上 下
25 / 118
第四章 世界との関わり

第25話 父さん達の帰宅

しおりを挟む
 認証を貰い、入れるようになった。
 と言っても、魔力パターンを登録して、名前を言うだけ。

 中は、調湿されてカビず崩れず。バランスの取れた図書管理に適した温度と湿度。温度一三度と一八度の間で一定していること 相対湿度五五パーセントと六五パーセントの間。六五パーセントを越えるとカビるようだ。
 また当然、範囲内でも急激な変化は、結露などダメージを与える。

「初心者向けはこの辺り。奥に進めばどんどんやばくなる。奥の封印図書はなるべく解放するな」
「そんなやばいものが?」
「一般人ならやばいが、お前なら、まあ鬱陶しいだけだろう。きっと」
「何が出るの?」
「興味で、人は死ぬ事があるんだ。気を付けろ」
 とんでもない事を言うが、その時の父さんの顔は、満面の笑みだった。
 すんごい気になるんだが。

 随分先で、俺は開いた。
 うん開いた事を後悔したし、父さんの言っていた、うざいも分かった。

 まあ本によるが、魔導や世の理を突き詰めようとした狂人たちが、本に封じ込められたのか、それとも自ら本の世界に入ったのかは知らないが、ほら自分が興味があって勉強すると、人に教えたくなるじゃない。延々こっちの都合も考えず。現れては、知識を押しつけてくる。
 それもかなり、いい加減なもの。

『地面の下には、大いなる聖獣がおり、大地を支えている。常識だ誰もが知っておる。
 その脇には、仕える者達が居て、日々お日様を上昇させ、大地をてらし、雨を降らせ、夜には月を昇らせる。
 だが、その者たちが良い加減で、毎日少しずつズレる。
 そのずれのせいで、季節が生まれているが、そのズレ自体が、考えれば逆にきっちりとしている。そう考えれば、役割をきちんと務めているのではないか? 神はその辺りをどう考えているのだろうか? 君は不安に思い。謎を解き明かそうと思わないかね。どうだね。悠久を生きる賢者である私と、探究をしようでは無いか』

「ええ。結構です。全く思いません。そもそも根本が間違っています。……この者、本へ封じよ。シグマリヴィリウム」

「ふふっ。ですから、前王、全一様が開くなと申していましたのに」
「フレイヤ見ていたのか? 悪かった。ついね。君のような事もあるからな」
「まあ。もう封じられているものはいません。私は唯一神。美と豊穣ですから」
「わかった。見られると、また好実たちの機嫌が悪くなる」
「まあ、狭量(きょうりょう)な者達」
 そう言って嫌そうな顔をする。

「いい加減にしないと怒るよ」
「あら。ごめんなさい。怖い顔も素敵よ」
「たく」


「と、言う事で、ここからここまで魔導の基本。全部読み込めば石碑もいじれるさ。頑張れ」
 そう軽い感じで、おしえてくれた。

「とりあえず、一冊持っていくか」
「あっそうだ。望。重要な事だ。魔導書はな、作者独自解釈のドキュメンタリー風小説。SFだと思って読めば大丈夫だ。真面目に読むと泣くぞ」
「どうして?」
「そうだなぁ? ある魔方陣を書くときに、処女の血を用いて新月の晩にとか書いてあるとして、実際は魔力を流せば良いから、血の中のヘモグロビンより銀の方が効率が良い。新月の晩というのは、魔力を流したときにお日様の影響が何かあるという事だ。例えば酸化しやすいとか」
 ちょっと眉を、へにょっとさせて教えてくれる。

「内容の本質だけが、重要なんだね」
「そうだ、うかつに信じて、村娘を殺すなよ。村人ではないが、お前が欲しがっているとなったら街の人たちは、処女の生き血を本当に持ってくるからな。気を付けろ。それが王様だ」
 まだ困った顔のまま、父さんが教えてくれる。この感じは本当に何か騒動があったのかもしれない。

「うわあぁ。今の状況を見ると、ありえそう」
「だろ。精霊を従えた伝説の存在だからな。どうだ、やめたくなっただろう」
「やめられるならね。一度始めるとやめられない」
 そうすでに、俺を慕う民達がいる。

「俺が、姿を消せば、精霊との契約が切れるしね」
「まあそうだな。じゃあしっかりと務めを果たせ」
 黙って、頷く。

 そろって昼食を取り、午後からお見送りの時間となった。
 初めて見た、父さん達の墓。

「立派だよな。父さんが亡き後なら誰が建てたんだ?」
 当然という感じで、伽羅が手を上げる。

 それを見て父さん達も驚いたようだ。
「そうか、君は土の精霊だな」
「今は伽羅と名前を頂いております」
「そうか、ありがとうな。伽羅さん」
「いいえ」
 あー。分かっているが、もやっとする。
 普段のはっちゃけ精霊たちは、どこへ行ったんだ?

