13 / 40
第三章 奇術団
第13話 必要悪と社会悪?
しおりを挟む
ジャンナが駆け寄ってきて抱え込み、いい子いい子と人の頭をなでる。
「なんのつもりだ?」
「泣くかと思って。あんた、一度泣き出すと手が付けられないから……」
「この年になって、泣くかぁ」
反論するが、放してもらえない。
「あらそう。つまんない」
抱えられて、なだめられている俺。仲間は笑い、ニクラス達は目を丸くする。
それからまあ、ニクラス達へ懐かしの、泣き虫オネスティの逸話が暴露される。
「そうそう。自分で怒って顔を出さなかったのに、一月後に来て、淋しかったぁって泣くんだよ」
「そんな事は、覚えていない」
俺はそう言って、ぷいっと顔を背ける。
そんな様子を見て、オネスティってかわいい……
そんな事を考える、人間が二人。
この家、いくつか部屋がある。
そして相変わらず、俺は、物置に一人。
女の子達は女の子で雑魚寝だが、むくっと一人起き上がる。
だが、それに反応をして声がかかる。
「トイレかい? 物騒だから付いて行ってやるよ。また攫われないようにね」
「あーらまあ。ありがとうございます。でも、ゆっくり休んでください。睡眠不足はお肌に悪いですわよ」
そんなやり取りが、行われる。
「油断も隙もない…… 私だって、我慢しているのに」
翌朝。俺達は、いつもの様に小屋を建てて、マジックショー。
その間に、穀物の商店を、ニクラス達が見張る。
そして出かけた先は、小売店。
主人が出迎え、頭を下げている。
店の裏へ回り、声を聞く。
断熱材など当然入っていないし、薄い板が一枚。
外でも声が聞こえる。
板にすりこぎのような棒を当て、反対を耳に当てる。
「居ない? 私どもの手の者は、きっちり八人。買ってきたと申していましたが」
「小屋には、搬入した感じもなかったぞ」
「近くですから、依頼した者達に会いにいきましょう」
そしてまた追いかける。
今度は普通の家。
若いのが出てきて、二人を招き入れる。
「頼まれたとおり、各村を回って、親無しを買ってきました」
「いつもの様に小屋に入れたのか?」
「ええ。手抜かりはありません」
「化かされたような話だが…… 向こうも人手が足りないのだ。仕方が無い。出発までにそろえてくれ」
そう言って、また小袋が渡される。―― 逃げた連中は、探さなくて良いのか? 袋を渡された男は考えるが、相手がそう言うなら、まあいい。
「近場の村には、もう居ませんので、少し遠くに回らないと……」
壁越しで表情とかは判らないが、人手の足りない農村と、親無しが居て困っている農村。その間で、穀物問屋の方が人の斡旋をしている感じのようだ。
「という感じで、人さらいという感じじゃないな。この辺りにはいないと言っていたから、たまたま人数合わせにお前達も攫われたが、山だったし、山で隠れ住んでいる親無しだと思われたかな?」
それを聞いて、エステリとアウッティは怒り狂う。
「確かに、若いけどさ。武器も持っていたのに……」
「ああ、そうだな。持っていないと危ないし、買いに行くか」
翌日は、昼から小屋を開くつもりで、武器屋に二人を連れていく。
お目付に、ジャンナとアネットが付いてきた。
「ちわーす」
「帰れ」
「はっ?」
店主の『帰れ』は、俺達に向けてでは無かったようだ。
冒険者だろうか? 少しガラの悪い二人組。
出がけに、ジャンナ達の胸を触ろうとして、大事な所を蹴りあげられる。
「ぐはっ」
ストンと座り込み、動かなくなってしまった。
「死ね」
そう言い放ったときの顔は、背中越しなので見られなかったが、こっちに向いたときには普通の笑顔だった。
ただ、エステリとアウッティは顔が見えたのか、躊躇無く蹴ったことへの驚きか、多少顔が引きつっていた。
「まあ良いか」
振り返って、店主に聞く。
「弓を二つとナイフ。女の子が使うので、それなりのものを」
そう言ったら、強面のオッサンがこそっと言ってきた。
「連れのお嬢ちゃん容赦ないな。見ただけで、ひゅときたぞ」
「激しく同意する。でだ、エステリとアウッティ。蔓の強さとか大きさは?」
「ええと村を出るときに、猟師さんから適当に貰った奴だから判らない」
「二人とも?」
そういう事らしい。
オッサンに言って、奥で試射させて貰う。
「自分の引ける弓力の弓で、七割くらいが良いと思う。強ければ威力は上がるが、疲れたときに引けなくなってしまう」
そうして、大きさと強さを決める。
そして、ナイフを四つ。
二つは、刃渡り三十センチくらい。
もう二つは、その半分くらいの小さなもの。
そしたら、ジャンナとアネットも持って来た。
そういえば、皆の装備も、考えないとやばいかも。
買うと、ジャンナはなぜかナイフに頬ずりをしている。
美人な分だけ、やばさが際立つ。
そして、あの男達。
復活をしたらしい。何か話し合って逃げていった。
「あいつらは、屑だから気を付けろ」
オッサンが教えてくれる。
「何があったんだ?」
「買っていった剣だが、手入れもせず、刃が潰れ、どうせ石でも叩いたんだろ。折れたから新品に変えろって、ふざけたことを言いやがって。あいつらが買ったのは、一年も前だ」
そう言いながら、話を思い出して腹が立ったのかオッサンが真っ赤になる。
「クレーマーか?」
「クレーマーってなんだ?」
「ああいや。気にしないでくれ」
そして、馬鹿達は人数が増えてやって来る。
