上 下
78 / 109
第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第79話 ああ、魔王様

しおりを挟む
 魔王は見ていた。
 混沌なる状況と、追加された者達。

 特に、遅れて外周に現れた者達は別格。
「あれは本当に人間か?」
 魔王をもってしても異端。

 ドンドンと消えていくモンスター達。
 少しずつ側近達が現場へ向かい始める。
 食料達も数は少なくなり、ぼちぼち移動をしようかと考え始める頃。
 右脇に居たオルトロスが消滅をする。

 遠距離からの光。
 竜司の光。
 後背にいた者達も、その射線上にいた者達は消えてしまった。

 魔王は、周りをゆっくりと見回し、無理だと判断をする。
 立ち上がり、王座からゆっくり降りると、空気が破裂するような音を残し竜司に向かって、加速をする。

 むろん、手下のモンスターなど関係ない。
 道ができていく。

 そして、シールドにぶつかり止まる。
「ぐはっ」
 不可視の壁。
 思いっきり仰け反り、悶絶しそうになるが、さすが魔王。

 両手を組み。思い切り魔力を纏わせ、シールドに拳を振り下ろす。
 ぐしゃっと拳が壊れる音。
 だが、シールドもはじける。

「あれが魔王か」
「竜司様、私が」
 ガードの本能か、悠月が前に出ようとする。
 デコピンが、悠月の額を襲う。
「んがっ」
 思いっきり悠月がのけぞる。

「そんなことは、気にしなくて良い」
 その姿に、悠月はぽっと赤くなる。
 つい竜司の背中にしがみつく。

 そんなイチャイチャ空間のすぐ向こうでは、潰れた拳を修復しながら魔王が歩みを進めてくる。

 自爆のような火球が魔王の上に創られる。
 だが、光と共に消失をする。
 やったのはマイリ。
 竜司が、悠月と遊んでいるからだ。

 周囲の敵は、伶菜が対応をしている。
 まどかと彩は、少し後ろで喧嘩中。

 やっと使役したオーガを、燃やされたようだ。

 その間でも、周りのモンスターは、黒い炎を纏い燃えていく。
 各国の、派遣者が加わってから、一気にモンスター達は数を減らしていく。

 その様子を、呆然と見つめる軍関係者。

「こんなもの」
「ああ、彼らが蜂起すれば、国は滅ぶな」
「早急にGPSを義務化して」
「そして、彼らの暴発を誘導するのか?」
 事務官は黙り込む。

 さてそんな間に、あるハンターが魔王に飛びつく。
「死ねやぁ」
 彼は、周囲に光を纏い、高位のエネルギーを使い始めていた。
 光を纏い、モンスターに触れると、彼らは消滅をしていく。

 拳があたる寸前、彼の頭がはじけた。
 魔王が放った、しっぽの一撃。
 それは光の覆いを突き抜けて、彼の頭を粉砕した。

「ボニファー。てめえよくも仲間を」
 チームメンバー達が、押し寄せ、光の矢とか光の剣を魔王に向けて振るう。
 魔王が、黒いシールドを展開して防ぎ、右手から強力な炎が彼らを襲う。
「どわあっ」
 体の光が輝きを増し、炎を中和する。
 術式かなにかを破壊する。

「やべえぞ」
 そう言って距離を取る。

 モンスター達の肉壁を粉砕して、ハンター達の数が増えてくる。
「うぬう。雑魚どもが」
 自分を中心に黒い光が発動をする。

 その輪は同心円状に広がり、触れたものを切断する。

 むろん、すぐに展開されたシールドで竜司達は問題ない。
 彩の炎が内側からシールドに触れ、消滅して驚いたくらい。

 逆に、モンスター達がごっそりと切断される。

「うらあぁ」
 間髪入れず、剣に光が纏い振り下ろされる。

 それは、とっさの防御をした魔王の右腕を切り、肩口まで切り込む。
 だがそれは止まり、腕や傷はあっという間に修復をされる。
「駄目だ、すぐに修復をする」
 次々に攻撃をするが、効き目がある様には思えない。

「ねえ竜ちゃん。遊んでいないで何とかしないの?」
「いやあ。みんな頑張っているし、様子を見ていたんだが」
「倒して良いんじゃ無い? さっきの輪っかでモンスター達ほとんど消えたし」
 彩も流石に、呆れたように言い始める。

「そうだな、倒してさっさと帰るか」
 そう言って、集っている人たちの隙間を縫い魔王を消していく。

 なぜか、竜司の光を浴びたところは、上手く修復ができないようだ。
 それを見て、ハンター達が魔王から離れる。

 一気に、光に包まれ魔王は消えた。

 周囲に歓声が起こる。
「何だあの子供達は」
 口々に疑問が問いかけられるが、誰も知らないらしい。

 だが、別方向からで竜司の顔を知っているものが居たようだ。
「あれは、ジャパンに現れたエンジェルだ。見たことがあるぞ」
「ああ、そうだ、俺も見た」
 またそれで、騒ぎになる。

 その間に、州兵達は走り回り、状況を確認をしていく。
「クリア」
 報告が、ドンドン集まってくる。

 そうして、ハンター達は魔王騒ぎのおかげで、その有用性が知られ。
 各国から、派遣依頼を受けることになっていく。

 そう、目撃された魔王の一体が倒されたのみ。
 後四体が残っている。

 そして竜司は、ヘリにうんざりする。
「宇宙船経由で移動したい。駄目かなあ」
「駄目じゃない?」
 まどかが、ビッグサイズのピザをほおばりながら、竜司に指摘する。

「だめかあ」
 ちなみに、チャーハンは今イチだったらしく、彩が食べている。
「デリバリーが何処にでも来るのは判ったけど、中華は日本の方が正解だわ」
 アメリカにおいての、まどかの感想。
 いや、報告書に書かれて、ギルドに提出された。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

我が家に子犬がやって来た!

ハチ助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※①9/1時点では80話ちょっとで完結予定。 (話数増える可能性あり) ※②アルファポリスさんでは7時半頃と12時半頃に一日二話ずつ更新予定。 (↑9/12~15間は諸事情で20時半に毎日一話ずつ更新) ★『小説家になろう』では大分前から連載しており、こちらは週2話ずつで現在も連載中★

プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー
ファンタジー
まさに社畜! 内海達也(うつみたつや)26歳は 年明け2月以降〝全ての〟土日と引きかえに 正月休みをもぎ取る事に成功(←?)した。 夢の〝声〟に誘われるまま帰郷した達也。 ほんの思いつきで 〝懐しいあの山の頂きで初日の出を拝もうぜ登山〟 を計画するも〝旧友全員〟に断られる。 意地になり、1人寂しく山を登る達也。 しかし、彼は知らなかった。 〝来年の太陽〟が、もう昇らないという事を。  >>> 小説家になろう様・ノベルアップ+様でも公開中です。 〝大幅に修正中〟ですが、お話の流れは変わりません。 修正を終えた場合〝話数〟表示が消えます。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...