上 下
3 / 72
第一章 先ずはサバイバル

第3話 生活基盤を造る

しおりを挟む
 ―― 時間は最初、来たときに戻る。

「先ずは、水だな」
「稜線から谷ヘ向かうか?」
「足場がどうかだな」
 彼らは集団で、北の山地へ向かっていた。

 二年一組は、神野 龍一じんの りゅういち杉原 楓真すぎはら ふうまを中心にしている。

 それと、仲良しグループである松本 大和まつもと やまと松岡 大翔まつおか ひろと小林 一颯こばやし いぶきが知恵を出し合う。

 そして、神野の恋人である、森 澪もり みおと、杉原の彼女、濱田 結愛はまだ ゆあ
 仲良しグループの田中 凪咲たなか なぎさ天野 芽生あまの めい廣田 紬葵ひろた つむぎがメインとなる。

 だが他からの知識があるものなら、その情報を受け入れて共有をする。

 そしてクラスの大半は、考えなくても楽なため、そして責任を負わなくていいため付き従う。
 ただまあ、間違ったときに突き上げるような、馬鹿なことはしない。
 何かを言えば、率先をしてそれを証明する必要があるのがこのクラス。
 口を出すなら、手も出せ。それがモットーだ。

 他のクラスと違って、本当の実力社会。


 二年三組グループでは。
「ちっ、奴隷どもが居なくなって。どうすんだよ」
「喉が渇いたわ」
 とりあえず、口を開けば文句ばかり。

「―― 水を探すかぁ。ここに居ても仕方がねえ」
「そうだな」
 吉田 昌広よしだ まさひろ菊地 陽介きくち ようすけ、Aランクの二人が動き始める。

 そう、クラス内のランクがある。
 AからC。
 Dは奴隷だ。

「ちっ、しかたねぇ」
 残っていた、AからCランク一八人が動き始める。

 だが、Cランクの連中は考える。
 奴隷がいなくなれば、次は俺達だ。
 坂本 秀明さかもと ひであき高橋 誠彦たかはし まさひこは、阿南 かおりあなん かおり西浜 奈々にしはま ななを連れて、こそっと抜ける。

 それを見て、残りのCクラスも当然抜ける。
 あっという間に、二年三組はバラバラになってしまう。

「おい残りはどうした?」
 気がついて、志賀 雄介しが ゆうすけが騒ぎ出したときには、一二人しか居なくなっていた。

「役立たずなど良い。行け」
 周りに言われて進み始める。
 彼らは海へ向かうようだ。

 食料は海の方が多い。
 湧かして塩を取れば水も取れる。
 そう考えて……

 今は水筒と非常食がある。
 それがあるうちに、なんとかすれば大丈夫だろう。


 二組は基本仲良しグループで行動していたが、早速女子が襲われかかり、結束が深まる。そして、警戒をしながら皆で移動をする。

 小山を下り、傾斜を見ながら低い方へ向かう。
 東側に少し行くと川があり、そこで一応キャンプを張る。

 手順に従い、流れを石で囲み、魚用のトラップを造り放置。
 その間に、ろ過装置を作るために、竹でもないかと探し始める。

 しばらくして、森の中。
「いやあぁ」
 女子の声。

 木下 哲也きのした てつや武田 雅和たけだ まさかずが声が聞こえた方へと走っていく。
 長谷川が、やばい奴らが居るため、二人以上で行動と言っていたから、最低二人で動いていた。

 一応、手にはナイフを持っている。
 サバイバル用で学校の支給品。
 全長が約280mm、刃渡りが約140mm。
 ブレードバックにセレーションと言うギザギザが付いているタイプで、ギザギザ部分はノコギリとして使える。

「こっちへ来ないで」
 叫いていたのは、望月 宏美もちづき ひろみ川上 杏奈かわかみ あんな

 川上は棍棒で殴られてしまったのか、左手をかばっている。

 そして、連れションだったのか、足首にまでズボンとパンツが落ちて直すこともできず、よちよち歩き 。
 そう丸出しで、オロオロしている。

「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない。助けてぇ、でも、見ないで」
 かなり難しい注文を付けられる。

「言っている場合か、こいつはなんだ?」
「判らない」
 そう此処にもゴブリン君、棍棒持ちで現れた。

 手持ちはナイフ、相手は棍棒、それに、人型ということで躊躇してしまう。
 一匹が叫び始める。
「ぎいぃー」

「なんだ一体?」
 周りを見回す。

 だけどその間に、女子はズボンを履けた。
 だが途中で襲われたため、結構濡らしてしまった。

 気が落ち着くと、気になる匂い。

 気も無い余り話したことの無い男子でも、やはりそこは女の子。気になる。
 さっきもろに見られたし……

 世の中には、吊り橋効果というのがある。
 今まさに危機の最中。

 始めて見るかもしれない、男子の真剣な横顔、何かぐっと来るものがある。
「来るぞ。離れるな」
 彼らは、一年の時から格闘技も必修。

 手にはナイフがある。
 生き物は殺したことがないが、相手はどうも殺る気が満々のようだ。

 緊張をして喉が渇く、だけど何とかしないと、この子達は無手だ。

 わらわらと、合計一二体くらい追加がやって来た。
 さっきのは、仲間を呼んだようだ。

 だが数が増えても、サイズは、百二十センチくらい。
 子どもと思えば、何とかなるか。

 囲まれているため、木下と武田は、女の子を間に入れて、両サイドで守りながら戦う。伸ばした手に、たまにふにゅっとした感触がする。

 武田は襲ってきた棍棒を躱し、蹴り倒した後、胸を一刺し。
 一匹目を殺し、肝が据わった。
 ただ、気持ちとは裏はらに、手は震え足はガクガク。
 だがそれを気合いで押しとどめ、戦う。
 今は女の子を救うヒーロー。