「なんのつもりだ?」
「泣くかと思って。あんた、一度泣き出すと手が付けられないから……」
「この年になって、泣くかぁ」
反論するが、放してもらえない。
「あらそう。つまんない」
抱えられて、なだめられている俺。仲間は笑い、ニクラス達は目を丸くする。
それからまあ、ニクラス達へ懐かしの、泣き虫オネスティの逸話が暴露される。
「そうそう。自分で怒って顔を出さなかったのに、一月後に来て、淋しかったぁって泣くんだよ」
「そんな事は、覚えていない」
俺はそう言って、ぷいっと顔を背ける。
そんな様子を見て、オネスティってかわいい……
そんな事を考える、人間が二人。
この家、いくつか部屋がある。
そして相変わらず、俺は、物置に一人。
女の子達は女の子で雑魚寝だが、むくっと一人起き上がる。
だが、それに反応をして声がかかる。
「トイレかい? 物騒だから付いて行ってやるよ。また攫われないようにね」
「あーらまあ。ありがとうございます。でも、ゆっくり休んでください。睡眠不足はお肌に悪いですわよ」
そんなやり取りが、行われる。
「油断も隙もない…… 私だって、我慢しているのに」
翌朝。俺達は、いつもの様に小屋を建てて、マジックショー。
その間に、穀物の商店を、ニクラス達が見張る。
そして出かけた先は、小売店。
主人が出迎え、頭を下げている。
店の裏へ回り、声を聞く。
断熱材など当然入っていないし、薄い板が一枚。
外でも声が聞こえる。
板にすりこぎのような棒を当て、反対を耳に当てる。
「居ない? 私どもの手の者は、きっちり八人。買ってきたと申していましたが」
「小屋には、搬入した感じもなかったぞ」
「近くですから、依頼した者達に会いにいきましょう」
そしてまた追いかける。
今度は普通の家。
若いのが出てきて、二人を招き入れる。
「頼まれたとおり、各村を回って、親無しを買ってきました」
「いつもの様に小屋に入れたのか?」
「ええ。手抜かりはありません」
「化かされたような話だが…… 向こうも人手が足りないのだ。仕方が無い。出発までにそろえてくれ」
そう言って、また小袋が渡される。―― 逃げた連中は、探さなくて良いのか? 袋を渡された男は考えるが、相手がそう言うなら、まあいい。
「近場の村には、もう居ませんので、少し遠くに回らないと……」
壁越しで表情とかは判らないが、人手の足りない農村と、親無しが居て困っている農村。その間で、穀物問屋の方が人の斡旋をしている感じのようだ。
「という感じで、人さらいという感じじゃないな。この辺りにはいないと言っていたから、たまたま人数合わせにお前達も攫われたが、山だったし、山で隠れ住んでいる親無しだと思われたかな?」
それを聞いて、エステリとアウッティは怒り狂う。
「確かに、若いけどさ。武器も持っていたのに……」
「ああ、そうだな。持っていないと危ないし、買いに行くか」
翌日は、昼から小屋を開くつもりで、武器屋に二人を連れていく。
お目付に、ジャンナとアネットが付いてきた。
「ちわーす」
「帰れ」
「はっ?」
店主の『帰れ』は、俺達に向けてでは無かったようだ。
冒険者だろうか? 少しガラの悪い二人組。
出がけに、ジャンナ達の胸を触ろうとして、大事な所を蹴りあげられる。
「ぐはっ」
ストンと座り込み、動かなくなってしまった。
「死ね」
そう言い放ったときの顔は、背中越しなので見られなかったが、こっちに向いたときには普通の笑顔だった。
ただ、エステリとアウッティは顔が見えたのか、躊躇無く蹴ったことへの驚きか、多少顔が引きつっていた。
「まあ良いか」
振り返って、店主に聞く。
「弓を二つとナイフ。女の子が使うので、それなりのものを」
そう言ったら、強面のオッサンがこそっと言ってきた。
「連れのお嬢ちゃん容赦ないな。見ただけで、ひゅときたぞ」
「激しく同意する。でだ、エステリとアウッティ。蔓の強さとか大きさは?」
「ええと村を出るときに、猟師さんから適当に貰った奴だから判らない」
「二人とも?」
そういう事らしい。
オッサンに言って、奥で試射させて貰う。
「自分の引ける弓力の弓で、七割くらいが良いと思う。強ければ威力は上がるが、疲れたときに引けなくなってしまう」
そうして、大きさと強さを決める。
そして、ナイフを四つ。
二つは、刃渡り三十センチくらい。
もう二つは、その半分くらいの小さなもの。
そしたら、ジャンナとアネットも持って来た。
そういえば、皆の装備も、考えないとやばいかも。
買うと、ジャンナはなぜかナイフに頬ずりをしている。
美人な分だけ、やばさが際立つ。
そして、あの男達。
復活をしたらしい。何か話し合って逃げていった。
「あいつらは、屑だから気を付けろ」
オッサンが教えてくれる。
「何があったんだ?」
「買っていった剣だが、手入れもせず、刃が潰れ、どうせ石でも叩いたんだろ。折れたから新品に変えろって、ふざけたことを言いやがって。あいつらが買ったのは、一年も前だ」
そう言いながら、話を思い出して腹が立ったのかオッサンが真っ赤になる。
「クレーマーか?」
「クレーマーってなんだ?」
「ああいや。気にしないでくれ」
そして、馬鹿達は人数が増えてやって来る。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる