41 / 100
第四章 経済共和制の国
第41話 やっぱり、俺の周りで騒ぎは起こる
しおりを挟む
「なあ、いつまで付いてくるんだ?」
「神乃様こそ、どちらまで?」
「うん? ちょっとまあ、散歩かなあ」
「…… 散歩。どちらまで?」
「いやまあ」
無事に抜け出したと思ったのに、狼。それも白狼族。族長の娘シルヴィに気づかれた。
いや匂いに気がついて、追いかけてきたのだろう。
彼女は、十七歳くらい。
長くなった髪をポニーテールにすると、尻尾が二つと言って、からかってから何故か懐かれた。
今から連れ帰っても、大騒ぎになるだろうし。
と思っていたら、下から拡声器で声が聞こえる。
「神乃様。お早いお帰りを、お待ちしています」
そんな台詞を聞いて、ピンときたのだろう。
「やっぱり。誰にも挨拶をせずに来たのですね」
「手紙は残した」
そう言うと、ジト目を頂きました。
「お目付役で、ついて行きます」
そう言うと、町の方に向かって手を振る、シルヴィ。
「シルヴィ。あんた、神乃様そこにいるの?」
下から声が聞こえると、シルヴィは腕を使い丸を作る。
「行くから、待ってなさい」
拡声器を放り出し、テレザが走り始めた。
「おー、全力だな。早い」
舗装してあるから、漫画のように土煙は立たないが、そんな勢いで走ってくる。
まあ帰すときに、一人より二人の方が安心か。
そんな事を、考えて到着を待つ。
しばらくして、テレザは汗と涙を流しながら上がってきた。
「黙って出ていくなんて、ひどいです」
そう言って、飛びついてくる。
素直に受け止めると、悶絶必至のスピード。
受け止めて、クルクルする。
「さっきは、帰りを待つと言っていたのに」
「それは、もう。……近くにいないと思って、我慢したんです」
「それじゃあ。まあ行ってくるよ」
そう言うと、テレザの額にピキッと変なマークが幻視される。
「何をふざけているんですか? 当然一緒に行きます。それに、みすみすシルヴィに譲るなんてできません」
『譲るなんてできません』?まあ良いか。
女の子を二人お供か、チャチャと違って、ヒト型だから、ちょっと自分の理性が心配だ。
体が若いから、色々元気なんだよな。
そして、王都。
「申し訳ありませんでした。ご子息。王子様は亡くなられました」
吹っ飛ばされて、右腕は上腕で折れたようだが、宰相ヴラディミーラは生きて帰ってきた。
王子の形見として、剣を持ち帰って。
「そうか」
すでに、王の首輪は外されている。
「ストゥピッドが死んだということは、全滅か」
「左様でございます。周辺の貴族全員。当主並びに長男が亡くなったことになります」
「通知をして、相続の手続きをさせよ。今回は貴族側の暴走、こちらから支援はせん。いいな」
「はい」
「おまえまでその状態。相手にドラゴンでも出たのか」
「その通りでございます。ドラゴンの出現もですが、何か金属のつぶてを飛ばす魔道具あれは、躱せません。鎧も簡単に貫きます」
「そうか、まだ色々隠しているな、あの、神乃という男」
王は、さらに老け込むことになった。
家宰モルガン・セバスティヌは飛んできた帰巣鳥から、手紙を外す。
「ハウンド侯爵。神乃様は、国を出た様でございます」
「王国の軍は、どうなった?」
「さほど時間が掛からず、二千もの兵。それに参加していた王都周辺貴族どもが敗北したようです」
「ほう。何か良いものはあったのか?」
「何か魔道具を使われたようです。金属の鏃のみを飛ばすもので、鎧など無かったものの様に穿ったと書いてあります。後ドラゴンが味方をしたとのことです」
「なんと。気に精霊だけでは無くドラゴンまで。やはりただ者ではない様だな」
「御意に」
ハウンド侯爵はこれから起こる、王都での騒ぎがおもしろくなりそうだとほくそ笑む。王都近郊にいた貴族達は、ハウンド侯爵の事を疎んでいた者達が多い。
棚ぼた式に、時代はハウンド侯爵の方へと傾いた。
「なあ、兄ちゃん達。良いことを教えてやる」
げすな顔をしているだろうと思える獣人達三十人ほどが、両側の山の中に五人程度の伏兵を忍ばせて出てきた。
「なんだい? あんた達盗賊だろ。こんな金を持っていない様子の人間より、金を持っている商人を襲えよ」
「バカだろうおまえ。商人を襲ったら買い取りもしてくれなくなるし、物も買えなくなるじゃないか。それに、逃したらすぐに兵を連れてくるからな」
馬鹿正直に、事情を説明してくれた。
「じゃあ、少ない一般市民を目当てにしているのか?」
「ああ野郎は奴隷。女の子は亜人でも色っぽい店に奴隷で売れる。今手持ちが少なくても問題ない。安心しろ」
「ほら、付いてこない方が良かっただろ?」
横にいるシルヴィとテレザに質問する。
だが、背中に隠されたその手には、ナイフが握られてすでに臨戦態勢。
そう言えば、狼族は結構な武闘派集団だが、荘園では一度に全員が守れないから、甘んじていたと説明をしていたな。
きっとかわいい顔をして、しなだれてきて、離れるときに首を切っていくんだろうと妙な想像をする。
「道照様、よろしいですか?」
「なんだい? 二人とも」
近寄ってきて、胸を当て。
「道照様。うふ。あなたはすでに死んでいる」
うん、ありそう。
でも、恨みは買っていないよな。
「さあ、こんな所じゃ落ち着けないし、森の中にあるアジトまで黙って付いてきて貰おう」
戦う気満々の二人に落ち着く様に言って、お誘いに乗ることにする。
「じゃあ行こうか」
「神乃様こそ、どちらまで?」
「うん? ちょっとまあ、散歩かなあ」
「…… 散歩。どちらまで?」
「いやまあ」
無事に抜け出したと思ったのに、狼。それも白狼族。族長の娘シルヴィに気づかれた。
いや匂いに気がついて、追いかけてきたのだろう。
彼女は、十七歳くらい。
長くなった髪をポニーテールにすると、尻尾が二つと言って、からかってから何故か懐かれた。
今から連れ帰っても、大騒ぎになるだろうし。
と思っていたら、下から拡声器で声が聞こえる。
「神乃様。お早いお帰りを、お待ちしています」
そんな台詞を聞いて、ピンときたのだろう。
「やっぱり。誰にも挨拶をせずに来たのですね」
「手紙は残した」
そう言うと、ジト目を頂きました。
「お目付役で、ついて行きます」
そう言うと、町の方に向かって手を振る、シルヴィ。
「シルヴィ。あんた、神乃様そこにいるの?」
下から声が聞こえると、シルヴィは腕を使い丸を作る。
「行くから、待ってなさい」
拡声器を放り出し、テレザが走り始めた。
「おー、全力だな。早い」
舗装してあるから、漫画のように土煙は立たないが、そんな勢いで走ってくる。
まあ帰すときに、一人より二人の方が安心か。
そんな事を、考えて到着を待つ。
しばらくして、テレザは汗と涙を流しながら上がってきた。
「黙って出ていくなんて、ひどいです」
そう言って、飛びついてくる。
素直に受け止めると、悶絶必至のスピード。
受け止めて、クルクルする。
「さっきは、帰りを待つと言っていたのに」
「それは、もう。……近くにいないと思って、我慢したんです」
「それじゃあ。まあ行ってくるよ」
そう言うと、テレザの額にピキッと変なマークが幻視される。
「何をふざけているんですか? 当然一緒に行きます。それに、みすみすシルヴィに譲るなんてできません」
『譲るなんてできません』?まあ良いか。
女の子を二人お供か、チャチャと違って、ヒト型だから、ちょっと自分の理性が心配だ。
体が若いから、色々元気なんだよな。
そして、王都。
「申し訳ありませんでした。ご子息。王子様は亡くなられました」
吹っ飛ばされて、右腕は上腕で折れたようだが、宰相ヴラディミーラは生きて帰ってきた。
王子の形見として、剣を持ち帰って。
「そうか」
すでに、王の首輪は外されている。
「ストゥピッドが死んだということは、全滅か」
「左様でございます。周辺の貴族全員。当主並びに長男が亡くなったことになります」
「通知をして、相続の手続きをさせよ。今回は貴族側の暴走、こちらから支援はせん。いいな」
「はい」
「おまえまでその状態。相手にドラゴンでも出たのか」
「その通りでございます。ドラゴンの出現もですが、何か金属のつぶてを飛ばす魔道具あれは、躱せません。鎧も簡単に貫きます」
「そうか、まだ色々隠しているな、あの、神乃という男」
王は、さらに老け込むことになった。
家宰モルガン・セバスティヌは飛んできた帰巣鳥から、手紙を外す。
「ハウンド侯爵。神乃様は、国を出た様でございます」
「王国の軍は、どうなった?」
「さほど時間が掛からず、二千もの兵。それに参加していた王都周辺貴族どもが敗北したようです」
「ほう。何か良いものはあったのか?」
「何か魔道具を使われたようです。金属の鏃のみを飛ばすもので、鎧など無かったものの様に穿ったと書いてあります。後ドラゴンが味方をしたとのことです」
「なんと。気に精霊だけでは無くドラゴンまで。やはりただ者ではない様だな」
「御意に」