 棍棒を奪い、女子に渡す。
 だけどまあ、簡単には吹っ切れられないようで、棍棒を渡されても怖くて殴れないし、ましてや生き物を殺すことに躊躇している。

「おら来いよ」
 気合いを入れるために、木下が吠える。

 それの所為か、残りの五匹は逃げてしまった。
 周囲に普通とは違う血の匂いなのか、死後に漏らしたゴブリンの糞尿か…… 周囲にひどい匂いが漂う。
 生き物は死ぬと筋肉が緩み、色々と漏れてくる。

「匂いがひどいな」
「ごっ、ごめんなさい」
 いきなり横で謝られる。

「えっ?」
「おしっこが、急に襲われたから……」
「えっああ、違う違う。此のモンスターの匂い、おしっこ……」
 困った雰囲気。

「そうだ、川上。腕は大丈夫か?」
 強引に話題を変える。

「うん、痛いけれど、折れては無いみたい。きちんと動く」
「良かった…… そっ、そうだ、川に行って、汚れたし洗おう」
 そう言って、川に向かい、ジャブジャブと木下と武田は川に入る。
「そんなに冷たくないし…… おいで、あいつらのせいで、ズボンも汚れたし洗おう」
 その言葉で女の子二人も理解した様で、川に入ってくる。

「冷たいじゃない。嘘つき」
 そう言って、照れ隠しなのか、キャアキャアと水のかけ合いが始まる。

 そう、青春の一ペイジ……
 彼らは、数分後、それぞれ彼女と抱き合っていた。
「そうだ、怖かったよな。これからは守るから……」
 木下は望月と、武田は川上と付き合うようだ。

 だが彼らは、危険な状態だった。
 ここには居なかったようだが、アマゾンのカンディルなどは、アンモニアの匂いに反応して、集まってくる。
 小さな魚で、穴から入り込み、体の中から肉を喰らう。
 入り込まれると、鰭が反しの役割をして抜けない。手術をしないと取れなくなる。
 
 知らないところでは、注意しすぎるくらいが良いだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地下アイドルから声優目指しましたがオーディション落ちて異世界旅芸人一座も追放されて、魔人美少年とバディ組んでリベンジしました

兵藤晴佳
ファンタジー
20歳過ぎても地下アイドルだった紺野麻美は、アニメ声だけが取り柄だった。 事務所からアイドルものの声優オーディションを受けさせられたが、あえなく玉砕。 しかも戦力外通告を受けて、学校相手の指導者派遣サービスに回される。 母校の温情で新たに紹介されたオーディションには、怪しげな応募者ばかりが集う。 さらに怪しげな審査を受けて合格したのは、異世界を旅する旅芸人の一座だった。 そこでパワハラを受ける美少年魔人をかばったために追放された麻美は、置き去りにされた世界で改めて役者修行をやり直す。 それは、異世界アイドルへの再出発でもあった。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

クラス転移で手に入れた『天性』がガチャだった件~落ちこぼれな俺がみんなまとめて最強にします~

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
阿久津雄介とそのクラスメイトは、最弱国家グルストンに勇者として召喚された。 ──天性なる能力を授けられ、世界を支配するドラグネス皇国の考案した遊戯、勇者大戦なる競技の強化選手として抜擢されていく。 しかし雄介の手に入れた能力はガチャ。 他にも戦力とは程遠い能力を授かるものと共に補欠として扱われた。 日々成長していくレギュラー入りしたクラスメイト達。 置いていかれる環境に、自分達もなんとかしようと立ち上がる雄介達。何もできない、なんの役にも立たないと思われた力で雄介達はほんの僅かな手応えを感じていた。 それから少しづつ、自分たちの力を高める為に冒険者の真似事をしていくことに。 目指すはクラスメイトの背中。 ゆくゆくはレギュラー入りと思っていたが…… その矢先にドラグネス皇国からの手先が現れる。 ドラゴン。グルストン王国には生息してない最強の種族が群を率いてやってきた。 雄介達は王命により、ドラゴン達の足止め役を引き受けることになる。 「別に足止めじゃなく倒しちゃってもいいんですよね?」 「できるものならな(可哀想に、恐怖から幻想が見えているんだろうな)」 使えない天性、大人の一般平均値を下回る能力値を持つ補欠組は、世界の支配者であるドラグネス皇国の尖兵をうまく蹴散らすことができるのか? ┏━━━━━━━━━┓ ┃書籍1〜3巻発売中 ┃ ┗━━━━━━━━━┛ ========================================== 【2021.09.05】 ・本編完結(第一部完) 【2023.02.14追記】 ・新しく第二部を準備中です。もう少しお待ちください。 (書籍三巻の続き〜)を予定しています。 【2023.02.15追記】 ・SSはEXTRAからお引越し、書籍用のSS没案集です。 ・追加で増えるかも? ・書籍用の登場人物表を追記しました。 【2023.02.16追記】 ・書籍における雄介の能力変更をおまけに追記しました。 【2023.03.01〜】 ・五章公開 【2023.04.01〜】 ・WEB版の大雑把なあらすじ公開(書籍版とは異なります) ==========================================

処理中です...