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第四章 経済共和制の国

第49話 金のダンジョン

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「早く終わったし、そのまま金のダンジョンへ向かおう」
 帰り道、ダンジョン内の雰囲気はよどみ。
 モンスターも出てこない。

 これがきっと、死んだという事なのだろう。

 悠々と、通路を歩き、地上へと帰ってくる。

「終わったぞ」
 門番のフィリプ君に報告をする。
「はっ? 嘘をつくんじゃねえ。いくら何でも早すぎだろ。ここはあの、極悪非道なダンジョンだぞ」
「確認してくれば良いが、これがクリスタルだ」
 外で見ると、わずかに青い。

 それを見て、ビシッと固まる。
 そして一目散に、ダンジョン内へ走って行った。

「金のダンジョンへ向かう、道を聞こうと思ったが、まあいい。反時計方向だったよな。行こう」
 そう言って、二人とともに、移動を開始する。

 その頃、ダンジョン内で、フィリプ君は愕然としていた。
「何だこの非常識さは、ダンジョン内に道を造ったのか。そりゃ、ワームも何も関係ない。こんな方法があるなんて。いや普通できないし。それもこんな短時間で」
 道照の非常識さに愕然とする。


 水のダンジョンから、金のダンジョンへは、踏み固められた道がついていた。

「どんな所でしょうね?」
「地形自体が、迷路となっている感じだな。鬱陶しいのはゴーレムと言うことらしい」
「ゴーレムというのは、何でしょうか?」
「実際みていないが、土や石、他の金属で創られた人形だろう」
「そうなんですね。剣やナイフでは、倒せそうもありませんね」
 そう言って、シルヴィの耳が、へにょっとなる。

「何とかなるさ。俺の世界では、文字を一つ消しただけで倒せるという記述もある」
「へー。変わっていますね」

 さてさて、金のダンジョン前にも、門番さんがいる。
「おう。ここは立ち入り禁止だ。亜人など帰れ」
「ヴェロニクからの依頼なんだが、門番に追い返されたと言って良いのか?」
「ああ゛っ? ヴェロニクだ? ……ヴェロニク?」
「そうだ」
「いや、ちょっと待て、ギルドにいるちっこい奴だな」
「そう言っていたと、報告しよう」
「それは待て。いや待ってください。どうぞ」
 そう言って、道を空けてくれた。
 
 ヴェロニク強いな。この町で何かあったら名前を出そう。

 ここも、同じ造り。
 鍾乳洞を抜けると、風光明媚な山の中腹に出た。

 少しは、道らしきものができている。
「あてになるのか分からんが、道に沿って行ってみるか」
「「はい」」

 景色といい、天気といい。
 ハイキングのようだ。

 だがそこに、景観を壊す、キンキラキンが登場。

「百○? あれが、金のゴーレムか」
「綺麗ですねぇ」
 テレザの目が、ドルマークになっている。

「倒せば、金が残るのか?」
「倒しましょう」
 うん。テレザはノリノリだな。

 魔法を撃ってみるが、ちょっとした炎など効き目がない。
 さすが、熱伝導率三百二十W/m・k。

 だが、素早く近づき手を当てる。
「百九十六・九十六を分離」
 すると、溶け始めて、金の池ができた。
 コアらしき、丸い玉が転がる。

「これは良い。生きたままで抽出すると、金は消えないようだ」
 これはもう、ゴールドラッシュ。
 うろうろして、金のゴーレムを見つけては抽出する。
 十体、二十体と倒していると、徐々にゴーレムが小さくなってくる。

「総量の決まりがあるのか?」
「最初に比べると、随分小さくなりましたね」
 シルヴィが言うとおり、最初は二メートルを超えていた。
 今では、一メートルほどのちびっ子だ。

 それでも、力はあるようで侮れない。
 だが、鈍重。質量数はどうしようもないようだ。
 すでに金のストックは百トン単位。

 出がけに聞いた『中で良いものが出たら買い取ってやるから頑張れ、欲張ると荷物が重くて死ぬがな』そんなヴェロニクの台詞。
 買い取って貰おう。

 散々歩いて、地下二階へ降りる。

 相変わらず、良い景色。
 だが、それだけ。

 うろうろして、地下三階へ降りる。

「何も出なくなりましたね」
「良い景色。ちょっと休憩して、食事を取ろう」
 景色を眺める。高い山々と、渓谷。そんなタイトルの本があったなあ?

 動物はいないのか、静まりかえった世界。
 食事の準備をするための、薪が弾けてパチパチとはぜる音だけがする。

 周辺に漂う、美味しそうな匂い。
 翼竜のベーコン。
 本当は、コンソメがあれば良いが、豚骨のスープにタマネギみたいな野菜とともに少しベーコンを刻み入れる。
 残りは、作ったフライパンで炒める。

 パンも軽く炙り、ベーコンと一緒に囓る。
 そう言えば、卵とかも見ないな。
 米とか色々欲しい。

 結局酒も造っていないし、やりたいことは沢山ある。

 だがまあ、目の前の二人の幸せそうな顔を見て、ゆっくり進むことを考える。

「結局、一度も出ませんね」
 そう警戒していたが、あれ以降一度もゴーレムが出てこない。

「ゆっくりできたし、野盗などもいない。景色は綺麗だし最高だな」
「そうですね」
 そう言ってお茶を飲む、シルヴィの横顔に少しドキドキしてしまう。
 銀色の髪、長いまつげ。

 そしてその横で変な顔をするテレザ。
「テレザどうした?」
「何でもありません。ええ何でも」
 そう言った、テレザの目が怪しく光る。
 絶対なにか、企んでいるな。

「さあ行くか」
 火を消して、残った炭を収納する。
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