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第五章 ホミネス=ビーバレで再編は進む

第79話 この王都は廃棄します。決定事項です

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「さて、あの王子達以外は、もう必要がない連中ですね」

 飽きてきたのか、フレイヤがそう言うと、一陣の風が吹き、王子と王女を除いて廃棄予定の者達は、消えた。
 血の跡すら残さずに。

 王城から少し離れた空中に、その者達は現れた。
 そう、無慈悲なフレイヤに汚れごと転移させられた。

 むろん飛行魔術など、誰も習得をしていない。

 彼らは、人知れず。
「ああ無情」
 そんな言葉を、言ったか言わなかったのかは知らない。
 ただ体験をした。

 紐無しのバンジージャンプを。
 それが、彼らの最後となった。

 むろん、そんな事は知らない謁見の間。
 静かになり、王子達は周りを伺う。

 入り口の方にいる集団。
 その中には、魔族もいる。
 彼らは、当然だが身構える。

「ああ。そんなに警戒をしなくても良いよ」
 望はなるべく和やかに声をかける。

 この世界の見た目からすると、かなり若く見える。
 だが、抑えてはいるのが、流れ出る力は常人のレベルでは無い。
 彼らは、意識をしたことで、受ける影響が強くなり、王子達の体が小刻みに震え出す。

「あなたたちは一体、どなたです? それに、ここにいた者達はどこに?」
 第一王子ダリミルが、勇気を振り絞り。声をかけてくる。

「俺は、リギュウムディの王。山川 望。後ろは創造神だったり精霊だったり、我が国の関係者だな。それでだ、この国に勇者召喚された人間でもある」
 それを言った瞬間に、封じる呪文を唱えやがった。

 一種呪いの様なそれは、すでに解除されているので、近くにいて? あれ? ダーシャを抱きしめて、頭をなでている。
 見た感じは兄妹のようだが、グレーだな。

「なっ。封じの呪文が、効かないではないか」
 王子があわてる。

「当然、生活に支障がありそうだし、解除をしてある」
 一応説明はした。これで良いな。

「さてと、特にこの国に恨みはないことはないが、滅んで貰おう。新たに王を立て王都も変える。そういうことで、新王はマリチオニス=ランヴァルド元辺境伯だな」
「そんな事が、許されるはずもない」
「あーいや。許さないという人は、もうここに居る君達だけ。すでに民や、納得した貴族は新たな生活を始めている。町にも、ごろつきや同じような兵とか少人数いるが、この王都自体滅んで貰う」

 王子も、人数が減っていたことは、報告と実際に体感して知っていた。
 だが何故かという理由だけは、決して上がってこなかった。

「うぬ。余所の国まで首を突っ込み、それは問題にはならんのか?」
 そう聞かれて、きょとんとする。

「あれを見て」
 指をさすのは、『天からの英知受託』
 結構巨大な絵が、堂々と飾られている。

「あれは元々の、意味のままなんだよ。しばらく、途切れて形骸化したようだけど」
「あの絵が何だ?」
「あれを見て分かるとおり、昔はリギュウムディが各王を任命したんだよ」
 そう言うと、王子は驚き愕然とする。

「――知らなかった」
 王子は膝をつく。

 そうだろう。

 実際、大嘘だ。
 あれに描かれている王は、父さんだ。

 要するに、リギュウムディの逸話が絵となっただけ。

 今回強引に話を進めるために、そう決めた。
 これからを考えたときに、リギュウムディの事を知らしめ、利用する。
 すべての国は、リギュウムディの傘下だと。

 まあこの辺りは、ミッドグランドのことも有り、酔っ払いの席でその方が楽だよね。とまあ、決まった。

「さあ、そういうことで、この王都は廃止。新王都は新王の領地で、そのまま名前を取ってランヴァルドにしよう」
「ランヴァルド。と言うことは、新王はマリチオニス=ランヴァルド?」
 そう言うと、本人が背後から出てくる。

「第一王子、ダリミル様。お久しぶりでございます。私、あれよあれよという間に、メリディアム国の王となりました。さて。あなた方は、王位が無くなりましたので、お好きにどうぞ」
「貴様よくも」
「苦情は、リギュウムディへどうぞ。だそうです」
 出来るわけはない。

 一声掛ければ、ドラゴンたちが集まってくる。
 一匹でも、国家存亡の危機だ。

「あっそうだ。ダリミル様。国境で元貴族たちが、ミッドグランドへご迷惑を掛けているようです。速やかに、やめさせてください」
「ぐぬっ。あれは父上達の」
「ですが。お父上はそこで、旧貴族連合に討たれたようです」
 謁見の間。階段で倒れたままで、みんなが存在をすでに忘れていた。

「そうだ、父上達の葬儀と、墓所を…… ええい。お願いいたします。新王ランヴァルド殿」
「はい。そうですね。分かりました。埋葬は王家の墓所へ埋葬でよろしいでしょうか?」
「はい」

 結局、王子たちは仕事を得るためにも、新王都ランヴァルドへと移住をした。
 身内で、厳かな葬儀を行い。
 その後、王都メドカプティスが、荒野に戻る風景を呆然と眺めた。

 建物や、道。生活の痕跡すべてが、いきなり質量を失い、砂へと変化する。

 王都だった場所は、あっという間に消え去り、すぐに草が生え木が生い茂ってくる。
 あっという間に、森へと還ってしまった。

「これが、精霊様のお力」
 そんな言葉を、口にして驚くのは、王子様達。
 王達の埋葬後、立ちより。その最後を見た。

 だが、しんみりしたのは一瞬。
「さあ。お兄様、お家へ帰りましょう」
 ダーシャがそう言うと、何やら祈っていたイヴォナ、ダリミル、ヤロミールは顔を上げる。

「父さん達も生きていれば、新王都で格の違いを実感できたのに」
 ダリミルがそう言ったのは、遠征の無謀についてだろう。
 その位、快適さが違う。
 王子達は、望達に連れられ、新王都に立つと、建物の異様さと設備の快適さに驚く。エレベーターに、空調、水回りに窓からの景色。

 元からいたお付きの者達に、違いを一通り教え、料理は料理学校へ習いに行かせた。

 あっそうそう。遠征から帰ってきたアーラン=ヤッチマッタナー侯爵だが、元の領都があった場所には、全く違う町があり、見知った顔の新領主がいたようだが、町には入れなかったそうだ。
 噂を伝手に、近くで町から追い出された者達が生活をしている場所。農地だが、腰を落ち着けたそうだ。

 多分遠征参加の連中には、同じ現象が起こったはずである。
 フレイヤの、「不要ですわね」その一言で。
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