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第3章 貴族兼教祖時代
第31話 さまざまな思い
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シャルロットは父親である王にたのまれ、ある男の周りをついて回ることになった。
「彼は、特例の新公爵で有り、教団のトップらしい」
それだけ言って、少し言葉が止まる。
「だが、絶対にそれだけではない」
王は呼び出され元ヒエロニムス王国側へ入った、数ヶ月で整備したと言われる水路と街道。
新しい町。
どう考えても、人間業ではない。
教団が神と言っていたのも信じられる。
今回王都へ来て、近衛の妹を瞬時に治したようじゃ。
王は、わずかな間に起こったことを思い出す。
そう、放っておけば、真の神教国に取り込まれて、縁が切れてしまう。
だが、成人をした王族が、市中へと軽々に行くわけには行かん。
目の前に立ち、首をひねる娘、シャルロットに彼との縁を繋いで貰おうと考えた。
年も近いようだし、気に入ってくれれば、それだけで縁は繋がる。
二人、気に入って女子を連れておるようだが、平民の様子。
関われば、優位に立てる。
そうして、シャルロットは彼が出入りしている工房。
ブラフマー工房と言って、ゴーレムを造っているところへ向かう。
工房などシャルロットは初めて。
彼に挨拶をしようと、奥に入ってきて、散乱する道具に足を取られた。
「あっ」
「おっと、大丈夫?」
お兄様くらいの方が受け止めてくれた。
そう、ぽすっと言う感じで、殿方に触れた。
それだけなのに、触れられた背中から痺れるような何かが、脳天と下腹部に走った。
「ひゃう」
漏らしたのか、月のものかと思ったくらい。
だけど、確認をしても色はなく、とめども無く出てきた。
帰ってから、次女に聞くと、女性なら出るもの。
「ステキな殿方にでも、お会いしましたか?」
そう聞かれた。
「殿方をお迎えをするときに、出るんですよ」
とまあ、色々と習った。
子どもの頃から習ってきた、閨での儀式が説明の中で繋がった。
「運命のお方なのですね」
その日から、あのお方に会いにいくだけでドキドキが止まらず、わたくしの体は反応をしてしまう。
「ああ、ヨシュート=ヒトーノ様」
そして、赤字を垂れ流す不採算部門と言われていた工房が、あっという間に稼ぎ頭となってしまった。
それを成したのが、あのお方だという。
父である、王は、あの方の非凡さを見抜いておられたのね。
ステキ……
などと言う事を、シャルロットが考えていることなど気が付かない。
赤い顔をしてふらふらしているのは危ないが、お姫様。
それも目付だと言っている。
無下にもできず困っていた。
そして、とうとう、魔導具の製作が始まった。
それは、回転をする魔導具。
この国ベルンハルト王国において、すべての工業用機械がここから始まった。
魔導馬車、魔導耕運機、自動種まき機、自動刈り取り機、自動脱穀機。これらは世紀の発明とされ一気に広がっていく。
これにより、この国の国力は一気に跳ね上がる。
そして、矢に変わり、銃が造られる。
火薬ではなく、先ずは蒸気銃。
古くはアルキメデスが発明。
ただ地球にあった加圧式ではなく、魔法を用いたもので、連射が可能。そして小型。
ライフリングされ、弾の安定性も良いし、火薬と違い汚れない。
チャンバー内に火魔法が発生。温度が上がったとき水が魔法により加えられ、一七〇〇倍にまで体積が増え、圧が上がったときにバルブが開く。
引き金が引かれてからの、わずかなタイムラグが問題となる。
そして、ラグの原因である水をやめ、直接チャンバー内で火魔法を使う。
単純に、熱膨張と風魔法の併用。
まあ火薬のない燃焼と膨張を利用。
暴発の危険はあるが、火薬よりまし。
まあ、ヨシュートが、火薬の組成を覚えていなかっただけだが……
こうして、第一世代の製品群がバカみたいに売れた。
当然他国には販売の制限がかかるが、布等や金属製品は安価で品質が一定のため、一気に大陸中へと広がっていった。
このため、ヒエロニムス王国がまた何かを画策するが、あの忌々しい壁のために何もできず。
暗躍を始める。
そう彼らは、アントーン王国において囁き始める。
ベルンハルト王国が、国力を増し、周辺国に対して切り取りを狙っている。
我が国は、広大な土地が切り取られてしまった。
奴らは、この大陸での覇権を目論んでいる。
属国にされれば、最悪な事にしかならない。
温厚で、そんな気も無かった国王ユーワーノ=バーランスそして宰相タショルノ=ヤーシンも今ここで他国を攻める気も無かった。
だが、軍務卿イレール=ヴァイヤンだけは、少し違う。
職業柄か、少しサディスティックで好戦的。
ちょくちょく、取り調べで容疑者を殺してしまうことがある。
「戦争、それもベルンハルト王国。彼の国はなかなかにバランスが取れている。幾度か国境でもめたが、こちらの被害もバカにできないほどの兵力だったぞ」
十数年前、国境の川で氾濫が起き、地形が変わった。
その後、早い者勝ちで争奪戦があった。
だが、双方共に被害が大きくなったときに川の両岸を緩衝地帯として定めて、今そのエリアは、両国が手を出せないことになっている。
まだあの頃は、大将クラスだった。
その後、幾度かの謀略を繰り返し、軍務卿まで上り詰めた。
その事である程度満足をしていたが、囁かれ、悪い虫が目を覚ます。
川を越え、領地を切り取り、村々からの略奪。
頭の中で、若い娘が泣き懇願する姿を思い浮かべる。
偉くなって控えている趣味。
「ふむ。考えておこう。貴国は援助をするのだな?」
