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25.久しぶり②

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 輝美は蓮の目を見て言う。





「はっきり言うけど、累と番になる気はないよ」

 自分の声が刺さって痛い、と輝美は感じる。

「俺は、お前らに犯されたことが忘れられない。Ωの自分の無力さを痛感した、あの日のことが…あんな思いを一生感じて生きていくのは嫌だよ」





 蓮は大きな声で笑いだす。

 腹を抱えて、おかしくてたまらない、といった様子で。

「何笑ってんの?」

 輝美は蓮を睨む。

 蓮は慌てて口を押さえる。

「いや…ごめん…別に輝美くんが面白いこと言ったわけじゃないよ…」



 蓮は笑いを抑えきれずに、口の端に笑みを残す。

「ただ、あまりにも答えが累の予想通りで、それがツボっただけ。累、ずっと言ってるもん。『輝美くんは俺らを許さないよ。輝美くんは自分を持っているというか、俺に支配されたくない、って気持ちが強いんだ』って」





 輝美はまたズキンと胸が痛くなる。

 7年間も会っていないのに、自分という人間のことを正確に把握している累という運命…

 



「似た者同士だよね、2人。昔は輝美くんが真面目で俺に似てると思ってたけど…違うよな。なんだかんだで俺は楽しく人生送ることが第一で、わりとテキトーなところがある。でも、累と輝美くんは根が真面目で、すっごい 頑固」

「頑固って…」

 輝美がムッとするのを、蓮は楽しそうに見る。

「頑固だよ、輝美くんは。自分を通そうとして、敢えてしんどくなってるところがある。累もそう」

 蓮の目が少し優しくなる。

「累は映画監督志望なんだよね。今はそれなりに有名な監督のところで弟子みたいな感じで働いてる…俳優や女優と常に接してるし、周りは派手に遊んでる人が多い。そんな中で、累は完全に変人扱いだよ。αだし、番もいないのに、Ωに全く興味を持たない。監督にさえ『ちょっとは手出さないと逆に失礼だぞ』って注意されるレベル…」

「そうなんだ…」

「なんか、我が兄ながらいじらしくてさ。報われて欲しいんだよ」





 番になる気などないんだから自分には関係ない人のはずなのに…

 他の人に手を出さない累のことを輝美はなぜか嬉しく思う。





「輝美くんは番になる気はない、って累に伝えとくよ。もしかしたら、ふっきれて他のΩにも目を向けてくれるかもしれない」 



 輝美はなぜか悲しい気持ちになる。



 自分が累を拒絶しているのだから、累が他のΩと番になるのは当たり前なのに…

 気持ちが沈んでしまう。

 画面から目を逸らして、俯く。





 …ふと見ると、蓮がまた笑ってこっちを見ている。

「何だよ?」

「いや、何でもない」

 そう言いながら、笑みを隠しもせずにこっちを見ているのが輝美は腹立たしく思う。



「…とりあえず、累と番にならないんだったら、俺ら兄弟は輝美くんと会うことは永遠に無理だな」

 さらっと蓮は言う。



「基本俺らはO市内で生活してるけど…累なんかは仕事柄あちこち移動してることが多いし、俺も遠出することはある。だから、アプリを使って毎日の予定を輝美くんも見えるように教えるよ。バッタリ会ったら大変だからね」

「なんでそこまで…」



 インターネット上でカレンダーを公開するといっても、わざわざ予定を入力するのは面倒なことだろう、と輝美は思う。



「もう7年も会ってないけど、それでも俺らにとって輝美くんは大切な友達だから。俺らのせいで輝美くんを傷つけてしまうのは、絶対に嫌なんだ。だから、そうならないためにする手間は全然手間とは思わないよ」





 少し近況の話をして別れる。

 画面から蓮の姿が消える。





 随分とあっさりした別れだったな、と輝美は思った。

 もうビデオチャットはしない、と蓮は断言していたのに…

 まるで、再び会うことを確信しているかのような別れ方だった…





 次の日から輝美は毎日アプリで累と蓮の予定をチェックした。





 避けるためにチェックしているだけなのに…

 ここに行けば累に会える…

 なぜか、累のことを考えてしまう。

 



 輝美は以前よりも累のことが気になるようになってしまった。
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