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第二章 名前も知らないところ

第5話 不本意ながら介入してみた

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「食べりゅ」
 反射的に答えたから噛んだ。

「水を飲んどけば、数百年死なないはずなんだけど。まあいいわ、行こう。何を食べる?」
「何かこう、普通の物」
 すると、茜はあろうことか、俺の頭に手を突っ込む。
 未だに半透明で、実体じゃないのだろうけれど、なんだかね。

「肉と野菜、穀物、牛乳? よく分からないわね。牛というのに近いものは昔ミノタウルスとか呼ばれていたけれど、あれって二本足だった気がする。彩、ご主人様の記憶を見て、探してきて」
「うん。いいわよぉ」
 また手を突っ込まれる。

「うーん。変なものを食べるのね。丸くて間に何か挟んで。丸いのはプローペ=ディウム様がキノコと呼んでいたものかしら? 間のは、獣の肉を細かくして、薄くのばして焼いたもの?」
「いや、それって、キノコじゃなく穀物を粉にして焼いたパンとか言う物を、切ったのじゃない?」
「そう言われれば、そんな記憶もあるわね」

 そんな話をしていると、碧参戦。
「面倒ね。スライムでも食べないかしら。いくらでも増えるから楽なのに」
 そこへ、土の精霊 伽羅参戦。
「種子を見つけてくれば、増やすのは得意よ。似たようなものはあったような気がする」
 そう言って、伽羅が探査を始める。

 だがすぐに。
「面倒、妖精達を見つけたから頼んだ。ご主人達と、同じような生き物が食べるところを見つけて、報告が来る」

 そう言ってすぐ、小さな光が伽羅の周りを回り始める。

「ご主人様、ちょっと」
 伽羅の顔が、いきなり俺の横に来る。
「確認だけど、ご主人様の此処の部分を、この胸の有る方。ええと女性に咥えさせたり、お股に突っ込むのは食事じゃないよね」
 抱えている好実を、伽羅が指さす。

「そうだね。それは、素敵。あっいや、人間が繁殖するための行為だね」
 努めて、平然と答える。
「この方向に、ご主人様と同じような人、人間たちがいて、騒動が起こっているみたい。随分命が減って居るみたいよ」
 そう言って、太陽があっちだから東かな? そちらを伽羅が指さす。
「助けられるか?」
 その時は何も考えずに、口にしてしまう。

「じゃあ見に行きましょう。街を復活せせるのに必要な物がそろうかも」
 凄く軽いノリで、茜が右腕を突き上げる。

 次の瞬間、いきなり浮かび上がり、空を飛ぶ。
 風の精霊である彩が、シールドを張り、ガードしているようで、目も痛くない。

 高い山を越えて行く。
 その途中、ワイバーンが不用意に近付き、あっという間に頭がなくなり二匹ほど落ちていく。あれ、途中で消えた? そのまま俺達は雲に突っ込み、わずかな時間で今度は降下。

 盗賊とかの話だと思っていたら、国レベルの戦闘のようだ。
 かなり大きな町が、数千規模の軍に囲まれて、すでに門が破られている。
「ちょっと待て、あれか?」
「えーと。うん、そうみたい」
 横を飛んでいる、伽羅が答える。

「だとすると、安易に介入は、ああああぁぁぁ」
 そのまま、地面へ向けて突っ込んでいく。

 周りでは、茜のぽいぽいと撃ち込んだ魔法が、火柱を上げる。
「さっき見に行くと、言っていなかったか?」
「そうよ」
 なあに? という感じで、茜が首をひねる。
 茜の攻撃により、少し止まったが、戦闘の最中。
 周囲を火柱に囲まれた中を、狂ったスピードで飛びながらの、茜がする私かわいいアピール。

「これは、見るとか言う行為じゃない、介入と言うんだ」
「ええっ。良いじゃない別に」
 そう言って、ぽいぽいと火種を放り込む。
 ボンとかいって、人が数十単位で吹き飛ぶ。

「とりあえず、もう魔法を撃ち込むなぁ」
「ええー。もう。細かいわね」
 ふてくされながら、茜の攻撃が止まる。

 相変わらず凄いスピードで飛んでいき、城郭の内部へ一気に飛び込む。

 強盗や強姦の起こっている所に、碧の操る水が滝のように降り注ぐ。
「犬じゃあるまいし。皆流れたぞ。まあ、茜よりはましだが。鎧を着ている奴らは居ないようだ。どさくさ紛れか?」

「そこの奴、何者だあぁぁ」
 押し込まれている側。道に展開している軍の司令部かな? 奥の広場そこから声が聞こえる。

『人間ども静まれ、我が王の御前だ』
 どういう力か分からないが、彩の声が響き渡る。
「王って何?」
 そう聞くと、呆れたように、伽羅が答える。
「私たちを復活させて、契約したのはだれ? 他に王がどこに居るの?」
「王って俺?」
「そう。私たちはもう、元の体にはもどれないの」
 碧が物騒なことを言い始める。
 気がつけば、周りを四人に囲まれている。

 空中で話し込んでいると、下の広場から、矢が飛んで来始める。
 さすがに、今居るところには届かないようだが、碧が手を上げ振り下ろす。
 それだけで雨が降り、雷が落ちる。

 かなり、弱くはしたようだが、皆ひっくり返った。それはもう、ぱったりヒクヒク状態。陸に上がった魚だな、鎧が鱗代わりになりキラキラとまぶしい。


 この町、上から見て城のあった中心の壁を囲むように、まるで花びらのように壁に囲まれた町がくっ付いている。

「おい。何のつもりだ? 攻撃をするんじゃない」
 届くか分からないが、叫んでみる。

「やかましい。この惨劇を見ろ。貴様らマリチオニスの手の物かあぁ」
「そこの者。落ち着きなさい」
 言葉は、おかしくないが、叫んでいる男の周囲にやばそうな雷が降り注ぐ。

 それはもう、踊っているとしか思えないが、かなり滑稽。
 笑ってはいけないが、思わず笑みが出る。
 鎧を着た、少々育ちのよすぎる体型の男。あっちにコロコロこっちにコロコロ。
 
「おい駄目だ、虐めるな碧。くっ。かわいそうだろう。ぬはっ」
 だめだ、この数日のストレスのせいか、他人の不幸が楽しい。
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