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55.【十秒怪談】先入観①
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私は見て見ぬふりできない性格だ。
今時は、知らぬ存ぜぬ関わらぬ、深く踏み込まぬがスタンダードな人間関係の構築法だと言うが、私はそんなの認めない。
そう心に決めて生きている。
ある日道端を散歩していると、前から小学生の集団が現れた。
「ヨージ、これも持っとけよ!」
「ほら早く来いよ! 待ってっからさ!」
五人の男児たちが、一人の男児にランドセルを押しつけている。
可哀想に、背中に自分のランドセル、手には五つものランドセルを持ってヨージくんはフラフラと歩いている。
「こら! やめないか!」
私はすかさずヨージくんの元に駆けつけ、それらのランドセルを強引に奪った。
こんないじめ、見過ごしてはいけない。
「自分たちで持ちなさい!」
そう言ってランドセルを地面に置くと、
「あっ!」
五人の男児から、そして背後のヨージくんから同時にそんな声が上がった。
振り返ると――ヨージくんの体が、浮かんでいる。
持ち主の手から離れた風船のように、風に煽られ、一瞬で手が届かないところまで浮かび上がった。
「うわぁ、ヨージ!」
「何すんだよおじさん!」
「せっかく『重石』つけてたのに!」
「ヨージ! ヨージぃ!」
小学生たちが私を批難する中、
「わぁあああんみんなぁあああああ!!」
友達を呼ぶヨージくんの体は、深く青い、……遠い空に吸い込まれていった……
今時は、知らぬ存ぜぬ関わらぬ、深く踏み込まぬがスタンダードな人間関係の構築法だと言うが、私はそんなの認めない。
そう心に決めて生きている。
ある日道端を散歩していると、前から小学生の集団が現れた。
「ヨージ、これも持っとけよ!」
「ほら早く来いよ! 待ってっからさ!」
五人の男児たちが、一人の男児にランドセルを押しつけている。
可哀想に、背中に自分のランドセル、手には五つものランドセルを持ってヨージくんはフラフラと歩いている。
「こら! やめないか!」
私はすかさずヨージくんの元に駆けつけ、それらのランドセルを強引に奪った。
こんないじめ、見過ごしてはいけない。
「自分たちで持ちなさい!」
そう言ってランドセルを地面に置くと、
「あっ!」
五人の男児から、そして背後のヨージくんから同時にそんな声が上がった。
振り返ると――ヨージくんの体が、浮かんでいる。
持ち主の手から離れた風船のように、風に煽られ、一瞬で手が届かないところまで浮かび上がった。
「うわぁ、ヨージ!」
「何すんだよおじさん!」
「せっかく『重石』つけてたのに!」
「ヨージ! ヨージぃ!」
小学生たちが私を批難する中、
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