上 下
33 / 55
第2章 周辺国との和解へ向けて

第33話 開戦

しおりを挟む
「実はな。四つくらいの貴族だが、男は奴隷に、女は楽しんでから奴隷にすると言っていてな」
 雄一が、なんだか呆れたように、報告をしてくる。

「ふーん。それはなかなか。とりあえず治療をして、明日また王城だな」
 オリエンテム王国へ、攻め込んだ奴らを追いかけるつもりだったが、上手く行かないものだな。


 その頃、攻め込んだ奴ら。

 砦から出た当初は、全開だったが、馬が疲れたため休憩中。まだ国境から五キロ程度。
 基本的に、王都までの道順は知っているため問題ないし、足を撃った敵兵で少し位の高そうな奴を捕まえてある。

 そう、舐めていたがために、物見遊山と戦場の経験として、貴族の子弟が参加をしていた。
 捕まった二人は、ガブリエル=シェンベラとシャルル=エモニエと素直に名乗り、両者とも男爵家長男だそうだ。

 ちょっと弾がかすっただけで、子鹿のようにぷるぷる震えて、投降をしてきた。

 休憩をしている内に、後続が追いついてくる。

 総勢は、それでもまだ三百程度。

 敵国に攻め入るには少人数。
 だが、奴らが来たときに王城へと鳥は放った。
 準備ができ次第、後続が出征を行うはずだ。

 トルスティ=クレーモラ伯爵も、自分たちが負けて武器が鹵獲される危険性は十分理解している。
 自分たちが使い、相手が虫けらのように死んでいく。
 そこには、少し前の戦闘とは違い。個人の武というモノは、一切影響をしない。
 それを成した武器。絶対に敵に与えてはならない。

 部隊がそろった所で、進軍を開始する。
 後続の到着と、相手の準備。
 時間の問題だが、あまり恐れてもいなかった。
 兵糧と弾薬さえ、きちんとあれば、無敵。

 その考えは、間違っておらず。

 今回の出征は、コンティニアス大陸において伝説となった。
 オリエンテム王国殲滅戦。滅亡の三日間戦争。

 この戦いで、パリブス王国は、眠れる獅子という二つ名を受けることになる。
 パリブス王国は、怒らせてはいけない。
 一度牙を剥けば、相手は滅ぶのみ。

 そんな伝説が出来た。

 オリエンテム王国側、死者数万。
 対してパリブス王国側は、奇襲を受けたときに、けが人は出たが死者はゼロ。
 周囲に塹壕を掘り、警戒をしていたおかげだ。

 そして新装備、ポータブル投光器。

 その威力は大きかった。
 リフレクター。つまり反射板を用いて、陣の外向けに向けてだけ、照らすことで、陣の状況は見えず、外からの敵ははっきり見える。

 そして、一気に兵を蹴散らし、逃げ込んだ兵を追いかけて、一気に城門を破った兵器。

 
 伝説の数週間前。
 裕樹は、激怒していた。
 謁見の間に呼び出した貴族達。
 その言い草を聞くと、はなから諦め。パリブス王国を売り払おうとしていた。

 当然、王もあきれ顔だ。
 今、王城の練兵場には、捕らえられた奴らが転がされている。
 中には、勇名を馳せた猛者も居たようだが、同様に陸へ上がったマグロ状態。

 まあ、怪我もあるし、しっかり手足は縛ってある。
 新開発のトラックが役に立った。
 そうは言っても、オート三輪かトゥクトゥクの様な簡単な物。

 当然貴族達の家は取り潰し。関係した家と関係者が、芋づる式に捕まり。王国で粛正の嵐が吹いた。

 当然そんな物は、王国の人間に任せて、今後自分たちに危害を加える奴らが来ればためらわず。皆殺しにすると宣言をしておく。むろん、粛正の発表に合わせて呼ばれた。貴族の前でだ。

 ここまでで、2週間以上。
 裕樹は焦る。

 意外と、この国では、移動に時間が掛かる。
 パリブス王国が狭いと言っても、貴族が馬車を飛ばして、やはり2週間近く掛かるのだ。

 道の整備と、車の開発か列車の開発を心に刻む。

 そうして、遅れたがやっと先行した部隊を追いかけ始める。

 戦車は、当然間に合わなかった。
 車体は出来たが、エンジンパワーが足りず動かない。
 無限軌道は、パワーがないと駄目なようだ。

 トルクとパワーアップ。
 電池と、発電機。そしてモーター。
 そして、スーパーチャージャーかターボを作らないと駄目だが、そんな職人芸。
 素人が簡単に作れるものではない。

 すべて、王が先走ったおかげで、準備が出来なかった。

 裕樹はそれを懸念して、焦っていたが、追いかけても追いかけても、心配をしていた殲滅された兵達は居ない。武器が強力でも、弓隊に包囲殲滅をされたらと危惧をしていたが、何もなかったようだ。

 道中、城門が壊れ。解放された街が幾箇所かと、なんだか歓迎ムードの村人達。
 何か美味いモノを食わせて貰い、懐柔されたようだ。

 パリブス王国が治め出せば、農地の収量は上がるし美味いものが食える。
 それに便利な道具が支給されると、どうも吹聴をしたらしい。

 言った以上、何とかはするが、勝手はやめてほしいものだ。

 追いかけて、追いかけて、舞台はオリエンテム王国王都前。

 数万の軍と、数千の軍が睨み合う寸前。

 到着次第、トルスティ=クレーモラ伯爵を探す。

 そこから伯爵を叱りつけ、陣地の設営と塹壕の整備。
 前にオリエンテムが使った移動式矢よけの盾を作製し、配備する。
 伯爵が言い訳した、王命と言う言葉を、笑いながら聞く。
「そうか。王がなぁ」
 王達も折檻の対象のようだ。

 そこまでで一週間。
 幸い、最初の一当てで、向こうがびびり、進軍をしてこない。
 此方も、道中は何故か安全が確保されて、兵糧は十分。

「さて、準備は出来たか。やるぞ」
 ゴタゴタあったが、やっと本格的な開戦が始まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

素材鑑定士見習いの徒然なる日常 〜愛されスピーの村外研修〜

玉美-tamami-
ファンタジー
「素材鑑定士って、何ですか?」 「名前のまんまさ。素材を鑑定する者の事だよ♪」 魔法王国フーガを舞台に、可愛いピグモル族の青年スピーが、個性溢れる仲間たちと織り成す、ほのぼの日常系ストーリー♪ ***およそ60年前に、この世界から絶滅したとされていた、可愛らしいだけが取り柄の愛玩種族であるピグモルは、辺境の地で密かに生き延びていた。 その後、長い年月を経て、ある事をキッカケに村を飛び出した一人の若いピグモルの活躍が、彼らを世界へと羽ばたかせるきっかけとなったのだった。 そして今日もまた、新たなピグモルたちが、その小さな胸に大きな勇気と希望を持って、外の世界へと一歩を踏み出すのであった。*** 作者の他作『最弱種族に異世界転生!? 〜小さなモッモの大冒険♪〜』の舞台より、約10年後の世界のお話です(๑>◡<๑) 読んでなくても全く支障は無いですが、読んでいた方が若干面白い部分もあるとは思います←(笑) *現在休載中です。続報をお待ちください*

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

処理中です...