58 / 109
第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ
第59話 要塞
しおりを挟む
「確かに、広いわねえ」
「このフロアを、まるごと構造体を補強をして、間取りを変えたらしい」
俺が図面を見ながら、指をさしていると、説明が割り込んでくる。
「そうよ、玄関は一つで、壁の中に前室として廊下を造り、各家へと繋がっている」
百田さんが颯爽と現れ、部屋を紹介してくれる。
「それだと、襲われたときに困りませんか?」
「尤もだけど、ベランダ側にも通路はあるし、各家庭用の住居は、実際には上階と下階にも繋がっているの。上下の部屋は、外向けはコンクリートで固められて、窓がないけれどね。ダミードアの中に、開くドアが一つ。脱出用に残っているし」
「それって」
「そう、ものすごく広い」
百田さんがビシッと、何故か空を指し示す。
「私たちの詰め所とも、前室で繋がっているの。秘密基地みたいでしょ」
そう言って、何故か嬉しそうだ。
「何か、他にあるのですか?」
そう言うと、にまっと笑う。
「休憩室という名目で、ここに個室ができたの。職場に住めるからアパート解約しちゃった」
「それって」
超絶ブラックじゃないかと思ったが、俺達も住んでいるしな。
聞くと、俺の貸した探査装置を見張る隊員が数人当番で見ていて、何かあれば、個室のアラートが鳴る。
暇つぶしの都合上、隊員は四人で見ている。
そのための新兵器、全自動電動マージャン卓を福利厚生の経費で買ったらしい。
基本的には、住み込んでいるのは、独身者のみ。
だが何故か、橋本さんは部屋を持っていて暮らすらしい。
こそっと聞くと、家庭内別居で居場所がなかったようだ。
そんな中、日本とアメリカで極秘に引き渡しの合意が行われて、新型機購入についてなんやかや、日本からの輸出分についても、円が安い内は関税とかを、少し下げてくれるようだ。
そのかわり、ご要望次第で、奇跡もおわけしましょうと、上から目線で言ったようだ。
それって、働くのは俺だよね。
他にも、兵一人当たり幾らで、罰金が結構な額、支払われたとか。
不法入国に、銃刀法違反、器物破損、失敗だが略取誘拐。
まあ、吹っかけたんでしょ。
そしてそんな頃、ヨーロッパの某宗教組織でも、傘下の組織に秘密命令が下っていた。
「神の奇跡を管理するのは、我らにおいて他ならない。神の使いをわが手に。丁重にお迎えをしなければならない。理解ができれば、向かいなさい。判りましたね」
「「「はっ、神の御名において行動を」」」
その者の、前に控えるのは、様々な職業の格好をしたひと達。
だが、教会は延々と繰り返された、他宗教排斥の歴史の上に立つ。
崇高なる使命。その元で特殊な組織が蠢いている。
出ていく者達を見ながら、その背中に告げる。
「今回はお連れするのみ、害してはいけませんよ」
「「「はっ」」」
返事は良いが、その者達の手には、偽装されて、それがどのような物かよく分からないが、凶悪な武器が握られている。
「ふふふっ、天使様をお連れするのはこの私。私の魅力で天へと誘いましょう」
不敵に笑う、ミレーネ=オールドヒム。蠱惑の瞳と呼ばれる。
若く見えるが、この道五〇年以上のベテラン。
身長一六八センチの身長と、一見、九〇センチを超えるトップバスト。
驚異的な性能を持った、ボディスーツにより体型を維持している。
むろん、防弾防刃仕様。
「馬鹿を言うな、お迎えするのは貴公子と、世界的に決まっておる」
そう言い放つのは、ガリーナ=ルニョヴァ。
身長一八七センチメートルの一見優男。
だが、体は鍛えられ、鋼のような肉体を待つ。
一説によると、KGB出身者だと言われて、システマと呼ばれる軍用格闘技のマスターレベルと言われている。
