上 下
120 / 167
第4章 少しずつ変わって行く世界

第16話 世界の流れと思惑

しおりを挟む
「はい。毎度おなじみ、お昼のニュースです。本日未明。アメリカ並びにヨーロッパ。アラブ。アジアの主要国において、世界ダンジョン&モンスター対策協会発足が宣言されました。発表された内容は、協会所属各国による推薦を受けて認められた対策チームは、世界ダンジョン対策協会発行のタグを持つことで、加入国への入国手続きなどの面倒ごとから解放される特典を付与する。さらに作戦対象国において軍の協力も得られるとなっています。なお詳細については、今回の各大陸同時モンスター氾濫を受けて、緊急措置的に発足した為、細かい規定は今から定めるとの事です」

 アナウンサーの所へ、追加資料が持ち込まれる。
 一瞥し、驚くアナウンサー。

「先ほどのニュースにおいて、追加情報が公開されました。現時点で、承認を受けたチームは、日本の『株式会社 特別指定外来種対策会社』。社長は、神崎一司(かんざきかずし)氏 24歳との事です。他のチームは、実績に差がありすぎて選考中…… との事です。そのほかにも、ダンジョン攻略についての朗報が、アメリカから発表されています。内容は対モンスター用の特別弾の開発に成功をしたとのことです。これは明るいニュースですね。量産が待ち遠しい所です。以上、お昼のニュースでした」


 テレビをぼーっと見ていた俺は、自分の名前を聞いて、盛大にビールを吹き出した。口からどころか、鼻からも…… すごくしみる。

 げはげはと言っていると、美月が能天気にやって来た。

「どうしたの? これ」
 美月がテーブルの上の惨劇を見て、驚いている。
「ああ、ニュースを見て吹いた」
「ニュース?」

「本日開催された世界陸上選手権で、100mがとうとう5秒台に入りました。ダンジョンができてから、じわじわとタイムが縮んできており、ダンジョンでのトレーニングにより、今まで限界と言われる数値をどんどん人類が超えています。これは、今までになかったような画期的であり革新。人類が、新しい時代へと足を踏み入れたと、言えるのではないでしょうか? どうでしょうか?」

「そうですね。短距離だけではなく、すべての能力に上昇が見えてきております。人類の革新と言って問題が無いと思います。ただ、器具を使う円盤投げや、やり投げでは身体能力だけではなく、違う能力を使う選手が出始めて、競技にならないとの話が出てきています」

「それは、いわゆる超能力というものでしょうか?」
「そうですね。一般的には魔法と言われています」
 アナウンサーは、どっちでもいいじゃんと言う顔をしている。

「魔法ですか?」
「そうです。一時期は、ダンジョン内のみ使用可能だった能力が、今は、外で普通に使えていますから、そういう物をコントロールできる能力を持った選手が出てきても、おかしくありません」

 アナウンサーは、ちょっと考え、にまっと笑うと、
「それでも、言ってしまえば個人の能力ですよね」
 どや顔を決めるアナウンサー。
「そうですよね。ですからここで、一度競技内容をすべてを決めなおすという、必要もあるかと思います」


「まーあ、大変ね」
 美月がそんなことには、興味ないと言う感じで返事をする。
「他人事のように言っているが、家の連中。全員こんな数字ぶっちぎっているだろう」
 一司は、ため息を一つつき。
「じゃなくて、俺が見ていたのは、別のニュースだ。世界ダンジョン&モンスター対策協会発足だってよ。話は聞いていたが、現時点で指名された対策チームは、うちだけだとテレビで言っていた」
「それにしては、静かね」
 美月にそう言われて、ふと思い出す、一司。
「そう言えば。会社登録の時に、引いた電話どうしたっけ?」
「前の家で契約して、外して…… こっちへ来てから、電話引いていないんじゃない?」

「…………」
 二人とも顔を見合わす。
「忘れていたな」
「良いんじゃない? どうせ大事な連絡は、謎アプリで来るんでしょ」
「まあな。そう言えば、会社の住所も前のままだな」
「そうね。と、いうことは用事のある人皆、あの空き地に集まっているのかしら?」
 俺たちは、思わず顔を見合わせる。
 まあ放って置けば良いかとなった。
 そして、俺はビールで濡れたテーブルを拭く。


 そして当然だが、新社屋建設中の現場には、各方面から人が集まっていた。
「どうなっている? 電話をしてもずっと呼び出し。登記住所に来ても、工事中。会社じゃないのか? 普通、仮事務所ならどこかに、表示とかするだろう」
「がせ、じゃないんですか?」
「そんなはずは…… 無いだろう。たぶん。同じ名前の、別会社とかではないよな」


 ビールを入れなおして来た。鼻はまだ痛い。
「そういや、玲己はどうした?」
「まだ、寝込んでいるんじゃない?」
「いくら言っても、堪えすぎじゃないのか?」

 それを聞いて美月は、やれやれと言う感じで、
「……あのね、一司。分かっていないようだから、説明するとね。今のあなたとエッチすると、繋がっている間ずっと多幸感と快楽が来るのは良いけれど、ついでに謎のエネルギーとそれによって、体が作り変えられる感覚が来るの。もう、細胞レベルで分解されて、構築されなおすような感じ? すごく痛いの。でもそれと一緒に、強力な快楽が来るから究極のSM? あっ、よだれが出ちゃった」
 そう言って口の縁を、袖で拭う。
「おう、そうか。それにやられて、玲己は動けないと」
 うんうん、と頷く美月。
「まあ、あの子初めてだったみたいだから、体と一緒に、脳みそ溶けちゃったかも」

 美月の話を聞いて、俺はあー細胞レベルで分解されるって覚えがあるなぁ。2回目のクリスタルの時だ。管理者のクリスタルを取り込んで、死ぬかと思ったな。でも快楽はなかったよな。でも……あると、男は地獄だな。主にダンジョンからの帰りが……。
 俺はゲートを使うけれど、普通は電車。どべどべなズボンで、あれの匂いをまき散らしながら電車へ乗る? だめだな想像するだけで、逮捕事案一直線だよな。

 俺が、そんな馬鹿な妄想をしている時、美月は思い出す。
 むろん言葉には出さないが、情報としてはやばい物。

 それにね、繋がっていると、別の意識も流れ込んでくるのよね。
 あれは、本来の管理者の意識。一司が、きっと抑えているんだろうけれど、一度、星を再構築してやり直せって…… 玲己があれに引っ張られると、面倒だから様子を見に行くか。うーん? いや、もう一回。
 一司にとどめを文字通り刺してもらった方が良いのかしら? あれ、でもあの子の持っているのって、訳知り顔の竜だったはず。何かをきっと知っている。
 ならフレイヤちゃんを、くすぐってこようかしら?

 よし。一司に迎えエッチを玲己にしてもらって、その間にフレイヤちゃんを問い詰めよう。

「ねえ、一司。玲己を見に行って体調悪そうなら、もう一回じっくりとエネルギー注入してあげて。体が出来上がればきっと…… たぶん大丈夫になるから。中途半端は駄目だからね」

 管理者2回目の変化分を、俺が与えているのか。フレイヤが何か言っていたな、魔素が足りないと体がまずいって。でも玲己は今ダンジョン側だから問題ないってことだろう? 変化不足か。仕方がない。なんか癪だが、今回は美月の言うとおりにしてみるか。 
 完全な変化ねえ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...