金色竜は空に恋う

兎杜唯人

文字の大きさ
上 下
38 / 73

母からの手紙 2

しおりを挟む
ノエルはぼんやりと窓のそばに腰を下ろして外を見つめている。
ディディエとシシリィは声をかけられずにいた。
本当ならば声をかけるべきだろうとは思っている。しかし、何と声をかけていいのかわからないのだ。


「…ディディ」
「俺はこういうのが苦手だってわかってるだろ」
「…そうだね。じゃぁ、ディディは外ね」




ディディエの体を押して部屋の外に追い出せばシシリィはドアを閉めてしまう。
追い出されたディディエは頭をかき、その場を離れていった。
シシリィはノエルに近づくも声をかけあぐねていた。
声をかけられない代わりにノエルの反対側に腰を下ろせばノエルの背中に寄りかかった。


「……竜の一族であると突き付けられて…どうしたらいいかわからない」

ぽつりとノエルが言った。
シシリィは何も返事をしない。

「怖い…」
「怖くないよ。俺達がいる。俺、正直なところノエルがどんどん好きになる。初めてのことに驚く顔も、笑う顔も気持ちよさそうな顔も全部かわいいし、もっとって思うから。いろんなこと知っていって、もっとノエルの可愛い顔が見たい」
「…シシリィはすぐに俺のことをかわいいというんだな」
「かわいいよ。知らないことに驚く顔なんて俺にはとっても新鮮だもん。ノエルは何かしたいことある?いっぱいやろうよ。楽しいことあればきっと心も強くなるから」

シシリィと向き合うノエルの瞳はわずかに揺れた。
にこにことしているシシリィに手を伸ばしてぎゅっと抱き着けばシシリィも抱きしめ返す。
とくとくとシシリィの胸の中で鼓動が感じられる。



「外で、いろんなものを見たい。俺は今までこの鱗のこともあって外にあまり出なかったから、あまり物事を知らないんだ」
「うんうん」
「あと、好きなものを見つけたい。シシリィとディディエの好きなものも知って、いつかプレゼントしてみたい」


ノエルの言葉にシシリィは目を丸くして、それからすぐに笑顔になる。抱きしめてくる腕に力がこもり少々息苦しくなる。
だがいやではなかった。

「いいよ、いっぱい教えてあげる。俺ねぇ、ディディのふわっふわの毛が好き」
「それは俺もわかる。転化したディディエに乗せてもらったんだ。虎ってすごいんだな。筋肉が」
「いいなぁ。俺あんまりディディにまたがったことないんだよね…夜以外」


ぽつりとつぶやいたシシリィはその意味が分からないのか首をかしげるノエルの耳元に口を寄せた。



「ノエルも知ってるでしょ、ディディのアレ…俺から咥えこむためにまたがったの」


耳まで赤くなったノエルを見てシシリィは笑う。からかいが含まれていると悟れば少し膨れて顔を背ける。
冗談だよ、というものの、絶対冗談などではないとわかる。

「ノエル、こっち見て?そっぽ向いてると悲しくなっちゃう」
「シシリィがからかうからいやだ」
「ごめんねってば…ほらぁ、ね?こっち見て。ノエルの好きなもの教えて?ディディと一緒に聞くから」


ノエルのつむじに口づけてシシリィは立ち上がる。
ノエルはその手を引いてシシリィを繋ぎ止めた。振り向いたシシリィはノエルの瞳に見え隠れする感情に気づく。
そばに近寄り腕を伸ばせばノエルはシシリィの体を抱きとめた。



「今は、シシリィがほしい」


目を丸くしたシシリィはディディエのことを考える。
シシリィの胸元に頬を寄せたノエルからわずかに甘い香りが漂う。

「…ディディが待ってるから一回だけね?」
「ん、わかった」

うなずいたノエルをベッドに誘う。
シシリィに引き寄せられ二人でベッドに倒れ込む。
緊張しながらシシリィに口づけた。
好きだ、とこぼれ落ちたノエルの言葉にシシリィが嬉しげな笑みを浮かべる。
今一度二人の唇が重なり、互いに快楽の中へと落ちていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

あの日、北京の街角で4 大連デイズ

ゆまは なお
BL
『あの日、北京の街角で』続編。 先に『あの日、北京の街角で』をご覧くださいm(__)m https://www.alphapolis.co.jp/novel/28475021/523219176 大連で始まる孝弘と祐樹の駐在員生活。 2人のラブラブな日常をお楽しみください。

旦那様と僕

三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。 縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。 本編完結済。 『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

ニケの宿

水無月
BL
危険地帯の山の中。数少ない安全エリアで宿を営む赤犬族の犬耳幼子は、吹雪の中で白い青年を拾う。それは滅んだはずの種族「人族」で。 しっかり者のわんことあまり役に立たない青年。それでも青年は幼子の孤独をゆるやかに埋めてくれた。 異なる種族同士の、共同生活。 ※本作はちいさい子と青年のほんのりストーリが軸なので、過激な描写は控えています。バトルシーンが多めなので(矛盾)怪我をしている描写もあります。苦手な方はご注意ください。 『BL短編』の方に、この作品のキャラクターの挿絵を投稿してあります。自作です。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

待てって言われたから…

ふみ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。 //今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて… がっつり小スカです。 投稿不定期です🙇表紙は自筆です。 華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)

処理中です...