マイ・ラブリー・プリンセス

第四話 朝

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CHAPTER 04 LISTENER

　かわいいエラと朝食を終えたアランは悩んでいた。

　というのもエラはアランが用意したものはすべて食べたが、エラはどれを食べても素直に「まずい」と答えたためだ。

　実はその理由は、エラは生肉しか食べたことがなかったためそれ以外の味には不得手だったためなのだが、この時点ではエラもその事に気がついておらず、アランももちろんわかっていなかった。とにかく、アランは幸せにすると言った以上、エラに満足のいく食事をとってほしく、なにがいいのかと悩んでいた。

　エラはそんなアランの様子を見ながら、不思議と『ワーッ』という気持ちになっていた。エラは他人に手間をかけてもらうことの喜びを覚え始めていたのである。

　と、二人がそんな風に平和に過ごしていると、アランの携帯が鳴った。その音にエラは警戒し、アランはため息をついた。

「電話です。少し席をはずしますね」
「……わかった」
「すぐですよ」

　彼はそう笑うとリビングルームに行き、電話を出た。その相手はもちろん彼の上司であり、昨日の進捗報告を求めるものであった。アランがメールを出していることを伝え、またメール内容も口頭で伝えると上司はパッとその場で思い付いた仕事をアランに伝えた。いつものアランであれば「すぐ対応します」と答えるところだったが、今日のアランはちがった。なぜなら彼には今仕事よりも大事な悩みがあるためである。そしてアランは上司にハキハキと「昨日、先週末、先々週末の代休、および昨年度の有給消化のために三週間おやすみいただきます」といって電話を切ったのである。

「ボイコットなんて、学生みたいですね……」

　アランは自嘲気味にそう呟きながら有給申請をだした。

　ちなみに電話の向こうので「アジアのジョークはよくわからない」と軽く笑っている彼の上司は、翌週から彼女のチームの成績が3％まで落ちることをまだ知らない。引き継ぎのない中間管理職の失踪は、それなりに大きい規模の損害を出すものだ。だが、これはこの話ではそんなことは余談である。

　休みを取ったアランは玄関に戻り、エラのそばに腰を掛ける。するとエラはアランの膝に触手を伸ばした。

「アラン……」
「なんですか、エラ」
「……そばにいるときは、触って、いて、ほしい……」
「……気がつかず、すみません」
「謝るな。ありがとう、アラン……気持ちいい……」

　アランは顔を真っ赤にしてエラの触手を撫でる。エラはズルズルとアランにもたれ、ヌチャヌチャと触手を絡めた。二人がそうしていると、また携帯が鳴った。アランはため息をつき、エラはうるさがるように半目になった。しかもその電話は少し待っても切れる様子がない。

　アランは渋々立ち上がると、そんなアランをエラは触手で引き留めた。