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第六章 星の救済

第88話 楽しい、ゴーレム狩り

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 俺は今、カゴに乗り空を移動している。
 風魔法を使い、前方からの風は防ぎ快適だ。
 だが、カゴの四隅にロープが結ばれ、それぞれを航空部隊の隊員が引っ張っている。
 そして彼女達は、足を使ってフラップのように、ラダーのように足をばたつかせバランスを取る。
 おわかりだろうか、彼女達は服を着ない。

 目の前で、足をばたつかせるこの状況を、もう一時間以上見ている。
 見なけりゃ良いけど、退屈なんだよ。

 距離は、およそだが五千キロメートル。おおよそ二日ちょい掛かるという。
 地獄だよ。体が若いんだよ。

 ただ、カゴに乗せられて運ばれる。

 カゴが燃えるため、火は使えない。ジャーキーを囓り酒を飲む。
 そして寝る。
 下を見ても、海。
 船なら釣りでもできるが、それもできない。

 大○洋のように、ひたすらぼやく。
 それもほとんど、独り言。

 そんな地獄の責め苦を抜けたのか、土の匂いが風に乗ってやってくる。
 思わず、カゴから顔を出す。
「おお。ご苦労さん。無事に着いたな」
「あと少しですから、じっとしていてください」
 容赦なく叱られる。

 カゴの中で正座をして待つ。
 やがて、緩やかに下降して、足に軽いショックが伝わる。
「お疲れ様です。到着いたしました」
「よし、本当にご苦労さん」
 表情に変化はないが、嬉しそうだ。

 だが、次の瞬間には転移して魔王城。
 あっけにとられる彼女達。
 礼を言って、俺は一目散に自室へと戻り、シルヴィとテレザを抱きしめる。

 そのまま二人を抱えて、ふろへ入り、まったりとする。
「ああ、生き返ったぁ」
「到着したの?」
「ああ。何とか」
「それは何?」
 珍しく、シルヴィが指をさす。

 ざっと、流れを説明をする。
「男の人って大変ですね。感情はないのよね」
 シルヴィの目がちょっと厳しくなる。

「男はなあ、映像とかで反応するんだよ。これは本能。制御できない」
 そう言うと、そうなんだと納得してくれたようだが、前に出ようとしたテレザをシルヴィが制する。

「あの、テレザにも謝って許しを得ました。それでその、今日は最後まで……」
「本当か?」
 テレザを見ると、うんうんと頷いている。

「じゃあ、おいで」
 我慢させていた反動か、シルヴィはすごかった。

 脇で見ていた、テレザが驚愕の表情。それがおかしくて、笑いをこらえると、真面目にと、シルヴィに叱られる。

 そんなこんなで、食事をしながら、まったりと探検の準備をする。

 そうすると、丁度都合良く、四天王達がやってくる。
 まるでゾンビのように。

 ただ、炎呪とラウラの目が、何か別のものを確実に訴えている。
「道照。炎呪とラウラを連れてお風呂でも入って、ねぎらってあげたら?」
 シルヴィはつやつやした顔で、にっこりと微笑む。

「そうだ。その、頑張ったんだ。ねぎらいを頼む。是非に行こう風呂へ」
 炎呪がビシッと風呂の方向を指さす。

「分かった行こうか。残りの皆で、探査の段取りと準備をしておいてくれ」
 そう言い残して、炎呪に手を引っ張られて、ラウラに背中を押される。

 そして風呂場で狂宴が始まる。

 ラウラは良いが、炎呪は何故か大変だったんだぁと、遠吠えをする。
「どうしたんだこいつ?」
「やることなすこと、いい加減で、書類一枚で五倍時間が掛かっただけです」
「仕方ないだろう。事務仕事なんて初めてだったんだから」
 泣きながら、炎呪が訴える。

「いままでは、どうしていたんだ?」
「当然フラマが、寝ずにやっていました」
「今回はどうして?」
 ラウラは口ごもったが言ってくれる。

「魔王様に仕事ができる所を見せないと、捨てられますよ。まあその、フラマの一言で、初めての体験をするんだと」
「ほうそれは、良い事だ」
「そうだろ。道照。ねぎらってくれぇ」
 炎呪の動きが激しくなる。

「その間、お前達は?」
「当然、フラマと手分けしてお姉様の一〇倍以上仕事しました。ですので、ゆっくりとねぎらいをお願いいたします」
 そう言って背中側に張り付いてくる。

 耳元で、ラウラがそっと言う。
「お姉様はお疲れでしょうから、一気に寝かしてあげても結構ですから」
「そうか?」
 超振動。スイッチオン。

「んがあぁぁ」
 炎呪は、満足したようだ。

 それでまあ、まったりとして、部屋へ戻ると、もうすっかり準備ができていた。

 休憩もなしで、出発するようだ。
 魔人族は脳筋。
「疲れて居るときは逆に体を動かす」
 サムズアップをして、ベネフィクスが言い切る。

「分かった行こうか」
 謎の大陸へ転移をすると、金属系ゴーレムが跋扈(ばっこ)する楽園だった。

 見た瞬間、俺は走る。

「金銀銅プラチナ。取り放題」
 傍目には俺の姿が消え。ゴーレムの横で幾人も居たように見えたそうだ。

「あれはどうしたんだ?」
 訳の分からない、ベネフィクスがシルヴィに聞く。

「錬金術の抽出を使えば、ゴーレムは歩く資源だそうです」
「おっ。おおそうか、それはおもしろい。普通に魔法を撃ち込んでも効かない。とんでもない奴らだが、そうか資源か。それならこうしちゃおれん。行ってくる」
 シルヴィ達が呆れる中。ゴーレムたちはどんどんと小さくなっていく。

「楽しそうだな」
 攻撃しかできない他の三人はぼーっと見るだけ。
 収納ができないベネフィクスは無造作に金属の塊を積んでいく。
 すると気がついたゴーレムが、それを吸収し復活。

「なああれ、言ってあげたほうが良いんじゃないか?」
「魔力切れでぼちぼち終わるだろ。それより魔王様だ。何だありゃ?」
 複合タイプのキメラゴーレムが、部位単位で消えていく。

 その周りを、楽しそうな雄叫びを上げて、道照は走り回る。

 その様子を、地下で土の妖精が感じ取り。あわて始める。
 そう当初の目的。精霊に力を与えに来たのに、いまとどめを道照は刺そうとしていた。
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