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第4章 大陸統一に向けて
第47話 皇帝の苦悩、そして降臨
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「使徒…… どうすれば良いのだ……」
皇帝は悩む。
それは当然のこと、相手が使徒ならば天に唾吐く行為。
報いは自分へと降ってくる。
「戦闘をやめ、話をする」
「今からですか?」
丞相アルコルは、不服そうな顔を見せてしまう。
すでに戦闘は、皇都内へと進み、城までわずかなところまで来ていた。
そう戦闘力が違いすぎた。
命知らずに突っ込んでくるモンスター達。
その後ろをやって来る化け物、その後に控えているのは、すっかり膨らんでしまい、数万となった軍。
どう足掻いても、今できるのは無条件降伏しかない。
「恐れ乍ら、今からで行えることは、降伏をするしかありません」
頭を下げ、震えながら伝える。
その様子を見て、皇帝はテラスへと出て行く……
そこから眺める景色は、いつもの詰めかけた民衆ではなく、どこを見ても敵、敵、敵。
自軍は皇城の入り口を死守しているようだが、それもいつまで持つのか分からない状態。
「ここまでだったのか……」
皇帝はその光景を見て唖然とする。
報告は受けていた。
だがその報告には、欺瞞とは言えないが、希望的観測が多分に含まれていたようだ。
「引き際だな」
皇帝はそう言うと、力なく座り込む。
「どうされますか?」
「降伏をしろ」
全員死に絶えるまで戦う。
そんな事をすれば、この状態では、本当に死に絶えることになる。
皇帝は、目の前に見える現実に、日和ってしまう……
通達を受け、全員が武器を放り出し手を上げる。
皇帝の命令は、敵にも伝わるように大声で通達される。
「終わったようだな」
ヨシュートも戦闘中止を通達。
略奪を禁止。
兵達やモンスターが道を空ける。
その中を、ユキと一緒に歩いて行く。
経験により少し出来た自覚。
『統治を任せてあげる』
そう言われて、始まった生活。
訳が分からないまま、進んできた。
ただまあ、前の人生よりは楽しかった。
開かれた道に促されるように、彼は皇城へと向かう。
門を入り、庭園を抜け入り口へ行くと、丞相アルコルが待っていた。
「お待ちしておりました。ヴァルデマル帝国丞相を務めさせていただいております。アルコル=ルーベンと申します」
ヨシュートは、自分の肩書きを伝えようとして固まる。
「連合国の帝? ヨシュート=ヒトーノだ」
ピクッと反応し、バッと礼を取る。
片膝をつき、胸に手を当てて、再び案内をすることを繰り返す。
それに、立つことを許し案内を受ける。
丞相は正面の大階段を上がり、右に抜けて城の奥へと上がっていく。
途中、ユキのことを気にしていたが、なにも言わない。
そして着いたのは、謁見の間ではなく会議室。
「会議室という事は、和平ですかな?」
最近ずっと無言だった副官ロニーが口を開く。
ロニーは、自分の周りに知り合いを配置しようと、手柄を立てさせるために、あの壁に送り込んでいたようだ。
「皇帝の野郎許さん」
などと言っていたが、しらんがな。
そんなお怒りの副官ロニーが仕切り始める。
当然俺らが、上座だ。
窓からの光を背にする。
一応背後から、弓でも射られないように周囲を警戒をする。
「さて、ヨシュート=ヒトーノ帝、副官のロニー=ウィル伯爵だ」
ロニーはテーブルに肘をのせ、手を組んで口元を隠すように喋り始める。
どこかで見たことのある光景。
もし、メガネを掛けていれば、逆光であっても光っているだろう。
彼にしてみれば、怒りを…… その気持ちを見せないための工夫なのだろう。
「話し合いの場を持つという事は、降伏し、下るということかな?」
いきなり、そこから…… まあ回りくどく言っても一緒だが。
「そうだ…… いやそうであります。これ以上は、町を、攻撃をやめていただきたい」
そう言って静かに皇帝は頭を下げる。
王以上に、面倒な役職。それが頭を下げるなら、かなりの覚悟なんだろう。
「降伏という事で良いのだな」
今度は俺が問う。
「はい、仰せの通り」
その瞬間、どこからともなく、鐘の音が鳴り響き、部屋の真ん中、机の上に光が集まっていく。
白い花びらのような光が、部屋の中に舞う。
「あー。何やってんだ、あんたは。下界には、直接手を出せないんじゃなかったのか?」
「手なんか出していないじゃない。前の奴とは違って真面目に仕事をしていたようだから、褒めるために来たのよ」
彼女がそう言うといきなり、机が消える。
重力に逆らい、ゆるゆると床へ降りる。
どこからか取り出した扇は、周囲に羽っぽい飾りが付いているが、本体はクリスタルのようで光を発している。
それを口元に当てると、再び話を始める。
「私はこの世界を司る女神、アデルミラ=ヘルトルディス=アバスカル=デルリオ=アプロディーテー。めったに姿を現さないから、刮目なさい」
そう言ったが、俺以外は謎力で床に突っ伏している。
「さてと、一応、ここまでできたのだから、ご褒美をあげる」
そう言って、チュドっと言う感じで光に撃たれた。
「うがあぁ」
そう光を浴びたとき、何かが入ってきた。
体が軋む……
また出血だよ。
そしてその光は、ユキにまで。
「ぐっ、ユキ……」
その光を浴びると、ユキはメタモルフォーゼをする。
そうは言っても、服なんか着て……
空間から、光が集まり服になった。
「この格好では初めまして、ご主人様。わたくし、ユキと呼ばれておりましたが、初等女神候補、女神眷属のフェリシアナ=グロリア=ラミレス=ケサダ=アクエリアスでございます。この世界に来られたときから、お目付役で突き従っておりました」
ものすごい美人さんに変化をして、ユキはそう言った。
「えっ……」
皇帝は悩む。
それは当然のこと、相手が使徒ならば天に唾吐く行為。
報いは自分へと降ってくる。
「戦闘をやめ、話をする」
「今からですか?」
丞相アルコルは、不服そうな顔を見せてしまう。
すでに戦闘は、皇都内へと進み、城までわずかなところまで来ていた。
そう戦闘力が違いすぎた。
命知らずに突っ込んでくるモンスター達。
その後ろをやって来る化け物、その後に控えているのは、すっかり膨らんでしまい、数万となった軍。
どう足掻いても、今できるのは無条件降伏しかない。
「恐れ乍ら、今からで行えることは、降伏をするしかありません」
頭を下げ、震えながら伝える。
その様子を見て、皇帝はテラスへと出て行く……
そこから眺める景色は、いつもの詰めかけた民衆ではなく、どこを見ても敵、敵、敵。
自軍は皇城の入り口を死守しているようだが、それもいつまで持つのか分からない状態。
「ここまでだったのか……」
皇帝はその光景を見て唖然とする。
報告は受けていた。
だがその報告には、欺瞞とは言えないが、希望的観測が多分に含まれていたようだ。
「引き際だな」
皇帝はそう言うと、力なく座り込む。
「どうされますか?」
「降伏をしろ」
全員死に絶えるまで戦う。
そんな事をすれば、この状態では、本当に死に絶えることになる。
皇帝は、目の前に見える現実に、日和ってしまう……
通達を受け、全員が武器を放り出し手を上げる。
皇帝の命令は、敵にも伝わるように大声で通達される。
「終わったようだな」
ヨシュートも戦闘中止を通達。
略奪を禁止。
兵達やモンスターが道を空ける。
その中を、ユキと一緒に歩いて行く。
経験により少し出来た自覚。
『統治を任せてあげる』
そう言われて、始まった生活。
訳が分からないまま、進んできた。
ただまあ、前の人生よりは楽しかった。
開かれた道に促されるように、彼は皇城へと向かう。
門を入り、庭園を抜け入り口へ行くと、丞相アルコルが待っていた。
「お待ちしておりました。ヴァルデマル帝国丞相を務めさせていただいております。アルコル=ルーベンと申します」
ヨシュートは、自分の肩書きを伝えようとして固まる。
「連合国の帝? ヨシュート=ヒトーノだ」
ピクッと反応し、バッと礼を取る。
片膝をつき、胸に手を当てて、再び案内をすることを繰り返す。
それに、立つことを許し案内を受ける。
丞相は正面の大階段を上がり、右に抜けて城の奥へと上がっていく。
途中、ユキのことを気にしていたが、なにも言わない。
そして着いたのは、謁見の間ではなく会議室。
「会議室という事は、和平ですかな?」
最近ずっと無言だった副官ロニーが口を開く。
ロニーは、自分の周りに知り合いを配置しようと、手柄を立てさせるために、あの壁に送り込んでいたようだ。
「皇帝の野郎許さん」
などと言っていたが、しらんがな。
そんなお怒りの副官ロニーが仕切り始める。
当然俺らが、上座だ。
窓からの光を背にする。
一応背後から、弓でも射られないように周囲を警戒をする。
「さて、ヨシュート=ヒトーノ帝、副官のロニー=ウィル伯爵だ」
ロニーはテーブルに肘をのせ、手を組んで口元を隠すように喋り始める。
どこかで見たことのある光景。
もし、メガネを掛けていれば、逆光であっても光っているだろう。
彼にしてみれば、怒りを…… その気持ちを見せないための工夫なのだろう。
「話し合いの場を持つという事は、降伏し、下るということかな?」
いきなり、そこから…… まあ回りくどく言っても一緒だが。
「そうだ…… いやそうであります。これ以上は、町を、攻撃をやめていただきたい」
そう言って静かに皇帝は頭を下げる。
王以上に、面倒な役職。それが頭を下げるなら、かなりの覚悟なんだろう。
「降伏という事で良いのだな」
今度は俺が問う。
「はい、仰せの通り」
その瞬間、どこからともなく、鐘の音が鳴り響き、部屋の真ん中、机の上に光が集まっていく。
白い花びらのような光が、部屋の中に舞う。
「あー。何やってんだ、あんたは。下界には、直接手を出せないんじゃなかったのか?」
「手なんか出していないじゃない。前の奴とは違って真面目に仕事をしていたようだから、褒めるために来たのよ」
彼女がそう言うといきなり、机が消える。
重力に逆らい、ゆるゆると床へ降りる。
どこからか取り出した扇は、周囲に羽っぽい飾りが付いているが、本体はクリスタルのようで光を発している。
それを口元に当てると、再び話を始める。
「私はこの世界を司る女神、アデルミラ=ヘルトルディス=アバスカル=デルリオ=アプロディーテー。めったに姿を現さないから、刮目なさい」
そう言ったが、俺以外は謎力で床に突っ伏している。
「さてと、一応、ここまでできたのだから、ご褒美をあげる」
そう言って、チュドっと言う感じで光に撃たれた。
「うがあぁ」
そう光を浴びたとき、何かが入ってきた。
体が軋む……
また出血だよ。
そしてその光は、ユキにまで。
「ぐっ、ユキ……」
その光を浴びると、ユキはメタモルフォーゼをする。
そうは言っても、服なんか着て……
空間から、光が集まり服になった。
「この格好では初めまして、ご主人様。わたくし、ユキと呼ばれておりましたが、初等女神候補、女神眷属のフェリシアナ=グロリア=ラミレス=ケサダ=アクエリアスでございます。この世界に来られたときから、お目付役で突き従っておりました」
ものすごい美人さんに変化をして、ユキはそう言った。
「えっ……」
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