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第五章 ホミネス=ビーバレで再編は進む

第76話 ミッドグランドの真実

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「なあ聞いたか?」
「何だよ。こちとら、今、人手がなくて大変なんだよ」
 鍛冶屋へ、常連の商人が飛び込んでくる。

「それだよ。今派兵をしている相手って、ミッドグランドだろ」
「そうだよ。未開の物事を知らない民を助けて、我が国が主導で安心安全な生活をさせる。だがまあ、要するに属国としてと言うことだろ。戦後、幸せになるのなら、向こうの国民も喜ぶんじゃないか?。宰相様だか、偉い人がそんな事を説明して、派兵を決めたって言っていたじゃないか」

 そう答えると、商人は、近寄ってくる。

「何だよ。うん? お前なんだか、良い匂いがするな?」
「匂いは良いんだよ、なれていたから気にならなかったが、お前すごく臭いぞ。それに匂いはお前だけじゃない、町中が臭い」
「何だよお前?」
 そう聞くと、商人はにやっと笑う。

「俺はその、ミッドグランドに行った。端っこのテルミウスオピドムと言う町だけれどよ。半年、いや一年前くらいか? 一夜のうちに変わっちまったんだよ」
「何がだ?」
「町全体が」
「はっ? 何だ? 魔法を使っても無理だろう」
 そう言われても、商人のニヤニヤが止まらない。

「そりゃあ、人間基準だ。あそこの王様が変わっただろう」
「ああ。その時の使節団が蛮族のような、ミッドグランドの奴らに殺されたって言うのが、発端だしな」
 それを聞いて商人は、ハンと鼻で笑う。

「いいか。その、王が代わった事件。背後にリギュウムディ王国がついている」
「リギュウムディっていやあ、伝説だが。本当なのか?」
「ああ。あの国を変えたのは間違いない。一気に数百年も時が進んだような国になった。この目で見たからな」
 そう言って商人が、ニヤける。
 これで、本題に入れると。

「おまえ、奥さんや子供にも苦労させているだろう」
「ああ。そりゃな。今回武器を納めて、多少ましになったが」
 そう答えると、懐から、紙切れが出てくる。

 そして、商人は言い始める。
「そんなあなたに、朗報です。今なら、ぬあぁんと、無料で宿泊が出来ます。最高のサービスを受けて、無料。一家族一〇名様まで。今だけですよぉ」
 そう言って、チケットを突き出してくる。

「何だよお前。突然」
「分からねえよ。高めの声で、こう言えって言われたんだから」
 恥ずかしかったようだ。かなり赤い顔で言い訳を言っている。

「使い方は、教会の石板にこの紙を触れさせるだけ。だけど、その時に一緒に行く人間とは、手を繋ぐとかしていないと置いていかれるらしい」
 そう言うと、鍛冶屋の店主は驚く。

「教会の石板に、そんな機能があったのか?」
「ばかだなあ。あの教会その物が、リギュウムディの物で、管理は四大精霊様達だそうだぞ」
「そうだったのか?」
「ああ。精霊様達が力を使えば、一晩で町は滅ぶし、逆に町ができあがる。まあこれを持って、テルミウスオピドムへ行ってこい。王達の言う蛮族というのが嘘だと分かる」
「お前なあ。兵に聞かれたら、首を切られるぞ」

 そうして、教会は人でごった返していた。

 ********

「此方まで来るのに、三週間程度ですが、軍などは人数が増えれば動きは遅い。まあその間に、真実を広めましょう。それには、実際に見て貰い話を広げて貰おう。二泊三日で良いかな? 施設も増やそうか」
 望がそう言うと、カニを口いっぱいに詰め込んでいた、エリサベト=オードランが立ち上がり走っていく。
 その後を、セバスン=サミュエルが追いかける。

 これで、用意はすむだろう。

「まあ、そういうことで、メリディアム国王都、メドカプティスの住民を中心に、ミッドグランド王国を体験していただこう」
「体験?」
「ええ、彼の地から見て、蛮族はどちらか? 目で見て判断をしていただきましょう?」

「そんなの。答えは決まっているじゃない」
 辺境伯婦人。エルヴィーラはため息を付く。
 パンをもぐもぐと食べながら。


 前回、兵にやったことと同じ、宿泊所というか研修所。
 やって来た住人を洗い、服もクリーニングや修復を行う。
 食事は、家族単位で寛いで貰う。
 だが、三食提供。

 それだけで、一般の民達は感動する。
 見たことのない食材。
 盛り付けも美しい。
 だが、食べられない飾りは、入れていない。
 彼らには判断が出来ず、困ったことがあったからだ。

 そして、彼らは帰ってから、自分たちの暮らしに絶望をする。
 それを分かっていたから、教会脇の石板に兵を配置した。
 『ランヴァルド領行き。ここから、戦地に向かう兵達に応援を送るため先回りが出来ます』

 今回一晩で出来た、ランヴァルド領の新たな町。
 風光明媚な景色はそのままに、上下水道完備。
 浴槽付き。
 水洗トイレ完備。

 周囲に、工房エリア。農業エリア。商業エリアが作られた。
 今回の農地は、土の精霊である伽羅によって仕上げられている。
 長年の山から崩れ堆積をした、ガレ場のような土は、見事に変わりふかふかになっていた。

 徴兵され。苦労して歩いてランヴァルド領まで来ると、何故か家族が健康そうな顔で待ち構えている。
「お前達どうやって? それにその格好は?」
「まあ、お父さん。借り物だけど、家に行きましょ」
 そして、カルチャーショックを受ける。

 ランヴァルド領。土地は広い。
 あっという間に、兵達とその家族を吸収してしまう。

 出立の時刻。一見すると、こざっぱりした感じだが兵達が集まった。
 そして、辺境伯達が馬車に乗り込むと、今回の出兵に同調した貴族達と騎士達が続く。

 そして、その一行を見送る、兵達。
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