ハウンド侯爵はこれから起こる、王都での騒ぎがおもしろくなりそうだとほくそ笑む。王都近郊にいた貴族達は、ハウンド侯爵の事を疎んでいた者達が多い。
棚ぼた式に、時代はハウンド侯爵の方へと傾いた。
「なあ、兄ちゃん達。良いことを教えてやる」
げすな顔をしているだろうと思える獣人達三十人ほどが、両側の山の中に五人程度の伏兵を忍ばせて出てきた。
「なんだい? あんた達盗賊だろ。こんな金を持っていない様子の人間より、金を持っている商人を襲えよ」
「バカだろうおまえ。商人を襲ったら買い取りもしてくれなくなるし、物も買えなくなるじゃないか。それに、逃したらすぐに兵を連れてくるからな」
馬鹿正直に、事情を説明してくれた。
「じゃあ、少ない一般市民を目当てにしているのか?」
「ああ野郎は奴隷。女の子は亜人でも色っぽい店に奴隷で売れる。今手持ちが少なくても問題ない。安心しろ」
「ほら、付いてこない方が良かっただろ?」
横にいるシルヴィとテレザに質問する。
だが、背中に隠されたその手には、ナイフが握られてすでに臨戦態勢。
そう言えば、狼族は結構な武闘派集団だが、荘園では一度に全員が守れないから、甘んじていたと説明をしていたな。
きっとかわいい顔をして、しなだれてきて、離れるときに首を切っていくんだろうと妙な想像をする。
「道照様、よろしいですか?」
「なんだい? 二人とも」
近寄ってきて、胸を当て。
「道照様。うふ。あなたはすでに死んでいる」
うん、ありそう。
でも、恨みは買っていないよな。
「さあ、こんな所じゃ落ち着けないし、森の中にあるアジトまで黙って付いてきて貰おう」
戦う気満々の二人に落ち着く様に言って、お誘いに乗ることにする。
「じゃあ行こうか」
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
おおぅ、神よ……ここからってマジですか?
夢限
ファンタジー
俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。
人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。
そんな俺は、突如病に倒れ死亡。
次に気が付いたときそこには神様がいた。
どうやら、異世界転生ができるらしい。
よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。
……なんて、思っていた時が、ありました。
なんで、奴隷スタートなんだよ。
最底辺過ぎる。
そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。
それは、新たな俺には名前がない。
そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。
それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。
まぁ、いろいろやってみようと思う。
これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移
龍央
ファンタジー
高校生紺野陸はある日の登校中、車に轢かれそうな女の子を助ける。
え?助けた女の子が神様?
しかもその神様に俺が助けられたの?
助かったのはいいけど、異世界に行く事になったって?
これが話に聞く異世界転移ってやつなの?
異世界生活……なんとか、なるのかなあ……?
なんとか異世界で生活してたら、今度は犬を助けたと思ったらドラゴン?
契約したらチート能力?
異世界で俺は何かをしたいとは思っていたけど、色々と盛り過ぎじゃないかな?
ちょっと待って、このドラゴン凄いモフモフじゃない?
平凡で何となく生きていたモフモフ好きな学生が異世界転移でドラゴンや神様とあれやこれやしていくお話し。
基本シリアス少な目、モフモフ成分有りで書いていこうと思います。
女性キャラが多いため、様々なご指摘があったので念のため、タグに【ハーレム?】を追加致しました。
9/18よりエルフの出るお話になりましたのでタグにエルフを追加致しました。
1話2800文字~3500文字以内で投稿させていただきます。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させて頂いております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる