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母からの手紙 2
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ノエルはぼんやりと窓のそばに腰を下ろして外を見つめている。
ディディエとシシリィは声をかけられずにいた。
本当ならば声をかけるべきだろうとは思っている。しかし、何と声をかけていいのかわからないのだ。
「…ディディ」
「俺はこういうのが苦手だってわかってるだろ」
「…そうだね。じゃぁ、ディディは外ね」
ディディエの体を押して部屋の外に追い出せばシシリィはドアを閉めてしまう。
追い出されたディディエは頭をかき、その場を離れていった。
シシリィはノエルに近づくも声をかけあぐねていた。
声をかけられない代わりにノエルの反対側に腰を下ろせばノエルの背中に寄りかかった。
「……竜の一族であると突き付けられて…どうしたらいいかわからない」
ぽつりとノエルが言った。
シシリィは何も返事をしない。
「怖い…」
「怖くないよ。俺達がいる。俺、正直なところノエルがどんどん好きになる。初めてのことに驚く顔も、笑う顔も気持ちよさそうな顔も全部かわいいし、もっとって思うから。いろんなこと知っていって、もっとノエルの可愛い顔が見たい」
「…シシリィはすぐに俺のことをかわいいというんだな」
「かわいいよ。知らないことに驚く顔なんて俺にはとっても新鮮だもん。ノエルは何かしたいことある?いっぱいやろうよ。楽しいことあればきっと心も強くなるから」
シシリィと向き合うノエルの瞳はわずかに揺れた。
にこにことしているシシリィに手を伸ばしてぎゅっと抱き着けばシシリィも抱きしめ返す。
とくとくとシシリィの胸の中で鼓動が感じられる。
「外で、いろんなものを見たい。俺は今までこの鱗のこともあって外にあまり出なかったから、あまり物事を知らないんだ」
「うんうん」
「あと、好きなものを見つけたい。シシリィとディディエの好きなものも知って、いつかプレゼントしてみたい」
ノエルの言葉にシシリィは目を丸くして、それからすぐに笑顔になる。抱きしめてくる腕に力がこもり少々息苦しくなる。
だがいやではなかった。
「いいよ、いっぱい教えてあげる。俺ねぇ、ディディのふわっふわの毛が好き」
「それは俺もわかる。転化したディディエに乗せてもらったんだ。虎ってすごいんだな。筋肉が」
「いいなぁ。俺あんまりディディにまたがったことないんだよね…夜以外」
ぽつりとつぶやいたシシリィはその意味が分からないのか首をかしげるノエルの耳元に口を寄せた。
「ノエルも知ってるでしょ、ディディのアレ…俺から咥えこむためにまたがったの」
耳まで赤くなったノエルを見てシシリィは笑う。からかいが含まれていると悟れば少し膨れて顔を背ける。
冗談だよ、というものの、絶対冗談などではないとわかる。
「ノエル、こっち見て?そっぽ向いてると悲しくなっちゃう」
「シシリィがからかうからいやだ」
「ごめんねってば…ほらぁ、ね?こっち見て。ノエルの好きなもの教えて?ディディと一緒に聞くから」
ノエルのつむじに口づけてシシリィは立ち上がる。
ノエルはその手を引いてシシリィを繋ぎ止めた。振り向いたシシリィはノエルの瞳に見え隠れする感情に気づく。
そばに近寄り腕を伸ばせばノエルはシシリィの体を抱きとめた。
「今は、シシリィがほしい」
目を丸くしたシシリィはディディエのことを考える。
シシリィの胸元に頬を寄せたノエルからわずかに甘い香りが漂う。
「…ディディが待ってるから一回だけね?」
「ん、わかった」
うなずいたノエルをベッドに誘う。
シシリィに引き寄せられ二人でベッドに倒れ込む。
緊張しながらシシリィに口づけた。
好きだ、とこぼれ落ちたノエルの言葉にシシリィが嬉しげな笑みを浮かべる。
今一度二人の唇が重なり、互いに快楽の中へと落ちていった。
ディディエとシシリィは声をかけられずにいた。
本当ならば声をかけるべきだろうとは思っている。しかし、何と声をかけていいのかわからないのだ。
「…ディディ」
「俺はこういうのが苦手だってわかってるだろ」
「…そうだね。じゃぁ、ディディは外ね」
ディディエの体を押して部屋の外に追い出せばシシリィはドアを閉めてしまう。
追い出されたディディエは頭をかき、その場を離れていった。
シシリィはノエルに近づくも声をかけあぐねていた。
声をかけられない代わりにノエルの反対側に腰を下ろせばノエルの背中に寄りかかった。
「……竜の一族であると突き付けられて…どうしたらいいかわからない」
ぽつりとノエルが言った。
シシリィは何も返事をしない。
「怖い…」
「怖くないよ。俺達がいる。俺、正直なところノエルがどんどん好きになる。初めてのことに驚く顔も、笑う顔も気持ちよさそうな顔も全部かわいいし、もっとって思うから。いろんなこと知っていって、もっとノエルの可愛い顔が見たい」
「…シシリィはすぐに俺のことをかわいいというんだな」
「かわいいよ。知らないことに驚く顔なんて俺にはとっても新鮮だもん。ノエルは何かしたいことある?いっぱいやろうよ。楽しいことあればきっと心も強くなるから」
シシリィと向き合うノエルの瞳はわずかに揺れた。
にこにことしているシシリィに手を伸ばしてぎゅっと抱き着けばシシリィも抱きしめ返す。
とくとくとシシリィの胸の中で鼓動が感じられる。
「外で、いろんなものを見たい。俺は今までこの鱗のこともあって外にあまり出なかったから、あまり物事を知らないんだ」
「うんうん」
「あと、好きなものを見つけたい。シシリィとディディエの好きなものも知って、いつかプレゼントしてみたい」
ノエルの言葉にシシリィは目を丸くして、それからすぐに笑顔になる。抱きしめてくる腕に力がこもり少々息苦しくなる。
だがいやではなかった。
「いいよ、いっぱい教えてあげる。俺ねぇ、ディディのふわっふわの毛が好き」
「それは俺もわかる。転化したディディエに乗せてもらったんだ。虎ってすごいんだな。筋肉が」
「いいなぁ。俺あんまりディディにまたがったことないんだよね…夜以外」
ぽつりとつぶやいたシシリィはその意味が分からないのか首をかしげるノエルの耳元に口を寄せた。
「ノエルも知ってるでしょ、ディディのアレ…俺から咥えこむためにまたがったの」
耳まで赤くなったノエルを見てシシリィは笑う。からかいが含まれていると悟れば少し膨れて顔を背ける。
冗談だよ、というものの、絶対冗談などではないとわかる。
「ノエル、こっち見て?そっぽ向いてると悲しくなっちゃう」
「シシリィがからかうからいやだ」
「ごめんねってば…ほらぁ、ね?こっち見て。ノエルの好きなもの教えて?ディディと一緒に聞くから」
ノエルのつむじに口づけてシシリィは立ち上がる。
ノエルはその手を引いてシシリィを繋ぎ止めた。振り向いたシシリィはノエルの瞳に見え隠れする感情に気づく。
そばに近寄り腕を伸ばせばノエルはシシリィの体を抱きとめた。
「今は、シシリィがほしい」
目を丸くしたシシリィはディディエのことを考える。
シシリィの胸元に頬を寄せたノエルからわずかに甘い香りが漂う。
「…ディディが待ってるから一回だけね?」
「ん、わかった」
うなずいたノエルをベッドに誘う。
シシリィに引き寄せられ二人でベッドに倒れ込む。
緊張しながらシシリィに口づけた。
好きだ、とこぼれ落ちたノエルの言葉にシシリィが嬉しげな笑みを浮かべる。
今一度二人の唇が重なり、互いに快楽の中へと落ちていった。
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