「さあそれじゃあ、ぼちぼち帰るよ。望は良いとして、君。街賀さんは本当に良いのかい?」
「ええ。こっちで幸せになります。向こうも心配でしたが、忘れられているのなら、すこし、安心しました」
 そう言う彼女の顔だが、やはり少し、もの悲しい感じはある。
 だが。

「こちらで、きちんと王妃として国を守り。世界一の国にします」
 父さん達の顔が驚く。

「そうか。じゃあ、元王様として、君達にこの国を任せよう。望も頑張らなきゃな」
「ああ、まあそうだな。じゃあ向こうの本をよろしく」
「そうだな。今度はお姉ちゃんも連れてこよう」
「えー。いいよ」
「なんだ? 仲悪かったのか?」
「そんなんじゃ無いけど」

「うんどうしたの? 帰るよ」
「あの、帰ったらまた私、望のことを忘れちゃうの?」
 泣きそうな顔、いや半分泣きそうになりながら美葉が父さんに聞く。

「あー精霊石を一つ、くれないか?」
「はい。これをどうぞ。」
 すささと、碧が父さんに渡す。
 ぎゅっと、手を握りしめ、父さんをうるうると見つめる。

「あー昔の記憶に引きずられるな。今の主は望。俺の息子だ」
 そう言うと、そっと離れる。

 意味深すぎるだろうぉ。なんだよ。
「これを持っておきなさい。すると、忘れないはずだ」
「ありがとうございます」

「あっ。美葉ちゃん霊感は強かったかな?」
「いいえ。何かあるんですか?」
「あーまあ。知らない人と言葉を交わさなければ大丈夫。いざとなればあっちへ行けと強く念じれば大丈夫だよ」
 そんな、ちんぷんかんぷんな事を言っていると、彩が何かを渡す。

「ああ。なるほど。土の精霊。伽羅さんだったね。これにチェーンを付けてペンダントにしてくれないか?」
「お安いご用です。そちらの精霊石も加工しましょう」
 それを聞き、ちょっとむっとして、碧が前に出ようとするが父さんが制止する。
 むにゅっと。
「「「はっ?」」」

「あっごめんね。しばらく合わないうちに器用になったね」
 碧が茜のような色になった。

 あっという間に加工され、美葉に渡る。
「一つは、力の封じられた精霊石。もう一つは常時発動型のシールドだ。まあ魔道具だな。トラックにはねられてもトラックが壊れる。精霊石の力に惹かれ悪しきものたちが来ても大丈夫だから」

 あの時おじさんはそう言った。でも、これは怖い。

 後ろ髪を引かれながら帰った後。
 色々な道で、色々な見えてはいけない者達が、見えるようになっていた。
 走ってきて、べしっと何か見えない壁に当たり。はじけるのよ。壊れて霧散するの。気になるのは、それがあるたびに、ちょっとずつ体がポワッと温かくなるの。
 まるで、レベルアップのように。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界国盗り物語 ~戦国日本のサムライ達が剣と魔法の世界で無双する~

和田真尚
ファンタジー
 戦国大名の若君・斎藤新九郎は大地震にあって崖から転落――――気付いた時には、剣と魔法が物を言い、魔物がはびこる異世界に飛ばされていた。 「これは神隠しか?」  戸惑いつつも日本へ帰る方法を探そうとする新九郎  ところが、今度は自分を追うように領地までが異世界転移してしまう。  家臣や領民を守るため、新九郎は異世界での生き残りを目指すが周囲は問題だらけ。  領地は魔物溢れる荒れ地のど真ん中に転移。  唯一頼れた貴族はお家騒動で没落寸前。  敵対勢力は圧倒的な戦力。  果たして苦境を脱する術はあるのか?  かつて、日本から様々なものが異世界転移した。  侍 = 刀一本で無双した。  自衛隊 = 現代兵器で無双した。  日本国 = 国力をあげて無双した。  では、戦国大名が家臣を引き連れ、領地丸ごと、剣と魔法の異世界へ転移したら――――? 【新九郎の解答】  国を盗って生き残るしかない!(必死) 【ちなみに異世界の人々の感想】  何なのこの狂戦士!? もう帰れよ!  戦国日本の侍達が生き残りを掛けて本気で戦った時、剣と魔法の異世界は勝てるのか?  これは、その疑問に答える物語。  異世界よ、戦国武士の本気を思い知れ――――。 ※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも投稿しています。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ
ファンタジー
今村大河(いまむらたいが)は中学3年生になった日に神から丁寧な説明とチート能力を貰う…事はなく勝手な神の個人的な事情に巻き込まれて異世界へと行く羽目になった。しかし転生されて早々に死にかけて、与えられたスキルによっても苦労させられるのであった。 なんでも出来るスキル(確定で出来るとは言ってない) *冒険者になるまでと本格的に冒険者活動を始めるまで、メインヒロインの登場などが結構後の方になります。それら含めて全体的にストーリーの進行速度がかなり遅いですがご了承ください。 *カクヨム、アルファポリスでも投降しております

プレアデスの伝説 姫たちの建国物語

のらしろ
ファンタジー
 主人公の守は海上警備庁に奉職すぐに組織ぐるみの不正に巻き込まれて、表敬航海中にアメリカで降ろされる。  守の友人である米国海兵隊員の紹介で民間軍事会社にとりあえず就職するが、これまた航海中に大波に攫われて異世界に転生させられる。  転生直前に、カミサマと思しき人から転生先の世界に平和をと頼まれ、自身が乗っていた船と一緒に異世界に送り込まれる。  カミサマからの説明はとにかく長く要領を得ずに分からなかったが転生直後にこれまた別の神様が夢に現れて説明してくれた。  とにかく、チート能力は渡せないが、現代社会から船を送るからそれを使って戦乱続く異世界に平和を求められる。  訳も分からずたった一人大海原に送り込まれて途方に暮れたが、ひょんなことから女性を助け、その女性からいろいろと聞かされる。  なんでもこの世界の神話ではプレアデスの姫と呼ばれる6人もの女性が神より遣わされる男性の下に嫁ぎ国を興すすとき神より大いなる祝福を受けるとあり、初めに助けた女性を皮切りに巡視艇を使って襲われている人たちを助けて、助けていく人たちの中にいるプレアデスの姫と呼ばれる女性たちと一緒に国を興す物語になっております。

処理中です...