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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第72話 かなり変わったはずだが、日常は通常運転

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「どうしてこうなった」
 組織のトップであるその者は、怒りと恐怖を顔に滲ませながら、従者に問いかける。
 此処は、謁見を行う部屋では無く、自室である。

「わかりません。ですが、恐るべきは日本という国。ほとんどの者が、対象に到着すらできず敗退をいたしました。ルカス=ブランチ様においては、日本において心の安寧を得たとメモが残されておりました」
 それを聞いて、驚き、深く頭を垂れる。
「一体、日本とはなんだ?」

 闇の六聖人は、その役割を得ながら、完全に組織が御し得ていた者達では無い。
 その者達の闇は深くまともでは無かったはず。
 それなのに、日本で安寧を得ただと。
 不可解。奇跡。
「何なのだ、日本という国は」
 その事ばかりが、彼の思考を埋めていく。



「あら、おじさん。えらくお疲れですね」
「ああ。彩ちゃん。ありがとう。少し会社の中が。いや大きく変わってしまってね。少し立場が…… ばれるのが怖い」
 竜司の父、博樹は頭を抱える。

 家へ入ると、真っ先に冷蔵庫に向かい、缶を取り出すと一気に煽る。

 突然、会社が吸収合併。
 他の社員が無事な中、いきなりの部長待遇への抜擢。
 目だつなと言うのが無理だ。会社の状況変化で、右往左往していた者達が、辞令の通知。張り紙を見た瞬間に、全員がこちらを向いたような気がした。

 しかも全員が、なんで? と、きっと思っただろう。

 その反応は、彩の家でもまどかの家でも同様であった。
 会社が引けると全員があわてて帰ってきて、佐藤家へ集まる。
 むろん、約束などがあったわけではない。

 こうなった元凶? は、すべて佐藤家の竜司。
 それ以上でも以下でも無い。
 巻き込まれたら、偉くなった。
 客観的視点で、端的に述べるとそう言うことだ。

「参りましたな」
「ええ自身で、仕事ができないとは思いませんが、いきなり部長はちょっと」
「おや、そちらも。うちは一旦部長に据えたが、評価を見せて貰い、経営陣へと考えていると、肩を叩かれながら言われました」
「部長って、マネージャー職ですよね」
「そうですね。課長級以上が、一応経営職のはずなんですが」

 まどかのお父さんは、公務員。
 課長以上の職は、大体中央から人が降りてくる役職。
 地方採用では、めったに上がらない。
 大体課長か、課長補佐。人により係長で終わる。

 これは、採用された瞬間に決まる道。

 そう公務員は、採用された瞬間に、ほぼ道が決まってしまう。
 それがいきなり。昨日の今日で覆った。

 それは民間企業勤めである、他の父親も同じ。
 本社採用と、地方採用。

 転勤を断り、地方での勤務を望むと、ほぼ決まる事が多い。

 だが、ある人たちと知りあっただけで、世界が変わってしまった。
 普通数ヶ月もかかるような、M&Aエムアンドエー、会社同士の吸収や合併それが一日で行われるなどおかしい。

 そうおかしい。だが実際は、本社の意向で、再編が行われただけ。
 正式な手続きは、追々だろうが、通達はできる。
 全く違う系統でも、グループ会社だったりする。
 それができるのが、神宮路、織戸、久賀だった。


 親が飲みながら、うだうだ言っていた頃。
 近くの河原で、小型のシーサーペントが発見されて大騒ぎになっていた。
「雷系の能力者はいないかぁ」
 自衛隊員だろうか、周りにいるハンターに聞く。

「俺がそうだが、川にぶち込むと捕まるんだよ」
 やれやれという感じで、出てきた男。
 鋲の打たれた革手袋を装着し、それらしい雰囲気を纏っている。

「厨…… あっ、いや、水産資源保護法かあ」
 頭を抱える。

 川は汽水域で意外と水深が深い。
 また濁りがあり、標的の発見を困難にしている。

「どうしました、手伝いましょうか?」

 頭を抱えた、陸曹の下にやって来た女連れ。

「前回やった、防衛戦の対象者」
 こちらで捕まえた奴らを引き渡すため、この陸曹とは面識があった。
 そう、竜司達。

 ここに来て、日課のモンスター退治に都賀風夏か神馬悠月のどちらかが混ざるようになった。

 つまり男一人に、女の子五人。
 充分チーレム野郎である。

「お困りですか?」
「ああ、この河口で呼称シーサーペントという個体が見つかったが、水深が深く、発見が困難でね」
 やれやれという感じで、水面を見つめる。

 大河川の河口、透明度がかなり低い。
「あれか」
 人間ソナー竜司は、すでに見つけたようだ。

「倒していいんですか?」
「ああ、良いけれど。もう見つけたのか?」
「ええ」
 そう言いながら、光の槍を創り投げる。

 その光は、水の影響を受けることなく直進をした。

 光なのに、水面での反射、屈折、拡散をしない、奇妙な光。

 それは、小銃で攻撃されて隠れっていた個体の脳天に直撃をする。

 投げたままの、直径三センチ程度の穴が、頭頂部から下顎の付け根辺りに向けて貫通をした。
「倒しましたが、浮いてきませんね」
「場所はあそこだね」
 そう言って、ボートにより走って行く。

 どうもロープ付きの銛で刺して、引き上げるようだ。
 しばらくグサグサしていたが、見つかったみたいで、銛から手を離して対岸へ向かうボート。

 そう死んだ個体は、物理的に強度が落ちる。
 堅い奴は、体にシールドを張っているようだ。
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