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第1章
1.興味本位で…
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日曜日の昼下がり。
新山遥可は、友人2人と街をブラブラしていた。
ふと、駅前のスクランブル交差点が目に入った。
3年前の出来事が蘇る…
あの日、ここを友人の鈴川理斗と原龍我と3人で歩いていた。
理斗はΩ、龍我はαの恋人同士で、とても幸せそうだった。
そのとき…
1人の男が、突然理斗の前に立ちはだかった。
何かを言っているようなのだが、こちらには聞こえない。
瞬間、男の腰のあたりに光るものが見えた。
ナイフが理斗の方へ向かうのを、龍我が間に入って…崩れ落ちた。
地面に広がる血。
人々の悲鳴。
クラクションの音。
理斗は、動転して龍我に縋り泣いていた。
俺は、何とか正気を保って救急車を呼んだ。
近づくサイレンの音。
運ばれる意識のない龍我。
泣き叫ぶ理斗。
俯いて祈るだけだった遥可自身。
手術室から出てきた医師の言葉を聞くまで生きた心地がしなかった、最悪の日…
そういえば、そろそろ犯人が出所した頃だよな?
なぜか、そんなことまで思い出す。
自分たちの出身校である中高一貫校の後輩だった。
事件当時もまだ高校生だった。
何を考えているか分からない目で、他人事のように自分に下された判決を聞いていた男…
あいつ、今何やってんだろ…?
「なあ、最近Ω買ってる?」
友人の1人が聞く。
「いや、最近はご無沙汰だな。卒論が忙しかったから」
遥可が答えると友人たちが笑う。
「あはは。真面目ー!」
遥可はまたΩを店で買って抱きたくなってくる。
もう1人の友人が言う。
「最近はαも売りやってる奴がいるんだって」
「α?それって男?」
遥可は興味を持って聞く。
「そう。〇〇町のZって店なんだけど、αなのにΩみたいに入れたら感じて啼くし、グイグイ締め付けてくるんだって」
説明する友人にもう1人の友人が口を挟む。
「あの店って、ガチでヤバい店じゃん。店にいたヤツが急に行方不明になるっていう…」
遥可もコメントする。
「海に沈められるとか、臓器売買で海外に売られるとか、言うね…」
最初にαの話を始めた友人がニヤリと笑う。
「そのガチでヤバい店の、今一番の目玉品がそのαなんだって。誰でも買えるわけじゃないよ。有名人とかその家族だけが買うのを許されるって」
「えー、俺買えねーじゃん。遥可は買えるだろうけど」
もう1人の友人が遥可の方を見て言う。
「買えたとしても、高そう…」
遥可の言葉に、友人は笑って言う。
「もちろん高いけど、結構何しても良いらしい。父さんの知り合いの社長さんは、首絞めて何度も意識飛ばしたって。身体にカッターで名前彫った人もいるらしい」
それを聞いたもう1人の友人は引いてしまう。
「怖っ…」
「まっ、俺たちが触れてはいけない世界かもな」
話を始めた友人は、まとめようとする。
そこで、遥可は意外なことを言い出す。
「俺買ってみようかな」
「えっ?」
信じられない、といった目で友人たちは遥可を見る。
「エリート階級のはずのαが何でそこまで堕ちたのか興味ある」
「興味本位で近づかない方が良いよ…」
心配そうに友人は忠告する。
「どんな身体なのか興味あるし」
「やっぱり興味本位じゃん」
友人の言葉に遥可は笑う。
「しょうがないじゃん。俺の身体が興味津々なんだから。合わせてみたいの」
「あはは。遥可らしいや」
友人たちも笑う。
これからどこ行く?なんて会話しながら、日曜日の緩い時間が過ぎていく…
新山遥可は、友人2人と街をブラブラしていた。
ふと、駅前のスクランブル交差点が目に入った。
3年前の出来事が蘇る…
あの日、ここを友人の鈴川理斗と原龍我と3人で歩いていた。
理斗はΩ、龍我はαの恋人同士で、とても幸せそうだった。
そのとき…
1人の男が、突然理斗の前に立ちはだかった。
何かを言っているようなのだが、こちらには聞こえない。
瞬間、男の腰のあたりに光るものが見えた。
ナイフが理斗の方へ向かうのを、龍我が間に入って…崩れ落ちた。
地面に広がる血。
人々の悲鳴。
クラクションの音。
理斗は、動転して龍我に縋り泣いていた。
俺は、何とか正気を保って救急車を呼んだ。
近づくサイレンの音。
運ばれる意識のない龍我。
泣き叫ぶ理斗。
俯いて祈るだけだった遥可自身。
手術室から出てきた医師の言葉を聞くまで生きた心地がしなかった、最悪の日…
そういえば、そろそろ犯人が出所した頃だよな?
なぜか、そんなことまで思い出す。
自分たちの出身校である中高一貫校の後輩だった。
事件当時もまだ高校生だった。
何を考えているか分からない目で、他人事のように自分に下された判決を聞いていた男…
あいつ、今何やってんだろ…?
「なあ、最近Ω買ってる?」
友人の1人が聞く。
「いや、最近はご無沙汰だな。卒論が忙しかったから」
遥可が答えると友人たちが笑う。
「あはは。真面目ー!」
遥可はまたΩを店で買って抱きたくなってくる。
もう1人の友人が言う。
「最近はαも売りやってる奴がいるんだって」
「α?それって男?」
遥可は興味を持って聞く。
「そう。〇〇町のZって店なんだけど、αなのにΩみたいに入れたら感じて啼くし、グイグイ締め付けてくるんだって」
説明する友人にもう1人の友人が口を挟む。
「あの店って、ガチでヤバい店じゃん。店にいたヤツが急に行方不明になるっていう…」
遥可もコメントする。
「海に沈められるとか、臓器売買で海外に売られるとか、言うね…」
最初にαの話を始めた友人がニヤリと笑う。
「そのガチでヤバい店の、今一番の目玉品がそのαなんだって。誰でも買えるわけじゃないよ。有名人とかその家族だけが買うのを許されるって」
「えー、俺買えねーじゃん。遥可は買えるだろうけど」
もう1人の友人が遥可の方を見て言う。
「買えたとしても、高そう…」
遥可の言葉に、友人は笑って言う。
「もちろん高いけど、結構何しても良いらしい。父さんの知り合いの社長さんは、首絞めて何度も意識飛ばしたって。身体にカッターで名前彫った人もいるらしい」
それを聞いたもう1人の友人は引いてしまう。
「怖っ…」
「まっ、俺たちが触れてはいけない世界かもな」
話を始めた友人は、まとめようとする。
そこで、遥可は意外なことを言い出す。
「俺買ってみようかな」
「えっ?」
信じられない、といった目で友人たちは遥可を見る。
「エリート階級のはずのαが何でそこまで堕ちたのか興味ある」
「興味本位で近づかない方が良いよ…」
心配そうに友人は忠告する。
「どんな身体なのか興味あるし」
「やっぱり興味本位じゃん」
友人の言葉に遥可は笑う。
「しょうがないじゃん。俺の身体が興味津々なんだから。合わせてみたいの」
「あはは。遥可らしいや」
友人たちも笑う。
これからどこ行く?なんて会話しながら、日曜日の緩い時間が過ぎていく…
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