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第六章 魔王と獣人族

第96話 プテリダの修復

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「じゃあ、まだ残っている可能性はあるな」

「そうね。大事な所には、盗難防止と保存の魔法が掛けられていたから」
 ナジェジュダがそう言うと、魔人族三人の目がキラキラと光る。

 そして何故か、俺を見る。

 その頃、魔王城でも報告が入る。
 これまで、何をしても拡張を続けていた、プテリダが止まったと。

「何かの吉報か? それともリッチに何かが起こったのか? 兵を出して調査をせよ」
 獄炎のエドガーと呼ばれる、エドガー=グスタフソンに命令が下る。
 彼は火焔魔法が得意だが、身長も一八二セントメートルあり、かなりがっしりとした体つき。一言で言えばオーガっぽい。
 角は三カ所。額は五センチくらいで、こめかみのは一〇センチ近い。

「良し。宰相アマンシオ=ベルグラーノ様からの命令だ。行くぞ」

 宰相アマンシオ=ベルグラーノだが、文官のトップ。
 魔王、セルビリ=ムスクルスなどは強さの象徴。
 まともな政務など出来ないから、きちんと出来る人間が必要。

 魔王が不在の時は、当然トップとなる。
 
 エドガーは一小隊。一〇〇人程度を連れて、調査へ向かう。

「この少人数で、大丈夫でしょうか?」
 副官のプック=レイケンは隊を見回す。

「大丈夫だ。リッチが出たら、千人居ても全滅だ。被害は少ない方が良い」
 諦めたように、エドガーは答える。
 プックは、それを聞いて固まる。

 その頃、リッチは。
「何これ。ああ゛っ。何これえぇ。世界の真理を見たああ゛っ」
 エリサベトと同じように、星を巡るエネルギーと、わずかにつながり。世界を見ていた。
 はてて、気絶し。また強烈な刺激で、目が覚め気絶をする。

 そんな、体に悪そうな事を繰り返していた。
「快楽に、この様な頂きが存在するとは……」
 最後に、痙攣と共にそう言って、彼女は完全に意識を失う。
 その顔は、悟りを開いた菩薩のようであった。

「流石というか、すごいわね」
「うん。二〇分くらい痙攣をしていたし、体に悪そう。あっ。エリサベト何を、順番守りなさいよ」

「もう我慢が……」

 そんな騒動をして、翌日。
「行ってみるか?」
 ナジェジュダを連れ、住んでいた都市跡に向かう。

「先ずは、この沼地の浄化だな」
 転移でやって来て、プテリダの端に立つ。

 意識を飛ばし、その範囲を確認。
 そして、かなりの面積だが、一気に浄化。

 その瞬間。
 リッチに喰われた魂達なのか、恨み辛みの積もったヒト型の影がプテリダの中から沸き立つ。そして、浄化の光に当てられ、清められて昇華していく。

「うわあ。すごい数」
「さすが王だ。今まで何度浄化をしようとしても、出来なかったのに」
 セルビリが感涙をしている。

「すごい数ね」
 他人事のように言っているが、元凶はナジェジュダ。
 こいつだ。

 魔術の深淵を覗き、精霊と契約をして、リギュウムディの復活を願った。
 それは良いが、禁呪に手を出し、周りを巻き込んで延々と人を喰らっていた。
 その呪いが、プテリダとなって広がっていた。

 浄化後。伽羅が土地を整え、セルビリの要望に従って、道を造っていく。

 歴代魔王の、念願だったようだ。

 プテリダがあったせいで、魔王国はここより以南には町がなくなり、最果て状態だった。
 それが今、使えるようになった。

 思わず感動したセルビリが、抱きついてこようとするので、脇にうっちゃる。

「さあ行こうか」

 そう言って歩き始めるが、かなり広大。

 当然面倒になって、飛ぼうとしたが。道は造ってくれと懇願されて伽羅と相談。
 伽羅に力を与えながら、一気に道を繋げた。

 何故か、その時に伽羅の体が、生身となっていた。
 伽羅の背中から腕を回した、バックハグ。
 その時から、うん? とは思ったが。
 意識的に、実体化を出来るようだ。

 伽羅に言わせると、「あなたを、王と認めましたから」と言っていた。
 フレイヤじゃないが、俺から伝わるエネルギーは心地よく。
「好き」だそうだ。

 そうして、一気に道を造り。
 その道は、歩くことなく、転移をする。

 来たのは、魔術研究都市の廃墟。
 意外と崩れておらず、形が残っている。
 全体に、魔術の残滓が有り、見たことのある石柱が立っていた。

 星の力を、利用していたらしい。

「父さんが絡んでいたのか?」
 石柱をなでながら、思わず声に出してしまう。
 耳ざといナジェジュダ。
「お父さん?」

「ああ。リギュウムディの前王。プローペ=ディウムさんの生まれ変わりが、俺の父親だ。転生したら、地球人でしたって笑っていたよ」
「地球? とにかく、前王がお父様なら、運命ですね。私は、王の最後の弟子として、魔術を習っていました。書庫には入らせて頂けませんでしたが」
 思い込みが強く。ドジっ子突っ走り属性が、今よりも遙に強かった。
 だが妙に優秀。そんな彼女だった。

「この石柱は、私が建てたんです。そう言って、懐かしそうに石柱をなでる」
 今の彼女は、身長一五六センチで、体重は五三キロくらいだろう。
 だが、八二センチ位ある胸と、引き締まったウエスト、そして八三センチくらいのヒップ。美葉が羨ましそうになでていた。

 なんとなく、立っているだけで絵になる。
 ショートボブの銀髪。
 ブラウンの目。
 肌は白色だが、今は少し赤く日焼け。
 まるで、モデルのよう。
 だが、性格は今イチ。

 その頃、馬に乗った一団が迷っていた。
「匂いがありませんね」
「そうだな、腐った特有の匂いが、していたものだが」
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