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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第57話 市街戦

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「前回のチームは失敗し、上はお怒りだ。目標は一人。リュウジサトウとか言うジャップのガキだ。少々手荒でもいい。確保しろ」
「「「イエッサー」」」

 特殊兵連隊、極秘構成の特殊部隊。
 今回、いきなり派遣され。かなりいらついていた。

 重要作戦の最中、作戦中止と突然の帰還命令。
 聞けば平和な日本で、子供を一人さらってこいとの命令。

 彼らは、生存困難な激戦地で重要人物を救助するのが、基本任務。
 まあ、中には殲滅任務もあるが。
 その場合、偉い手さんをkid napキッドナップしてくることもある。

 はっきり言って、自分たちが派遣された意味を理解できなかった。
 前回、別チームが失敗したという理由もだが。

「ゴー、ゴーゴーゴー」
 一斉に規定ルートを走り始める。
 だが封鎖をしていない作戦、一般人には気をつけろとお達しが来ている。

「意外と面倒だな」
 街灯の完備された、明るい路地。
 平和な場所で、銃器を持つ異様さは目立つ。
 現地時間で二六時過ぎ。

 だが、道を少しずれれば、車が普通に行き交っている。

「枝道が多い。出会い頭に気をつけろ」
「使いますか?」
 そう言ってくる、軍曹の手には、スタンガン。
 警棒型とテーザー銃、今回の作戦を聞いて用意し、各隊に配布したようだ。
「さすがだな」

 順調なようだが、周囲から車の音が消えた。
 遠くで、サイレンが聞こえる。

「静かにしろ」
 遠くから、複数の軍靴の音が聞こえてくる。
「オペレーター。囲まれた。応戦をするぞ」
「ちょっと待て、奴らはポリスのようだ。撃つなよ」
「遅い、電撃でおねむだ」
「ちっ、作戦優先」

「許可が出た、蹴散らして目標へ向へ」
「サー」

 足音が、竜司達のマンションへと近寄ってくる。
 入り口には、ガラス扉。
 強化品に変わり、両面にフイルムが貼ってある特殊なもの。

 だが、打ち壊すわけではなく、特殊な道具であっという間にロック用の金属棒を切断。
 警報が鳴る前にセンサーを外す。

 その手並みは、さすがプロだ。
 民生のトラップなど、意に介さない。

 だがその先は、カメラに赤外。
 電波式のセンサーまで張ってある。

「さすがに無理だ。対象の部屋はどこだ?」
「サードフロア」
「よし突破だ」
 警報が鳴るのも気にせず一気に突っ込む。

 無論時間があれば、解除しただろうが、警官がやって来ている。
 猶予はない。


「警報が鳴っていますね」
 部屋に設置されているモニターでは、一チームが正面からの階段を上ってきており、もう一チームが建物の反対側へ回り込み、階段を上ってくる。

「直接、三階へ行ったぞ。まずいな」
 目標となる、竜司はここ。二階にいる。

「ちょっとシールド張ります」
 そう言って、二階から四階までを覆う、シールドを展開。無論物理と魔法を防ぐ。

 三階の廊下を走っていくチームは、見えない壁にぶち当たり、ひっくり返る。

「ちっ、なんだこれは?」
 手に持った、タングステンカーバイトの軍用ナイフが翻る。
 硬質な音が、ナイフから発せられるが、壁に変化はない。

 パイナップルを躊躇なく取り出し、みんなが下がる。

 対人用なので、無数の破片が、大きな音ともにばらまかれる。
 埃で廊下には丸く曲線が引かれ、見えない壁の境目が目視できるようになる。

「おい、ランチャーは」
「市街戦装備ですから、M72E10です」
「ちぃ、E9はないのか? 仕方ない」
 E9は貫通力重視、E10は破片をばらまく。

 階段脇に身を隠し、ランチャーを撃ち出す。
 その動作には、ためらいはない。
 威力は強力で、上階の床と廊下が抜ける。
 だが、丸く引かれた、線の向こうは無傷。

「なんだありゃ」
 のんきにそう言っていると、さすがに周りも騒がしくなる。

 警官も、連絡を受け、秘密作戦などといえない状況となり、すぐに非常線が張られた。

 上空には、ヘリまで飛び始める。

「やばくないですか?」
「やばいな。対象は目の前だというのに」


 そんな頃。
「えらく大騒ぎになったな。警察はどう責任をとるんだ?」
 外回りの初期封鎖線の外側で、自衛隊と現場の警官がもめていた。

 初期行動は同じだったが、警官の方が所轄を使い一気に封鎖をした。
 おかげで、自衛隊は現場に入らせてもらえなかったようだ。

 いや本部に聞くと、入れないなら見ていれば良い。警官では対処できなくなるから責任をとってもらうさと、冷静な命令が来た。

 昨今のモンスターの件でも、いろんな所で問題が発生。
 そのたびに、警察では対処できず、後手に回る。

 それが大きな問題として、表面化をしてきていた。
 今回の一件は、その力関係に、大きな一石となりそうである。

 無論自衛隊は、警備対象が非常識であることを知っているため、心配をしていない。ただ、米軍と警察のやりとりで、市街戦となることを、ある程度承知していた。

 テストのため、演習場で見た非常識。
「あいつらは問題ない。この状況を利用させてもらおう」

 現場でも、上層部でも思惑が交差する。

「ねえなんか、振動するよ」
「そうねぇ」
 そう言って外に出てしまい、封鎖されている現場エリアに飛び込んできた、取材ヘリは、キャラ全開のパジャマを着た鈴木姉妹をカメラに捉える。
 恐怖のネズミキャラ。

 その恐怖は、姉妹の両側に迫った、銃を構えた兵をも凌駕する。
「馬鹿やろう、カメラを切れ。やばいものが写ったぞ」
 生で、放送されてしまった。

 深夜だが、流れた以上、請求がやってくるだろう。
 『弊社のキャラを流しましたね』そう言って。
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