「もちろんでございます。何事もバランスが大事ですからな」
こうして、密約が交わされた。
準備をして、嵐の後を狙う。
「彼は、特例の新公爵で有り、教団のトップらしい」
それだけ言って、少し言葉が止まる。
「だが、絶対にそれだけではない」
王は呼び出され元ヒエロニムス王国側へ入った、数ヶ月で整備したと言われる水路と街道。
新しい町。
どう考えても、人間業ではない。
教団が神と言っていたのも信じられる。
今回王都へ来て、近衛の妹を瞬時に治したようじゃ。
王は、わずかな間に起こったことを思い出す。
そう、放っておけば、真の神教国に取り込まれて、縁が切れてしまう。
だが、成人をした王族が、市中へと軽々に行くわけには行かん。
目の前に立ち、首をひねる娘、シャルロットに彼との縁を繋いで貰おうと考えた。
年も近いようだし、気に入ってくれれば、それだけで縁は繋がる。
二人、気に入って女子を連れておるようだが、平民の様子。
関われば、優位に立てる。
そうして、シャルロットは彼が出入りしている工房。
ブラフマー工房と言って、ゴーレムを造っているところへ向かう。
工房などシャルロットは初めて。
彼に挨拶をしようと、奥に入ってきて、散乱する道具に足を取られた。
「あっ」
「おっと、大丈夫?」
お兄様くらいの方が受け止めてくれた。
そう、ぽすっと言う感じで、殿方に触れた。
それだけなのに、触れられた背中から痺れるような何かが、脳天と下腹部に走った。
「ひゃう」
漏らしたのか、月のものかと思ったくらい。
だけど、確認をしても色はなく、とめども無く出てきた。
帰ってから、次女に聞くと、女性なら出るもの。
「ステキな殿方にでも、お会いしましたか?」
そう聞かれた。
「殿方をお迎えをするときに、出るんですよ」
とまあ、色々と習った。
子どもの頃から習ってきた、閨での儀式が説明の中で繋がった。
「運命のお方なのですね」
その日から、あのお方に会いにいくだけでドキドキが止まらず、わたくしの体は反応をしてしまう。
「ああ、ヨシュート=ヒトーノ様」
そして、赤字を垂れ流す不採算部門と言われていた工房が、あっという間に稼ぎ頭となってしまった。
それを成したのが、あのお方だという。
父である、王は、あの方の非凡さを見抜いておられたのね。
ステキ……
などと言う事を、シャルロットが考えていることなど気が付かない。
赤い顔をしてふらふらしているのは危ないが、お姫様。
それも目付だと言っている。
無下にもできず困っていた。
そして、とうとう、魔導具の製作が始まった。
それは、回転をする魔導具。
この国ベルンハルト王国において、すべての工業用機械がここから始まった。
魔導馬車、魔導耕運機、自動種まき機、自動刈り取り機、自動脱穀機。これらは世紀の発明とされ一気に広がっていく。
これにより、この国の国力は一気に跳ね上がる。
そして、矢に変わり、銃が造られる。
火薬ではなく、先ずは蒸気銃。
古くはアルキメデスが発明。
ただ地球にあった加圧式ではなく、魔法を用いたもので、連射が可能。そして小型。
ライフリングされ、弾の安定性も良いし、火薬と違い汚れない。
チャンバー内に火魔法が発生。温度が上がったとき水が魔法により加えられ、一七〇〇倍にまで体積が増え、圧が上がったときにバルブが開く。
引き金が引かれてからの、わずかなタイムラグが問題となる。
そして、ラグの原因である水をやめ、直接チャンバー内で火魔法を使う。
単純に、熱膨張と風魔法の併用。
まあ火薬のない燃焼と膨張を利用。
暴発の危険はあるが、火薬よりまし。
まあ、ヨシュートが、火薬の組成を覚えていなかっただけだが……
こうして、第一世代の製品群がバカみたいに売れた。
当然他国には販売の制限がかかるが、布等や金属製品は安価で品質が一定のため、一気に大陸中へと広がっていった。
このため、ヒエロニムス王国がまた何かを画策するが、あの忌々しい壁のために何もできず。
暗躍を始める。
そう彼らは、アントーン王国において囁き始める。
ベルンハルト王国が、国力を増し、周辺国に対して切り取りを狙っている。
我が国は、広大な土地が切り取られてしまった。
奴らは、この大陸での覇権を目論んでいる。
属国にされれば、最悪な事にしかならない。
温厚で、そんな気も無かった国王ユーワーノ=バーランスそして宰相タショルノ=ヤーシンも今ここで他国を攻める気も無かった。
だが、軍務卿イレール=ヴァイヤンだけは、少し違う。
職業柄か、少しサディスティックで好戦的。
ちょくちょく、取り調べで容疑者を殺してしまうことがある。
「戦争、それもベルンハルト王国。彼の国はなかなかにバランスが取れている。幾度か国境でもめたが、こちらの被害もバカにできないほどの兵力だったぞ」
十数年前、国境の川で氾濫が起き、地形が変わった。
その後、早い者勝ちで争奪戦があった。
だが、双方共に被害が大きくなったときに川の両岸を緩衝地帯として定めて、今そのエリアは、両国が手を出せないことになっている。
まだあの頃は、大将クラスだった。
その後、幾度かの謀略を繰り返し、軍務卿まで上り詰めた。
その事である程度満足をしていたが、囁かれ、悪い虫が目を覚ます。
川を越え、領地を切り取り、村々からの略奪。
頭の中で、若い娘が泣き懇願する姿を思い浮かべる。
偉くなって控えている趣味。
「ふむ。考えておこう。貴国は援助をするのだな?」
「もちろんでございます。何事もバランスが大事ですからな」
こうして、密約が交わされた。
準備をして、嵐の後を狙う。
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