好んで、白いスーツを着用するが、作戦後はそのスーツが赤く染まる。
そのため、ルージュの貴公子と呼ばれている。
「静かになさい。我々は、神の名の下に、ただ従うのみ」
そう言って、ただ通り過ぎるのだが、ふわっと血の匂いが漂う。
彼は、ルカス=ブランチ。真っ黒い神父服を纏い。
そのまま、黒き神父と呼ばれている。
彼が通った後は、生きとし生けるもの、すべてが天に召されるであろうと言われている。そして、神父だが、血の滴るレアの肉と、濃厚なワインを好む。むろん赤だ。
仕事帰りに目撃されたとき、生地が黒くて判らないが、彼の神父服は濡れそぼり、床へ点々と赤い液体が滴っていたと、噂がある。
その他にも、ディーデリヒ=クレンクや、オリーヴィア=アンデ、アロンソ=マシアスなど、闇の六聖人と呼ばれる者達が、礼拝堂を退出していく。
なぜか、その者達がいなくなるだけで、ホール内の空気が軽くなる。
そして、その中でコロンと一人の首が落ちた。
その背中には、『背教者』と貼られていた。
誰がやったのか、判らない。
だが、六人の内の誰かであろう。
「ふわー。疲れた。やっと荷物が片付いたよぉ」
大きくなった、竜司のベッドに、まどかが飛び込み泳ぎ始める。
「こら。今ベッドメイクしたばかりなのに」
「だから良いのよ」
そう言って、ゴロゴロと転がり始める。
それを捕まえ、脇腹わしゃわしゃ攻撃を始める竜司。
「うきゃあ、それ駄目。ちょっと竜ちゃん」
「だめだ、人の完璧なベッドメイクを汚した罰だ」
「ちょホント駄目。やめて。ちびっちゃうからぁ」
そんな楽しそうな現場を、見つめる彩。
気がつけばドンドンと、メインヒロインの座が遠くなっていく。
あの時、そうだ。
鼻血さえ出さなければ、周りをきっとリードできたのに。
訳の分からない妄想を、柱の陰に隠れ、彼女は頭の中で流し続ける。
「このフロアを、まるごと構造体を補強をして、間取りを変えたらしい」
俺が図面を見ながら、指をさしていると、説明が割り込んでくる。
「そうよ、玄関は一つで、壁の中に前室として廊下を造り、各家へと繋がっている」
百田さんが颯爽と現れ、部屋を紹介してくれる。
「それだと、襲われたときに困りませんか?」
「尤もだけど、ベランダ側にも通路はあるし、各家庭用の住居は、実際には上階と下階にも繋がっているの。上下の部屋は、外向けはコンクリートで固められて、窓がないけれどね。ダミードアの中に、開くドアが一つ。脱出用に残っているし」
「それって」
「そう、ものすごく広い」
百田さんがビシッと、何故か空を指し示す。
「私たちの詰め所とも、前室で繋がっているの。秘密基地みたいでしょ」
そう言って、何故か嬉しそうだ。
「何か、他にあるのですか?」
そう言うと、にまっと笑う。
「休憩室という名目で、ここに個室ができたの。職場に住めるからアパート解約しちゃった」
「それって」
超絶ブラックじゃないかと思ったが、俺達も住んでいるしな。
聞くと、俺の貸した探査装置を見張る隊員が数人当番で見ていて、何かあれば、個室のアラートが鳴る。
暇つぶしの都合上、隊員は四人で見ている。
そのための新兵器、全自動電動マージャン卓を福利厚生の経費で買ったらしい。
基本的には、住み込んでいるのは、独身者のみ。
だが何故か、橋本さんは部屋を持っていて暮らすらしい。
こそっと聞くと、家庭内別居で居場所がなかったようだ。
そんな中、日本とアメリカで極秘に引き渡しの合意が行われて、新型機購入についてなんやかや、日本からの輸出分についても、円が安い内は関税とかを、少し下げてくれるようだ。
そのかわり、ご要望次第で、奇跡もおわけしましょうと、上から目線で言ったようだ。
それって、働くのは俺だよね。
他にも、兵一人当たり幾らで、罰金が結構な額、支払われたとか。
不法入国に、銃刀法違反、器物破損、失敗だが略取誘拐。
まあ、吹っかけたんでしょ。
そしてそんな頃、ヨーロッパの某宗教組織でも、傘下の組織に秘密命令が下っていた。
「神の奇跡を管理するのは、我らにおいて他ならない。神の使いをわが手に。丁重にお迎えをしなければならない。理解ができれば、向かいなさい。判りましたね」
「「「はっ、神の御名において行動を」」」
その者の、前に控えるのは、様々な職業の格好をしたひと達。
だが、教会は延々と繰り返された、他宗教排斥の歴史の上に立つ。
崇高なる使命。その元で特殊な組織が蠢いている。
出ていく者達を見ながら、その背中に告げる。
「今回はお連れするのみ、害してはいけませんよ」
「「「はっ」」」
返事は良いが、その者達の手には、偽装されて、それがどのような物かよく分からないが、凶悪な武器が握られている。
「ふふふっ、天使様をお連れするのはこの私。私の魅力で天へと誘いましょう」
不敵に笑う、ミレーネ=オールドヒム。蠱惑の瞳と呼ばれる。
若く見えるが、この道五〇年以上のベテラン。
身長一六八センチの身長と、一見、九〇センチを超えるトップバスト。
驚異的な性能を持った、ボディスーツにより体型を維持している。
むろん、防弾防刃仕様。
「馬鹿を言うな、お迎えするのは貴公子と、世界的に決まっておる」
そう言い放つのは、ガリーナ=ルニョヴァ。
身長一八七センチメートルの一見優男。
だが、体は鍛えられ、鋼のような肉体を待つ。
一説によると、KGB出身者だと言われて、システマと呼ばれる軍用格闘技のマスターレベルと言われている。
好んで、白いスーツを着用するが、作戦後はそのスーツが赤く染まる。
そのため、ルージュの貴公子と呼ばれている。
「静かになさい。我々は、神の名の下に、ただ従うのみ」
そう言って、ただ通り過ぎるのだが、ふわっと血の匂いが漂う。
彼は、ルカス=ブランチ。真っ黒い神父服を纏い。
そのまま、黒き神父と呼ばれている。
彼が通った後は、生きとし生けるもの、すべてが天に召されるであろうと言われている。そして、神父だが、血の滴るレアの肉と、濃厚なワインを好む。むろん赤だ。
仕事帰りに目撃されたとき、生地が黒くて判らないが、彼の神父服は濡れそぼり、床へ点々と赤い液体が滴っていたと、噂がある。
その他にも、ディーデリヒ=クレンクや、オリーヴィア=アンデ、アロンソ=マシアスなど、闇の六聖人と呼ばれる者達が、礼拝堂を退出していく。
なぜか、その者達がいなくなるだけで、ホール内の空気が軽くなる。
そして、その中でコロンと一人の首が落ちた。
その背中には、『背教者』と貼られていた。
誰がやったのか、判らない。
だが、六人の内の誰かであろう。
「ふわー。疲れた。やっと荷物が片付いたよぉ」
大きくなった、竜司のベッドに、まどかが飛び込み泳ぎ始める。
「こら。今ベッドメイクしたばかりなのに」
「だから良いのよ」
そう言って、ゴロゴロと転がり始める。
それを捕まえ、脇腹わしゃわしゃ攻撃を始める竜司。
「うきゃあ、それ駄目。ちょっと竜ちゃん」
「だめだ、人の完璧なベッドメイクを汚した罰だ」
「ちょホント駄目。やめて。ちびっちゃうからぁ」
そんな楽しそうな現場を、見つめる彩。
気がつけばドンドンと、メインヒロインの座が遠くなっていく。
あの時、そうだ。
鼻血さえ出さなければ、周りをきっとリードできたのに。
訳の分からない妄想を、柱の陰に隠れ、彼女は頭の中で流し続ける。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
伯爵令嬢に婚約破棄されたので、人間やめました
えながゆうき
ファンタジー
うー、ダイエット、ダイエットー!
子爵家の庭を必死に走っている俺は、丸々太った、豚のような子爵令息のテオドール十五歳。つい先日、婚約者の伯爵令嬢にフラれたばっかりの、胸に大きな傷を負った漆黒の堕天使さ。髪はブロンド、瞳はブルーだけど。
貴族としてあるまじき醜態はすぐに社交界に広がり、お茶会に参加しても、いつも俺についてのヒソヒソ話をされて後ろからバッサリだ。どっちも、どっちも!
そんなわけで、俺は少しでも痩せるために庭を毎日走っている。でも、全然痩せないんだよね、何でだろう?
そんなことを考えながら走っていると、庭の片隅に見慣れない黒い猫が。
うは、可愛らしい黒猫。
俺がそう思って見つめていると、黒い猫は俺の方へと近づいてきた!
「人間をやめないかい?」
「いいですとも! 俺は人間をやめるぞー!!」
と、その場の空気に飲まれて返事をしたのは良いけれど、もしかして、本気なの!? あ、まずい。あの目は本気でヤる目をしている。
俺は一体どうなってしまうんだー!! それ以前に、この黒い猫は一体何者なんだー!!
え? 守護精霊? あのおとぎ話の? ハハハ、こやつめ。
……え、マジなの!? もしかして俺、本当に人間やめちゃいました!?
え? 魔境の森にドラゴンが現れた? やってみるさ!
え? 娘を嫁にもらってくれ? ずいぶんと地味な子だけど、大丈夫?
え? 元婚約者が別のイケメン男爵令息と婚約した? そう、関係ないね。
え? マンドラゴラが仲間になりたそうな目でこちらを見てる? ノーサンキュー!
え? 魔石が堅くて壊せない? 指先一つで壊してやるよ!
え? イケメン男爵令息が魔族だった? 殺せ!
何でわざわざ俺に相談しに来るんですかねー。俺は嫁とイチャイチャしたいだけなのに。あ、ミケ、もちろんミケともイチャイチャしたいよー?
【完結】その同僚、9,000万km遠方より来たる -真面目系女子は謎多き火星人と恋に落ちる-
未来屋 環
ライト文芸
――そう、その出逢いは私にとって、正に未知との遭遇でした。
或る会社の総務課で働く鈴木雪花(せつか)は、残業続きの毎日に嫌気が差していた。
そんな彼女に課長の浦河から告げられた提案は、何と火星人のマークを実習生として受け入れること!
勿論彼が火星人であるということは超機密事項。雪花はマークの指導員として仕事をこなそうとするが、日々色々なことが起こるもので……。
真面目で不器用な指導員雪花(地球人)と、優秀ながらも何かを抱えた実習生マーク(火星人)、そして二人を取り巻く人々が織りなすSF・お仕事・ラブストーリーです。
表紙イラスト制作:あき伽耶さん。
転移先では望みのままに〜神族を助け異世界へ 従魔と歩む異世界生活〜
荘助
ファンタジー
神からの問いかけは『どんな生き方を望むか』その問いに答え隆也は、その生き方に相応しい能力を貰い転移する。
自由に生きよ!神様から言われた通り、自由に生きる為隆也は能力を生かし望みままに生きていく。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
エンジェリカの王女
四季
ファンタジー
天界の王国・エンジェリカ。その王女であるアンナは王宮の外の世界に憧れていた。
ある日、護衛隊長エリアスに無理を言い街へ連れていってもらうが、それをきっかけに彼女の人生は動き出すのだった。
天使が暮らす天界、人間の暮らす地上界、悪魔の暮らす魔界ーー三つの世界を舞台に繰り広げられる物語。
著作者:四季 無断転載は固く禁じます。
※この作品は、2017年7月~10月に執筆したものを投稿しているものです。
※この作品は「小説カキコ」にも掲載しています。
※この作品は「小説になろう」にも掲載しています。
宇宙との交信
三谷朱花
ライト文芸
”みはる”は、宇宙人と交信している。
壮大な機械……ではなく、スマホで。
「M1の会合に行く?」という謎のメールを貰ったのをきっかけに、“宇宙人”と名乗る相手との交信が始まった。
もとい、”宇宙人”への八つ当たりが始まった。
※毎日14時に公開します。
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる