117 / 167
第4章 少しずつ変わって行く世界
第13話 美月の苦悩と謎の女子会
しおりを挟む
普段からかなりいい加減で、突発的な思い込みで行動をする美月。
だが、彼女はこの所ずっと悩んでいた。
美月は彼女なりに正義があり、それに従い行動をしている。
その行動が、他人に理解されるかどうかは不明だが……。
そんな彼女は、ワインを片手に、フレイヤを捕まえて愚痴っている。
先日、アメリカで見たトカゲは知っている……。人間界では地獄と呼ばれる黒縄の山に住んでいたドラゴンの一族の者。
火炎魔人となり、恥をさらした頃からふと見る記憶。あれは私の前世の記憶。
前世の昔から、私は一司が好きだった。
共に生活をしていたが、ある時争いになった。
我が娘、舎脂(シャチー)を嫁がせようとしたのに…… 儀礼を無視して、わが手から娘をさらっていった一司。
いや、帝釈天。
正義の名のもと、その行いが許せずに我が軍団を引き連れて戦いとなった。
それなのに、今私は…… 記憶がなかったとはいえ、娘の夫を奪ってしまった。
正義を考えると、 ……外れたのは私。でも、舎脂はまだ現れていなかったし、多少は強引だったけれど、一司も受け入れてくれたし。仕方がなかったのよ。
……好きなんだもの。こちらの一夫一婦の考えに固執されると、困ったことになるから、玲己を嗾けてみたけれど手を出さないし、真魚のことは完全に子ども扱い。困ったわ。
〈……どうしたらいいと思う〉
〈にゃ。そんなことを私に聞くにゃ。一司の記憶が戻ったら、聞いてみればいいにゃ〉
〈どうやったら、記憶が戻るんだろう。理を3つも持っているのに、戻る気配もないみたいよ〉
〈誰かに封じられるような者ではないから、転生時の事故か自ら封印じゃないか。それか何かを起こして、よっぽどの上位の者が手を下したかにゃ〉
〈そんな話は、無かったでしょう。彼は、上位神の信用も厚かったし〉
〈じゃあ事故じゃないのかにゃ〉
〈じゃあどうすれば、記憶が戻るのよ〉
〈……そんなに、慌てなくてもいいじゃない。だんだん腹が立ってきたわ〉
〈フレイヤ、口調がセクメトに戻っているわよ。死になさいビシとか言って。懐かしい〉
〈やめてくれるかしら。そんな事をしたおかげで、すごく怖がられてずいぶん長い事一人ぼっちだったの。今の方が楽しくて。
もう…… 一人はうんざりなのよ〉
〈そういえば、そろそろ人化できるでしょう。付き合いなさいよ〉
〈魔石でいいわよ。フェンはどう?〉
〈あの子、小さかったけど。ずいぶん前か。フェンどこなの? こっちへいらっしゃい〉
〈……フレイヤぁ〉
そう言いながら、フェンが足取り重くやって来る。
〈人化しなさいよ〉
素直に人化するフェン。姿は14~15歳になっていた。
〈まだちょっと幼いけれど、年なんて2年もすれば成人でしょ〉
〈犬じゃない。一緒にしないで〉
そう言いながらも氷でグラスを作る。
どぼどぼと、注がれるワイン。
〈あなたも、どうすればいいのか考えなさいよ〉
フェンはちょっと考えた後、恐る恐る答える。
〈上位の者に、相談をしてみたらどうですか?〉
〈向こうに行かなきゃいけないじゃない。どうやって行くのよ? 空間を超えるには転移ポートを使わないといけないわよ。あっ、まだ昔のがあるかしら?〉
〈場所はいくつかある。使えるかどうかは不明だけどね〉
フレイヤが、魔石をからからと口の中で転がしながら、つぶやく。
フェンが、目ざとく見つけ、つまみ代わりに魔石を口に放り込む。
〈あっ、この馬鹿犬。私の魔石を取ったわね。一度死んでみるかい〉
フレイヤのセリフを聞いた後、フェンの髪の毛が立ち上がる。
〈やめてくださいよ、まだ防げないんですから〉
〈魔石位良いじゃない。ほら、これあげるから喧嘩をしない〉
そして、こんもりと魔石を出した後、またぐびぐびとワインを飲み始める美月。
「はー、どうしよう。一司ったら変な所で真面目なんだから。少しくらい周りに手を出せばいいじゃない。二股三股くらい、男の甲斐性とか言って開き直ってくれないかしら?」
そう言って美月は愚痴る。
〈アスラ声に出てる〉
フレイヤにそう言われて、慌てて口を押える。
〈真魚は駄目だが、玲己なら一司の背中をちょっと押せば行けるんじゃないのか、奴も、今は人間としての性に引きずられておるようだからな〉
〈そうかしら? 背中を押してみようかしら? 少しもやもやするけれどそれしかないか…… 浮気させるように頑張ろう〉
それにしても、
「はぁー」
〈一司に説明しても、駄目かしら?〉
〈記憶が無ければ、何言っているんだこいつと、思われるだけじゃないかしらね〉
〈そうよねぇ〉
そう言いながら、フレイヤの口にワインのボトルを突き刺す。
「ぐっ。うごぉ」
「あら、空いちゃったわ」
亜空間収納から、新しいボトルを取り出す。そして、どぼどぼと自分のグラスへワインを注ぐ。ついでに、フェンのグラスへも。
人化した二人は、丸裸で服を着ていない。
こうしてそんなシュールな光景で、深夜に謎の宴会。
いや怪しい女子会は、開催された。
当然、一司をはじめ、知るものは誰も居ない。
だが、彼女はこの所ずっと悩んでいた。
美月は彼女なりに正義があり、それに従い行動をしている。
その行動が、他人に理解されるかどうかは不明だが……。
そんな彼女は、ワインを片手に、フレイヤを捕まえて愚痴っている。
先日、アメリカで見たトカゲは知っている……。人間界では地獄と呼ばれる黒縄の山に住んでいたドラゴンの一族の者。
火炎魔人となり、恥をさらした頃からふと見る記憶。あれは私の前世の記憶。
前世の昔から、私は一司が好きだった。
共に生活をしていたが、ある時争いになった。
我が娘、舎脂(シャチー)を嫁がせようとしたのに…… 儀礼を無視して、わが手から娘をさらっていった一司。
いや、帝釈天。
正義の名のもと、その行いが許せずに我が軍団を引き連れて戦いとなった。
それなのに、今私は…… 記憶がなかったとはいえ、娘の夫を奪ってしまった。
正義を考えると、 ……外れたのは私。でも、舎脂はまだ現れていなかったし、多少は強引だったけれど、一司も受け入れてくれたし。仕方がなかったのよ。
……好きなんだもの。こちらの一夫一婦の考えに固執されると、困ったことになるから、玲己を嗾けてみたけれど手を出さないし、真魚のことは完全に子ども扱い。困ったわ。
〈……どうしたらいいと思う〉
〈にゃ。そんなことを私に聞くにゃ。一司の記憶が戻ったら、聞いてみればいいにゃ〉
〈どうやったら、記憶が戻るんだろう。理を3つも持っているのに、戻る気配もないみたいよ〉
〈誰かに封じられるような者ではないから、転生時の事故か自ら封印じゃないか。それか何かを起こして、よっぽどの上位の者が手を下したかにゃ〉
〈そんな話は、無かったでしょう。彼は、上位神の信用も厚かったし〉
〈じゃあ事故じゃないのかにゃ〉
〈じゃあどうすれば、記憶が戻るのよ〉
〈……そんなに、慌てなくてもいいじゃない。だんだん腹が立ってきたわ〉
〈フレイヤ、口調がセクメトに戻っているわよ。死になさいビシとか言って。懐かしい〉
〈やめてくれるかしら。そんな事をしたおかげで、すごく怖がられてずいぶん長い事一人ぼっちだったの。今の方が楽しくて。
もう…… 一人はうんざりなのよ〉
〈そういえば、そろそろ人化できるでしょう。付き合いなさいよ〉
〈魔石でいいわよ。フェンはどう?〉
〈あの子、小さかったけど。ずいぶん前か。フェンどこなの? こっちへいらっしゃい〉
〈……フレイヤぁ〉
そう言いながら、フェンが足取り重くやって来る。
〈人化しなさいよ〉
素直に人化するフェン。姿は14~15歳になっていた。
〈まだちょっと幼いけれど、年なんて2年もすれば成人でしょ〉
〈犬じゃない。一緒にしないで〉
そう言いながらも氷でグラスを作る。
どぼどぼと、注がれるワイン。
〈あなたも、どうすればいいのか考えなさいよ〉
フェンはちょっと考えた後、恐る恐る答える。
〈上位の者に、相談をしてみたらどうですか?〉
〈向こうに行かなきゃいけないじゃない。どうやって行くのよ? 空間を超えるには転移ポートを使わないといけないわよ。あっ、まだ昔のがあるかしら?〉
〈場所はいくつかある。使えるかどうかは不明だけどね〉
フレイヤが、魔石をからからと口の中で転がしながら、つぶやく。
フェンが、目ざとく見つけ、つまみ代わりに魔石を口に放り込む。
〈あっ、この馬鹿犬。私の魔石を取ったわね。一度死んでみるかい〉
フレイヤのセリフを聞いた後、フェンの髪の毛が立ち上がる。
〈やめてくださいよ、まだ防げないんですから〉
〈魔石位良いじゃない。ほら、これあげるから喧嘩をしない〉
そして、こんもりと魔石を出した後、またぐびぐびとワインを飲み始める美月。
「はー、どうしよう。一司ったら変な所で真面目なんだから。少しくらい周りに手を出せばいいじゃない。二股三股くらい、男の甲斐性とか言って開き直ってくれないかしら?」
そう言って美月は愚痴る。
〈アスラ声に出てる〉
フレイヤにそう言われて、慌てて口を押える。
〈真魚は駄目だが、玲己なら一司の背中をちょっと押せば行けるんじゃないのか、奴も、今は人間としての性に引きずられておるようだからな〉
〈そうかしら? 背中を押してみようかしら? 少しもやもやするけれどそれしかないか…… 浮気させるように頑張ろう〉
それにしても、
「はぁー」
〈一司に説明しても、駄目かしら?〉
〈記憶が無ければ、何言っているんだこいつと、思われるだけじゃないかしらね〉
〈そうよねぇ〉
そう言いながら、フレイヤの口にワインのボトルを突き刺す。
「ぐっ。うごぉ」
「あら、空いちゃったわ」
亜空間収納から、新しいボトルを取り出す。そして、どぼどぼと自分のグラスへワインを注ぐ。ついでに、フェンのグラスへも。
人化した二人は、丸裸で服を着ていない。
こうしてそんなシュールな光景で、深夜に謎の宴会。
いや怪しい女子会は、開催された。
当然、一司をはじめ、知るものは誰も居ない。
10
お気に入りに追加
506
あなたにおすすめの小説
おっす、わしロマ爺。ぴっちぴちの新米教皇~もう辞めさせとくれっ!?~
月白ヤトヒコ
ファンタジー
教皇ロマンシス。歴代教皇の中でも八十九歳という最高齢で就任。
前任の教皇が急逝後、教皇選定の儀にて有力候補二名が不慮の死を遂げ、混乱に陥った教会で年功序列の精神に従い、選出された教皇。
元からの候補ではなく、支持者もおらず、穏健派であることと健康であることから選ばれた。故に、就任直後はぽっと出教皇や漁夫の利教皇と揶揄されることもあった。
しかし、教皇就任後に教会内でも声を上げることなく、密やかにその資格を有していた聖者や聖女を見抜き、要職へと抜擢。
教皇ロマンシスの時代は歴代の教皇のどの時代よりも数多くの聖者、聖女の聖人が在籍し、世の安寧に尽力したと言われ、豊作の時代とされている。
また、教皇ロマンシスの口癖は「わしよりも教皇の座に相応しいものがおる」と、非常に謙虚な人柄であった。口の悪い子供に「徘徊老人」などと言われても、「よいよい、元気な子じゃのぅ」と笑って済ませるなど、穏やかな好々爺であったとも言われている。
その実態は……「わしゃ、さっさと隠居して子供達と戯れたいんじゃ~っ!?」という、ロマ爺の日常。
短編『わし、八十九歳。ぴっちぴちの新米教皇。もう辞めたい……』を連載してみました。不定期更新。
職業選択の自由~ネクロマンサーを選択した男~
新米少尉
ファンタジー
「私は私の評価を他人に委ねるつもりはありません」
多くの者達が英雄を目指す中、彼はそんなことは望んでいなかった。
ただ一つ、自ら選択した道を黙々と歩むだけを目指した。
その道が他者からは忌み嫌われるものであろうとも彼には誇りと信念があった。
彼が自ら選んだのはネクロマンサーとしての生き方。
これは職業「死霊術師」を自ら選んだ男の物語。
~他のサイトで投稿していた小説の転載です。完結済の作品ですが、若干の修正をしながらきりのよい部分で一括投稿していきますので試しに覗いていただけると嬉しく思います~
黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》
Siranui
ファンタジー
そこは現代であり、剣や魔法が存在する――歪みきった世界。
遥か昔、恋人のエレイナ諸共神々が住む天界を焼き尽くし、厄災竜と呼ばれたヤマタノオロチは死後天罰として記憶を持ったまま現代の人間に転生した。そこで英雄と称えられるものの、ある日突如現れた少女二人によってその命の灯火を消された。
二度の死と英雄としての屈辱を味わい、宿命に弄ばれている事の絶望を悟ったオロチは、死後の世界で謎の少女アカネとの出会いをきっかけに再び人間として生まれ変わる事を決意する。
しかしそこは本来存在しないはずの未来……英雄と呼ばれた時代に誰もオロチに殺されていない世界線、即ち『歪みきった世界』であった。
そんな嘘偽りの世界で、オロチは今度こそエレイナを……大切な存在が生き続ける未来を取り戻すため、『死の宿命』との戦いに足を踏み入れる。
全ては過去の現実を変えるために――
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる