしわを寄せこちらをみた。
「勘弁してよ。好きでもない男から言い寄られるほど不幸せなことはないわよ」
「まぁ、そうね。
まぁでも一回ぐらい試してみてもいいんじゃないの? 」
「笑わせないでよ。あいつからもらえるのは病気ぐらいじゃない?試す気も起きないわ
それより、私の愛しいタバコ休憩を奪われた事を心配してくんない? 」
「ははは、それは残念。
もう時間だもんね。あとは任せた、私はダーリン来てるから、あんたの曲で楽しませてもらうわ 」
「お熱いことで」
もう本当に腹がたつ。
私はDJ、フロアを盛り上げるのが仕事。
ストレスを感じてる場合じゃない。
フロアに集中しなきゃ、視線を上げるとロイは別の女と話していた。
ほら、やっぱり最低男だ。
絶対にあんな奴には近づかない。
私のかけた曲で人々は踊る、笑顔で二度とないこの時間を楽しんでるのを見てるのが私の何よりの楽しみ。
朝がこなければいいのに……
明日は土曜だから、みんなも盛り上がってる。
「はい、お酒持ってきた。
そろそろ、かわるよ。」
「ミミ、ありがと」
私は大好きなテキーラトニックの入ったグラスを持ったままバックヤードに戻り、煙草を吸いこんだ。
吐き出した白い煙が部屋の天井に向かって消えていく、何度か繰り返してグラスに口をつけると、ロイがやってきた。
「もう来ないでよ」
「少し話すぐらいはいいだろ」
「話したくない」
「つれないなぁ。前からだけど、気が強いのは変わらんね。そこがマリナの魅力だもんな」
「襲ったと思ったら、今度は私の魅力について語っちゃうわけ?」
「俺らしくないけど、嫉妬した。
悪かった、卑怯だよな」
ロイは壁にもたれて、下を向いた。
酔って眠いならとっととソファ席に行けば?
「酔ってねぇし、まだ3杯目だよ」
私より少ないじゃん
煙草を吸いながら、
どこかで嗅いだことがある……
ロイの香水だろうか?
「ねぇ、その香りなんてやつ? 」
「気づいた?遠坂のつけてたやつ」
あぁ……。
そっか、この匂いは彼がつけていたやつだ。
私が好きだった男だ。
憧れの存在でもあったが、突然彼は海外に行ってしまった。
彼らしいといえば彼らしいけど、私には彼を止めることなんて出来る訳もなかった。
彼の魅力は何にも囚われず自由であり続けることだったから。
「おまえがいい香りだったっていってたろ」
「無神経だね、あんたって」
「え、なにが?え、嫌いなの? 」
私が遠坂を好きだったなんて誰にも言ってないし、誰にも気づかれていなかったろう。
でも、遠坂だけは気付いていて、
私を抱いた翌朝彼は私が寝ている間に海外へと飛び立った。
簡単な置き手紙だけを残して。
あれから2年が経つけど、連絡はない。
「その香りはだいっきらい」
「まじかよ。シャワー浴びてくる」
「どこにあんのよ?ははは」
「お、やっと笑ってくれた」
ロイは駆け寄り、マリナの両肩に手を置いた
「その笑顔だよ。その笑顔が俺は好きなんだよ。天使みたいなその」
「あんたどこに手を置いてんの
調子乗んないで、離れて」
「悪い悪い。離れまーす
でも、まじでお前が最近笑わなくなってるから、俺は心配してたんだよ
笑わないってか、笑えなくなってる感じ」
「面白くなきゃ人間笑えないでしょ
そろそろ、ミミとかわらないと」
私は席を立ち上がろうとした時、
一瞬遠坂の笑顔が頭に浮かんだ。
2年も経ってるのに、記憶の中では子供みたいな顔で笑ってた。
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