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第二話 名
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CHAPTER02 NANELESS
アランが住んでいるマンションはマンハッタンの中心に位置する高級マンションであり、アランはその中でもハイクラスの部屋に住んでいるため、フロントを通らずに直通のエレベーターに乗ることで自室に向かうことができた(最もアランにとってはそんなことは今までなんの価値もなかったのだが)。
アランはそのエレベーターを利用し、濡れてグチャグチャになった自分とグチャグチャしているクリーチャーを人目につかずに自宅にいれることに成功した。彼は玄関で一息吐いて、クリーチャーを見上げる。
「部屋が濡れてしまいますから、服は玄関で脱いでしまいましょう……」
アランはそこですべての服を脱いだ。
アランはクリーチャーに自分の裸を見られることに抵抗がなかった。というよりも、クリーチャー相手に羞恥を抱けるほど彼に余裕はなかったのかもしれない(再度説明するが、彼は二日寝ていないのだ)。
クリーチャーはそんなアランの様子を見て、濡れたまま入ることが問題と理解したらしく玄関の隅で身を小さくした(それでもアラン二人分ほどの大きさがあるのだが)。アランはそのクリーチャーの動作を見て『いじましくて、かわいい』と思い、そしてそう思った自分に少し呆れた。
アランの目の前にいる生き物は、やはりどう見たところで怪物だ。それにもかかわらずよりにもよって『かわいい』とは……などとアランの理性は考えたのだ。
しかしそう考えてもなお、アランはその見上げるほど大きいクリーチャーをかわいく感じた。往々にして感情は理性には従わないものである。
「タオルを持ってきますから、少しお待ちください……ああ、俺の脱いだ服は汚れてますから、そのままで……」
クリーチャーはわかっているのかいないのか、触手をウゾウゾと動かした。なのでアランは足早にバスルームに向かった。
アランがバスタオルを持って玄関に戻ると、クリーチャーはアランが脱ぎ落とした衣類を咀嚼している最中だった。
「……なるほど、そんなことをするんですね……」
ボロボロになったスーツと靴と下着まで、そのクリーチャーはヌチャヌチャと咀嚼する。アランは『捨てる手間が省けた』と思いながら、クリーチャーに近寄り、手近な触手をバスタオルでぬぐってやるとクリーチャーはプルプルと震えた。
「……それ、美味しいですか?」
返事を期待せずにアランはそう尋ねた。
すると予想に反して、クリーチャーは服を嚥下してから、アランを見つめ、そのおぞましい口を開いた。
「ま、ずい」
それは例えるなら地獄から響いたかのような音だった。低く、重く、吐き気を催すような恐ろしい声。
アランはその声に身を震わせ、それからその声の主を眺めた。
アランが住んでいるマンションはマンハッタンの中心に位置する高級マンションであり、アランはその中でもハイクラスの部屋に住んでいるため、フロントを通らずに直通のエレベーターに乗ることで自室に向かうことができた(最もアランにとってはそんなことは今までなんの価値もなかったのだが)。
アランはそのエレベーターを利用し、濡れてグチャグチャになった自分とグチャグチャしているクリーチャーを人目につかずに自宅にいれることに成功した。彼は玄関で一息吐いて、クリーチャーを見上げる。
「部屋が濡れてしまいますから、服は玄関で脱いでしまいましょう……」
アランはそこですべての服を脱いだ。
アランはクリーチャーに自分の裸を見られることに抵抗がなかった。というよりも、クリーチャー相手に羞恥を抱けるほど彼に余裕はなかったのかもしれない(再度説明するが、彼は二日寝ていないのだ)。
クリーチャーはそんなアランの様子を見て、濡れたまま入ることが問題と理解したらしく玄関の隅で身を小さくした(それでもアラン二人分ほどの大きさがあるのだが)。アランはそのクリーチャーの動作を見て『いじましくて、かわいい』と思い、そしてそう思った自分に少し呆れた。
アランの目の前にいる生き物は、やはりどう見たところで怪物だ。それにもかかわらずよりにもよって『かわいい』とは……などとアランの理性は考えたのだ。
しかしそう考えてもなお、アランはその見上げるほど大きいクリーチャーをかわいく感じた。往々にして感情は理性には従わないものである。
「タオルを持ってきますから、少しお待ちください……ああ、俺の脱いだ服は汚れてますから、そのままで……」
クリーチャーはわかっているのかいないのか、触手をウゾウゾと動かした。なのでアランは足早にバスルームに向かった。
アランがバスタオルを持って玄関に戻ると、クリーチャーはアランが脱ぎ落とした衣類を咀嚼している最中だった。
「……なるほど、そんなことをするんですね……」
ボロボロになったスーツと靴と下着まで、そのクリーチャーはヌチャヌチャと咀嚼する。アランは『捨てる手間が省けた』と思いながら、クリーチャーに近寄り、手近な触手をバスタオルでぬぐってやるとクリーチャーはプルプルと震えた。
「……それ、美味しいですか?」
返事を期待せずにアランはそう尋ねた。
すると予想に反して、クリーチャーは服を嚥下してから、アランを見つめ、そのおぞましい口を開いた。
「ま、ずい」
それは例えるなら地獄から響いたかのような音だった。低く、重く、吐き気を催すような恐ろしい声。
アランはその声に身を震わせ、それからその声の主を眺めた。
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