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第四章 経済共和制の国

第59話 結果よければ

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 とっさに、シールドを張る。
 だが、強度が足りずに破壊される。
「ふわ。こんなの、始めてぇ」
 驚きで、ついお姉言葉が出てしまう。

 そんなおバカなことを言っている暇はなく、シルヴィとテレザが、余波を受け、吹っ飛んでいく。
「畜生」
 全身を強く打って状態の二人。
 あわてて、赤い樹の実を食べさせる。

「いったい、何者なんだ」
 そうぼやきながら、力を込め炎の槍を、つい。

 うん。ついね。本当に、ほんとのほんと、二人が怪我したし。
 久々に、力を込めて、撃ちだしてしまった。
 その炎は通常ではなく、まるで光の槍のような輝きで、黒い奴を包み込んだ。

 あっ、と思ったときには、超高熱で溶かされて直径十五メートルはある、まん丸な穴が、向こうが見えないほど続いていた。
 当然、穴の周囲は超高熱で溶け、真っ赤っか。
 そして、地下には地下水脈もある。

 水が流れていたのだろうねえ。
 穴から、熱せられたのだろう。高温の水蒸気が吹き出してくる。
 そして、穴から吹き出た水蒸気は、原初の呪いである、壁面に沿って周り、さらに高温のため。
 空へと、上昇を始める。

 俺はすでに、二人と一緒にシールドの中。
 高温の水蒸気は、高速回転しながら上昇して、登るついでに周囲に開いた穴へ干渉をして、低音を含む恐ろしい周波数の音を奏でる。

 その音は、『邪神の咆哮』として、あっという間に大陸中に広がることになる。

 高温の蒸気だったため、経度だが火傷を負った獣人達多数。
 上層階は、大パニックになったようだ。

 うん。上から覗くと、こちらが暗いため距離が開いているように見えるが、底から地上までは直線にするとそんなに遠くない。
 シールドを解除すると、熱気とともに地上の阿鼻叫喚が底まで響いてきている。
 俺達は顔を見合わせ、こそこそと、出てきた穴へと戻っていく。

「あーまあ。あの黒い奴は何だろうな?」
「分かりませんが、あまりよくない者かと思います」
「私もそう思う。見た瞬間ぞっとした」
 シルヴィとテレザも口々にやばそうだという意見を言う。実際さっきの攻撃で、死にかかっていたしな。

「ちょっとやり過ぎたが、とどめはさせただろう」
 そう言って、俺達がダンジョンの穴に入った頃、真っ赤な穴のすぐ脇から、攻撃は何とかかわしたが右手を失い、右半身が火傷だらけでよろよろと出てくる者が居た。

「何者だ? あの化け物は。まさか伝承の魔人様か? 私が安易に攻撃をしたせいで怒らせてしまったのか。魔王様に報告をしなければ」
 人間の姿をした者など。この大陸にいるはずもない。きっと、邪神様の分身。魔神様だろう。
 あの方が魔族に対して敵対するとなれば、私の責任だな。
 頭に生えていた右側の角まで無くし、満身創痍だが、正体は四天王の一人、炎呪(えんじゅ)だった。

 そっと振り返り、背後にできた、今なお真っ赤に焼け、蒸気を噴き出す大穴を見つめて、身震いをすると消えていった。


 上へ上がると、誰が言い出したのか、『邪神の咆哮』が、大人気。
 完全に上昇トレンドに乗り、ストップ高一直線。
 亜人が逃げたことなど、噂の端にも登らなかった。

 逃げ出す人たちに追いつき、それに混ざって町へと帰る。

 この町から離れる前に宿へ帰って、女将さんにお礼を言いギルドへ行く。

 ギルドに行くと、大騒ぎだったので、最後の地図に俺の造った螺旋階段を書き込んで、『旅にでます、探さないでください』と手紙をつけて、ヴェロニクに渡してくれるように言付けて、受付さんに預ける。

 そして、どさくさ紛れに町を脱出する。

 『立つ鳥、跡を濁さず』と言うが、濁しまくったため、俺達は、『あとは野となれ山となれ』と言うことで、一目散に港の方。西へ向けて移動をしていった。

 さて、数時間後、騒動から復帰したヴェロニクは、受付から一本の地図を渡される。
 はてと、首をひねりつつ、中を開く。
 下へ降りる螺旋階段と、底へ通じる横穴。
 そんな物が書かれている地図。
 五階層の地図を持っている者など少ない。
「階段に横穴、底には地下水脈。うん?」
 先ほど落としたのだろう、メモが目に入る。

 『旅にでます、探さないでください』??
 一瞬悩んだが、すぐに気がつく。
 底までの地図。そして、『邪神の咆哮』。そして置き手紙。
 よっぽどでなければ気がつく。

「底まで行ったのか。そして何かが居て戦った。あの叫び声はそいつの?」
 そして、ヴェロニクは底の調査をさせて、ふざけた横穴を見つけたハンターから報告を受ける。
 直径一五メートルもある、大穴。それも、熱で溶けた感じで、どこまで行っても先がなく。水が噴き出して途中から進めない。

「進めない…… か。あいついったい何と戦ったのだ? モンスターでもかなり極上じゃなければ、あんなブレスは使えまい」
 ヴェロニクは考える。奴がきていなければ、この周囲。吹っ飛んでいたのではないか? 奴は皆を助けて…… いや、そもそもがそれが目的でここへ来て、目的を達成をしたから、出ていったのか? 

 どちらにしろ、亜人だが、彼に感謝をしよう。
 同胞が、彼に馬鹿なことをしないことを祈ろう。

 だが。

「ああっ? 亜人のくせにハンターだ? ふざけるんじゃない。ここは通れねえ。帰れ」
 関所で、通してもらえず、追い返された。

 そのため彼たちは、関所を迂回するため、行く予定もなかった、セザール・ルマーヌ侯爵の闇鉱山へと結果的にたどり着いてしまう。
 セザール・ルマーヌ侯爵とは、ダンジョンでの人さらいのボスであり、ヴェロニクの冒険者時代からのパトロン。

 亜人の強制労働。見たら手を出すよね。
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