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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第66話 2日目

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「あー。温泉はいいわね」
 彩が湯船で広がる。

「ちょっとー広がらないで。あれー、彩ってばお尻が大きくなったぁ?」
 まどかから、突っ込みが入る。

「えっ、そう? 育ち盛りだし。竜ちゃんも大きな方が好きよね」
「うん? 気にしないぞ」
 素っ気なく答える。下手に反応すると、騒動になるのは判っている。

「それはそれで、つまんない」
 今度はそう言って、隅っこでぶくぶくし始める。

 部屋についている、家族風呂。
 外向きに窓は付いていて、夜景が見られる。この周囲は少し小高くなっているようで、少し離れた町の明かりが綺麗だ。

「なんだか、しあわせ」
 そう言って、俺の横に伶菜とマイリが入ってくる。
 最近の構図。そして距離感。

 その横に有る部屋。
「かぐや様、お背中を流させていただきますわ」
「あら、よろしくお願いするわ」
「まあ。変わらず色白で素晴らしいお肌」
 同じような時間に、入浴中だが、となりのような和気藹々ではなく、妙な緊張感が部屋全体に漂っている。

「あら、そう言う、由布紀も見事なお胸。また少し大きくなりまして?」
「いいえ。そんな事は。クラスにいる鈴木 彩のように、下品な体ではありませんわ」
「そうですわね。幼馴染みという立場だけで、佐藤様のおそばになんて」
「そうそう、下品なお尻と胸」
 久賀妃美子も体を洗い終わったようだ。お喋りに混ざってくる。

 今洗い場では、都賀風夏と神馬悠月が順に体を洗っている。
 どちらかが、必ず警戒をしている。

 どうも、このメンバー。彩のことが、お気に召さない様子。
 まどかは、あらゆる教科で百点を取り、学校ではトップ。
 マイリは、宇宙人であることを知っている。
 伶菜も最近は、癒やし手として、上流界隈で重要だと知られている。
 使徒であるとも言われている。

 その中で、婚約騒動や破局騒動。
 彼女達の中で、鈴木 彩だけは異質に映る。
 むろん炎を扱うハンターで、実際に先ほど炎を出して、大石の眉を焼いた。
 だが、それが、かなり力を抑えたものだとは知らない。

「ですが、神宮路さま。あの卓球の御様子。身体能力は常人の比ではありません」
「それはそうね。あっという間にやられてしまいましたわ。わたくし家族の中では一番なのに」
 かぐやがそう言ったことで、悠月と風夏はつい光景を思い浮かべる。

 どう見てもあの家族が、卓球を行っている姿が思い浮かばない。
 母親は、リアルあらあらうふふな元お嬢様だし、父親も本を読んでいる姿は浮かぶがラケットを振り回す姿は浮かばない。百歩譲ってもビリヤード辺りだろう。

 それを基準で考えても、駄目だろうと思うが、顔には出さない。
 自分たちでも、あれは無理だ。

 そんなことを言っていると、隣から、声が漏れてくる。

 意外と、浴場部分の壁は薄いようだ。

 噂をしていた、彩が我慢ができず竜司を襲ったようだが、いつもの様に返り討ちにあっている。

 だが、いつもと違う雰囲気に溺れ、つい限界突破で感じているようだ。

 その嬌声が隣でも聞こえる。
 じわじわと、みんなが壁へと張り付く。
 むろん、お嬢様達、経験など無い。

「こっこれは、あの女の声」
「ええ。はしたない」
 そう言いながら、彼女達は、聞き入る。

 だが、彩はすぐに限界を迎える。
 一際大きな声が上がり、静かになる。

「ふうっ。なんと、はしたない」
 そう言いながら、お嬢さん達が気を抜いたとき、今度はまどかの声が響き始める。

「まあまあ。なんと言うこと」
「「「しっ」」」

 それが終われば、伶菜。
 そしてマイリと一巡をしたようだ。

 聞き耳を立てるお嬢様達はぐったり。
 みんなは我を忘れて、自身をいじってしまった。

「佐藤様は、お強いのですね」
 悠月はつい口に出してしまう。
 横で同く、修行をした風夏も頷く。

 すっかり乾いた体を、再び湯船に沈める、かぐやたち。

 翌朝、同じく広間で朝食をとり、土器などを見に行く。
 その移動中、いつもとは違い、眠そうなかぐや達。

 昼食後は、漁村交流と、実際の漁や間欠泉を見学。
 この時、妙にお嬢様方が熱心に見ていた。
 その時頭の中では、『熱いのがくる』と言うキーワードが、繰り返されていたようだ。

 そこから、洞爺湖温泉へ向けて、二時間以上かけて移動をする。

 そして、今日は予定通り宿へ到着。部屋着代わりの体操服に着替えて、広間で食事。

 その頃には、かぐや達は復活をしていたが、今度はなぜか、竜司達をチラチラと見ている。
 昼間も同じテーブルだったが、その時はほとんど意識が飛び、寝ながら食べていた。
 お嬢様連中が、互いに起こし合いながら、食事をする不思議な光景が見られた。

 そして今。竜司だけではなく、彩達も含め、口元に何かを運び咀嚼をする。
 それだけで、お嬢様達は、なぜかもじもじとしている。

 そして、その日も俺達や、かぐや達の部屋には、風呂が付いていた。

 なぜかかぐや達は、長風呂をして風邪を引いた様だ。
 此処の宿は、防音がしっかりしていたし、今日は事をいたして居ない。

 俺とマイリはその頃、湖の畔にいた。
「ここには確か、基地があったよな?」
「ええ、ございます。そうですね。部下の方達が幾人か詰めていらっしゃるのですか?」
「ああ。だがまあ、会うのは流石にまずいか」
「今はまだ。ですが……」

 そう言う、俺とマイリの前を、連絡艦が偽装状態で上昇をしていく。
「不可視のカムフラージュも、バージョンが上がって普通には判らないな」
 そう言いながら、つい敬礼をしてしまう。
 指揮官バージョンで。

「いま、現地人と思われる二人が湖畔にいましたが、偽装状態でしょうか? こちらを目視して敬礼をしていましたが」
「なに? そんな話は聞いていないぞ。映像を出せ。――むおお」
 映像を見て驚いた上官。反応を見て部下達も動揺をする。

「どうされました?」
「あのふざけた敬礼は、ミー=キャエル様」
 指揮官が部下にする敬礼は、右手でいったん胸に拳。そして、指揮官は手を目の高さに上げたときに、手の平は自身の目へ向く。部下達は上官に掌を見せる。
 だが俺は、ピースサインで目の前。

 この事で、騒動が広がることになる。
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