23 / 35
23.忘れられない人
しおりを挟む
突然の伊万里の誘いに輝美は戸惑ったが、心のどこかでこうなることを予感してもいた。
無駄だと思いつつ、聞く。
「マリ、言ってたよね?恋人じゃないからチンポはいれないよ、って」
「気が変わった。テルミンがエロいからチンポ入れたくなった。恋人じゃない人にチンポ 入れたくないから俺の恋人になって欲しい」
平然と伊万里は言う。
「俺はΩの恋人が欲しい。αやβみたいな上下関係のない、対等な恋人が…」
伊万里の肉茎は重力に逆らうように張り詰めている。
輝美は開いていた脚を閉じて、ピンクの花柄の掛け布団で下半身を隠す。
「他にもΩなんていっぱいいるだろ?なんで俺?」
「テルミンは大好きな友達だから、安心して付き合える。性格も良いし、見た目も好きだし、イくところも可愛いし…」
伊万里は微笑みながら羅列する。
「そんなこと言われても…」
輝美は掛け布団をさらに上に引っ張り上げて体を隠そうとする。
それを制止するように伊万里は言う。
「悪いようにはしないよ。俺もΩだけど、発情期の処理は自分でできる。それよりも、俺のチンポでΩの恋人を気持ち良くさせたいんだ…経験あるから、心配しなくて良いよ。手や道具よりも気持ち良くさせてあげる…」
伊万里は言いながら着ていたカットソーと下着のシャツまで脱いでしまう。
その体は完全に「男」だ。
華奢なのに肉が付いているべきところにはしっかり筋肉が載っている。
それでいて、曲線的な「女」らしさもある体…
「俺を恋人として見て。受け入れて。この邪魔な布団を退けて、一つになろう」
布団越しにモノを輝美の下半身に押し付けて伊万里は言う。
伊万里の顔を見ながら輝美は考える。
性的興奮に瞳孔が開いた伊万里の顔は、それでも友達としての理性を保っている。
伊万里の首には鋲の付いた赤い首輪がある。
輝美と同じΩの証。
自分のフェロモンで豹変したりすることのない、同じ性を持つ者。
傷を刻み刻まれて、本能で縛り縛られる関係ではない。
お互いがお互いを思う気持ちだけで結ばれる関係。
伊万里というΩと結ばれるというのは、そういう関係を結ぶということなのかもしれない。
それは輝美には魅力的に思えるものだ。
伊万里の肉棒が自分の後孔を貫くことを、今の輝美は想像できない。
でも、実際貫かれたら、そういうものだと受け入れられるのかもしれない。
今のこの状況だって、つい1ヶ月前までは全く想像もつかなかった。
でも、今では伊万里の扱う指や玩具でイかされて、はしたない姿を晒している。
そんな姿を晒すことに抵抗のない自分がいる。
このまま一線を超えてしまえば…
数十分後には、今とは違う自分が伊万里と笑っているのかもしれない…
輝美がピンクの布団を退けようとした、そのとき…
ビクン、と体の奥が拍動した。
体が何かを思い出したかのように…
記憶がフラッシュバックする。
山の中にある神社の奥で、泥まみれになって泣いている累の姿…
輝美の頭や体を侵食していく、暴力的な花の匂い…
フェロモンによって強制的に変わる累と自分の体を、輝美はずっと憎んできた。
それなのに、体はずっと覚えていたのだ…
一度は繋がったのに離れてしまった、「番」の存在を…
そんな体の記憶などに振り回されたくない、と輝美は抵抗を試みる。
しかし、布団を持つ手が震えてしまう。
下半身から布団を退けることがどうしてもできない。
思い通りに体が動かなくて、情けなくて。
輝美の目から涙が溢れる。
物欲しげに膨らんだ伊万里の一物の前で泣くのは酷い行為だということは分かっているのに、それでも涙は止まらない。
板張りの天井が涙で歪んでいく。
伊万里は立ち上がって言う。
「俺はテルミンのことを知らなさ過ぎたね」
ボクサーパンツを履いて、下着のシャツを着る。
「マリ、ごめん…」
輝美は謝る。
伊万里は輝美の横に仰向けに寝転ぶ。
両手を頭の下に敷く。
「突っ走っちゃった」
輝美は伊万里がもっと傷ついた様子を見せるのかと思っていた。
でも、伊万里は淡々と話す。
「テルミンは優しいから、俺に対して申し訳ないとか思ってるでしょ?そんなの、いらないからね?俺が自分のためにやってることだから」
伊万里はため息を吐く。
「Ω同士でも大丈夫、αなんていらない、って証明したいんだ。そうしないと怖くなっちゃうから…いつか、結局どこかのαと番になって、捨てられて…母さんみたいな馬鹿なΩになってしまうのが…」
「馬鹿なΩって…」
「実際そうだよ。αと番わなければ、番を失って苦しむこともないんだ。本当に馬鹿な話だよ」
伊万里は笑う。
「まあ、大事な友達に恋人になって欲しい、ってチンポ出して頼むのも、馬鹿なヤツのすることかもしれないな」
笑う伊万里の整った横顔を見て輝美は言う。
「今はマリと恋人同士にはなれないや。でも、友達のままでも良いじゃんって思うよ」
横を向いた伊万里と輝美は目が合う。
「もし、マリがどこかのαと番になって、捨てられたら、俺はマリのところに通うよ。今日、マリが俺にしてくれたように、道具でマリをイかせてあげる」
それを聞いた伊万里は感動して泣いてしまう。
大きな目から涙が零れる。
「そんなこと言ってくれたの、テルミンが初めてだよ…」
華奢な体を折って、ピンクの布団を握りしめて泣く伊万里の姿は、小さな女の子のように見える。
輝美は小さな男の子だった累のことを思い出す。
いつかはまた会わないといけない。
そうしないと、この体は納得しない…
輝美は運命というものの重さを感じながら、泣く伊万里を見つめた。
無駄だと思いつつ、聞く。
「マリ、言ってたよね?恋人じゃないからチンポはいれないよ、って」
「気が変わった。テルミンがエロいからチンポ入れたくなった。恋人じゃない人にチンポ 入れたくないから俺の恋人になって欲しい」
平然と伊万里は言う。
「俺はΩの恋人が欲しい。αやβみたいな上下関係のない、対等な恋人が…」
伊万里の肉茎は重力に逆らうように張り詰めている。
輝美は開いていた脚を閉じて、ピンクの花柄の掛け布団で下半身を隠す。
「他にもΩなんていっぱいいるだろ?なんで俺?」
「テルミンは大好きな友達だから、安心して付き合える。性格も良いし、見た目も好きだし、イくところも可愛いし…」
伊万里は微笑みながら羅列する。
「そんなこと言われても…」
輝美は掛け布団をさらに上に引っ張り上げて体を隠そうとする。
それを制止するように伊万里は言う。
「悪いようにはしないよ。俺もΩだけど、発情期の処理は自分でできる。それよりも、俺のチンポでΩの恋人を気持ち良くさせたいんだ…経験あるから、心配しなくて良いよ。手や道具よりも気持ち良くさせてあげる…」
伊万里は言いながら着ていたカットソーと下着のシャツまで脱いでしまう。
その体は完全に「男」だ。
華奢なのに肉が付いているべきところにはしっかり筋肉が載っている。
それでいて、曲線的な「女」らしさもある体…
「俺を恋人として見て。受け入れて。この邪魔な布団を退けて、一つになろう」
布団越しにモノを輝美の下半身に押し付けて伊万里は言う。
伊万里の顔を見ながら輝美は考える。
性的興奮に瞳孔が開いた伊万里の顔は、それでも友達としての理性を保っている。
伊万里の首には鋲の付いた赤い首輪がある。
輝美と同じΩの証。
自分のフェロモンで豹変したりすることのない、同じ性を持つ者。
傷を刻み刻まれて、本能で縛り縛られる関係ではない。
お互いがお互いを思う気持ちだけで結ばれる関係。
伊万里というΩと結ばれるというのは、そういう関係を結ぶということなのかもしれない。
それは輝美には魅力的に思えるものだ。
伊万里の肉棒が自分の後孔を貫くことを、今の輝美は想像できない。
でも、実際貫かれたら、そういうものだと受け入れられるのかもしれない。
今のこの状況だって、つい1ヶ月前までは全く想像もつかなかった。
でも、今では伊万里の扱う指や玩具でイかされて、はしたない姿を晒している。
そんな姿を晒すことに抵抗のない自分がいる。
このまま一線を超えてしまえば…
数十分後には、今とは違う自分が伊万里と笑っているのかもしれない…
輝美がピンクの布団を退けようとした、そのとき…
ビクン、と体の奥が拍動した。
体が何かを思い出したかのように…
記憶がフラッシュバックする。
山の中にある神社の奥で、泥まみれになって泣いている累の姿…
輝美の頭や体を侵食していく、暴力的な花の匂い…
フェロモンによって強制的に変わる累と自分の体を、輝美はずっと憎んできた。
それなのに、体はずっと覚えていたのだ…
一度は繋がったのに離れてしまった、「番」の存在を…
そんな体の記憶などに振り回されたくない、と輝美は抵抗を試みる。
しかし、布団を持つ手が震えてしまう。
下半身から布団を退けることがどうしてもできない。
思い通りに体が動かなくて、情けなくて。
輝美の目から涙が溢れる。
物欲しげに膨らんだ伊万里の一物の前で泣くのは酷い行為だということは分かっているのに、それでも涙は止まらない。
板張りの天井が涙で歪んでいく。
伊万里は立ち上がって言う。
「俺はテルミンのことを知らなさ過ぎたね」
ボクサーパンツを履いて、下着のシャツを着る。
「マリ、ごめん…」
輝美は謝る。
伊万里は輝美の横に仰向けに寝転ぶ。
両手を頭の下に敷く。
「突っ走っちゃった」
輝美は伊万里がもっと傷ついた様子を見せるのかと思っていた。
でも、伊万里は淡々と話す。
「テルミンは優しいから、俺に対して申し訳ないとか思ってるでしょ?そんなの、いらないからね?俺が自分のためにやってることだから」
伊万里はため息を吐く。
「Ω同士でも大丈夫、αなんていらない、って証明したいんだ。そうしないと怖くなっちゃうから…いつか、結局どこかのαと番になって、捨てられて…母さんみたいな馬鹿なΩになってしまうのが…」
「馬鹿なΩって…」
「実際そうだよ。αと番わなければ、番を失って苦しむこともないんだ。本当に馬鹿な話だよ」
伊万里は笑う。
「まあ、大事な友達に恋人になって欲しい、ってチンポ出して頼むのも、馬鹿なヤツのすることかもしれないな」
笑う伊万里の整った横顔を見て輝美は言う。
「今はマリと恋人同士にはなれないや。でも、友達のままでも良いじゃんって思うよ」
横を向いた伊万里と輝美は目が合う。
「もし、マリがどこかのαと番になって、捨てられたら、俺はマリのところに通うよ。今日、マリが俺にしてくれたように、道具でマリをイかせてあげる」
それを聞いた伊万里は感動して泣いてしまう。
大きな目から涙が零れる。
「そんなこと言ってくれたの、テルミンが初めてだよ…」
華奢な体を折って、ピンクの布団を握りしめて泣く伊万里の姿は、小さな女の子のように見える。
輝美は小さな男の子だった累のことを思い出す。
いつかはまた会わないといけない。
そうしないと、この体は納得しない…
輝美は運命というものの重さを感じながら、泣く伊万里を見つめた。
1
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【BL】正統派イケメンな幼馴染が僕だけに見せる顔が可愛いすぎる!
ひつじのめい
BL
αとΩの同性の両親を持つ相模 楓(さがみ かえで)は母似の容姿の為にΩと思われる事が多々あるが、説明するのが面倒くさいと放置した事でクラスメイトにはΩと認識されていたが楓のバース性はαである。
そんな楓が初恋を拗らせている相手はαの両親を持つ2つ年上の小野寺 翠(おのでら すい)だった。
翠に恋人が出来た時に気持ちも告げずに、接触を一切絶ちながらも、好みのタイプを観察しながら自分磨きに勤しんでいたが、実際は好みのタイプとは正反対の風貌へと自ら進んでいた。
実は翠も幼い頃の女の子の様な可愛い楓に心を惹かれていたのだった。
楓がΩだと信じていた翠は、自分の本当のバース性がβだと気づかれるのを恐れ、楓とは正反対の相手と付き合っていたのだった。
楓がその事を知った時に、翠に対して粘着系の溺愛が始まるとは、この頃の翠は微塵も考えてはいなかった。
※作者の個人的な解釈が含まれています。
※Rシーンがある回はタイトルに☆が付きます。
ド天然アルファの執着はちょっとおかしい
のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。
【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
アズ同盟
未瑠
BL
事故のため入学が遅れた榊漣が見たのは、透き通る美貌の水瀬和珠だった。
一目惚れした漣はさっそくアタックを開始するが、アズに惚れているのは漣だけではなかった。
アズの側にいるためにはアズ同盟に入らないといけないと連れて行かれたカラオケBOXには、アズが居て
……いや、お前は誰だ?
やはりアズに一目惚れした同級生の藤原朔に、幼馴染の水野奨まで留学から帰ってきて、アズの周りはスパダリの大渋滞。一方アズは自分への好意へは無頓着で、それにはある理由が……。
アズ同盟を結んだ彼らの恋の行方は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる