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01.ゴーレム工場

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 圭太は、邪神を討伐した時に得たアイテム「時のしずく」を手でもてんでいた。涙ガラスのような形をしており、内部では淡い光が波打っている。
「《叡智》、このアイテムを使うと何ができるんだ」
 圭太が念じると、スキル《叡智》からの声が聞えた。
『このアイテムを消費したうえで、スキル《予知》、《予言》、《空間魔法レベル10》、《時魔法レベル10》のスキルを併用すれば、500年後までのタイムトラベルが可能となります。任意のタイミング、もしくは3日経過すると、自動的に現代へ戻ります』
「つまり、未来かつ三日限定のタイムマシンみたいなものか」
『そのように考えていただいて構いません』
 魔王軍幹部を全滅させ、四天王を消し去り、魔王に圧勝し、魔王が呼び覚ました邪神にも打ち勝った。敵対する国は全て懐柔。もはや、圭太を邪魔する者はいない。
 建国した国──カルマ国の領土は既に日本国を超える広さとなっている。現代知識と、チートスキル《叡智》で得た情報を惜しみなく用いた結果、生活・技術水準も現代と大差ないレベルにまで上がっていた。この世界に存在する八割以上が傘下であり、それ以外の国もカルマ国と友好関係。実質世界を支配したも同然だった。
 現存する魔物やダンジョンも全て、圭太の仲間たちと、その部下であれば容易に攻略できる。カルマ国は、下級兵士ですらB級冒険者レベルの戦闘力を有す。軍隊としての強さは、全盛期の魔王軍を遥かに超える。その上、単独で国を制圧できる存在が少なくとも十人以上いる。古参の仲間は、全員が伝説級の武器をフル装備している。万が一死者が出ようと《リザレクション》を使えば容易に蘇生できる。
 仮に、邪神のような規格外が現れようと、圭太の敵ではない。さらに、あと数年もすれば、仲間たちだけで邪神程度は倒せるようになる。《予知》をはじめとした未来予測スキルの情報を、《叡智》で演算した結果なので、間違いない。
 最強になった。ハーレムを築き上げた。欲しいアイテムも全て手に入った。寝てるだけでも、一生遊んで暮らせるだけの金が、毎日銀行に入金される。国の運営やもろもろの引継ぎも済んでいる。細々した面倒な意志決定は、全部《叡知》に任せればいい。
「何もかも成し遂げてしまって、暇していたところだ。《叡智》よ、僕は500年後のこの国へ、タイムトラベルしたい」
《タイムトラベルは一度だけしかできません。本当によろしいでしょうか》
「構わない。やってくれ」

 暗い工場の一角。
「《叡智》、ここはどこだ?」
『検閲済み』
「は?」
『検閲済み』
「検閲済み? どういうことだ」
『検閲済み』
 何回試してみても《検閲済み》としか返ってこなかった。ステータスオープンすらできない。
「こんなこと、一度もなかった」
 何かがベルトコンベアにのって流れてくる。その正体をみたとき、圭太はこおりついた。
「なっ……」
 子供だ。子供がまるで精肉店の肉のように並べられ、ベルトコンベアに乗ってどこかへむかっている。
「いったい何なんだ、ここは?」
 奥へ進むと、巨大な、かまどのようなものが設置されていた。子供たちはかまどの口から中へと入っていく。内部は赤々と燃えており、様子は見えない。
 かまどの反対側にまわる。かまどの後ろから幾本ものレールがのびている。そのうえを、小指大の透明なカプセルがじゃらじゃらところがっていく。カプセルの中は淡くかがやいており、何らかのエネルギーで満たされているようだった。
「こ、こんなこと、許されるはずが」
「カプセルは、我々ゴーレムの素材や動力になったり、武器に加工されたりします」
「ぎゃっ」
「変な気は起こさないように」
 野太い声におどろき、振り向くと、エルフの魔術師がいた。反射的に《鑑定》のスキルを使う。《叡智》や他十以上のスキルのサポートを受けているため、邪神にすら防がれなかったものだが……。
『鑑定不能』
「お前は一体何なんだ」
 エルフは己の頬を突っ張った。そのまま横にうごかすと、引き戸のように顔がひらいた。
「うわぁぁぁあ!?」
 内部は複雑な文様――おそらくは術式――が描かれた機械で埋めつくされている。その隙間を、微細な粒子が満たしていた。
 おそらく、想像を絶する技術で、彼は作られているのだろう。圭太は深く考えるのをやめた。
 エルフを模したゴーレムは、顔を元に戻すとほほえんだ。
「ようこそ。ネオカルマポリスへ。総統閣下のご指示により、案内させていただきます。まずはこちらをご覧ください」
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