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第2章 魔法の使える世界

第38話 最後の残党一人

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 役所を出ると、芳雄と一翔が並んでいた。

「おう、どうしたんだ?」
「いや、普通に学校の帰りです。丁度、社長を見かけたので待って居たんです」

「高校生はいいなあ。半日か」
「もう少しで、冬休みなんで」

「こんな外に居なくても、中に入ってくればいいのに」
「いや姉貴がいるので、嫌なんです」
「姉貴? お前の苗字って冬月だったよな? そんな人いたかな。まあ人間多いからな」

「まあいいや、それでこの人。神地さんだ。面接希望だと」
「社員の、冬月一翔です」
 すささと寄ってきて、一翔がにこやかに挨拶をする。
「同じく社員の、少林(わかばやし)芳雄です」
 芳雄は対照的に、軽くお辞儀をする。

「二人とも、この前は助けてくれて、ありがとう」

「おねえさん。何とかチームAの人か」
「そうよ。神地玲己(かみちたまき)20歳。よろしくね」


 そんな話をしていると、割り込んでくる奴が一人。
「おお、手前ら何処でうろうろしてやがった。その姉ちゃんと知り合いだったのか、そりゃあ都合がいい。一晩貸せや」

「あん?知り合いか?」
 一司がそう言うと、こちらを見たガラの悪い奴が。
「あっ、てめえ。お前だろ。うちのダンジョンつぶしたのは」

 芳雄が補足説明。
「さっき本人が言った通り。ダンジョンの前でカツアゲしていたチームの最後の一人です。俺らと一緒にダンジョンから出られなくって助かって、魔道具盗んで来いって命令した奴です」

 一司の目が光る。
「そうかそうか、絶滅危惧種だな。特別指定外来種対策会社としては保護しないとなあ」

「ちぃ」
 やばいと思ったのか、いきなり逃げ出した。
「逃がすな、追え」
 と一司が言って、素早く反応する二人。走り出そうとしたが、
「あっ、あのー。あの人の家、昔の事務所の横の部屋です。さっき引っ越したのを確認しようと思って、ピンポンしたら出てきました」

 皆が顔を見合わせる。
「じゃあ、帰って待っていようか。とりあえず、頼りになる人には連絡しておこう」

 前のマンションの、部屋の前に帰って来た4人。
「なんだか時間的には少しだけど、懐かしいな」
「そうですね。しかし隣に住んでいたとはびっくりです」
「ここに、俺の家がある事は、あいつは知らなかったのか?」
「ええ、言うだけ。というか命令された後は、俺らだけで社長たちを追いかけていたので」

「世の中狭いなあ。おっ感知にひっかっかった。誰か来るぞ」

「おっ、何でここが…… てめえか、このあま。ちぃ」
 ダッシュして逃げ出す。


「そっち行ったよ」
 一司が声をかける。
「りょ」
 いつもの警察署でお馴染み田村さんが、捕まえて、投げて極める。
「田村さん、お手柄」

「こいつが、どうも悪さの主犯だな。入れ知恵して自分は逃げていたようだ」
「おっ、査定が上がりますね」
「そりゃどうかな。結構世知辛いんだぞ」

「そりゃ、御気の毒様。それじゃあ、後はお願いします。部屋は隣らしいですから」
「あの時、現場検証とかで、我々もうろうろしていたのにな」
「まあ、あの時も1日だけでしたからね、どこかで、うろついていたのか。うちの入社希望者が話を聞こうとしたら、部屋に引っ張り込まれそうになったらしいので、そっちも余罪があるかもしれないですね」

「情報としては不確定だが、ありがとう。参考にするよ。それじゃあな」

「さて、帰ろうか。入社前から大仕事、大活躍だな」
「入れてくれます?」
 一司の顔を覗き込み。上目遣いに聞いてみる。
「そりゃまた別のお話。まあ行こう」


 新しい会社は、一戸建ての家だった。

「ただいま。面接するぞ」
 思い出して、電話をする。
「その前に…… あっ井守先生、会社の住所変更お願いします。 ……いやだなあ、今回はそれだけですよ。お歳暮に札束敷きこんだお菓子送りましょうか? ……違法? 冗談ですよ…… おいくらくらい? じゃあボーナスとして出します。はい、はい、ではよろしく」

 私は結局上がり込んで、ダイニングで向かい合っている。
 まだ改装中で部屋がちゃんとできていない、とのことだが、さっきボソッと会社のスペース考えていなかったって言いましたよね。

「それじゃあ、神地さんうちを受ける動機と特技をお願いします」
「あっ履歴書を一応書いてきました」
「こりゃご丁寧にどうも。見せてもらっていい?」
「どうぞ」
 
 作品を渡す。
「ふーん、まあ予想通り。志望の動機が助けてもらい、その時の圧倒的力に感動したと」
「後で聞くと、貢献度で日本1だと言われてびっくりしました」
「それでまあ資格が、鳥獣捕獲のわな猟免許所有。くくりわなね」

「すごいけれど、ダンジョンで使えるかな。まあいいか。それで待遇に関するもので本人希望記入欄が、おかしいのだけれど? 第1希望がお嫁さん、第2希望が愛人となっているけれどこれ何?」
「そのままです。神崎さん助けられたときに、ビビっときました。よろしくお願いします」

「うち一人。どうしようもないのが、すでにいるし…… 間に合っているんだよな」
「その場合は、第2希望で」
「いや、別に要らんし。おーい美月。ライバル宣言されているけれど、どうする」

「いいんじゃないの? ただの人間。それも小娘の戯言でしょう。問題ないわ。火炎魔人の美月様の敵ではないわ」
「そういや、あいつも管理者だったか。じゃあ、採用。連絡先を共有するけれどいいかな?」
「はい。よろしくお願いします」
 ただの人間? みんな普通じゃないの? 管理者って何?

「普段は、学校に通ってもらっていて、携帯端末に予定を流すから、来られそうなら合流。必要な消耗品や交通費等は会社が支給。給料は基本給と歩合。気が向いたらボーナス有。そんな所かな。あっそうそう、家は気に入っているのか?」
「気に入っているというか、お値段の都合でそこに」

「んーそんじゃあ、一度見に行って、良さそうな所があれば引っ越せ。会社の出張所を作ろう。これから向こうに行くこともありそうだからな」
「はい。分かりました。ありがとうございます」

「それで、さっきの声が、松沼美月。俺の婚約者。で、この二人はさっき紹介したな。それと俺の先生のフレイヤがあれ? どこ行った?」
「連れてきます」

 芳雄が走って行った。

「さっきの芳雄たち兄弟は、ここで一緒に住んでいる。事情があって引き取ったからな。そうか事務所スペースか、いるよな」
「連れてきました」

「こっちのにゃんこが、俺の魔法の先生フレイヤで、そっちのわんこがフェンリルこと、フェンだ」
 二人とも、名前を呼ばれると手を上げて答えるから、神地さんの目がまん丸になっている。
「すごいですね、この2匹ってあのダンジョンにもいましたよね。連れて行っているんですか?」

「さっきも言ったが、冗談じゃなく俺の先生で魔法も使える」
「えっまっま」
「まっま、じゃなく魔法。ただ強力すぎるから今は使えんけどな」

 と言ったら、フレイヤの気分が乗ってきたようで、火や氷、水が周りに浮かぶ。
 フレイヤ。意識が魔法に行って二本足で立っている。
 突然、氷が強化され周りの水や火を飲み込む。
「フェンやめろ、寒い。そして、お前も二本足で立つな」

「さて、神地さん。お分かりだろうか。言っておくが、守秘項目に入っている。ほかに漏らすなよ」
「神崎さん。あっ社長さんとか、人間ですよね?」
 そう聞くと、悩み始める。
「さあ、どっちだろうな? 現状、俺にも分からん? 呼び名はどっちでもいいぞ」
「じゃあ、一司さんで」

「……ああまあ、良いけど」
「さて時間が時間だが、どうするんだ。駅まで送ろうか?」
「泊りでお願いします」
 真顔で答える。
「はっ?」
「泊りでお願いします……」
「後悔するなよ」
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