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第四章 経済共和制の国

第60話 闇鉱山

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「何だあそこ、妙に物々しいな」
 関所を迂回するため、山側へ回り込んだ三人。

 眼下に見える山陰に、奇妙な小屋と、そこに出入りする獣人達を発見する。
「小屋のサイズより、出入りする獣人の方が多いな」
 小屋の中へ入れる、ギネスチャレンジでもしているのか?

 そんな時、小さな荷車が出てくる。畳一畳より小さな荷台に袋が乗っており、彼らは崖下へ荷物を捨てる。
 そして、彼らは、亜人。

「ほう。亜人だな」
 何かに気がついたのだろう、シルヴィとテレザも目がキツくなる。

「あの者達の汚れ、鉱山でしょうか?」
 見た目、煤けて体や服も土で汚れている。

「さあな。穴を掘っているのは、間違いない様だ」
 都合の良いことに、獣人の監視らしき奴が、大声で状況説明をしてくれる。

「おら、くたばった奴を捨てたなら、さっさと中へ入り仕事をしろ。今月のノルマに達していないぞ。このままでは、俺達がセザール・ルマーヌ侯爵に叱られてしまう。補充はもう少ししたら『原初の呪い』ベネターデビラから、届くからな」

「ほう。さっき捨てられたのは、亡くなった亜人だったのか」
「許せませんね」
「潰しましょう。そして、解放しなければ」
 燃える二人。

 休憩しつつ、夜を待つ。

 途中入れ替わりに出てくる、監視の獣人達は、二〇名ほど。
 食事をして、中へと戻っていく。

 さっき食事をした後、崖に向かって、連れションをしている五人の背中をそっと押す。
 そのまま、小屋の影へ隠れる。
「うわーあぁぁぁ」
 落ちる途中、丁度良い感じで叫んでくれて、小屋の中からまた五人ほど出てくる。

 監視のセットが、五人単位なのだろう。

「騒がしい、何だよ」
 ぼやきながら出てきたが、外の見張りがいない。
「あいつら、まさか落ちたのか?」

「またかよ。しかも誰もいないから全員とはなぁ。落ちそうな奴に、手を差し伸べたのか。ちょっと中へ行って、班を組み直す。お前達見張っていろ」
「「「へい」」」

 そう言って、他の四人が居残る。

 そして、気になるのか、都合よく崖下を覗き込む。
「ここから、落ちたのか?」
 警戒して、四つん這いで崖下を覗き込んでいる。

「小便をしていて落ちたようだぞ。ほら今手を突いているあたり」
 そう言うと、あわてて四人は膝立ちになる。

「うわ、濡れているのはそのせいか」
「そうだよん」
 そして、そっと背中を押す。

「「「うわぁ」」」
 そうして、彼らも落ちていく。

「気を付けないと、危ないよ」
 そう注意するが、もう聞こえないようだ。

 誰も居なくなったし、小屋を覗き込む。
 小屋の中に、人の気配はなく、忍び足で奥に見える穴へと近寄る。

 穴の両脇には、松明がたかれて少し明るいが、その分穴の中は暗くて見えない。
 だが、奥の方にも松明をたいているらしく、わずかに明かりが見える。

 酸欠の指標にでも、しているのか?

 二人に、ハンドサインを送り、中へと入っていく。

 途中から、浅い脇道があり、こちらとしては隠れやすい。
 試し掘りで、鉱脈を探りながら、掘っているのだろう。
 途中、前から荷車を引いた亜人が来たので、助けに来たから外で待っているように伝える。

 中は意外と深く、三百メートルも進んだところで、少し広くなり床に斜めに下る道が見える。

 耳を澄ませても、まだ何も聞こえない。

 警戒しながら降りていく。
 途中で、出会った亜人には、外で待っているように伝えながら進んでいく。

 ぼつぼつ枝道があるが、使っている坑道には、松明がたかれているので分かりやすい。

 また数百メートル進むと、熱気と騒めきが聞こえ始める。
 騒いでいるのは、当然獣人達だろう。

「誰がどうでも良い。四人で班を組めば、丁度で割れるだろ」
「俺達は、まだ飯も食っていないんだ」
「我慢しろ。今は補充が来るまで、何とかするのが優先だ。一食くらい抜いても大丈夫さ、亜人どもを見習え、一日一食で穴を掘れるんだ。見張りなら大丈夫だ」
 嫌らしく笑いながら、態度のでかい奴が、説明しているのを見ながら準備をする。

「このくらいだな」
 こそこそと、足首くらいの高さに黒く塗ったロープを距離を置いて三つほど張る。

 残りは、十一人。

 二人を待たせ、突っ込もうとするが、逆に二人が殺る気満々のようだ。

「仕方が無い。逃げ出した奴は、そこのロープで転がるだろうから捕まえてね」
 説明すると、こっくりと頷くが、すでに両手にナイフを握っている。

 俺は素手。無敵の奥義がある。
 奴らが、背負っている剣を抜く前に一気に倒す。できるはず。

 一応、顔に泥を塗り変装する。

 こそこそと、近付くが一気に視線が集まる。
 気にせず、表に鉱石をおいてきましたの体で、荷車を引っ張って近付いていく。

「おい待て、お前誰だ?」
「はい? 先ほど鉱石を外へ運搬を……」
「嘘をつくな。その綺麗な服は何だ? 何者だ」
「あー、ばれちゃ仕方が無い。ほれ」
 偉そうな奴に、ボディブロー一発。

 その勢いのまま、他の奴らも殴り倒していく。
 まあ、瞬殺だね。

 後ろ手に縛り上げ、足首もロープで結ぶ。

 武器は取り上げて、亜人達に渡す。

「奥にいる人たちにも、伝えてください。逃げますよ」
「おお、やったぁ」

 途中で、穴を崩落させながら、皆で外へ出る。

 水や、食料を少し渡し、チトセの説明と、方向をおしえる。

 見送った後、西へ向けて抜けられるところを探しに行く。

「あの見張り達、奥に忘れたままでしたね」
「あっ、そう言えば。運がよければ助かるだろう」
「途中を崩しましたよね」
 そういえば、侯爵に対する嫌みのため埋めた。

「あー。まあ運がよければ、助かるだろう」
 そう言って、忘れることにした。 
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