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第一章 異変の始まり

第9話 どっちだ

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「あー。まいったな。おまえもひょいひょい攫われるなよ」
「攫われたくないけどね。きっと体重が軽いからね。攫いやすいんだよ」
「うー」

 夏の夕暮れ。
 そう。事情聴取は、意外と時間がかかった。
 行きは地下道。帰りは駅前。

 どうしてかなど。当然、知っているが言えない。
 あのじいさん。散々下位の生物って言っていたから、上位なんだろうなあ。一般に言う神様か?

 まあ答えられる訳もなく。
 そのため、分かりません。記憶にございません。善処し対応を検討いたします。
 後は、情報を精査いたしまして、また後日といって納めた。

 うん。定型文は偉大だ。

 疲れたし、背中の惣菜も、どうなったのか。怖くてあけられない。
「疲れた。野郎ども酒盛りじゃあ」
 そう言って、帰り道のドラッグストアに突入をする。

 ビールとかを買い込んで、乾き物を放り込む。
 ふと見ると、薄いのが5ダースほど、カゴに入っていた。
 まあ良いか。

 いい加減寂しくなった、財布の中から、金を支払い。家へと帰る。

 家に到着。
 惣菜物の、匂いを嗅ぎながら選別をする。

「冷蔵庫。冷蔵庫。チン。冷蔵庫。廃棄。チン。チン。廃棄」

 ぶつぶつと言いながら、選別をする。
「うーん。チルド物なら、まだ大丈夫か? 冷蔵庫だな」
 惣菜をチンした後。
 もう一度、匂いを嗅いで判断する。
 ツンとする匂い。だまって、ポイする。

「結構。駄目になっているな」
 俺が選別している間。

 万結は、帰ってきた瞬間。
「暑かった、風呂じゃ風呂じゃ」
 そう言って、風呂場へ向かった。
 何処のおっさんだよ。

 もうすでに、熟年夫婦。
 俺に対して、恥ずかしい物は無いと。豪語していた。
 まあ。気を使わなくて良いのは、楽だけどね。

 緊張して、腹の探り合いをしながら、日々生活とか。
 最悪だよ。

 かといって、こいつみたいに、全裸肩掛けバスタオルで、出てくるのはどうだ?
「惣菜。結構駄目になったね。もったいない」
「暑かったからね。30~40℃の雑菌繁殖温度が、結構長かったからな。まあこっちは大丈夫そうだ。先に食え。少し経ったら俺も食うよ」
 一瞬、割り箸で掴んで。口に入れようとしたが、万結の動きが止まる。

「はい。改ちゃん。お上がり」
「何だよ。大丈夫だよ」
「えー」と言いながら、匂いを嗅ぐ。

「ばかか、俺がそんなトラップを、仕掛けるわけ無いじゃ無いか。俺も風呂に行くからだよ」
「なんだ。大きい方もするところが見たくて、トラップを仕掛けたのかと思った」
「そんな趣味は無い」
「ほんとうに?」
「本当だよ」

 大体片付けて、風呂へ行く。
「しかしまいったな。自分のできることを、ちょっと把握しないと困るな」
 その時作り上げた、落書きソードを思い出す。

「美術不得意だしな」
 本気で静物のデザインでもするか。
 
 風呂から出て、リビングに行くと、あぐらをくんで、惣菜をつまみ。チューハイを飲みながら、テレビを見て笑っている。どこからどう見ても、立派なおっさんがいた。
「おい。おっさん美味いか?」
「うん美味しいよ。はいあーん」
 ラスト一個のエビチリ。
 もぐもぐ食べながら、ソファーに座る。

 俺は、Tシャツに、短パン。
 こいつは、相変わらず、バスタオルのみ。
 何かおかしい絵面だが、良いのか?

「寒くないのか?」
「うん大丈夫。したいなら良いよ。いつでも。大体私がこの格好なのに。何で服を着てるのよ」
「俺が悪いのか?」
「そうよ。それじゃあ。今と言う時を逸してしまうじゃない」
「おまえの劣情は、そんなに刹那の時間なのか?」
「いっやあねえ。途中で言葉を挟むとさ、つい正気に戻るじゃない? やっぱりちょっとてれるもの」
「照れる奴は、そんな格好しないだろ」
 そう言うと考え始める。

「それって、どうなのかしらね」
「なにが」
「いざというときに脱ぐと。今からと言う決意とか緊張が出るじゃない。あらかじめだったら、有無を言わさずできるから。なんとなくお得?」
「何だそりゃ」

そんなことを言っていると、チャイムが鳴る。
「ほーい」
 そう言って立ち上がろうとするが。
「ちょちょっと待って。わたしの服どこ。ぱんつ」
 裸で走り回りだした。

 玄関へ行き、スコープを見る。
「なんだ、悠翔か。ちょっと待て」
「おう。早くしろよ」

「もう良いか?」
 万結に声を掛ける。

「うっうん」

「お待たせ」
 ドアを開ける。
「なにやってんだよ。おせーよ。あれ? 歩坂。もしかしてお邪魔だった?」
「いっいえ別に。大丈夫よ。ほほほっ」
 そう言いながら、ブラをかぶって、トイレに走った。

「そんで、どうした?」
「うん暇だったし。ほれ。チューハイ」
「おうありがと。お返しだ。つまみに自然発酵したお惣菜はどうだ? 得も言われぬ香りがするけど」
 そう言って、台所の一角を指さす。
「自然発酵? の惣菜? それって傷んだっていわないか?」
「そうとも言う」

 悠翔は、やれやれという顔で、歩いて行き。向かい側のソファーに座る。
「ここにも大量に、惣菜。何かパーティーでも、開く予定だったのか?」
「いや。予定じゃ。耐久の堕落した生活をするつもりだったんだが、ゴブリンにじゃまされてな」
「ゴブリン?何処で」
「駅前。ショッピングモールの所」

 チューハイのプルトップをあけて飲み出す悠翔。

 グラスを持ってきて渡す。
「ありがと。いや実は、建築の安田と化学の薬研に、連絡が取れなくってさ」
「あいつら? 会ったぞ。昼前に」
「何処で?」
「ゴブリンがパーティを開いていた。……会場近く ……でも全員。救出したぞ」
「もう一回連絡してみるよ。朝あいつから、きゃっほー。今日はデートさ。悔しがれって連絡が来て、以来だからな。しけ込んでいても猿じゃないから、もう出てきてるよな」
 そう言って、コールするが、『奴ぁは、電波の届かないところにいやがるぜ。きっとばっくれやがった。時間をおいてもう一度。連絡して見やがれ』そんなアナウンスが流れた。

「さーてと。どっちだ」
 思わず、悠翔と見つめ合う。
 パシャッと、写真が撮られる。
 万結がカメラを構え、赤い顔をして、くねくねしていた。
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