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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第71話 おかしな比率

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「では、そう言うことで」

 園遊会はお開きになり、帰宅をする。
 慣れないことをして、流石にみんなぐったりとなっているが、レンタル屋さんで返却と着替えをして、なぜかラーメンを食べに行く。

 高級な食事の後は、どうしてもジャンクなものを食べたくなる。
 
「何で父さん達は引きつっているの?」
 つい尋ねてみる。
「それはね、出世をすることが決まったからね」
 そう言って、母さん達はニコニコだ。

 竜一さんは、けっと言う感じでご機嫌斜めだ。
「竜一さんはどうしたの?」
「何でしょ、デベロッパーがどうのと言っていて、必要ないと突っぱねたみたいだけど」
 鏡子さんが、呆れた感じで教えてくれた。
「会社を大きくしないかと言われただけだ。職人達と細々とやるから良いんだよ、うちは」

 そんなことを言いながら、うちへ帰るとすでに人が走り回っていた。

 封鎖した部分の部屋が開放されて、改築されるようだ。

 学校の定期テストを挟んで、二週間後には完成したらしく、かぐや達が引っ越してくる。
 三家には従者がつき、気がつけば、女の人が大量に増える。

 流石に、都賀と神馬は身一つのようだ。

 従者さん達は、若く、少し歳上のお姉様方。
 思わず目が向いてしまう。

 元々は、分家すじのお姉様らしい。

 そして気がつけばトレーニング施設や、道場といったものまでが増えて、設備が充実する。

 ただ気がつけば、女の子の中にぽつんと居ることが増えた。

 橋本さん達は、妙に張り切り喜んでいるが。
 警備方面は、男が多かったからな。


 そうした中、宇宙から飛来をする隕石が増えたらしく、火球の目撃が増えて来始める。ニュースを見て、俺はなんとなく始まったかと感じる。
 宇宙には意外とものが多く、微妙なバランスの上で動いている。

 日課である、モンスター退治で、関係者の魂を引き上げてその日に備えていく。


 ある日、俺一人が公園に行くのが遅れた。
 すると、道に迷ったお姉さんが道を尋ねている所に出くわすが、外国人のためかなかなか話が通じないようだ。

 だが、俺を見た瞬間に目が怪しく光る。
「見つけた。一緒に行きましょう」
 そう言って、袖口から糸を引き出しこちらに来る。

 当然シールドを展開すると、べちゃっっと言う感じで、全力のまま張り付く。
「見たことがある人だな。何とか六銃士? だったけ?」
「六聖人のオリーヴィア=アンデですね」
 警備部の人が、データと照合する。

 彼女はあっさりと捕まり、ドナドナされて行く。

「そう言えば、最近スポーツカーの目だつ人も来なくなったな」
 そう、目だつがゆえに、ガリーナ=ルニョヴァ。彼は先に捕まった。

 ルカス=ブランチは、日々知りあった夫人の元を訪れ、なぜか神社の守人をしていた。
 箒を用いて、掃き清めるごとに心が洗われ、町中にぽつんと残る自然の中に美を見いだす。
 手水舎ちょうずしゃそこに流れる、手水鉢の水。その流れにさえ美しさを感じる。吹き抜ける風と木の葉の音。
「ルカスさん。おつかれさま。大福と御茶を頂かないかい」
「ありがとうございます」

 木の葉を抜けてくる初夏の日差し。
 そんな当たり前の光景に、奇跡を感じる。
 いつもながらだが、鳥居をくぐり、境内けいだいに入った瞬間に、少しの気温の変化を感じ、不思議な高揚感を得る。

 自然物ではあるが、落ちている落ち葉を払い、参道を掃き清めるごとに充足感を得る。

 振り返り、綺麗になった参道。
 彼は頷く。

 今までは、振り帰れば死体と流れた血。
 それとは違い、何か感じる清らかさ。

 ここに来て、彼は涙を流すことが増えた。
 来るまでは、涙などはないのだと思っていた。
 全身に、返り血を浴び笑顔をこぼす。それも彼に充足感を与えてはいたが、今とは全く違う。

 ある日、いつもの様に社に向かっていると、交差点でお年寄りが、人波におされたのか車道に出てしまう。
 彼は鍛え上げられた強靱な身体能力で、お年寄りを救う。
 だが、勢いが付きすぎていたのか、自身が車道に出てしまい車と接触。

 彼は、飛ばされたもののすぐに立ち上がり、あまりダメージを負ったように見えなかったが、当たり所が悪かったのだろう。
 お年寄りに「だいじょうぶでしたか?」と優しく声をかけた後、意識を失う。

 救急搬送をされたが、その途中で亡くなってしまった。だが、その表情はとても穏やかだったようだ。


「あん? 気がつけば誰もおらんではないか」
 一人残ったディーデリヒ=クレンク。

 精神制御を使い、使える手足を増やしていたが気がつけば、仲間の姿が見えなくなっていた。

 彼は行動に出る。

 いつも彼らが現れる公園。
 そこにゾンビのような人たちがやって来る。
「なにあれ? 操られているみたいだけど下手くそね」
 まどかが、柏手を打つと、全員が一気に目覚める。

「あれ? どうしてこんな所に」
 人々は口々にそう言うと、解散し始める。

 焦ったのは、中に紛れていたディーデリヒ。
「なんだ? 何が起こった」
 困惑をしながらも、対象の竜司を目視。
 突っ込んでいき、透明な壁にぶち当たる。
「んぎゃ」

 どれだけ鍛えていても所詮は人間レベル。非常識な人間の張ったシールドは非常識だった。

「この人も、手配の人だね」
 わらわらと出てくるガード達。
 気がつけば、闇の六聖人は全滅した。
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