上 下
47 / 109
第三章 国との関わり

第48話 宇宙船探訪

しおりを挟む
「俺達を殺した犯人だって、そんなあっさり……」
 伶菜の顔から、一瞬表情が抜ける。

「現在進行形で、賢者から罰を喰らっているようだし、今はとりあえず良い」
「――うー。そう言うなら、あれだけど」
「警察に引き渡したって、何ともならんだろ。宇宙空間のことだし、ドラガシメル人で何とかしてくれって言われるくらいだろ。あっいや面白いから、橋本さんに聞いてみようかな?」
 そう言って、にやっと笑うと、伶菜から流石にストップが掛かった。

「幾らなんでも。でも、宇宙人だとなったら、別の所から話がきそう」
「来るかもな。特に話が流れたら、USA、USAって歌いながら、大挙してやって来そうだ」
 ツボにはまったらしい。
 伶菜が噴き出した。

「くっ来るかもねぇ。ぶふっ」

「まあ冗談はさておき、宇宙船には行こう」
「あっうん」

 そうして、その夜中にこそっと行く。

「ああ、服脱いで入ってくれ」
「私だけ脱ぐの?」
「そのポッドは、一人用」
 そう言ったら、渋々と脱ぎ始めたが、明るいためかもじもじとしている。

「じっくりと、見ていてあげるから、早く」
「えっ。もうぅ」
 そう言いながらも脱がす。

「その中へ入って。そうそう、動作させるよ。液体が入って、埋まるけれど溺れないから」
「えっ。ちょっとま……」
 伶菜がそこまで言ったときに、シールドが閉まる。

 頑張っているが、睡眠剤が効いて眠り始める。

 解析結果が、モニターに流れる。

 病気は無し、軽微な感染症はあるが、人間誰しもある。

 ピッというアラート。
「アテリネフィブロイド? 子宮か? エラー細胞。ドラガシメル人と構造が違うからあれだが、部位的には筋腫かな? そう言えば高校生くらいから、できやすいとか聞いたな。三〇歳くらいまでは、ホルモンのせいで結構できるらしいが、早期発見だな」

 そして、他にも色々と、エラーは出る。

 当然だが、細胞レベルでの改変が開始される。
 自分のときには見られなかったが、遺伝子レベルでいじっている。
 骨格の、骨細胞を始め、重要器官はすべて手が入る。

 脳と目まで。
 神経と筋肉。

 今の状態だと、推定三割増し。
 骨密度に、筋細胞まで手が加わり密度が上がったから、体重も三割増し。
 説明をしないと泣きそうだ。

 血液成分も変わっているらしいが、血液検査ではなにも言われなかったし、地球レベルなら分からないのか?

 体の内側も老廃物が洗浄されて、中の液槽は結構な勢いで流れている。
「外から見ているとすごいな。みんなをするときには、一個一個カーテンか何かで仕切った方が良さそうだ」

 結局、小一時間かかって、液体が抜ける。
 乾燥され、リフレッシュ。

 蓋を開けて、声をかける。

「伶菜。終わったよ」
 だが目をつむったままだ。
「あれ?」
 そう思ったら、手が伸びてきた。

「王子様、おはようのキスを」
 だそうだ。

「姫よ、目覚めはどうだい?」
「あーうん。すごいからだが快適だし、あれ?」
「どうした?」
「あのね。ちょっと。おなか。あれ? 張りがなくなって」
「ああ。洗浄されたんだろ」
 軽く言ったが、真っ赤になる伶菜。

「えっ。もしかして、なんか見たの?」
「大丈夫、液体だから」
「そんな問題じゃないぃ」
 そう言って、いやいやし始めた。

 ソレハサテオキ。

「体の具合は?」
「うん。いい」
 元気がないから、抱きしめる。

「んー竜ちゃん。体が変わったし、初めて……する。どこか外が見られる、ベッドとか無いの?」
「あると言えばある」
 前回作った奴だが。

 そして愛し合う。
 受容体の感度が上がったのか、すごかった。
 と言っていた。

「窓から見えるのは地球。たまに流れていくのは人工衛星だが、結構多いな」
「向こうからこっちは、見えないの?」
「うん。空間的位相が違うから。重なっても影響を受けないし、当然見えない」
「そうなんだ」
 地球の向こうから、太陽が昇る。

「ぼちぼち帰るか」
「うん」
 そう言って帰ったら、マイリが待っていた。

「むう。二人だけで行っていたんですね。近所を探しましたよ」
「ああ、すまない。伝えるのを忘れたな」

 その翌日。ホームセンターで、折りたたみのハンガーラックを買ってきて、カーテンを付ける。
 その様子を、伶菜は複雑な様子で見守る。
 だが、すべてを見せたのは自分だけ、きっと特別だから。
 そう思い込む事で、なっとくをしたようだ。

 準備ができたので、親も含めて呼んだ。
 ついでに、橋本さんも巻き添えにする。

 そうは言っても、ガードしているときに呼んで、宇宙飛行士にならないかと声をかけたら、さすが男の子。
 速攻で連絡を取り、許可取り。
 何か言われたようだが、動画を撮ると言うことで話は付いたようだ。

 そうは言っても、リビングから宇宙船へはジャンプするだけ。
 一瞬で画面は切り替わる。

 上階の展望室を開放する。

 そこで親たちには楽しんで貰うようにして、彩とまどかに声をかけて、下に連れて行こうとした。
 ところがだ、家族を呼んだ。
 だから、キス魔の彩の妹、葉月もいるのだよ。

 下へ降りるポッドの中へ、滑り込んできた。
「何処へ行くの?」
「葉月、あんた危ないじゃない」
 そんな叱られ方には、めげない。

「何処へ行くの?」
 同じ問い。答えるまで引きそうにない。
「下の階で健康診断だよ」
 無難そうな言い訳をする。嘘は言っていない。

 その少し前、伶菜は葉月が追いかけたことに気がつき、追いかけた。
 寸前で、ドアが閉まり、ポッドの壁にぶつかる。
 強化された伶菜により、ダイヤモンド並みの硬度を持つ樹脂にヒビが入った。

 あきれ顔のマイリが、すぐに修復をしたが。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

武装聖剣アヌスカリバー

月江堂
ファンタジー
女神により異世界に転移し、魔王を倒す勇者となるよう運命づけられた少年、コバヤシケンジ。 しかし、真の勇者でなければ抜くことのできない、女神より賜った聖剣は、先代国王ケツメド・アスタロウのアナルに突き刺さっていた。 ケンジは聖剣をヌく事ができるのか!?

伯爵令嬢に婚約破棄されたので、人間やめました

えながゆうき
ファンタジー
 うー、ダイエット、ダイエットー!  子爵家の庭を必死に走っている俺は、丸々太った、豚のような子爵令息のテオドール十五歳。つい先日、婚約者の伯爵令嬢にフラれたばっかりの、胸に大きな傷を負った漆黒の堕天使さ。髪はブロンド、瞳はブルーだけど。  貴族としてあるまじき醜態はすぐに社交界に広がり、お茶会に参加しても、いつも俺についてのヒソヒソ話をされて後ろからバッサリだ。どっちも、どっちも!  そんなわけで、俺は少しでも痩せるために庭を毎日走っている。でも、全然痩せないんだよね、何でだろう?  そんなことを考えながら走っていると、庭の片隅に見慣れない黒い猫が。  うは、可愛らしい黒猫。  俺がそう思って見つめていると、黒い猫は俺の方へと近づいてきた! 「人間をやめないかい?」 「いいですとも! 俺は人間をやめるぞー!!」  と、その場の空気に飲まれて返事をしたのは良いけれど、もしかして、本気なの!? あ、まずい。あの目は本気でヤる目をしている。  俺は一体どうなってしまうんだー!! それ以前に、この黒い猫は一体何者なんだー!!  え? 守護精霊? あのおとぎ話の? ハハハ、こやつめ。  ……え、マジなの!? もしかして俺、本当に人間やめちゃいました!?  え? 魔境の森にドラゴンが現れた? やってみるさ!  え? 娘を嫁にもらってくれ? ずいぶんと地味な子だけど、大丈夫?  え? 元婚約者が別のイケメン男爵令息と婚約した? そう、関係ないね。  え? マンドラゴラが仲間になりたそうな目でこちらを見てる? ノーサンキュー!  え? 魔石が堅くて壊せない? 指先一つで壊してやるよ!  え? イケメン男爵令息が魔族だった? 殺せ!  何でわざわざ俺に相談しに来るんですかねー。俺は嫁とイチャイチャしたいだけなのに。あ、ミケ、もちろんミケともイチャイチャしたいよー?

【完結】その同僚、9,000万km遠方より来たる -真面目系女子は謎多き火星人と恋に落ちる-

未来屋 環
ライト文芸
――そう、その出逢いは私にとって、正に未知との遭遇でした。 或る会社の総務課で働く鈴木雪花(せつか)は、残業続きの毎日に嫌気が差していた。 そんな彼女に課長の浦河から告げられた提案は、何と火星人のマークを実習生として受け入れること! 勿論彼が火星人であるということは超機密事項。雪花はマークの指導員として仕事をこなそうとするが、日々色々なことが起こるもので……。 真面目で不器用な指導員雪花(地球人)と、優秀ながらも何かを抱えた実習生マーク(火星人)、そして二人を取り巻く人々が織りなすSF・お仕事・ラブストーリーです。 表紙イラスト制作:あき伽耶さん。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

エンジェリカの王女

四季
ファンタジー
天界の王国・エンジェリカ。その王女であるアンナは王宮の外の世界に憧れていた。 ある日、護衛隊長エリアスに無理を言い街へ連れていってもらうが、それをきっかけに彼女の人生は動き出すのだった。 天使が暮らす天界、人間の暮らす地上界、悪魔の暮らす魔界ーー三つの世界を舞台に繰り広げられる物語。 著作者:四季 無断転載は固く禁じます。 ※この作品は、2017年7月~10月に執筆したものを投稿しているものです。 ※この作品は「小説カキコ」にも掲載しています。 ※この作品は「小説になろう」にも掲載しています。

宇宙との交信

三谷朱花
ライト文芸
”みはる”は、宇宙人と交信している。 壮大な機械……ではなく、スマホで。 「M1の会合に行く?」という謎のメールを貰ったのをきっかけに、“宇宙人”と名乗る相手との交信が始まった。 もとい、”宇宙人”への八つ当たりが始まった。 ※毎日14時に公開します。

処理中です...