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第3章 貴族兼教祖時代
第33話 予想外
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「なんだこりゃ。敵はとんだ腰抜けだな」
「ああ…… でも……」
侵攻をするアントーン王国兵。
中には目端の利く兵もいるようだ。
そのような兵は、周囲に目を配り警戒をする。
だが大多数は、気楽に進む。
そうして、十日後ようやく敵が見えた。
緩やかな丘陵の頂上付近、そこに陣を敷き、馬防柵の様なものが見える。
一人の騎兵がやって来る。
「ここを治める、辺境伯アルフレート=エックホーフだ。アントーン王国が何ようだ?」
「アウグスト=フィルップラ公爵だ、言わずとも理解できよう。この肥沃な土地我らが有効に使わせて頂く」
「では侵攻という事だな。どうなっても知らぬがよろしいか?」
「何を言う、ここまで逃げた腰抜け兵士しかおらぬのに」
そう言って、嫌らしい顔でにへらと笑う。
「だから良いのだよ。時代は新しい時に突入をしたのだ、旧態依然とした考えは、破滅の元だ。じっくりと体験をして理解するが良いだろう」
辺境伯アルフレート=エックホーフの言葉と、落ち着いた態度で、一瞬いやな予感がしたフィルップラ公爵だが、自軍に戻ると、進軍を開始をした。
だが、坂の上にある自軍へ、まだエックホーフが帰り着く前に何かはじけるような音がする。
飛来したそれは風魔法と火魔法が組み込まれた鉄の塊。
先端が地面にぶつかると魔石が破壊される。
その時放出される魔力を使い、魔導具が魔法を発動。
風と炎。
そうそれは、凶悪なことに、一気に十メートルほどの範囲を焼き尽くす。
隊列を整えて並んでいた、アントーン王国兵にとっては、たまったものじゃない。
「おい逃げろ」
「誰か火を消してくれ」
火薬による爆裂とは違い、それは広がり焼き尽くす。
生きたまま焼かれるのは地獄。
叫び声を上げながら散らばっていく。
だが、飛距離は長い、少々走ってもその有効範囲からは逃げられない。
その日、この世界の戦闘が一変した。
ある程度撃ち込んだ後、掃討に入る。
必死に逃げ惑うために時間はかかったが、数時間でアントーン王国兵は完膚なまでに殲滅された。
生き残り、逃げられたのは数十名だったようだ。
それは、王都へまで伝わることになる。
軍務卿イレール=ヴァイヤンによる暴走。
だが当然相手も居ること、アントーン王国だけの問題ではない。
その後、素直に和平に向かえば良かったのに、腰抜けな王は、臣下の後押しにより再侵攻をすることになる。
雪の降る前に急ぎ、再侵攻。
だが今度は、国境である国境の川。
いつの間にか、そこの堤に壁が作られており、そこから砲撃を受けた。
そう、こんな事をするのは一人しか居ない。
第一次アントーン王国侵攻作戦。
圧倒的な勝利後、すぐに、ベルンハルト王国、王都シュヴァカルマンへ、そう国王アレクサンデル=エーヴァストの元に勝利の報がもたらされる。
連絡兵は、ひどく興奮した様子で伝えられたと記されている。
「どう思う?」
「欲しいならまたくるし、調停を望む使者もまだない様子。どれ、防御だけは行いましょう」
そう言って彼は立ち上がった彼の脇で、娘シャルロットは女の顔で彼をうっとりと見つめる。
そう、色々とあった。
功績により家を貰い、改修とお披露目。
そこに、教皇、マリーナ=デルリオ=アプロディーテーがやって来て、王都大司祭マモンを更迭、この王都には大司祭を置かないことに決まる。
「ええ? だって、あなた様がいるのですもの」
前にあったときとは、随分違い、妙にかわいくなっていた。
周りで、ハラハラとみていた、ヴァレリーとベルトーネが暴走をする。
そう取られまいと、脇を固める。
相手は権力者。
方や冒険者、方や商店の娘とはいえ平民。
相手は教会のトップ。
そして、最近うろうろとしているお姫様。
その不安は大きく、そして乙女心を締め付けて苦しむことになる。
ヨシュートが偉くなるのは嬉しい。
貴族になった時も、変わらず愛してもらえた。
でも、身分差は気になる。
そして今度は、王とため口。
あげく、幾度も城に呼ばれて王が国政について相談をする。
宰相もビックリだ。
だが、専門家でもないのだろうが、資料を見せて説明をするとポンポンと解決案が出てくる。
そう日本のサラリーマンを舐めてはいけない。
複数の草案を一晩で用意して、少ない手間で最大の効果を上げるという離れ業で難問を解決をした。
例えば、各領で通行税などを取るため、商人はそれを回避する。
そのため、裏街道なるものが到る所に出来上がる。
だがその分盗賊などの危険が増え、結局流通が滞る。
調べると、ひどい領は入領と出領で金を取っていた。
更に荷物が多ければ、街道維持費という名目で、重量税などと言う物まで。
その金額は、国境から王都まで往復をすれば金貨が何枚も必要となる。
そしてその領で、その金は何に使われているかと思えば、贅沢と賄賂である。
そう、国に入るときに国へ税を払い、街道の改修が必要なら各領から予算申請をさせる。そういう風に変えた。
それだけで、商品は安くなり裏街道は消えた。
当然、一部の領主からは苦情が出たが、領の帳簿を調べ、脱税により幾つもの家が最悪取り潰しにまでなった。
そして街道も、地盤を固め砂利を敷き込み石を敷く。
それだけで、随分移動しやすくなった。
王はその事を褒めまくる。そんな彼に、お姫様も興味芯々。
そして二人は、近くでガードをしたために、彼に触れ引っくり返った。
そう、それは姫様達二人の興味を引く。
示し合わせた様に、姫様達はヨシュートに飛びつく……
覇王となるべく与えられた力が発揮される。
「英雄は色を好むべし」
どこかで、最悪な女神の高笑いが聞こえた気がする……
「ああ…… でも……」
侵攻をするアントーン王国兵。
中には目端の利く兵もいるようだ。
そのような兵は、周囲に目を配り警戒をする。
だが大多数は、気楽に進む。
そうして、十日後ようやく敵が見えた。
緩やかな丘陵の頂上付近、そこに陣を敷き、馬防柵の様なものが見える。
一人の騎兵がやって来る。
「ここを治める、辺境伯アルフレート=エックホーフだ。アントーン王国が何ようだ?」
「アウグスト=フィルップラ公爵だ、言わずとも理解できよう。この肥沃な土地我らが有効に使わせて頂く」
「では侵攻という事だな。どうなっても知らぬがよろしいか?」
「何を言う、ここまで逃げた腰抜け兵士しかおらぬのに」
そう言って、嫌らしい顔でにへらと笑う。
「だから良いのだよ。時代は新しい時に突入をしたのだ、旧態依然とした考えは、破滅の元だ。じっくりと体験をして理解するが良いだろう」
辺境伯アルフレート=エックホーフの言葉と、落ち着いた態度で、一瞬いやな予感がしたフィルップラ公爵だが、自軍に戻ると、進軍を開始をした。
だが、坂の上にある自軍へ、まだエックホーフが帰り着く前に何かはじけるような音がする。
飛来したそれは風魔法と火魔法が組み込まれた鉄の塊。
先端が地面にぶつかると魔石が破壊される。
その時放出される魔力を使い、魔導具が魔法を発動。
風と炎。
そうそれは、凶悪なことに、一気に十メートルほどの範囲を焼き尽くす。
隊列を整えて並んでいた、アントーン王国兵にとっては、たまったものじゃない。
「おい逃げろ」
「誰か火を消してくれ」
火薬による爆裂とは違い、それは広がり焼き尽くす。
生きたまま焼かれるのは地獄。
叫び声を上げながら散らばっていく。
だが、飛距離は長い、少々走ってもその有効範囲からは逃げられない。
その日、この世界の戦闘が一変した。
ある程度撃ち込んだ後、掃討に入る。
必死に逃げ惑うために時間はかかったが、数時間でアントーン王国兵は完膚なまでに殲滅された。
生き残り、逃げられたのは数十名だったようだ。
それは、王都へまで伝わることになる。
軍務卿イレール=ヴァイヤンによる暴走。
だが当然相手も居ること、アントーン王国だけの問題ではない。
その後、素直に和平に向かえば良かったのに、腰抜けな王は、臣下の後押しにより再侵攻をすることになる。
雪の降る前に急ぎ、再侵攻。
だが今度は、国境である国境の川。
いつの間にか、そこの堤に壁が作られており、そこから砲撃を受けた。
そう、こんな事をするのは一人しか居ない。
第一次アントーン王国侵攻作戦。
圧倒的な勝利後、すぐに、ベルンハルト王国、王都シュヴァカルマンへ、そう国王アレクサンデル=エーヴァストの元に勝利の報がもたらされる。
連絡兵は、ひどく興奮した様子で伝えられたと記されている。
「どう思う?」
「欲しいならまたくるし、調停を望む使者もまだない様子。どれ、防御だけは行いましょう」
そう言って彼は立ち上がった彼の脇で、娘シャルロットは女の顔で彼をうっとりと見つめる。
そう、色々とあった。
功績により家を貰い、改修とお披露目。
そこに、教皇、マリーナ=デルリオ=アプロディーテーがやって来て、王都大司祭マモンを更迭、この王都には大司祭を置かないことに決まる。
「ええ? だって、あなた様がいるのですもの」
前にあったときとは、随分違い、妙にかわいくなっていた。
周りで、ハラハラとみていた、ヴァレリーとベルトーネが暴走をする。
そう取られまいと、脇を固める。
相手は権力者。
方や冒険者、方や商店の娘とはいえ平民。
相手は教会のトップ。
そして、最近うろうろとしているお姫様。
その不安は大きく、そして乙女心を締め付けて苦しむことになる。
ヨシュートが偉くなるのは嬉しい。
貴族になった時も、変わらず愛してもらえた。
でも、身分差は気になる。
そして今度は、王とため口。
あげく、幾度も城に呼ばれて王が国政について相談をする。
宰相もビックリだ。
だが、専門家でもないのだろうが、資料を見せて説明をするとポンポンと解決案が出てくる。
そう日本のサラリーマンを舐めてはいけない。
複数の草案を一晩で用意して、少ない手間で最大の効果を上げるという離れ業で難問を解決をした。
例えば、各領で通行税などを取るため、商人はそれを回避する。
そのため、裏街道なるものが到る所に出来上がる。
だがその分盗賊などの危険が増え、結局流通が滞る。
調べると、ひどい領は入領と出領で金を取っていた。
更に荷物が多ければ、街道維持費という名目で、重量税などと言う物まで。
その金額は、国境から王都まで往復をすれば金貨が何枚も必要となる。
そしてその領で、その金は何に使われているかと思えば、贅沢と賄賂である。
そう、国に入るときに国へ税を払い、街道の改修が必要なら各領から予算申請をさせる。そういう風に変えた。
それだけで、商品は安くなり裏街道は消えた。
当然、一部の領主からは苦情が出たが、領の帳簿を調べ、脱税により幾つもの家が最悪取り潰しにまでなった。
そして街道も、地盤を固め砂利を敷き込み石を敷く。
それだけで、随分移動しやすくなった。
王はその事を褒めまくる。そんな彼に、お姫様も興味芯々。
そして二人は、近くでガードをしたために、彼に触れ引っくり返った。
そう、それは姫様達二人の興味を引く。
示し合わせた様に、姫様達はヨシュートに飛びつく……
覇王となるべく与えられた力が発揮される。
「英雄は色を好むべし」
どこかで、最悪な女神の高笑いが聞こえた気がする……
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